この度は更新遅くなり、申し訳ありませんでした。
「ヤハハ…ヤハハ!」
空島では今雷とゴム、二つがぶつかり合っていた。
周りに眩い光を放い、天空を飛翔している男はエネル、空島…スカイピアの国王であり、神である。エネルは空島に生を受けた時より強者であった。生まれた時から有していた心綱(マントラ)で人々の気持ちが手に取るように分かった。六歳になり、少年になると其の頃には人を下に見る様になった。
当たり前だろう、エネルは強力過ぎる心綱で人が考えている事が分かるのだから自然と、人の心の醜さも目に入って来る。それが見えるたびにエネルは苦悩した。人は何故こんなにも醜い?人は他人を思いやる素晴らしい心を有しているのに?何故人同士で争う?
嗚呼、とても、醜くて、醜くて、醜くて、何て美しいのだろう。分かるか、表面は綺麗に塗り固められているが、一度皮を捲ると、そこには泥にまみれた汚い人の本性が見える。でも、何処か美しい。
嗚呼、嗚呼、嗚呼、見たい、人が憎しみを持ったらどうなるのか。それはとても華麗な美しい、極上の宴になる。
其の為には力が必要だ。心綱ではまだ足りぬ、最、もっと、頂きから人を見降ろしたい。争う様を見て、宴をするのだ。
それからエネルは力を求めて、悪魔の実を探し求めて遂に、自然系の悪魔の実を食べて雷人間になって空島を支配した。
支配に抵抗した者も多数居たが、エネルの雷の力で退けた。エネルは自分に逆らった人々を容赦無く神の雷で焼き尽くし、心綱で心を操り、恐怖と疑心暗鬼で空島を治めていた。
だが、今、エネルは自らと同等に、対等に戦う人間が現れた事に酷く動揺した。
その男は自らの雷を容易く弾き、雷たる我の身に一撃を与えた。一番下等な種族であるはずの青海人が神たる我に一撃を与えたのだ、あってはならない事だ。しかし、エネルは歓喜を覚えていた。やっとこの私と同じ高みに来る存在が現れたのだ、愉快、愉悦、愉悦、もっと我を愉しませよ。
エネルはあくまでも自分を上に起きながら自分に一撃を与えた青海人を見据えた。
「愉しいな?ルフィよ!」
「エネルゥゥゥ…!お前なんか神じゃねぇ!」
「ヤハハハ…何故だ?」
「スカイピアの人達はお前の理不尽な支配に苦しんでる!俺たちを助けてくれた人をお前に逆らっただけで裁くってなんだぁ!!そんな奴神じゃねぇ!」
「ヤハハハ!それの何が悪い?なあ、ルフィよ、分からんか?この世は理不尽に満ちているんだ。弱い者が上に立ち、強き者は異端と見なされ迫害される…それが理不尽だ!強き者は遠慮は要らぬ、弱き者の上に立つのが本当の強者だ!!」
「そんなの関係ねぇよ…俺は許せねぇんだ!そんな考えで空島の人を苦しめてきたお前を!!」
エネルに向かって叫んだルフィは天空に立つエネルに拳を打ち込んだ。
「ガハッ…!?」
ルフィの拳を顔面に受けたエネルは抵抗する暇もなくぶっ飛ばされ、重力に従って地面に地響きを立てて落下した。
「何故だ…?何故?神である私が唯の人間に負けるのだ?」
「エネル…それがテメェの弱さだ!……ゴムゴムのーー!ガトリング!!!!」
ドゴゴゴォンと音を立ててエネルの居た地面は破壊されて土煙が舞い上がった。
「ハァ…!ハァ…!!た、倒した…!」
「ルフィ!」 「ルフィ君…」
「サ、サンジにロビンか…ワリィ!エネル先に倒しちゃまったぜ!」
「馬鹿野郎!!無茶しやがって!」
サンジ・ロビンは直ぐにルフィの側に駆け寄ってルフィを助け起こした。
「ルフィ君、まさかエネルを倒すとは恐れ入ったわ。」
「言ったろ…?俺は海賊王になるってな!」
「それでも…無茶するんじゃねぇ!心配したんだぞ!馬鹿野郎ーー!」
三人は和気藹々と話しながらその場を去って行った。
三人が去った後に弱々しいながらも動く影が一つあった。
「ヤハハハ…ヤハハハ…帰ろう、帰るんだ、あの悪魔たちが居ない地に…新天地に…」
エネルは妄執にとりつかれていた。ルフィに負けたと言う事実を認めたくないが為に自らの思考を夢の中にいれることで現実逃避をしたのだ。
「さぁ!、箱舟よ、来るのだ!私を新天地に連れて行くのだ!!」
エネルの叫びに応え、巨大な箱舟はゆっくりと地響きを立てながら動き出した。
「箱舟、目的地は月…月だ…月ならば忌々しい青海人も居ない……」
エネルは弱々しいながらも何とか立ち上がり、上空に浮かぶ箱舟に乗り込もうと浮かび上がった。
突如上空に巨大な熱気を放つ赤い玉が現れた。それは輝きを放ちながら箱舟に向かって行った。
エネルは慌てて雷の槍を投げつけたが、圧倒的な質量の前に逢えなく塵と消えた。勢いを保ったまま赤い玉は箱舟に着弾した。
悲鳴を上げながら箱舟は真っ二つに裂け、無数の木片になり、落下して行った。
「は、箱舟が……?!」
「悪いのう、月に逃げられたら困るじゃけん、スカイピアの神エネル…」
慌ててエネルが振り向くと二人の長身のコートを着た男が立っていた。
「貴様ら…!よくも、よくも、私の箱舟を壊してくれたな…」
「あらら、それはすまないことをしたね。でも、君にはこれ以上その力を使われたら堪らないんでね、悪いけど拘束させてもらうよ。」
軽い調子でエネルを捕まえるとこの青海人はのたまった。
調子に乗るなよ、青海人が、さっきは負けこそしたが、あれは私の力が通じないという奇怪な出来事によるものだ。
エネルは周囲に雷を出現させた。
「二万V、神の怒りを食らうが良い」
エネルの体内で生成された電気はその力を増し、次第に収束し雷の閃光となって二人に向かっていく。
しかし、二人は片腕を軽く上げただけで雷が空気中に霧散した。
「所詮は心綱しか使えない不完全なロギアか。」
な、なぜだ!さっきの青海人と言い、何故私の技が通用しない?!
「終わりだ、〝大噴火〝」
その言葉と共に、赤いコートの男を中心にして灼熱の炎が集い収縮し、巨大な火の隕石を創り出した。
隕石は上空にゆっくりと打ち上がりながら勢いを増し、エネルの頭上に落ちて来た。
く、くく……認めるものか、認めるものか、私こそが神、神なのだ、私こそがスカイピアの唯一神!こんな隕石などうちらはってくれる…!
エネルは未だ自らが神だということを信じて疑わない妄執に取り憑かれ、現実を直視することを許さなかった。彼は今一度雷を創り出し、隕石を滅さんとした。
「三億V…神の」
それを言う前に、エネルの体は灼熱の焰に包まれ、痛みを感じる前に彼の身体ごと、永遠に止まぬ灼熱地獄に彼の意識を誘った。
彼は完全にこの地上から塵も残さず消滅した。