《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち――― 作:雷電p
海未の家から帰宅する途中のことり。
彼女は怪我した足を引きづらせながらその帰路を歩く。
「はぁ――――はぁ――――――あと、もう少し―――――あともう少しだからね、蒼くん―――――♪」
一歩一歩を噛み締めるかのように歩くことりには、彼女が想う彼のことしか頭になかった。 すべては彼のために―――――そして、私のために―――――その一心で彼女は行動し続けていた。
だが、そんな彼女の想いとは裏腹に彼女のことを邪魔する者が現れ、窮地に追い込まれそうになっていた。 そして、彼女はその者との決着を着けようと準備をし始めたのだ。
絶対に敗れるわけにはいかなかった。 もし、ここで敗れてしまえば、自分と言う存在が危ぶまれてしまうとまで考えていたのだ。 それほどまでに、彼女は躍起になっていたのだ。
その曇りきった瞳の先には、一体何が見えているのだろうか―――――――――――?
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―――
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[ 宗方家・自室 ]
にこの一件が終わった後の夜――――――
にこは無事に元の状態に戻ることが出来たのだ。 アイツ自身が抱いていた本当の感情を引き戻させたことで、アイツは本来の姿を見せることが出来たのだ。 その分の代償として少々痛手を受けることになったが、にこのことを思えば安いモノだ。
このことはすぐにみんなに話すこととなる。
それを聞くとみんなホッと胸を撫で下ろすように安心した様子だった。 特に、真姫は少し目をうるわせた感じで俺の話を聞いていた。 今回のことで一番気にしていたのは真姫だ。 にこの被害者でありながらも、にこのことをずっと仲間だと思い続けていたこともあり、誰よりも喜びを表していたのだ。
そんなにことみんなが対面するのは明日となる。 俺の立会いの下で行うため、大事にはならないだろうとは思っている。 まあ、何かが起ころうとも俺が万事うまくやるつもりでいるから問題はないはずだ。
そうした準備を整えてから俺は寝床に入る。
ふと俺は、自分の唇に触れる。 潤いなど一切感じないカサカサした肌である。
だが、この肌には、つい先程まで潤いを感じていた。
そう、数時間も前に俺はにこと口付けを交わしたのだ。 マシュマロみたいにふわっと柔らかく、桃のようにみずみずしい唇。 そして、交わし合う中で感じたほんのりとした甘い味が未だに口の中に留まっている。 その時のことを思い出すと、少しばかり恥ずかしい気持ちになってしまうのだが、それが何とも言えぬやさしさを抱いてしまうので、嬉しくもありホッとしてしまう。
「最近の俺は………一体どうしてしまったんだろうか…………」
つい口にしてしまったこの言葉―――――自分でも不思議に思っているのが、こうした異性――――真姫や花陽、そして、にこと立て続けに唇を交わすなど今までの経験上、最もありえない出来事に入っている。
俺は異性が苦手だったはずだ………それだのに、どうして体がアイツらへの行為を受け入れてしまうのだろうか? それに、最近は心が大分揺れ動くようになってきた。 これは何かが変化してきている兆候なのだろうか………?
腕組みしながら思考する―――――けれど、結論など出やしなかった。
変な感じだ――――――
今のこんな心で何が見えるというのだろうか? いや、決して見ることはできないだろう………ただ、その日が来るのを待つしかないのだろう………
自問自答を繰り返しながら俺は結論を延ばした。 すべては万事うまく行く日が来ることを信じて、俺は体を横にして深い眠りについた。
―
――
―――
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深夜――――――――
「…………ん………うぅん…………………」
めずらしく黒雲が過ぎ去り、白く輝く満月が顔を出していた。 夜も深く、時刻も丁度日付を過ぎたところだ。 誰もが寝床に入り安眠を得ているところだろう。
ちなみに、今日もまたウチに彼女たちが泊まっている。
真姫と花陽と凛、そして、明弘の4人だ。 ちなみに、希は1人だけ家に帰っていったのだった。
みんな昨晩と同じところで寝させているが、今回は真姫たちが来ることはなかった。 というか、2人を抱えながら寝るのって結構辛いのよね。 寝ている最中に腕に血液が通わなくなったからピリピリして痺れてしまったんだ。
まぁ……決して心地悪かったという事はなかった………というか、気持ち良かったと言うべきなのだろうか…………何があったのかについては割愛させてほしい。 思い返せば、また理性が明後日の方向にブッ飛んで行きそうな気がしてならないのだ。 気を緩ませることはまだまだ出来そうもないようだ………
しかし………何故この時間帯に目を覚ましてしまったのだろうか?
全身が寒くなったわけでもなく、トイレに行きたくなったわけでもない。 だとしたら、一体何が俺をこうさせているのだろうか………?
少し考え込んでいると、何かを感じさせるような痺れが背筋を走る―――――ピリッとくるこの感じは一体………? そうした疑問を抱いていると………………
ピシャッ――――――――――――!!!
「!!?」
急にベッドの真横に位置する窓が全開したのだ! そんなバカな! 鍵を掛けていたはずなのに何故?! そんないきなりすぎる出来事に一瞬うろたえてしまう。
すると、その窓から1つの黒い影が現れる。
ふわりと鳥が羽ばたくと様に窓際から飛び跳ねると、横になった俺の体目掛けて落ちてきたのだ!
「うぐっ―――――!!」
ドンと言う音を立てて腹に落ちてきたその黒い影は、月夜の明かりによってその姿が露わとなる。
そして、全体像を見た時、俺は驚きの表情を持って彼女の名前を呼んだ―――――!
「こ、ことりッ―――――?!」
「やっほ~、私のそ~くん♪」
俺の目の前に現れたのは、ニッコリと見惚れてしまうような笑みを浮かべるあのことりだった。
「ことり………どうしてここに………?!」
「うふふ、どうしてって………当然、蒼くんに会いに来たからに決まっているよ♪」
顔を赤く染めて俺に言い寄ってくることり。 その顔を俺の鼻先にまで近付けさせると、そのまま口付けしてしまうのではないかと思うくらいまで接近した。 ことりが顔を近づけさせたことで、その長い髪の毛が俺の顔に掛かり始める。 そこからやんわりとした甘さが漂い始めると、全身を貼り詰めさせていた緊張と力が段々と衰い始める。
この匂い………どこかで嗅いだ事があるような………!
匂いが鼻奥にまで到達すると思考が安定しなくなってくるとともに、動悸が早まりだす。 そうすると、自然と体が火照り始めてきた。 そんな様子を目の前にいる彼女がまるで待っていましたと言わんがばかりの嬉しそうな表情をし始める。
ことりのヤツ……何かしたのか………!
「うふふふふ………蒼くんの体が熱くなってきているねぇ~♪ やっぱり、効果はあるようなんだね~♪」
「お前………一体、何を体に付着させたんだ…………?」
「何って……蒼くんが喜んでくれるあま~いお薬だよ♪ この匂いを嗅いだら蒼くんはもうことりしか目に入らなくなっちゃうんだよ♪」
ことりはそう言うと、鼻の上から頬にかけてまでを赤く染め上げ、トロンと垂れた目で俺のことを見た。 ことりのその言葉を聞いて何をしたのかが大体分かったような気がする。
媚薬だ―――――
俺の体が急に火照り出したことや全身の力が抜けていくようになってきているのは、そのせいなのだろう。 そして、このどこかで嗅いだ事のある匂いは大方ジャスミンなどの類だろう。 よく焼き菓子と共に重宝されるお茶の1つで、お菓子作りを行ったりしていることりにとっては当たり前な品物なのだろう。 自分の家にあった茶葉をうまく配合して香水のようにしたのだろうな………
その匂いを嗅ぐまいと顔を背けようとするも、ことりの長い髪の毛はどの体制になっても顔に付いてしまう。 そのため、その髪から匂い出すあの花の香りが俺を包み込んでしまう。
「あれ~? あれあれ~? 蒼くんのパジャマが汗で濡れちゃっているよぉ~? たいへ~ん! これじゃあ、風邪をひいちゃいますよ~♪」
そう言うと、ことりは近付けていた顔を離れさせその身体を起こした。 すると、俺が着ている服の襟の部分を掴むと、そこを勢いよく左右に引き延ばし、首から腹まであったボタンをすべて引き千切ったのだった!
「おい!!! ふ、ふざけるんじゃない!!!」
「きゃぁ~!!! 蒼くんのキレイな体が丸見え~♪ いつ見てもとっても素敵な体だよ~♪♪♪」
俺の言葉にまったく耳を貸さないことりは、曝け出された俺の上半身に向かって顔を埋め始める。 頬ずりしたり、手で全体を撫で回したりとありとあらゆる場所を触れたのだった。 それを焦らすようにゆっくりとした手付きで触れるので、くすぐったくも感じてしまう。 だが、力が抜けた状態の身体では、ことりが今やっていることに手出しすることもできずにあった。 俺はそれをただ必死に堪えながら見る他なかったのだ。
「あはっ♪ こまったなぁ~ことりも体が熱くなってきちゃったぁ~♪」
すると突然、ことりは上半身を脱ぎ始めたのだ!
「な、何をしているんだ!?」
「だってぇ~熱くなってきたんだも~ん♪ それに、こうした方が蒼くんも喜んでくれるかなぁ~って思って♪」
おいおい、冗談ではないぞ! こんな状態で見せられても喜ぶはずはないだろ! 俺は心の中でそう叫びながらことりが服を脱ぎ、下着にまで手を掛けている様子を見つめるほかなかった。
そして、ことりの体を覆っていた最後のベールが脱ぎ棄てられると、上半身だけ生まれたての状態を突き合わせることとなる。 月夜に抱かれたその身体は顔からへそのところまで白く透き通っているようにも見えた。 それにたわわに成長し曝け出された乳房がことりの顔を見ようとするとどうしても視界の中に入ってしまう。 それに不覚にも、月夜に魅せられたことでそれを美しいとも感じてしまう。 普段は感じたことの無い幼馴染に対する印象が1人の女性へと変貌しようとしていた。
「ほぉ~ら、蒼くん見てみてよぉ~私の胸♪ こんなに大きくなったんだよ? 触ってみて確かめてみて♡」
ことりは腑抜けた俺の腕を手にすると、そのまま自分の胸に向かわせ始める。 さすがの俺もそれだけはマズイと感知すると、眠りについていた神経を呼び醒まして無理にその手から逃れる。
「もぉ~、蒼くんの意気地なし♪ けど、そんな恥ずかしがり屋なところもことりは大好きだよ♡」
さらに顔を赤く染めて訳の分からない嬉しさを露わにしてみせる。 すべては俺のためだというのだが、そこに俺のことなど微塵たりとも考えてなどいないようにも思える。
俺の目に映ることりの瞳。 絵具で塗り潰されたかのように思える濁った瞳。 俺がいつも見ていたことりの瞳の色とはまったくの別物だ。 その瞳は一体何を見ているのか………ハッキリと言えるところはあるが、そうでもないところもある。
つまり、俺が思っているモノとことりが思っているモノは合致してはいるが、それがどういう実態であるかは対義的なのだろうと感じている。
月夜が傾き始め、部屋全体に白い光が差し込む――――――
ことりが来始めた時よりも部屋が明るくなり始めると、ことりの姿を改めて確認してしまう。
すると、どうしたことだろうか。 それまで目に入ることの無かった傷痕のようなモノが無数に見つかったではないか! それも小さいモノだけではなく、大きいモノも見受けられたのだから余計に驚いてしまう。 特に胸元が酷すぎた。 強く何かに圧迫されていたのだろうか、紫色に近い痕が痛ましさを強調させていた。
「ことり! その痕は一体どうしたって言うんだ?!」
「…………ふふっ、気が付いちゃったね…………これはね、絵里ちゃんに付けられた傷………朝に付けられてまだ元に戻らないでいるの…………」
「ちょっと、よく見せろ!!」
その痕を見た時から体中から湧き上がる何かが生じ始めていた。 それが全身に行き渡ると衰えていた力が戻りおう始める。 腕に力を込めると、横になった敷布団に手を置いて上半身を起こし始める。 俺の身体に跨っていたことりは「キャッ?!」と小さな声で驚きながら後ろに下がり出し、俺と同じ布団の上へと座り込むようになる。
そして、俺はことりの身体についた無数の傷跡を近くで見始める。 それを間近で見ると、あまりにも痛ましく思えて心苦しくなる。 こんなに傷付いたことりを見たのは初めてだ。 俺が見ていたことりはいつだって綺麗な姿だった。 シルクのように透き通るような乳白色の肌は、男女問わず誰をも魅了する美しさを持っていた。 それは友達である穂乃果たちやμ’sからも称賛されるくらいのモノだった。
かく言う俺もまた、ことりのこの美しさを認めていたし、雑誌とかで見られるモデルよりも上をいくモノだと感じてしまうほどで、影ながらにも称賛していた。
それだのに、どうしてこんな姿になってしまったのだろうか…………
ことりの傷痕すべてに手を触れながらその痛みと深さを感じとる。 なぞるようにその痕に触れると、甘い吐息を発して俺の集中を削ぐような仕草を見せる。 けれど、時折見せるしかめる表情がその痛みを伝えてくる。
「大丈夫だよ、蒼くん。 ことりをこんな目にさせた絵里ちゃんは必ず排除しちゃうからね♪」
ことりに触れる手を握り締めながら、表面的に笑っている顔をこちらに見せる。 坦々と言い放つその言葉に感情があるとは思えなかった。
「やめろ、ことり………これ以上、傷付けるんじゃない………」
「ダメだよ。 あんなのがいると蒼くんを酷い目に合わせるに決まっているんだから、今の内に片付けておかないといけないんだよ!」
「いや、そうじゃない………俺が心配しているのは絵里のことじゃない………ことり、お前のことだ」
「えっ、ことりのこと………?」
俺からの思いもよらなかったであろう言葉を耳にすると、ことりは抜けたような表情を見せた。
「お前は絵里のことを甘く見過ぎている。 絵里はことりが想像している以上の存在だ。 いずれ、足元をすくわれてしまうぞ!」
「ううん、大丈夫だよ。 前は失敗しちゃったけど、今回は穂乃果ちゃんと海未ちゃんもいるんだから問題ないよ」
「だとしても絶対にやるんじゃない!! 絵里が本気になれば、お前達3人が掛かって行っても勝ち目がないヤツなんだぞ! それに、下手すりゃことりだって…………!!」
感極まり出す心が強く叫ぶと、いつの間にか俺は滑らかな髪をまとった頭を抱え込むようにことりを抱きしめていた。 髪についた香りが鼻を通り身体の自由を奪おうとするが、体内から分泌される何かがそれを打ち消して主導権を渡さなかった。
何かが大きく変わってしまったことり。 だが、この小さくて華奢な体を抱きしめていると、ただの1人の女の子であることを実感する。 そんなことりがこれ以上傷付くような姿を俺は見たくなかったのだ。
ましてや、もうμ’s同士で争うところを見たくもないのだ。
「…………蒼くんはやさしいね…………」
今にも消えて無くなってしまいそうな声が耳を通り抜ける。 すると、ことりは俺の体を突き放し、その勢いで俺の体はベッドの上に倒れ込む。 また起き上がろうと力を込めるのだが、どうも言うことを聞かない。 どうやら耐性の許容範囲を超えてしまいようやく全身に痺れが回ってきたようだ。 視界すらもハッキリしないときた。
ことりは倒れ込む俺をただ見つめると、脱ぎ捨てた服を手にしてそれを着直し始める。 整い終えると、また顔を俺の鼻先にまで近付けさせては、やんわりとした笑顔を見せた。
「ことり、もう行くね………」
全身をやさしく包み込むような言葉が俺にかかる。 ことりが今日見せた中でもとびっきりと言っても過言ではないやさしいその顔は、まるで何かを悟っているかのようにも捉えることが出来るのだが、それを言葉にすることはなかった。
「ま、待て………! ことり、行くんじゃない………!!」
今ある力を振り絞って出した言葉はことりに届いた。 しかし、ことりはそれに応えようとはしなかった。
「戻ってこい……! 俺と……ことりがいるべきあの場所に………!!」
震えながらも俺はことりに手を伸ばした。 すると、ようやくことりは反応を示すと、俺の手を自分の頬に当て始める。
柔らかく、温かみのある頬――――――
手を伝って感じたその感触が、まるでもう触れることが出来ないような焦燥感を俺に与えた。 全身に渡って感じ始める悪寒が何かを暗示させているかのように思えた。
すると、ことりは―――――――
「もう………戻れないよ…………ことりは………もう戻れないところまで来ちゃったから…………」
一言だけ言うと、触れていた手をそっと置いてこの場を立ち去り始める。 そして、窓際に差し掛かったところで振り返り――――――
「迎えに来るからね―――――――」
と言い残してこの部屋から去った。
「待て……!」と言って彼女の行動を止めに出たモノの、少し体を動かしたほんのわずか後に、視界が真っ暗になった。 意識が遠くなり始めていく最中、俺は必死にことりのことだけを口にして、深みへと沈んで行った。
―
――
―――
――――
朝――――――
陽が昇る始める頃に目が覚めた俺は、瞬時に体を起こして辺りを見回し、そして、窓から外を覗きこむ。
けれど、そこにことりの姿は見当たらなかった。
当然のことだ、あれから何時間も過ぎたのだから……………
そして、居ても立ってもいられなくなった俺は、着替え出してはすぐに家を飛び出した。 向かうは、アイツの家―――――行動を起こす前に止めなくてはいけなかった―――――!
ことりの家を通ると、この時間帯では不自然な明かりが灯っているのを目にした。 チャイムを鳴らして中に誰がいるのかを確認するのだが、出てきたのはことりの母親であるいずみさんだった。
ホッと落ち着きを感じさせる滑らかな声が、一時的な焦りを緩和させてくれた。
けれど、それも束の間、いずみさんの口から「ことりは大分前に出かけていった」との言葉を受けたのだ。
焦りが高まりだす―――――――
俺は駆け出すと、ことりが行きそうな場所を1つ1つ見て回った。
思い出の公園やことりがバイトしているあの店、その他にも所縁あるところを回って行ったのだが、影も形もないのだ。
俺は駆けた―――――
止まることなくただひたすらに走り続けたのだ。 イヤな予感しかしなかった。 ことりの身に何かあったのではないかと感じる何かが俺の中で渦巻き始めていた。 間に合わなくなる前に早く見つけたいのだ!
そして、最後に向かったのは――――――――――
音ノ木坂学院――――――
正門が閉まったままで簡単には中に入ることが出来なかったが、ここまで来て躊躇することなどなかった俺は脚部に力を込めて、俺よりもはるかに高い塀を強化された跳躍で飛び越える。
学院内に入った俺は、空いている扉が無いかを探す。
そしたら、まるで俺が来るのを待っていたかのように、1つだけ扉が開いているが見えた。
やはり来ていたのか、と思いつつ校舎内に入っては、そこから教室を1つ1つ見て回る。 どこもかしこも机とイスが整った状態で置かれてあり、異常など見受けられなかった。
だが、少し離れた空き教室に来ると、異様な感じを実感した。
ドロッとしたおぞましい感じ―――――胃を締め付けてしまうほどの何かをこの中から感じ取ったのだ。
意を決して中に入ると、そこには誰もいない―――――――――――――
だが―――――――
そのあまりにも、めちゃくちゃに荒らされた教室内を見て言葉を失う。
机やイスは四方八方に飛ばされ、その一部は部分破損しているようにも見えた。 上から吊り下がっていただろう蛍光灯はすべて落下して、ガラスが散在していた。
人が居座れるような空間ではなかったのだ―――――――
辺りを見回していると、教室の真ん中が異様なものを見つける。
恐る恐る近付いてみると、そこには無雑作に散らばった髪の毛が………!
それを目にして焦りが頂点に達しようとしていた。
「こと………り…………?」
滑らかで透き通るようなその長い髪の毛を俺は一瞬にして、ことりのモノだと確信するのだった。 それがどうしてなのか分からなかった。 だが、その髪が俺にそう訴えかけてきているみたいで胸を締め付けてくるのだ。
何本もの……何十本もの髪の毛を手にすると、俺は震えながらに立ち上がり悲痛な声で、ことりの名前を叫んだのだった―――――――――――
(次回へ続く)
ドウモ、うp主です。
最後の方でことりの身に一体何があったのか?
それは次回の話で…………