《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち―――   作:雷電p

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フォルダー2-9『西木野 真姫』

 私はずっと1人で泣いていた―――――――

 

 誰も助けてくれないことに―――――――

 

 助けてくれると言っていた仲間は私の前から過ぎ去った――――――――

 

 

 そして、敵として私の前に立ちはだかった――――――――

 

 

 その時思ったわ―――――

 

 私って、何のために生きているのだろうって――――――――

 

 

 私の声を誰も聞いてもらいない―――――――

 

 私のことを誰も信用してはくれない―――――――

 

 

 そんな私に価値があるのか――――――?

 

 

 

 

 はっきり言って、皆無に等しかった―――――――

 

 

 所詮、みんなにとって私はいらない存在だったのよ―――――――

 

 だから、みんなで私を否定しようとした――――――――

 

 それなら、みんなの手で消されるよりは自分の手で終わりたかった―――――――

 

 誰にも悲しまれずにただ1人で――――――――

 

 

 

 

 

 

 でも、あなたはそれを赦してはくれなかった―――――――――

 

 

 あなたは私に生きることを選ばさせた――――――――

 

 それにあなたは否定する私自身の存在意義を見いだしてくれた――――――――

 

 

 あなたが私に伝えたこと――――――――

 

 あなたと唇を交わして初めて知ったあなたの気持ち――――――――

 

 あなたは忘れてしまったと言っていたけれど、ちゃんと感じたわ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

『私(・)の(・)こ(・)と(・)を(・)愛(・)し(・)て(・)い(・)る(・)』と――――――――

 

 

 

 

 それだけで、私は生きることを決意することが出来たわ―――――――――

 

 あなたのために―――――――

 

 私を愛してくれるあなたのために――――――――

 

 

 

 私はあなたの隣で生きていたいと、そう思えるようになったの――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―

――

――― 

―――― 

 

 

 

 疑心暗鬼に陥り、自らの命を絶とうとしていた真姫を、その直前で止めることが出来た。

 正直、今までにないくらいに自我を崩壊させていた真姫を止めることは難しいと感じていた。 だが、やらねば必ず後悔するという何所からともなく聞こえてくる言葉に背中を押され、俺は大きく前に進んだ。 真姫を救うこと、それが俺の役目となった。

 

 

 そして、真姫を救うことが出来た―――――――

 

 

 3度のキスを持って真姫を目覚めさせることは何とも強引なモノのように感じた。 だが、あの時の真姫は言葉で示そうとしても信じてはくれなさそうだった。 言葉を信じた真姫はその言葉によって裏切られたのだろう、だから疑心暗鬼に陥った。 故に俺は、言葉よりも強い………俺の気持ちを直接伝えたのだ。

 

 

 俺(・)は(・)お(・)前(・)の(・)こ(・)と(・)を(・)大(・)切(・)に(・)思(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)と(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)を――――――――

 

 

 また、その時に不思議な感情も抱き、それが真姫の中へと入り込んで行ったような気もした。 けれど、それが何であるかは分からない。 多分、自分が失ってしまった感情なのかもしれない。 そして、それが真姫を思い留まらせたのだろう。

 

 

 だとしたら、それは――――――――

 

 

 いや、だとしてもだ。 俺はそれを自覚していないのだ。 そんな気持ちのままで受け入れわけにはいかない。 ならば、その気持ちを俺の中でまた抱かせるんだ。 そして、受け入れるんだ――――――この幸せを手にするために―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

「蒼一、痛む………?」

 

「あぁ、かなり痛く感じてしまうな…………」

 

「そうでしょ? 私、無意識にかなり激しくやったから蒼一の体を壊しちゃうのかと思ったわ」

 

「そんな大げさな………俺はそう簡単には壊れやしないさ………」

 

「そうね、あなたは私を1人置いて何処かに行かないものね」

 

「今はそのつもりさ。 けど、何があるかはわからないものだ」

 

「大丈夫、その時は言ってくれればいいから♪」

 

「ありがとな。 それじゃあ、頼む」

 

「わかったわ、それじゃあ、力を抜いてね――――――」

 

「うぐっ!! こ、これは少しキツイかな………?」

 

「これは………深くまではいってないわね………これなら大丈夫よ」

 

「だとしてもだ、それでも痛いモノは痛いのだ―――――うぐぐっ!!!」

 

「男でしょ、少しは我慢してよ?」

 

「お、おまえなぁ…………」

 

 

 

 さっきの出来事から少し時間が経ち、落ち着きが取り戻った頃。

 俺は真姫にしてやられているところだった。

 

 さっきまでは、俺が主導権を握っていたようなものだったのに、今は逆転されたって感じだな。 何か手綱を引かれたような感じとも見られそうな構図だが………致し方ないだろうな。

 

 

 なにしろ、今やってもらっているのは―――――――――

 

 

 

 

 

「ほぉら、まだ血が出ているわ。 ちょっと、拭くわね」

 

 

 さっき、包丁で傷付いた右腕の治療中なのだ――――――

 

 真姫曰く、この傷はあまり深く入ってはいなかったので、消毒程度で済まされるとは言っている。 しかし、痛いモノは痛いのだ。 仕方ないじゃないか、さっきまではアドレナリンが有り余るほど分泌していたんだから痛みは感じなったさ。 けど、今はそれが無いのさ。 だから、さっきまで感じていなかった痛みも同時に感じているから余計に顔を引きつらせて声を上げるしかなかったのだ。

 

 

「っ~~~!! くっ、このくらいだったら唾付けておけば治るんじゃないか?」

 

「だめよ! ちゃんとした薬品で処置しておかないと後で大変なことになるわよ!」

 

「け、けどさ……よくあるだろ? 人の唾液で傷口を早めに治療するってやつがさ。 あながち、バカにすることはできないかもよ?」

 

「そ、そうかしら………?」

 

 

 俺の言ったことに嘘偽りはない。

 だが、消毒のアルコールが沁み過ぎて痛いのだ! だから、もうこれ以上やらないでほしいという意味合いでそう言ったに過ぎないのだ。

 

 

 

「それじゃあ、ちょっと待っててね…………」

 

「えっ…………?」

 

 

 

 そう言うと、手にしていた消毒液を置いて、俺の腕を水に濡らしてから拭き始めた。 何をしているのだろうと見守っていると、真姫は俺の腕を顔に近づけ―――――――

 

 

 

「はむっ」

 

「!!!?」

 

 

 傷口を口で覆ったのだった!

 唇と口から吐かれてくる息が温もりとなってじんわりと俺の傷口に触れてくる。 それに、舌も使い始めて傷口の端と端を行き来するように執拗に舐め始める。 舌のざらついた感じと、指でなぞるようにゆっくりと動くので、くすぐったくも感じてしまうのだ。

さすがの俺もここまでは想定してはいなかったので、戸惑いは隠せなかった。

 

 

「お、おい! そんなことをしなくていいって! 俺が舐めればいい話なんだから!」

 

「あら、それじゃあ、一緒に舐める? そうしたら、効果も2倍になってすぐに治るかもしれないわよ♪」

 

 

 ニッコリとした嬉しそうな表情を見せながら、こちらを見てくる真姫は、どことなくだが、生き生きしているような気がしてならない。 それに、俺のことを試しているのだろうか? 一緒に舐めようだなんて、俺にはそんな趣味は無いのですが、それは…………

 

 

「いや、結構………真姫がそのままやってくれ…………」

 

「うふふ♪ それじゃあ、遠慮なくさせてもらうわ♪」

 

 

 仕方なく、真姫にそのままやらせることとなったのだが………なんとまあ、頬を赤く染めながら俺の腕を舐め始める。 ペロペロとまるで犬のように必死に舐めている様子を傍から見ていると、逆にこっちが恥ずかしくなる。 また、かぶり付くように唇を使うので、口から音が漏れ出て変な気分になる。 まるで、キスをしまくっているようだな…………

 

 そんなことをしながら、真姫は数十分もの間俺の腕を舐め続けたのだった。

 

 

 

 

 

―

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 真姫の執拗な治療(?)の甲斐もあって、傷口から血が流れることは無くなり、今は止血用のバンドエイドを貼って抑えているところだ。

 

 そして真姫は今、ぐったりとソファーでくつろいでいる。

 先程までの出来事による疲れがようやくここで出てきたのだろう、まだ夕方の時刻なのだが、眠たそうな顔をしていた。

 

 

「眠たいのか?」

 

「ん……うん、そうね………ちょっと疲れちゃったかも…………」

 

 

 目を擦りながらも、あまり大きく開こうとしない口で話す言葉があどけなかった。 ふにゃふにゃとしたような甘い声で話すので、そろそろマズイだろうなと真姫を早速、寝室の方に向かわせようと抱きあげた。

 

「きゃっ」というかわいらしい声を出すと、驚いたことで目を開かせていた。 だが、すぐに俺の腕に収まるように顔をうずめて心地良さそうな顔を見せる。

 そんな姿を見ながら俺は2階の部屋に向かった。

 

 

 

 真姫に設けられた寝室のベッドに寝かせ、そのまま布団をかぶせてやると、また眠たそうな顔をする。

 

 すると、何かしてほしそうな目でこちらを見てくる。

 俺は何かを話そうとする真姫に顔を近づけさせた。

 

 

「ねぇ……ちょっとだけ休みたいから寝るまで手を握っててくれない………?」

 

 

 目を子供のようにきらきらと輝かせながら話してくるのを見ながら、俺は有無を言わずにその通りに真姫の手をやさしく握り始める。 そうしてあげると、頬がかなり緩み始めて「ふふふっ♪」微笑みながら俺を見つめた。

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい………私が蒼一のことを信じていたらこんな傷をつけることはなかったのに…………」

 

 

 上がっていた眉を少し引き下げてそう言ってくる真姫。

 まだ、罪悪感を抱いているのだろうと思うと、俺は自然と行動してしまう。

 

 

「それを言うのならこっちだってそうだ。 真姫が苦しんでいるところをすぐに助けてやることが出来なかったんだから。 こんなにすぐ近くにいるのにそれを感じてやることが出来なかったのは俺の落ち度だ。 ごめんな」

 

 

 真姫の握った腕をやさしく擦りながら俺は話す。

 今日や今日までのことを振り返ると、俺がしてやらなくちゃいけなかったことはたくさんあったはず、けれど、何一つとして気遣ってやることが出来なかったのだ。 それがわかっていたのなら、真姫も傷付くことはなかったのだろうと思う。

 

 

「ううん、違うわ。 これは私の問題よ。 私はあなたのことが好き―――――なのに、あなたを否定しようとした。 それはあるまじき行為なのよ。 あなたのことを好きでいることは、あなたのことをすべて信じてあげるということ―――――それが出来なかったのだから私の方がいけないのよ」

 

 

 好きが故に………か…………

 

 今の俺には難しいことなんだろうな。

 俺の感情にそういった人を好きになること―――――愛(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)と(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)がよくわからなくなっている。 あの感情を落としてしまって以来、人を愛するということがわからなくなってしまった俺には、他人からの愛情を受けられても理解することが出来ない。

 

 

 

 だが、もしかしたら………誰かからの愛情が俺に注がれ続けたとしたら、取り戻すことが出来るのだろうか?

 もう一度、俺に人を愛するということをさせてくれるんだろうか?

 

 

 

 それならば俺は…………真姫に託してみようか………?

 

 真姫が俺に注いでくれているその愛情をもっと受けることが出来るのなら俺は元通りになれるのではないだろうか?

 

 

 

 

 信じてみよう…………真姫のその力に………………!

 

 

 

「いいや、真姫。 人は追い込まれたらそうなっちまう生き物なんだから仕方ないのさ。 けど、そんなに自分に罪悪感を抱いているのなら、俺の願いを聞いちゃあくれないか?」

 

「蒼一のお願い……? いいわ、私でいいのなら聞いてあげるわ」

 

「そうか、それじゃあ真姫にお願いしたい――――――俺を愛し続けてくれ」

 

「蒼一……! もしかして、あの時の………!」

 

「あぁ、真姫からの返事に応えられなかった理由―――――人(・)を(・)愛(・)す(・)る(・)と(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)が(・)わ(・)か(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)からそう言わざるを得なかった。 そんな中途半端な気持ちで真剣な真姫の気持ちに応えることなんて出来やしなかった。 けど、今は違う。 俺は自分と向き合わなくちゃいけないんだ。 失ったモノを取り戻すために……み(・)ん(・)な(・)の(・)想(・)い(・)に応えるために………!」

 

「蒼一…………」

 

「だから真姫、俺に教えてほしい。 人を愛することはどういうことなのかを見せてほしいんだ。 そして、俺に人を愛させてほしいんだ………頼む」

 

「っ――――!! ええ! こんな私でいいのなら蒼一に教えてあげるわ!」

 

「ありがとな………真姫………」

 

 

人を愛すること―――――そんな曖昧なものを教えてほしいなど、難題すぎるじゃないか。 そんなことが出来るものなのだろうか? けれど、そうもしなくては失った感情は取り戻すことが出来ない。 俺自身がどう頑張っても手にすることは難しいことなのだ。

 

1人でやるよりも2人で………そうすれば、俺に戻ってくるものだと信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、早速、蒼一に人を愛することがなんであるかを教えてあげるわ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 そう言うと、真姫は近づけていた顔をぐっと引き寄せて唇を重ね合わせた。「んっ」と言葉にならない声をお互いに出しながら、深く沈みこんでしまいそうなキスを続けた。

 

 

 長く長く、息が出来なくなるくらい長く―――――

 

 

 そして、狂おしいほどに深く深く気持ちを沈ませていくのだった――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綿菓子のようにほんのり甘くやさしい気持ち(愛)が舌に絡まり、体内へと溶け落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

―

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

「すぅ―――――すぅ―――――――」

 

 

 穏やかな寝顔を見せながら真姫は眠りについた。

 先程まで、異常なほどに元気だったのに、一変してこのような姿になるとは思ってもみなかった。

 

 よっぽど疲れていたのだろうな、頭をやさしく撫でてみても反応を示さずにいるのはそのせいなのだろう。 俺は、握られていた手を放す。 そして、もう一度その寝顔を見てからこの場を静かに去った。

 

 

 

 

 2階から1階のリビングに戻ると、先程までの惨状に戻るような気持ちになってしまう。

 床を見ると、それなりの大きさの血溜りが出来ていた。 その上には、真姫の包丁も浮かんでいる。 俺はそれを拾い上げて全体についた血糊を落とすために台所に立つ。

 水とお湯を上手く使い分けながら、刃と持ち手の部分の血を洗剤で落とす。 刃先のところは何とか落とすことが出来たが、持ち手のところは木製であったために、色が少し滲みこんでいる。 わずかに見られるその赤黒い色がこの場で何があったのかを告げているようだった。

 

 また、床の血も拭き取り始める。

 よくもまあ、こんなに血を出していたのに気絶もしなかったものだ。 頭の中でそんなことを思い巡らせながら、染みにならないように丁寧によく拭きとる。

 

 

 

 拭いている最中に、窓に無数の水滴が付いているのをようやく確認することが出来た。

 風も強く吹いているらしい。 どうやら、夏恒例の強い雨風がここ一帯に吹いているのだろうと、結論付けた。

 

 

 

 

 

 すべてを終わらせようやく一息吐こうとした時、更なる焦燥感が走る――――――――

 

 

 

 

 

 

(ピンポーン)

 

 

 

 

 玄関のチャイムが鳴った。

 

 

「はーい、ちょっと待ってて下さーい!」

 

 

 俺は何の疑いも抱くことなく玄関の方に掛ける。

 

 

 そして、扉を開くとそこに立っていたのは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――花陽!?」

 

 

 

 

 

 

 傘もささずに、全身をずぶ濡れにしていた花陽が、ただ1人立っていたのだった―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………おにい………ちゃん……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

【監視番号:28】

 

 

 

【再生▶】

 

 

(ピッ!)

 

 

 

 

『もぉ~! 本当だったらこの時間には真姫ちゃんはいなくなってたはずなのに………とんだ計算違いだよ………!!』

 

 

『けど、もう一度だけチャンスをあげるよ………花陽ちゃん…………』

 

 

『今度しくじっちゃった時には……………』

 

 

 

 

『ちょっとだけ、お仕置きさせようかなぁ~♪』

 

 

 

 

『うふふ………それじゃあ、早く行こうかな…………』

 

 

 

 

 

『それと、もう隠れなくてもいいんだよ――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――――――――絵里ちゃん―――――――――――』

 

 

 

 

 

 

 

(プツン)

 

 

 

 

【停止▪】

 

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うぷ主です。

早速、1人目を助けることができました。

次はどうなるのだろうか………………?


次回に続くよ。
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