《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち―――   作:雷電p

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フォルダー4-13『高坂 穂乃果(後編)』

 

 穂乃果を無事に取り戻すことが出来た俺たちは、誰にも気付かれないまま自宅に戻る。 そしたら、家で待っていた2人に「また無茶しちゃって!!」と、こっぴどく叱られることに………

 

 その様子を明弘は、苦笑いしながら傍観していたようなのだが、後から話を聞いたところ明弘自身も同じように叱られたのだと言う。

 

 共に苦労させられるものだな………

 

 

 

 ちなみに、穂乃果は音ノ木坂を出る直前に気を失い、俺の背中に背負われながらこっちに戻り、今は無事に意識を取り戻して真姫の診断を受けているようだ。

 

 その際、俺と明弘は席を外され、それと自主的に席を外した希と凛を除いた女子だけがその場に残り、何かを話し合われたようなのだが、詳細などはわからなかった。

 ただ、その後に穂乃果と顔を合わせたら真っ赤な表情を見せて逃げられるわ、真姫たち4人はニヤニヤと笑みを浮かばせてくるわ、終いには洋子に、「蒼一さん……ファイト……です………!」と親指を立てながら意味深な言葉を吐くわと何とも言えない状況に陥ってしまっていたようだった…………

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 自宅に戻ってから数十分が経とうとしていた。

 これはちょっとした体調問題に発展するのには、ちょうどいい時間である。

 

 よく思い返してもらいたい。

 俺たちは、つい小1時間前にあの雨の中で、ずぶ濡れのままでいたのだということを………

 

 そう、問題とは言わずもがな、身体を冷やし過ぎて風邪をひいてしまわないかと言う恐れだ。 あと残された、ことりとエリチカを何とかしなければならないのだと言う時に、体調不良を訴えるだなんてことはあってはならないことだ。 一事が万事、早く解決せねばならないことなのだ。

 そのためには、早めにこのずぶ汚れた身体を温め、清潔を維持しなければならないのが健康の秘訣と言うものだ。 であるから、俺は今から風呂に入らなければならない――――――――

 

 

 

 

 

 はずだったんだけどなぁ――――――――

 

 

 

 

 

 さらに、ここで思いもよらない問題に直面してしまったのだ。 記憶を少し巻き戻してしまえば簡単なことだ。 俺が()()と一緒になってずぶ濡れになっていたのかと言うことを―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ♪ 蒼君と一緒にお風呂に入れるなんて久しぶりだね♪」

 

 

 

 すみません。 いま絶賛、理性がブッ飛んでしまいそうなんですが、一体どうしたらいいのだ!?

 

 

 ここに至ったのには、ちゃんとした経緯が多分存在する―――――

 

 まず、俺たちの姿を見た真姫とにこが口々に、「風呂に入りなさいっ!!」と言ってきたのだ。 まあ、それは当たり前なことなのかもしれない。 医者を目指す真姫と家庭的な面倒見の良いにこが、そう言うのも致し方ないと言うものだ。 だから俺は、風呂場に行っては汚い服をすべて脱ぎ棄て身体を清潔にしようとしたのだ。

 

 

 ここまでは、いいのだ。 問題はここからだ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おじゃましま~す………♪」

 

 

「っ―――――?!!」

 

 

 なんと、俺が入って1分も経たないうちに、穂乃果がこっちに入ってきたではないか!!?

 

 Why?! 何故?! そんなバカな!! 俺が先に入っているんだぞ!! 俺、男だぞ!! そんなこと赦されるはずがないだろう!! と頭の中では、何度もこれらの言葉が回り回っていくのだが、到底結論など出るはずもないのだ。

 

 

 

「な、なななななっ――――――!!!?」

 

 

 驚きと言う言葉では、決して済まされないぞ――――――!

 何せ今の穂乃果は、布一枚すら身にまとわない、まさに、生まれたての赤子のような姿で俺の目の前に立っているのだ! 赤子だったら、なんて良かったことだろうか……なにせ、俺の目に映っているのは、女性として備えられた美しくしなやかなラインとちょうど良いくらいに肉付けされたやわらかなラインの相互が入り混じった見事なプロポーションを見せつける、幼馴染(穂乃果)なのだから!

 

 湯気があまり立ち籠っていないこの浴室において、穂乃果のすべてが俺の前に晒されたというわけなのだ!!

 

 

 

「ちょっ………ちょっとぉ~………そんなにジロジロ見られると、恥ずかしいよぉ~……/////////」

 

 

 今更になって、腕で胸元と女性の秘所を隠す仕草をしては、顔をほんのりと紅く染めだす。 そして、ちょっと恥ずかしげな表情でこちらを見つめてくるのだが、いや、恥ずかしいのはこっちの方なんですが……とこちらがそう言っても、苦し紛れな言葉にでしかならないのだ。

 

 

 

 コンコンッ――――――――

 

 

 

 

「ッ――――――――――!!」

 

 

 風呂場の扉を叩く音が聞こえてきたため、背筋が凍ってしまいそうな緊張感が先走る! 待てぇ! 今、穂乃果と一緒に入っていると言うことが、他のヤツにバレるだなんてことは絶対に避けたい! ここは、慎重な行動と冷静な判断が物を言うんだ。 焦らず、ただ落ち着いて行動を――――――――

 

 

 

 

 ガラッ――――――――

 

 

「ん? なぁに~?」

 

 

 このおバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 俺の考えを一瞬にして吹き飛ばしてしまう穂乃果の行動に、ただただ頭を痛ませる。 そうだった、穂乃果がいると言うことを忘れていた! 俺の中での不確定要素で、考えよりも先に行動してしまうヤツなんだってことを度忘れしていたぁぁぁぁぁ!!! 先に、抑えておくべきだったぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

 後悔先に立たず―――――もう、終わったと人生半ば諦めかけてしまいそうなそんな一時であった―――――――

 

 

 

 

 だが―――――――

 

 

「ほら、穂乃果。 身体洗うためにはタオルが必要でしょ? ちゃんと、()()()持って来ておいたから、しっかり身体を洗い合いなさいよ♪」

 

「うん、ありがとね、にこちゃん♪」

 

 

 

 えっ――――――――――?

 

 

 ちょっと待って。

 

 今、2枚分って言ってなかった―――――?

 身体を洗い合いなさいって言ってなかった―――――――?

 

 

 えっ――――――もしかして―――――――えっ――――――――??

 

 

 

 しかも、それだけじゃなかったんだ―――――――

 

 

 

「穂乃果、()()は私のを使いなさいよ。 あなたの服はかなり汚れていたし、着替えも持って来れそうもないから、ちょっと我慢してね」

 

「ありがとう、真姫ちゃん♪」

 

 

 

 俺の脳裏に浮かんだたった一つの結論。

 

…………うん…………イミワカンナイ……………

 

 

 つまり、あれか。 これって、もしかして周知の事実だったりするわけ? それって、すでに俺の人生終了のお知らせが来ちゃっているってことなのかなぁ??? 何それ、めっちゃ恥ずかしいのですが………

 

 

 

「それじゃあ、気を取り直して………よろしくね、蒼君♪」

 

 

「…………はぁ…………」

 

 

 呆れて何も言えなくなってしまうと、深い溜息しか口からもれなくなってしまった。

 

 

 

 今日も夜は長くなりそうだと、自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

「それじゃあ………ね。 背中とか……お願いね………♪」

 

「お、おう………」

 

 

 俺の前に、ちょこんと座ると、白い素肌をこちらに向けてくる。 見た目、とても滑らかそうな背中で、触り心地は極めて良質と評することが出来そうな美しさに、またしても心を騒がせてしまう。

 落ち着け、こうした背中の美しさと言うのは、過去にだって見たことはあるじゃないか。 ただ、それはすべてプールや海水浴などの水着を着ていた時の話であって、こうしたすべてを曝け出されたような姿を見たと言うカウントには入る…………ことはなさそうだな………

 

 

 少しばかり顔を熱くさせながら、渡されたタオルに石鹸を加えて泡だて始める。 そして、そのまま穂乃果の背中を洗おうと近付ける。

 

 心臓の鼓動が異常なまでに早くなってきている――――――こうしたことにまったく慣れていないためか、嫌な緊張感が湧きあがってくる。 今から穂乃果の背中を本当に洗うのか、という葛藤に駆られつつも固唾を呑んでタオルを肌に触れさせた。

 

 

 

「ひゃっ――――――――――!」

 

「っ―――――――!!? な、なんだっ―――――――!?」

 

 

 ちょんとタオルが触れただけだと思うのだが、穂乃果は驚きを混ぜたかわいい悲鳴を上げたので、思わず腕を引っ込めてしまう。 すると、穂乃果が―――――

 

 

「う、ううん………ちょっとだけ、驚いちゃっただけだよ………うん、大丈夫だよ。 あはは………」

 

 

―――――と苦笑いをしながら応えた。

 

 うん、と心に思いながら、跳ね上がりそうな心臓を抑えると、もう一度、穂乃果の背中を洗い始める。

 

 

「んっ……………」

 

 

 背骨の辺りを上下に動かし始めると、口から甘い吐息のような声が漏れ出てきていた。 最初は、特に気にしないようにしていたものの、あまりにも長くそうした声を漏らし続けるので、だんだんと変な気持ちになってくるのだ。

 いかんいかんと気持ちを切り替えようと心掛けるものの、穂乃果がとんでもない追加注文を言い放ってくるのだ。

 

 

 

 

 

「蒼君……背中だけじゃなくって………前も……やってちょうだい………/////////」

 

 

………冗談だろ?

 

 頭を抱えて悩んでしまいたくなるような事案に困惑してしまう。

 前をやるってことは、つまりアレだろ? この状態のまま、穂乃果と対面しながら洗うってさ、ちょっとした度胸試しだよね? 穂乃果は俺のことを試しているのかな………?

 

 状況をまったく理解することが出来ないまま、俺は沈黙をおいた。

 

 

 しかし、困惑する穂乃果は積極的な行動をとり始める!

 俺が動きを止めたことを察したのか、穂乃果は立ち上がって俺と向かい合うように座りなおしたのだ! いや、それだけじゃない……石鹸が付いた俺の手を掴んでは、それを穂乃果の左胸に押し当てたのだ!! おかげで俺の手には、手ごろな大きさと弾力のあるやわらかい感触とコリコリとした固い突起物の感触とが、近に伝わってくるのだ!!

 

 まさか、穂乃果がここまで積極的な行動に出ようとするだなんて思ってもみなかった。 いつもなら、恥ずかしいから出来ないと言って立ち去ろうとするものだと思っていたのだが、今回はそうでもないようだ。

 

 恥ずかしすぎて顔を真っ赤にしてまでも、穂乃果は俺と向き合おうとしてくる――――――その姿勢を少し考えてみると、何かが穂乃果のことを押し上げているのではないかと感じてしまう。

 

 

 すると、穂乃果は緊張と恥ずかしさが入り混じったような表情を見せながら、俺に聞いてきた。

 

 

「ねぇ……蒼君は、穂乃果のことをどう思っているの………?」

 

「えっ―――――? それは一体どういう意味だ―――――?」

 

 

 そう応えると、少し難しい表情をしてからゆっくりと話し始めた。

 

 

「あのね………さっき、真姫ちゃんたちから聞いちゃったの………蒼君がみんなにやったこととか、言ったこととか………全部、教えてもらっちゃったんだ………」

 

「ま、まさか………俺が真姫と同棲していることとかも含めて………?」

 

 

 聞いてみると、おもむろに首を縦に振って返事をしたので、頭を悩まされた。 それを気にすることなく、穂乃果は話を続けた。

 

 

「穂乃果ね、蒼君がみんなのことを大切な存在だって言ったのを聞いた時ね、ちょっと不安に感じちゃったの。 穂乃果は蒼君と長く一緒に過ごしてきたつもりだったけど、私は一度もそんなことを言われたことが無かったから…………だから、蒼君にとって穂乃果ってどんな存在なんだろうって……思っちゃったんだ………」

 

「穂乃果………」

 

「ごめんね、こんなことまでしちゃって………穂乃果はバカだから、こうやって直接、蒼君の口から聞いてみたかったの。 そうしないと、何だか落ち着いていられなくって…………」

 

 

 紅い表情に不安な気持ちを含ませた黒い影が忍び寄っていた。 それはとても悔しそうで、今にも泣き出してしまいそうで居た堪れなくなる。 この黒い影自体は今さっき現れ始めたものではない。 穂乃果が我を忘れて襲いかかって来た時にも、同様のモノが存在したはずだ。 その片鱗が小さいながらも穂乃果の心に突き刺さったままであったと言うことだ。

 

 

 俺の手から鼓動が強く感じる―――――――

 

 心臓をこれでもかと言わんがばかりに強く打ち立てているのは、単に目の前に俺がいると言うことの恥ずかしさからだろう。 しかし一方で、その大きく打ち立てる鼓動に隠れるように弱々しい音が脈打っていた。 この音こそ、穂乃果の根幹を揺るがそうとする患部だ。 取り除けなくてはならないモノなのだ。

 

 

 俺は自身に勇気を込め出す。

 逃げてはいけない―――――現実と向き合わなければならない。 俺自身が感じていることすべてを伝えてあげなければいけないのだと言うことを。

 

 この強い意志を抱くと、俺はうつむいて座り込む彼女の身体を抱き寄せ、俺の膝の上に乗せた。 ひゃっと驚きの声をあげながらお互いの身体を重ね合わせると、さらに顔を赤らめる。 熱も帯び始めてきそうになると、俺は穂乃果の頭を少し微笑みながら撫でた。

 

 

 

「穂乃果。 確かに、お前の言う通り、お前に対して何も言わなかった。 いや、お前に対してだけじゃない、みんなに対してもそうだ。 俺は………結論を言うのを恐れて、逃げていたんだ………何かが壊れてしまうだけじゃない、俺自身がそうしたことから距離を置いていたんだ」

 

 

 俺のわがままが今の彼女たちを生み出した――――――――

 

 

「けど、俺はもう逃げたくない。 俺は俺自身と向き合うため、お前達との気持ちに向き合わなくちゃいけないんだと、あらためて感じたんだ」

 

 

 元に戻ると言うなら、どんな犠牲をもいとわない――――――――

 

 

「それと、勘違いしないでもらいたい………俺は彼女たちにそう言い始めたのは、つい数日前からだ。 海未に関してなんて、今日言ったばかりなんだから………」

 

 

 幸せのカタチなんて分からない。 だがそれでも――――――――

 

 

「だから、心配しないでくれ………俺にとって穂乃果は、お前が考えている以上に、大切でかけがえの無い存在なんだということを………」

 

 

 目の前にある幸せを掴みとって見せるんだ―――――――――

 

 

「不甲斐無いかもしれないが、それが俺だ。 それでも構わないか………?」

 

 

 

 そう語り終えると、気が付いたらその眼から無数の涙が零れ出ているのを見てしまう。 穂乃果は必死にそれを拭い取ろうと懸命になるが、何度拭っても止まることなど無かった。

 俺は無意識に、涙で濡れるその身体をやさしく抱きしめていた。 また、俺の心が勝手に反応していたのだが、それは決して間違ったことではなかった。 俺もそれが正しいものだと感じていたからだ。

 

 

 徐々に、深く沈んでしまった俺の感性が顔を出し始めてきたようだった――――――

 

 

 

 すると―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゅっ――――――――――」

 

 

 穂乃果が接吻したのだ―――――――

 

 

 不意を突かれたその一瞬の出来事に、頭が真っ白になりそうだった。 ただ、唇に感じたやわらかくも優しい気持ちを汲み取ることが出来たのだ。

 

 仕掛けられた後の穂乃果と顔を合わせると、さっき以上に喜びを含ませた紅顔を見せていた。

 

 

 

「あっ――――! さきに、蒼君に『好き!』って言うの忘れてた―――――!」

 

 

 目を見開いて何を言うかと思えば、そんなことを……と、この甘ったるくなった雰囲気をブチ壊してしまう彼女のドジっ子ぷりに少々呆れてしまうものの、そんなところも魅力的なんだということに、あらためて実感させられてしまう。

 

 俺は今、戸惑い続けている彼女の顔に触れてこちらを向かせると、ジッと見つめながらその顔を見ていた。 「ふぇっ?! な、なに??」と鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をしているので、ちょっとだけ笑いを含ませつつ眺めた。

 

 

 

 そして、今の俺の気持ちを伝えるのだ―――――――――

 

 

 

 

 

 

「穂乃果――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺も穂乃果のことが好きだ――――――」

 

 

「ッ~~~~~~~~!!!!」

 

 

 追い風が吹き抜けたかのような鮮やかな空気が浴室を満たした。

 俺が穂乃果に伝える初めての告白――――――たった二言だけの単純な言葉が、いつもに増して重みを感じさせられることとなった。 この言葉を聞いた穂乃果は、口元を両手で押さえた。 目元も熱くうるわせこの一時を永遠と感じ続けていようとしているかのようだ。

 

 それは、俺も同じ気持ちだった。

 初めて抱いたこの気持ちとは、こういうものなのかと言う初々しさと甘酸っぱさを口に含ませつつ、この感じを抱き続けていた。

 

 

「蒼君……! うれしい……穂乃果、とっても嬉しいよ……!! 蒼君からやっとその言葉が聞けて……穂乃果……穂乃果は………もう、しあわせだよ!!」

 

 

 ふと、涙を浮かばせながら見せるその笑顔が、いつも以上に美しく見えた。 あまり気に求めていなかったその仕草が、今の俺に強く印象付けさせ、喜ばせる。 今、この時だけずっと眺めていたいと、そう思えるようになったのだ。

 

 

 

「ねえ……もう一度、キスしてもいい………?」

 

 

 そう言われると、一瞬ドキッとしてしまう。 さっき、俺を包み込んだその唇から言われると、動悸が激しくなる。 やはり、何だか自分でも変な感じになっているんだと言うことをわかり始めるも、それがまたうれしく感じてしまうのだ。

 

 

 だから、俺は躊躇することなく――――――――

 

 

 

「もう一度だけじゃなく………何度でも…………」

 

 

 その言葉を皮きりに、また互いの唇が触れ合う――――――

 

 

 

「んっ――――――ちゅっ―――――――――」

 

 

 

 小さな唇が俺の唇を吸いつける。

 大胆な穂乃果もこうした行為を行う時には、小心な構えとなって俺に受け止められる。 小動物のように実際よりも一回り小さく感じてしまいがちになるのはそのためなのだろう。 いつものように、好物をかぶり付くようではなく、大事に大事に味わうそんな仕草が俺の心を高まらせた。

 

 

「今度は俺からな」

 

 

 攻守を交代させ、今度は俺が穂乃果の唇を覆い被せた。

 

 

「んんっ―――――ちゅる――――――ちゅる――――――」

 

 

 顔を少し歪ませ始める穂乃果の口からいやらしい音が漏れ出る。 やわらかく瑞々しい感触と、ほんのりとした甘い味が高まる鼓動を抑えてくれる。 それでも、俺の鼓動はいつも以上に激しく打ち鳴らし、穂乃果もまた浴室に反響するほどの大音量で打ち鳴らすのだ。

 

 互いの恥ずかしさが頂点に達しようとしていた。

 唇を離した後の穂乃果は全身が火照って、とろんと脱力させていた。 甘く乱れた吐息を漏らしつつも、それでもまだ物足りなさをアピールするような上唇を舐める仕草を見せ、俺を誘う。

 

 

「ねぇ、蒼君………続きは………ね……?」

 

 

 俺を抑えていた理性も(たが)が外れたようで、その誘いに容易に乗ってしまう。

 

 まず、互いの身体を弄繰り回し合いながら洗い流した後、共に湯に浸かりながらもまた唇と身体を交じり合わせる。 湯の熱さで加減が分からなくなっていた俺たちは、これまでにないほどの激しい行為に及んだ。 お互いの間隔などまったく存在しない。 身体と身体が交じり合う中で及んだ行為は、しばらく続く。

 

 

 それは、互いの息が絶え絶えになるまで、気持ちを寄せ合い続けたのだ――――――

 

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 風呂から出た後も、俺たちの行為は止まらなかった――――――

 

 

 というより、穂乃果の抑えられていた何かが本当に外れてしまったようで、俺が止めると言いだしてもそれを止めることなどしなかったのだ。 さらに追い打ちをかけるように、風呂から出ると、家には誰の姿もなかったのだ。 どこに行ってしまったのか見渡していると、穂乃果がとろけた口調で言う。

 

 

「みんなねぇ~家に帰っちゃったんだぁ~♪ 穂乃果たちのことを気遣ってくれたんだよぉ~♪ だ・か・ら♡ 今日は、穂乃果と一緒にあつぅ~い夜をすごそ♡」

 

 

 まじかよ………と、この状況を諫めてくれるヤツが1人もいないということに脱力する。 そして、ようやく穂乃果たちだけでどんなことを話していたのかが理解できたようだ。 すべては仕組まれていたことなのだろう……言いだしたのは、多分真姫辺りだろうと言える。 そうでなければ、穂乃果にこうやって寝巻とかを貸してやることもしないのだから………

 

 

 

 

 

 床に就いた俺たちは、互いに見つめ合いだすと肌を触れ合わせた。 ゆっくりと穂乃果の華奢な身体を引き寄せると、両腕で包み込む。 ようやく、冷静を取り戻したらしく、すぐに暴れ出すようなことはしなくなった。

 

 すると、穂乃果は紅く染まった頬を見せながら、俺のことを見つめていた。 何も言わずに、ただ微笑みながら見てくるので、何かあるのか?と言いかけてしまう。 けど、その微笑んだ素顔に引き込まれ、何を言おうとしていたのか忘れてしまった。

 だが、そんな心配すらも吹き飛ばしてしまうこの表情に、俺は心を奪われてしまったのだ。

 

 

 

「ねぇ、蒼君………」

 

 

 猫のように小さな声で俺を呼ぶ。

 

 

「なんだい………?」

 

「穂乃果、絶対に叶えてあげるからね………蒼君の夢を必ず、実現させてあげるからね………!」

 

 

 

 

 

………反則的だ。

 

 

 この状況で、そんな嬉しいことを言われてしまうと、どうしても気持ちが一杯になってしまうじゃないか。 まったく、天然なのか、それとも策士なのか………

 

 どちらにせよ、穂乃果でよかったと心からそう思えるのだ。

 

 

「ありがとうな、穂乃果。 俺もお前たちを頂点に行かせるために全身全霊を持って闘っていくさ」

 

 

 これまでにないほどの穏やかな表情で、そう応えてやると、にこっと目を細めて喜び出す。

 

 そして思うのだ。

 穂乃果はこうでなくちゃダメなんだ。 他人を傷つけて不幸にさせるような女の子じゃなく、笑顔で幸せにさせてくれる女の子でなくちゃいけないんだと。 そのために、もう悲しませるようなことはしたくないと、誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

「蒼君」

 

 

 耳元でささやかれるほどの小さな声で呼ばれた。

 そして、今日一番の喜びに満ちあふれた表情を持って言ってくるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「だいすきだよ♡」

 

 

 

 

 計り知れることなど出来るはずも無い、愛の籠ったその言葉に心が満ち満ちた。

 

 

 

 

 

「俺もだ、穂乃果」

 

 

 

 そう応え、今日最後の口付けをするのだった――――――――

 

 

 

 あまく、ちょっぴり酸っぱいその味が、穂乃果の深い愛情を教えてくれた―――――――

 

 

 

 

 もう、手放したくない―――――――

 

 

 

 だから、取り戻すんだ―――――――

 

 

 

 俺が望む、未来を―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、今日だけは―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 穂乃果(俺の愛しの人)の愛におぼれさせてほしい――――――――

 

 

 

 

 

 脆く儚い俺からの願いだ―――――――

 

 

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うp主です。

今回は、有り得ないほどに内容が膨らんでしまいまして………こうして分割せざるを得ませんでした………


さて、次回は初っ端から急展開………
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