魔法少女リリカルなのはViVidー人喰らいし、古の血ー 作:ダラケー
hunting 71
ミッドチルダの都市から少し離れた場所に背が高い雑草が周囲に伸びた土地にある古びた一軒家。
そんな一軒家の一室である和室にリュイはいた。
縄で手足を縛られ、布で口を塞がれて猿轡を噛まされていた。
他に数人、リュイと同じくらいの年齢の少年少女たちが同じように縛られていた。
すると襖が開き2人の男女が現れた。
男性「さて、今日は誰を頂こうかな」
女性「そうね~」
和室に入るなり、子供たちを品定めする。
子供たちは怖くて動けないのか涙を流していた。
リュイ(しぐ…まま…)
涙を流している子供たちに釣られてリュイは泣きそうになりシグナムを思い浮かべていた。
なぜこうなっているのかと言うと今から数時間前に時を遡る。
シャマル「それじゃあ、リュイくん。口開けて」
リュイ「あー…」
シャマルに言われてリュイが口を開けるとシャマルはライトでリュイの口内を照らして中をチェックする。
今日はリュイの健康診断の日で、前まではシグナムに抱き付いた上で怖がっていたのだが2人っきりになった一件以来、祖母ポジションとして懐き始めたので今は1人で椅子に座ってシャマルの診断を受けられるようになっていた。
ただ、それはそれで寂しいと思うのがシグナムだった。
シャマル「はい、もういいわよ」
一通り口内を見たシャマルが言うとリュイは口を閉じた。
シャマル「それじゃあ、リュイくん。シグナムを呼んできてくれるかな」
リュイ「うん…」
シャマルに言われてリュイは席を立つと外で待っているシグナムを呼びに部屋を出た。
リュイ「しぐまま…しゃまばあばが…よんで…る…」
外のベンチで待っていたシグナムにリュイは言う。
シグナム「そうか。じゃあ、ここで少し待っていてくれ。それと紙袋に本が入ってるから」
リュイ「うん…」
シグナムに言われてリュイがベンチに座り、シグナムが代わりに医務室に入った。
リュイ「………」
シグナムを待っている間、リュイはシグナムか持ってきていた紙袋から本を取り出して読み始めた。
リュイが読んでいるのはイタズラの王を目指すキツネが子分の双子のイノシシと旅をする話で、30年も前から描かれている本である。
ゲンヤがギンガとスバルが幼い時に読み聞かせた本で、捨てるには勿体ないからと譲ってくれたのだ。
初めて読み聞かせた時、リュイは大変気に入り自分で読むまでになった。
元々小学生低学年用でもあるので平仮名が多く、漢字にも振り仮名が振ってあるのでリュイでも読みやすいのだ。
それ以来、リュイは自身の診察がある日に限り外で読むようになった。
リュイ「~♪」
今回はキツネが双子のイノシシと共に対立する鶴と亀のラーメン店を利用して悪事を働く話である。
?「坊や、本が好きなのかい?」
声をかけられて見上げると優しそうな面持ちをした男性がいた。
リュイ「うん…すき…だよ…」
?「そうか。じゃあ、おじちゃん家に来なさい。もっと面白い本があるよ」
リュイ「でも…しぐままが…」
?「大丈夫だよ。お母さんにはおじちゃんが言っとくから」
そう言って男性はリュイの手を掴むと無理矢理連れていく。
リュイは嫌がろうとしたが病院では暴れたらダメとシグナムに言われているために出来ず、男性に連れていかれてしまった。
そして男性に連れられ家に入るなり気絶させられ、気付けば他の子供たち同様に縛られていたのだ。
どうやら2人はアマゾンらしく、すでに何人もの子供が食われていて台所にはそれを裏付けるように子供と思われる足や腕、首などのバラバラにされた体があったのだ。
男性「今日はメスにするか」
女性「そうね」
品定めしていた2人は1人の少女を選ぶと男性が少女の足を掴んでリビングへ連れていく。
少女「ん~、んん~、ん~!!」
助けを求める少女だが他の子らは怖くて動けなかった。
少女「ん~!!」
少女が鳴き始めたその時だった。
男性に頭突きをかます少年がいた―リュイだった。
リュイに頭突きをかまされて男性は倒れて少女から手を離した。
リュイは共に倒れるが男性の上に乗っかったが猿轡が外れた。
リュイ「みんな…はやく…にげて…はやく…!!」
猿轡が外れてリュイは子供たちに叫ぶ。
リュイに言われた子供たちは立ち上がってぴょんぴょんジャンプしながら逃げる。
女性「逃がすものですか!!」
逃げる子供たちを捕まえようと手を伸ばす女性だったが…。
リュイ「いかせ…ない…!」
女性「うわっ!?」
捕まえようとする女性をリュイは体を捻って魚のように跳ねて女性にタックルを喰らわせて倒した。
その隙に子供たちは逃げていく。
男性「このガキ!」
餌である子供たちに逃げられて男性はリュイの腹部を思いっきり蹴る。
蹴られたリュイは飛ばされて壁に叩き付けられた。
リュイ「かはっ……」
壁に叩き付けられたリュイは肺から空気が吐き出され、さらに頭も打って切れたのか血が少々流れた。
リュイ「うぅ……」
リュイもアマゾンとは言え相手は大人、子供であるリュイには耐え難い傷みが体を駆け巡る。
男性「よくも邪魔してくれたな。逃げたガキはあとで捕まえてやる。だがその前にお前を食ってやる!」
そう言って男性は姿を変えた。
光沢のある藍黒色で、喉と額が赤く、腹は白い、胸に黒い横帯があるアマゾン【ツバメアマゾン(雄)】はリュイに近付く。
リュイ「うっ…くっ……」
戦おうとするリュイだが手足を縛られた上にさっきの蹴りの一撃によるダメージが大きく動けなかった。
ツバメアマゾン(雄)「覚悟しろ!」
動けないリュイにツバメアマゾンは飛びかかるのだった。