《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち――― 作:雷電p
フォルダー4-1
「けほっ―――――――――――けほっ――――――――――――」
ううぅ………のどの調子がなんだかおかしいような気がします…………
風邪でしょうか………? 昨晩は異常なほどに寒くなりましたからね………それに付け加えるかの如く、今日もどんよりとした天候のようで、いつでも雨がたくさん降ってきそうな雰囲気でなんだか困っちゃいますね………。
しかし、ここに来てからもう何日も過ぎてしまっているのですか………割と速いモノなのですね。 初めは、どうしたらよいのだろうかと悩みっぱなしで、部屋中をうろうろ彷徨い続けて時間を浪費していたことを思い出すと、あの時よりも1日が短く感じてしまうのです。
慣れ……ですかねぇ………? いくらやることが乏しいからと言って、このような感覚を身体に沁み込ませては、ここから出た後の作業がうまくいかないのではないかと言う疑念が生じちゃいます。
それは困りますぅ~~~~!!!!……………けど、それ以前にここから出ることをしなくちゃいけないです………
しかし、そのためには海未ちゃんを説得する必要があるのですが………それに応じてくれるようには思えないですねぇ…………
前途多難ですねぇ………………
ガタンッ―――――――――――!!!
「ッ――――――――?!」
今、この部屋の扉に何か強い衝撃が加えられたようです!!! な、な、なんですかねぇ………?? こんな朝早くに煩くしてくるのは一体……………?!
そう感じていますと、扉の鍵が開く音がしまして、ゆっくりと少し重量感のある扉が開かれるわけです。
すると、そこから顔を出したのは――――――――
全身にすり切ったような傷と汚れでいっぱいの海未ちゃんの姿でした――――――
「ッ――――――――――?!! う、海未ちゃん!!?!」
私はすぐに彼女に駆け寄りますと、彼女はこの部屋に入ってくると同時に倒れかかってきたのです! 私は何とかその身体を受け止めることが出来たのですが、海未ちゃんを抱きしめて近くに居るからこそ分かるいくつもの傷と荒れた息遣い………一体何があったというのでしょうか…………?!
「…………うぁぁ…………よ………よう…………こ…………………」
「う、海未ちゃん!! しっかりして下さい!!!」
明朝から理解に苦しむこの状況に、私の頭は追い付くのに必死になっています。
―
――
―――
――――
「――――――――っと、これでいいでしょうかね」
私は傷付いた海未ちゃんを自分が寝ている布団の上に寝かせ、そこで身体を拭いたり、傷口を押さえたりするなどの行為を行っていました。 ここに水道が通っていて本当に良かったです。 これが無ければ、海未ちゃんの身体の汚れなどを落とすことができませんでしたかね。
しかし、これは一体どういうことなのでしょうか…………?
私が見るに、これは只事ではないように思えるのですが、何者かに襲われたのでしょうか? ですが、これでも海未ちゃんは武芸に秀でているのですよ? もし何者かに襲われたのだとしたらかなりの手練れではないでしょうか? 考えが交錯し始めてきました…………
「――――――うぅ―――――――うっ―――――――!!!」
「!! 海未ちゃん!! 分かりますか!!?」
「――――うっ―――――――よ、ようこ―――――――――?」
「はい、そうですよ! 意識が戻ってきて良かったです!! しかし、一体何があったというのですか? あなたのような人を襲うような輩と言うのは一体…………」
私が今疑問に思っていることを率直に言ってみますと、それは衝撃的な事実を知ることとなりました。
「――――――――――穂乃果です」
「穂乃果ちゃん?!! 穂乃果ちゃんが何故?!」
私がそのことを聞きますと、海未ちゃんは下唇を噛み締めて、悔しそうな表情を見せてくるのです。 目元からはじんわりと涙が溢れ出てきたようで、彼女の瞳を潤わせて輝かせます。 しかし、それは悲嘆に暮れる表情でありました。
「穂乃果が急に………私のことを襲いかかってきたのです………! 私は何度も説得を試みました……ですが、穂乃果には私の声など届いていませんでした…………それで………それで……………!!」
瞳から涙が零れ出てくるほどに、その悔しさが次第に声を殺していきます。 海未ちゃんの悲しそうなその表情には、普段から見せないからこそ伝わる重みと言うモノを感じさせられました。 これほどまでに、海未ちゃんが悲しむだなんて……………
「そう言えば………ことりちゃんは? ことりちゃんはどうしたのですか……? ことりちゃんと一緒じゃないのですか………?」
「ことりはいません…………ことりは…………私たちを欺いたのです…………」
「欺いた?! まさかそんな!!? あのことりちゃんがそんなことをするだなんて………」
「私も信じたくはありませんでした!!! しかし……話を聞いているうちに、それが本当のように思えて………それで私はッ…………!」
グッと噛み締めるかのように、その後の言葉を途切れさせました。
これは私の予想なのですが………多分、海未ちゃんはことりちゃんのことを拒絶したのかもしれません………真っ直ぐな性格故なのでしょう、曲がったことや忌み嫌うことをしてしまう相手に対して、潔く手切れにすることもありえなくもない話です。
それに………今の表情を見る限りでは、悔しいという気持ちと共に後悔の念すらも垣間見えている様子………自分ではそうしたくなかったのに、そうせざるを得なかったというわけですか………なんとも不器用な人なのでしょうか…………
私は手にしていた布で、顔を濡らしている涙を一筋一筋拭きとるようにしました。 今の私には、彼女にかけてあげられるような言葉は見つかりません………ですが、せめてこのくらいはと思い、このようにさせてもらっているわけです。
「となりますと、蒼一さんの件は一体どうなることなのでしょう…………? この感じでいきますと、海未ちゃんも含めた4人が蒼一さんに這い寄ろうとしているわけなのでしょう? それに………その内の誰かが危害を加えようと…………」
「…………はい…………???」
私が蒼一さんのことについて話しだすと、海未ちゃんは身体を一瞬だけ震わせますと、こちらの方に向かって顔を近づけてきました。
私はその顔を見て息が止まりそうになりました。
何せ、つい先ほどまで哀愁漂う哀れな表情だったのが、ふとした瞬間、狂人的な険しい表情を見せつけてくるのです! それに、瞳の色がおぞましいほどに濁りだしており、闇すら感じてしまいました。 それが何とも恐ろしかったことか………無意識ながらに見入ってしまった私は、それに飲み込まれそうになっていたのです。
心臓を鷲掴みされたかのような息苦しさと、恐怖が私に襲いかかってきたのです………!
これもすべて、海未ちゃんの身体から発せられているモノだというのでしょうか………?!
ギロリと鷹が獲物に対して睨めつけるかのように見続ける海未ちゃんは、私に向かって話しかけきました。
「………そうですね………確かに、蒼一の周りには汚らわしい蛆虫どもが湧いて出てきそうですね………早めに処理しておかなければならなくなってしまいますね………しかし、そんなことをしていては、蒼一と共に居られる時間が減ってしまうではないですか!
いけませんッ!!!私にとって蒼一との時間は1秒たりとも削ってはならないのです!!私が蒼一を護ってあげなくては……!!私でなければ蒼一を護ることなど出来ないのですから!!
……………ふふっ…………ふふふふふふふふふ…………」
「う、海未ちゃん………?!」
目を見開かせて語りかけてくるその様子は、正気とは思えません。 まるで、何かに取り憑かれたかのように淡々と話しだすのです。
そして、その視線を私から離し、天井を仰ぎ見て叫び出すのです!!
「待っていてくださいね、蒼一……私が……私があなたのすべてを護ってあげますからね!ですから何も心配などせずに、この私にすべてを捧げてください!!大丈夫です!!私ならあなたのすべてを護ることが出来ます、そうです!!!私でなければあなたを護ることなど出来ないのです!!たとえ、私の身体の一部が無くなろうとも、私はあなたを支えます!!構いません、あなたの命を護ることが出来るのであれば、本望です!!私は何だっていたします!!あなたがあの蛆虫どもを排除せよと命じるのでしたら私は喜んでこの刃で斬り伏せて見せましょう!!!
あはっ………!!
あはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」
「ッ―――――――――!!!」
狂っていますッ――――――!!!
頭のネジが1本取れてしまったとかそういうレベルではなく、精神そのモノが滅茶苦茶に壊れちゃっているかのようです!! 先程の哀愁も、後悔の念すら感じられません………ただ彼女の目に映るのは、彼のことだけ………それ以外のモノなんて、目にもとまらないのでしょうね…………
ですから、あのような言葉を口にすることが出来るのでしょうね………親友に対してあのようなことを強く言えてしまうのでしょう………………
「そうです………何を難しいことを考えるのですか………私が蒼一に逢いに行くよりも、蒼一が私のところに来させるようにすれば、すべてことがうまく運ぶではないですか………!!
ウフフフ………簡単な話ではないですか……………」
海未ちゃんの不気味な笑い声が部屋に響きますと、背筋がゾクゾクと震えあがって悪寒すら感じてしまいます。
それに何だか、雲行きが怪しくなってきたような気がしてなりません………
「………洋子、よかったですね………あと、もう少しすればここを出られるかもしれませんよ………」
「へっ?」
海未ちゃんは、目を細めニンマリとしたつくり笑いで私にそう言ってきました。
どういうことなのでしょうか? 急に、私をここから出すだなんて………一体何を考えて…………
「………まあ、
「ッ…………!!!」
彼女のその一言が、私の脳裏に1つの考えが思い浮かんできたのです!
まさか……海未ちゃん、あなたは……………!!
「………私を………餌にするつもりですか…………!」
私のその応答に、彼女はただ不気味に私に笑いかけてくるだけでした――――――
【監視番号:■■】
《監視カメラに強い衝撃、もしくは破壊されたために、データそのものがショートしてしまいました》
《復元、困難》
(次回へ続く)
どうも、うp主です。
New Folder No.4の始動です。
実質、このフォルダーが最後に向かうことになりそうです。
そして、更新が都合上滞ることになりそうなので、完結までには少し時間を下さい………