《完結》【蒼明記・外伝】カメラ越しに映る彼女たち―――   作:雷電p

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フォルダー4-21『絢瀬 絵里』

 妬ましいと思った―――――――

 

 

 

 私は昔からそう言う性格だった―――――――

 

 すぐに他人と比較しちゃって、自分に足りないモノを得ようと躍起になってしまう、そんな性格だったわ。 けど、私がいくら努力しようが、いくら重い負荷を自らに掛けようが関係なかった。 何故なら、私はそれを得ることが出来ないからだ――――――――

 

 

 努力し続ければ報われると思った。 けど、それは他人の上辺事で私がどう足掻いたって手に入れられるものばかりではなかった――――――

 

 私が手にしていたのは、“オマケ”だけ―――――――

 

 本当に欲しいと思うモノは、いつも私の手に触れることなく過ぎ去って行ってしまう。 それが、嫌で仕方なかったの――――――――

 

 

 

 

 そんな時、私の前に現れた彼が私に新しい世界を見せてくれた。 私から見て彼は、とてもいい加減で楽天的で、私とは正反対の性格の持ち主なんだと思っていた―――――――

 

 

 だけど、決定的に違っていた。 彼は私が欲しいと思うモノをすべてその手に収めていた。 それが何だか悔しくて、彼に対して対抗意識が芽生え始めていた。 あの人を越えたい、その一心で彼の後ろに侍り付くように、彼からあらゆるモノを得ようとしていた――――――

 

 

 そんな中、私にとって大きな転機となった出来事が起こった―――――――

 

 中学でのあの出来事だ――――――――

 

 私では、到底成し得ないことだろうと諦めかけていたあの時に、彼が颯爽と現れ、いとも簡単に成し遂げてしまった。 その様子を傍から見ていた私は、内心穏やかではなかった。 どうしてあなたには出来て、私には出来ないのだろうと、自分の不甲斐無さにただただ泣きたくなってくるのだ―――――――

 

 

 そんな酷く落ち込んでいた私に、あなたは励ましの声をかけてくれた。 それを聞いた瞬間、私の心が大きく揺れ動いたような気がしたの。 今まで感じたことの無い特別な気持ちが、私の中で生まれ始めたような気がしたの―――――――

 

 それは、あなたを見ているだけで胸が高まってしまう熱い気持ち――――――――

 

 

 

 そう、それこそ私が本当に欲しいと熱望したモノ――――あなたよ、蒼一――――――

 

 

 これほどまでに、何かを欲したのは初めてのことだった。 こんな気持ちをあなたに抱いたのも初めてのこと。 それが次第に、対抗することから寄り添うことへと変わったようだった。 あなたと残されたわずかな時間の中で、私はあなたと一緒にいたいと思った――――――

 

 そして、これからも――――――

 

 

 

 

 けれども、現実というのは、そんな生易しいものではなかった――――――

 

 あなたと離れてからの私は、自分には何も無いことを思い出してしまう――――――

 

 

 誰も支えてくれない――――――

 

 誰も私の前にいてくれない――――――

 

 私はどうしたらいいのよ――――――

 

 

 自問自答を繰り返していくなかで、私は何もなかった独りぼっちの自分に戻っていた。 そしていつしか、あなたのことを遠ざけていた――――――

 

 

 

 そんな時に、あなたは私の前に現れた。 以前と変わらないあの姿で――――――

 

 

 あなたの名前を聞いた時、あの日抱いた胸の高鳴りがよみがえってきた―――――――

 

 今すぐあなたに逢いたい――――――

 

 今すぐあなたと話したい――――――

 

 今すぐあなたの隣にいたいと切望した―――――――

 

 

 

 だけれども、私の置かれた状況がそれを許してはくれなかった。 状況が、立場が私を頑なな人格を生み出し、あなたをはね除けていた。 あなたをはね除けていく度に、私は何度も悔やみ続けた。 こんなはずじゃない、どうしてもっと素直になれないのだろうかと激しく嘆いていた―――――――

 

 そんな私のことをあなたは嫌っているものかと思ってた―――――――

 

 なのに……あなたは私が危険に陥った時に手を差し伸べ、私を引き揚げてくれた。 そんなあなたの心に触れて、私は素直になれた。 こんなに嬉しい気持ちになったのは久し振りだった。 親友といて、仲間といて、そしてあなたといて、私は変わっていったわ――――――

 

 こんな日々が続いたらいいのに………と思っていた―――――――

 

 

 

 

 

 しかし、そんな日々は長くは続かなかった―――――――

 

 

 μ'sに入って以降、仲間たちがあなたの周りに集まっているのを見ていて、胸がモヤモヤとし始めていた。 初めは、なんだろう? と首を傾げる程度のモノだったが、毎日その様子を見ていて次第に痛みが生じ始めてきたのだ。 その日々が積み重ねていくごとに、痛みは段々強くなっていき、終いには苦しくなるほどだった――――――

 

 そして、気付いてしまったの――――――――

 

 

 

 アナタが欲しい、と――――――――――

 

 

 

 そう思ったら、何が何でもアナタのことを手に入れたかった。 アナタが私のすべてになるものだと、そう切望したの。 そしたら、周りが急に暗くなり始めたように、視界が狭まっていき、アナタしか見えなくなっていた――――――

 

 周りは邪魔だ、私には必要ないとさえ感じるようになっていた。 それが間違っていることは分かっているつもりだった、でも、抑えられなかった―――――――

 

 アナタが誰かのモノになるのを見たくなかったから―――――――

 

 

 

 そんな時だった――――――――

 

 あの写真を見つけたのは――――――――

 

 

 

 それを見た瞬間、吐き気を催すような薄気味悪いモノが身体中を駆け回った―――――――

 

 

 ナニコレナニコレナニコレナニコレ?????

 

 

 私の目に映るその真実が受け止めきれずにいた―――――――

 

 私の――――私の蒼一が―――――――

 

 

 

 トラレチャッタ―――――――

 

 

 

 

 ガソリンに着火し一瞬にして燃え広がるような勢いで、私の中に憎悪が黒い煙を高らかに上げるように膨張していった――――――――

 

 

 邪魔だ―――――

 

 

 みんな邪魔だ!! 蒼一はアナタたちのモノじゃない、私のモノよ!!! どうして私の許可なく蒼一を奪おうとするの? どうして、私のいないところで泥棒のように盗んで行っちゃうの!? 汚いヤツらだわ、そんなヤツらなんか赦せないんだから!!!

 

 

 

 そうして思いついたのが、今回の一件――――――

 

 

 ことりに行動させて、私は何もしないまま周りが消えていく様子をただ見つめるはずだった。 実際、ことりはいい働きをしてくれたおかげで無駄なことをせずに済んでいた。 この手を汚すことなく、綺麗な手でアナタに触れることが出来るものだと信じていた―――――――

 

 

 でも、胸の痛みは晴れなかった―――――――

 

 

 

 

 けど、ことりが私の存在に気付き、その反動でことりに手を出した瞬間、私は穢れてしまった―――――――

 

 白磁のように美しかったこの手が、黒く塗り潰されるような色に変色し出し、そのまま、私の中に入り込んでいったのだった。 憎悪とは違った、強烈な欲望の数々が私の身体を隅々にまで支配していき、この意志までも完全に支配されてしまったのだった―――――――

 

 

 

 そして、気が付いた時には――――――――――

 

 

 萎れた花のような姿をしたことりが仰向けになって倒れていた―――――――

 

 

 

 これは……私がやったの? 信じられない光景だった。 さっきまで、私に盾突いていたことりが、見るも哀れな姿となって目の前に転がっていたのだから―――――――

 

 そしたら、私の口が勝手に動き、ことりに罵声を浴びさせていたのだ―――――――

 

 

 違う………これは、私の意思じゃない―――――――

 

 

 これは紛れもなく私がやったことだ。 けど、私がやったわけじゃないの。 でも、それを信じてもらえるはずもないと思った私は、逃げるようにあの場から立ち去ってしまった―――――――

 

 

 自分の部屋に戻った私は、ただ後悔するしかなかった。 私はこんなことをしたいとは思ってなかった。 最初だって、誰かを傷つけてまでも手に入れたいとは思っていなかった。 なのに、どうして傷つけてしまったのだろうと、何度も後悔した。 けれども、こんな私など赦してもらえるとは、到底思えなかったのだ―――――――

 

 

 

 

 

 そんな時、私の机の上にあった一枚の紙を目にした―――――――

 

 今のこの気持ちをどうしても何かに残しておきたかった。 私は無我夢中になって、その紙に書き綴った。 決して、わかってもらえないかもしれない………でも、これが本当の私の気持ちなのだと言うことを書き残したのだった―――――――

 

 

 

 しかし、そんな私の意思とは裏腹に、もう一つの意思が私の身体を支配して動き始める―――――――

 

 

 そして、私はとうとうアナタに手を出してしまった――――――

 

 アナタを捕まえ、私だけのモノにしようとクスリまでも服用させようとした。 私の身体は止まらなかった。 それがダメだと感じたら、すぐさま、アナタを惑わす害悪たちを消し去ろうと動いた――――――

 

 そして、簡単に私の思惑通りに捕まってくれた―――――――

 

 同時に、どうして捕まってしまったのよ、と心の奥底で叫んでいた――――――――

 

 

 私の身体が、2人を傷つけようとしている中、必死に止まるようにと叫んでいた。 私の身体がにこに手をかけようとしていた時は、泣き叫ぶような気持ちで止めようとしていた。 それでもなお、身体の自由は奪われたままで、2人が傷付いていく様子を見ているほかなかった―――――――

 

 

 

 そんな私を止めてくれたのは、にこだった―――――――

 

 にこは、苦しみ悶えながらも、もう1人の私に立ち向かっていた。 にこの確信を突いた言葉が、もう1人の私を押し殺し、本当の私をむき出しにさせてくれた。 でもそれは、もう1人の私が積み上げた重荷を背負うことに他ならなかった―――――――

 

 

 いいわけなど出来なかった。 いくら自分の意思じゃないからだと言っても、私自身がやってしまったことに変わりなかったからだ。 私は、あなたからの罰を何でも受ける覚悟でいた―――――――――

 

 

 

 

 

 なのに―――――――

 

 

 なのに、あなたは私にこんなにもやさしくしてくれるの………? どうして、こんな私のことを簡単に赦しちゃうのよ………? 私は………あなたに酷いことをしたのよ――――――?

 

 

 

 

 ごめんなさい………ごめんなさい―――――――

 

 

 擦り切れるような声で、溢れ出て止まらないこの気持ちをたくさん出していくのだった―――――――

 

 

 

 そしてまた、あなたの前で素直になりたい―――――――

 

 

 

 私の本当の気持ちを……今度はちゃんと―――――――

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 ホントは、気付いていた。

 

 エリチカが俺のことをどう思っていたのかということを。

 

 

 μ’sが全員揃った時に行ったあのライブの直後、エリチカがたった1人で俺のところにやってきたあの時に、わかっていたんだ。 アイツは、あそこで俺に伝えたかったのかもしれない。 けど、俺はそれを濁すように避けてしまった。 今思えば、そんな曖昧なことばかり言っていた俺自身が間違っていたのだ。この一連の出来事は、俺のわがままがそうさせてしまったものだと、彼女たちと向き合っていく中で気付かされていくのだった。

 

 

 ごめんよ………俺がこんなんだから……みんながみんなを傷つけてしまう………

 

 いっそ、自分で自分を壊したいくらいだ………

 

 

 こんな絶望を与えるようなことをさせてしまう自分が憎い。 もし、自分で自分を貫くことが出来るのであれば、今すぐにでも刺し貫いて投げ捨ててしまいたいものだ。 みんなの毒となるのならこの身を滅ぼしたい。

 

 

 けど、この起きてしまったことに終止符を打たなければならない。 それをしなければならないのは、俺だ。 俺がやらなければ………いけないんだ…………

 

 

 そして、必ず………お前達に取り返してやる………

 

 

 

 

 

 

 

 何気ない、みんなが笑いあっていられる……そんな日常ってヤツを…………

 

 

 

 

 

 

 

 

――

―――

――――

 

 

 

 その場で泣き崩れてしまったエリチカを立たせると、涙などで薄汚れてしまった顔を指で拭いとってみる。その様子を見て何か思ったのか、にこと真姫がやってきては、両方向からエリチカの顔を手にしていたハンカチで拭いてあげていた。

 すると、それが嬉しかったのか、エリチカはまたしても大きな声で泣き始めてしまう始末。 その様子を2人は口元を緩ませながら微笑んでその手を動かして、自分たちの仲間の顔を拭っていたのだった。

 

 

 その時の2人の目がやや潤んでいたように見えた――――――

 

 

 

 それからしばらく経った後、凛の連絡を受けてやってきた明弘と他のメンバーたちと合流を果たす。 当然、エリチカはみんなの前に姿を現し、深々と頭を下げて謝罪をした。 その様子を目にした彼女たちは、何か言いたそうな難しい表情を一旦は見せたものの、みんなは苦味の含んではいたが微笑んだ表情でエリチカを受け止めていた。

 

 そして、戻ってきてくれた仲間をあたたかく迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 その後、洋子とも連絡をとりつけ、現状における問題は何とか方が付いたことを報告。 電話越しから安堵の声を漏らしながらも、身体の方には十分気を付けてくださいね、との指摘を受けられる。

 

 それを聴いた時、まさか気が付いていたのか、と思い身体を震わせた。

 

 現状、俺の身体には、これまでにないほどの負担が強いられている。 それは、彼女たちを助けるために数々の負荷をかけ、自身のことを顧みることないままでいた。 そして、今回は“精神強化”という力も使ったために、心身ともに疲労が溜まっていた。

 

 だが、そんな様子を彼女たちに見せるわけにはいかない。 ただでさえ、今回の一件で精神的な苦痛を受けているはずなのに、そこに新たな負担をかけさせるにはいかなかったからだ。 俺は彼女たちの様子を見守ってからその場を立ち去り、自宅に戻ってリビングのソファーに意識を沈ませた。

 

 

「あと、もう少し……あと、もう少しなんだ………」と呟きながら、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

[ 宗方家・室内 ]

 

 

 

「――――――――――――――」

 

 

 

「――――――――――――――」

 

 

 

 

 

 ん………誰かの声がする………………

 

 

 

「―――――――いち―――――」

 

 

 

「――――そ――――ち――――」

 

 

 

 俺の名前………………? 一体誰が………………?

 

 

 薄らぼけた意識の中で、俺の名前が呼ばれたような気がすると、重い瞼をこじ開けるように開かせる。 すると、俺の目に映りだしたのは2種類の光る瞳。 宝石のように煌めいたその瞳に魅せられながら、俺は深い意識の淵から目覚めた。

 

 

 

 

「あら、ようやく御目覚めのようね、王子様♪」

 

 

 アメジストのような紫色の瞳をキリッとした目つきにして微笑む真姫は、俺と目が交わると開口一番に甘い言葉を口にする。 高校一年生でありながらも大人顔負けの魅惑的な美貌とこのセリフが、眠っていた俺の神経を研ぎ澄ませてくる。

 

 

「おはよう、真姫」と相槌を打つように反応すると、真姫は顔を近づけて俺の右頬を触れるように甘い口づけをする。 一瞬、何が起こったのか分からずに呆けた声をあげてしまうのだが、真姫はそんな様子を割と楽しんで見ていた。

 

 

 

「あー! 真姫ちゃんずるいわよ!! 1人だけ抜け駆けなんて、そんなの赦さないにこ!!」

 

 

 視線を真姫からやや左に向かわせてみると、今度はルビーのように燃える紅色の瞳で羨ましそうに見ていたにこが顔をのぞかせる。 真姫と比べても年上にもかかわらず、その類稀な気質であるその表情が、彼女の外見的、及び精神的年齢を幼くしている。

 

 やや嫉妬気味に頬を膨らませながらも、俺の目と交らせると、一瞬にして嫉妬する表情から甘えん坊な子供の表情へと一変させてしまう。

 

 

「もう、真姫ちゃんだけじゃなくって、あなたのにこにーにも挨拶してよね?」と、困った顔をして見せるのだが、そのわざとらしさが逆に愛らしく思えてしまう。 だからと言うわけではないが、ちゃんと「おはよう、にこ」とさっきと同じ感じで応えて見せた。

 

 すると、それが嬉しかったのだろうか、表情を緩ませて鼻で短く歌う。 そして今度は、にこが俺の左頬に目掛けて口づけをする。 指で突かれたような刺激が頬から伝わり、自然と顔を熱くさせてしまう。 やはりまだ、こうしたことには慣れておらず、恥ずかしい気持ちも相変わらず健在のようだった。

 

 

 2人からの熱い目覚ましの功もあり、沈んでいた意識もはっきりとしだすと、身体を起こして辺りを見渡す。 窓から見える風景は、すでに黒く包まれており、時計を見ても納得してしまう時間帯である。

 

 しかし、なぜ真姫たちがここにいるのだろうと言う疑問が起こる。 真姫の場合は、ここに荷物があるから仕方ないとして、にこの場合はここあちゃんたち妹たちが待っているはずなのに、ここにいてもいいのだろうかと心配になる。

 

 

「なあ、にこはここにいても平気なのか?」

 

「大丈夫よ、ちゃんとママには伝えてあるから心配いらないわよ♪」

 

「ママって………というか、どうしてにこがここにいるんだよ………」

 

「だってぇ~、真姫ちゃんが蒼一と一緒に暮らしているだなんて聞かされたら、何が何でも蒼一と一緒にいたくなっちゃうのが女の本能ってヤツよ!」

 

「女って……それじゃまるで、この世の女性たちが俺のことをそう思っているって聞こえてしまうのだが………」

 

「そこは安心して、蒼一のことを本当に好きなっているのは、私たちだけなんだから♡」

 

 

 それはそれで安心できない事案なのだが……と突っ込みを入れたくなるのだが、これでは水掛け論にしかならないために仕方なく口籠る。 また、その隣を見ると、にこの意見に感心しているのか、真姫が大きく頷きながらこちらを恍惚と見つめていた。

 

 

 

「ほ~ら、そんなところでいじけてないで、さっさと出なさいよ!」

 

 

 にこが俺の死角となっている場所に向かって声を掛けているのが見えた。 身体を少し斜めにして様子を伺うと、部屋の隅っこで膝を抱えて座り込んでいるのが1人そこにいた。

 

 ブロンドの髪が輝くその後ろ姿に、それが誰なのかを一瞬で見極める。

 

 いつまでも進展しようとしない様子に腹を立てたのか、にこと真姫は両脇を抱えて無理やり立たせ、嫌がる様子を振り払いながら俺の前に立たせた。 「あっ……」と俺と目を合わせると、頬をチークで塗ったように紅く染めだす。 モジモジと手を揉み合わせながら慌てふためいた様子を見せるので、少しクスッと笑いが口からこぼれてしまう。

 

 

「あっ! 今笑ったわね!」

 

「すまんすまん。 まさか、エリチカからそんな慌てた姿を見せられるとは思わなかったからさ、ついつい可愛く思ってしまったのさ」

 

「か、可愛………!?」

 

 

 すると、エリチカは顔全体を真っ赤に染め上げて熱くさせた。 あまりにも火照っているようで、頭から湯気が出てショートするのではないかと心配してしまうほどだった。

 

 

「あらあら、エリチカちゃんは可愛いと言われただけで、こんなに顔を赤くしちゃうのね~♪ うふふ、かわいいわね~♪」

 

「ふふ、絵里ったらこっちに関しては、まだまだお子様のようなのね♪」

 

「も、もう!! 2人ともからかわないでよ!!!」

 

 

 そんなエリチカの様子を見ていた2人はからかい始める。 エリチカはそれに怒りはするものの、決して本気ではなさそうだ。 アイツは分かっている、分かっているからこそ、あのように表情を緩ませながら2人と接しているのだ。

 

 もう傷つけるようなことはしたくない、そんな気持ちがアイツらの中で生まれているのだろうと思いつつ、3人の様子を頬笑みながら眺めていた。

 

 

 

 

「それじゃあ、絵里には罰を受けてもらわないとね♪」

 

「「えっ??」」

 

 

 真姫のその言葉を聞いて、何のことやらと疑問の声を漏らす俺とエリチカ。 すると、にこと真姫が2人してニヤリと悪い笑みを浮かばせると、エリチカの両隣に近付いた。

 

 

 

 ガシッ――――――

 

 

 

「えっ???」

 

 

 そして、エリチカの腕に自分達の腕を通して組んでみせたのだ。 一体何をしているのだ? と思いつつ唖然としながら俺たちは、事の成り行きを見つめていたのだが、エリチカは自分が動けなくなってしまったことにようやく気がついたらしく身体を動かし始めた。

 

 

「ちょっと?! 何をするのよ!??」

 

「見ての通り、絵里を捕まえているのよ?」

 

「いや、そう言うことじゃなくって、どうしてこうなっているのかって聞いているのよ!!」

 

「それは……今から蒼一にエリチカちゃんを弄ってもらうためにこ♪」

 

「はぁ!?」

 

 

 そんなこと聞いちゃいないぞ、にこ! どうして俺がそんなことをしなくちゃいけないんだ!?

 心の中では焦燥感にかられるままに咆哮して見せるのだが、そんなことより目の前にいるエリチカが俺に向かってうるんだ瞳で今にも泣き出しそうな顔を見せるので、それどころじゃないのだ!

 

 

「にこ………やめてやれ。 これじゃあ、エリチカがかわいそうじゃないか………」

 

「何言ってんのよ、これは絵里のためにやっているのよ」

 

「なに?」

 

 

 にこのその言葉に思わず首をかしげてしまう。 この状態が果してエリチカのためだとでも言うのだろうか? にこと真姫、そして、エリチカのその真意が分からなかった。

 

 

 

「蒼一。 絵里はね、このままあなたの前から消えようとしたのよ。 仮にもさっきまで私に手をかけようとしていたのに、たった1人の男に立ち向かう勇気さえ見せようとしなかった。 私にはそれが情けなく感じてしまったのよ。 自分の気持ちを素直に伝えようとしないことにイライラするのよ。 だから、こうしてあげているのよ」

 

 

 眉間にしわを寄せて、怪訝そうにエリチカのことを話すにこ。 それを聞くエリチカ本人は、首を垂れるように下にうつむいて顔を上げようとはしない――――――いや、上げられるはずなんかないのだ。

 

 エリチカの心の奥底を抉り出し、隠していたその痴態を晒されるようなことを誰が喜ぶだろうか? まず、俺は喜ばないさ。 自分の汚い部分を包み隠すこと無く、他人によって見せびらかせられるほどの屈辱を受けるなど、考えられんものだ。 例え、それがエリチカの本心でなかったとしてもだ、俺はそういうやり方で強要させることは好きじゃない。

 

 

 一旦、気持ちを落ち着けるよう一呼吸を吐く。

 

 

「にこ……真姫………放してやれ」

 

「何言ってるのよ! こうしないと、また逃げ出しちゃうかもしれないのよ!?」

 

「いいから放してやれ。 それに、エリチカは逃げたりなんかしないさ……」

 

 

 そう言い放つと、2人は何も言わずにエリチカから手を離す。 自由となったその身体は、今にも倒れかかりそうで覚束ない様子だったが、辛うじて立ってはいる。 それでもまだうつむいた状態にあった彼女の肩に手を置いた。

 

 

「エリチカ。 俺にはお前が今どんな気持ちでこの場に立っているかなんて分からない。 だが、それなりの気持ちを持って臨んでいるんだってことはよく分かる。

 俺なんか逃げてばっかさ。 みんなの気持ちに気が付いてはいたが、それを見て見ぬふりをして避け続けていた。 お前に対してだってそうだ。 あの時の俺は応えることが出来なかった………俺自身、覚悟が出来ていなかったからかもしれない。

 

 けど、今は違う。 ようやく俺は覚悟を決めることが出来た………お前たちを必ず幸せにして見せると誓ったんだ。 そのためなら、俺がどんなことになろうともお前たちを助けようと思っている。

 

 だから、エリチカのその想いを俺は受けとめる。 周りから何と言われようが関係ない。 これは俺とお前とに与えられた権利なのだから、それに口出すことはできないんだよ……」

 

 

 そう言ってから、にこたちの方をちらりと見ると、申し訳なさそうな表情で俺と顔を合わせようとはしなかった。

 

 

 

 

「……………い……わよ…………」

 

「えっ?」

 

「………そんな権利………私になんか………あるわけないじゃない………」

 

 

 すると、うつむいていたその顔を上げると、ぐずった表情を見せる彼女が語りだしたのだ。

 

 

「私はあなたを傷つけた………あなたが止めろと言ってからもずっとあなたのことを傷つけた………そんな私にあなたのことを愛する権利なんてあるはず無いのよ!!!」

 

 

 悲嘆の叫びを上げながらエリチカはその場にしゃがみ込む。 うずくまるって声を上げて泣きだす姿は、とても見ていられない。 悲しい気持ちがこっちにまで伝わってくるからだ。

 

 

 

 そんな彼女を慰めようとするのだが――――――

 

 

 

 

 

 

「はぁ……絵里ってホントバカなのね」

 

「………えっ?」

 

「ホンット、こう言う時に限って頭が働かないにこね。 ウチのポンコツさんは」

 

「ぽ、ポンコツ……?!」

 

 

 そこに、真姫とにこが一緒にしゃがみ込み、うずくまるエリチカの背中に触れながら話しだす。 この唐突なことに目を丸くして驚くエリチカ。 すると、にこがさっきとは打って変わって優しげな声で話しかけていた。

 

 

「いい、絵里? あなたが蒼一のことを愛する権利がないだなんて、どこの本にも書いてないのよ。 大体、蒼一を愛してあげることにも良いも悪いもないのよ。 それを決めるか何て私たち次第なんだからね。 それが“愛する”ってことなのよ!」

 

「それに、私たちだって蒼一に対してもみんなに対しても酷いことをしたわ。 そして、今の絵里のように後悔してしまう気持ちでいっぱいになっていた時もあったわ。 けど、そんな私たちを受け入れてくれたのが、蒼一よ。 私たちのしたことを赦してくれるだけじゃなくって、愛してくれるのよ。 こんな最高の彼氏は世界中どこを探したって存在しないんだから♪」

 

 

 にこの言葉に付け加えるように、真姫が話し始めると、エリチカの様子が段々変化しているように見えた。 にこたちから俺自身のことを語ってもらうと、少しムズ痒い部分もあるが、2人の声が俺に対する信頼の籠った落ち着いた声で話をするので、悪い気分ではなかった。 むしろ、そう言ってもらえて嬉しい気持ちになってくるのだ。

 

 

「「それで絵里。 あなたはどうしたいわけ??」」

 

 

 2人の揃った声がエリチカに向けられる。 当の本人は、2人の穏やかな表情を見てから俺の方に顔を向き直した。 じっと見つめていく中、希望などを見出せずにあったその瞳に段々と輝きが取り戻っていくと、彼女の中で何かが決まり始めているのだと言うことに気が付く。

 

 胸の高鳴りが強くなっているからなのか、エリチカは胸元に手を置いて自分を落ち着かせようとした。 それを見ていて、逆にこちらも胸が高鳴り始めてくる。 この鼓動が聞こえてしまうのではないだろうかと心配さえしてくるのだ。

 

 

 

 彼女の熱い視線が俺と交差する。

 

 

 決意の籠った瞳が向けられると、そろそろかと身構えてしまう。 こっちだって心の準備と言うモノは必要だ。 何せ、彼女たちの真剣な言葉が出てくるのだから緊張しないはずが無いのだ。

 

 

 そして――――――

 

 

 

 

「私は――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蒼一のことが好き―――――――!

 

 

 好きで好きでたまらないし、他の誰よりもあなたのことを愛しているのよ――――――!!」

 

 

 彼女の熱意が籠る真剣な言葉が、真っ直ぐに伸びる針のように俺の心に突き刺さった。

 

 それは決して強い声で語られたものではない。 けれど、俺の耳には強くハッキリとした声となって通り抜けていったのだ。 それほどにまで彼女のその真剣さであったり、心に直接伝わってくる感情などが俺の心に入ってくるのだ。

 

 彼女の気持ちは当の前から知っていた。 それでも、こうして互いに向かい合い、鼓動を感じ合いながら受けるその気持ちは何ものにも変えられない熱い思いだった。

 

 俺は彼女のその気持ちを胸に収めると、彼女のやわらかい頬に手を伸ばす。

 今度は俺が伝えなければならないのだ、という気持ちを持って彼女と向かい合う。 アクアマリンのような透明な瞳から、俺を思う気持ちが水のように溢れ出てきているようだ。 そして俺は、その水を汲み取り、最後の一滴までも飲み干すような気持ちで彼女を受け止めるのだ。

 

 それが、俺がエリチカにしてあげられることなのだから――――――

 

 

 

 

 

 

「エリチカ、俺もお前のことが好きだ。 そういう決めたことは絶対にやり通そうとする、その真っ直ぐに突き進んで行こうとするその純粋なお前が好きだ。 こんな俺だが、愛し続けてくれるかい?」

 

 

 清々しくとても美しい空気が俺たちの間で生まれる。

 その空気に触れているだけで、エリチカが今どんな気持ちでいるのか、何を思っているのかが良く分かるような気がした。 それは逆も同じかもしれない。 エリチカも今の俺のこの気持ちを感じているのだろう。 故に、彼女は熱い涙をポロポロと流しているのだ。

 

 

「えぇ――――! 私は、あなたのことを――――蒼一のことを愛し続けるわ――――!!」

 

 

 俺の気持ちを知ったことがとても嬉しかったのだろう、エリチカは涙で顔を汚しながらも実に晴れやかな気持ちで俺に応えるのだ。 俺もまた、愛してくれると言ってくれたエリチカのことが、より一層愛おしく思い始め、その姿をジッと見つめ続けたいとさえ思ってしまうのだった。

 

 

 

「ねぇ……蒼一………」

 

 

 切ない瞳を見せながら、俺に何かを求めようしているその声に心が揺れ動く。 顔を前にと突き出そうとするその様子から、絵里が今何を求めているのかが良く分かる。

 

 言葉で交わしたこの気持ちを、今度は直接エリチカの中にへと届けたい、そう思えるようになった。

 

 

「エリチカ………」

 

 

 頬に触れる手をそのまま後頭部の方にまで伸ばし、彼女を抱き寄せようとする。 顔と顔との間が無くなってしまうほどに近付くと、お互いに顔を真っ赤に染めて、鼓動を強く打ち鳴らす。 彼女を引き寄せる手とは別の手が彼女の手に触れると、磁石がお互いに強くくっ付きあうように、互いの手が交じり合い握り合った。

 

 

 そして―――――――――

 

 

 

 

 

 

『んっ―――――――――』

 

 

 

 互いの唇が重なり合う。

 ミントのような透き通る味が口いっぱいに広がりだす。

 

 重なり合ったその瞬間だけ、お互いの目蓋が閉じて幻想の世界にへと誘われる。 現世に残るこの唇の感覚だけが、生々しく感じられる。 だが、そっちの方が魅力的に感じてしまう俺は、すぐに目を開き現実を直視する。

 そこに見えるのは、魅力的な表情を見せるエリチカの姿が。 瞳を瞑っても尚、美しく見えるのは、こうした行為を起こしたからなのだろう。 まるで、世界が変わっているように思えるのだ。

 

 

 

『んむっ――――んんっ――――ちゅっ――――んちゅっ―――――』

 

 

 エリチカのもう片方の手が俺の背後に触れ、そのまま強く抱き寄せようとする。 すでに、互いの身体は密着し合っているのに、それでは物足りないのだろうか、もっともっと互いの身体を触れ合わせたのだ。

 そしていつの間にか、俺の口の中には、エリチカの舌が侵入してまとわり付こうとしていた。

 

 

『んっ、ちゅぅ―――――ちゅるっ――――――あぁ、ちゅ――――――――』

 

 

 甘い吐息を呼吸するごとに吐き出しながら、俺の唇に向かって何度も何度も舌を捻じ込ませる。 歯ぐきをなぞり、それを舌と絡ませ舐め回す。 時には先端部に、時には舌裏に、時には奥に向かって、蛇のような舌が俺の舌全体を弄ぶのだ。 それが癖になりそうなほどに俺の感性をくすぐらせるのだった。

 

 

『んんっ、はぁ―――――ハァ――――ハァ―――――』

 

 

 ようやく唇が離れると、お互いに熱の籠る吐息を垂れ流し続ける。 エリチカなんか、目元を中心に顔全体がだらしなくとろけた感じとなっていた。 それは多分、俺も同じことが言えるかもしれない。 手で触れなくとも頬の緩みが尋常ではないのだと言うことに気付かされるのだった。

 

 

「もっと……もっと、ちょうだい………もっと、あなたを感じていたいの………」

 

 

 とろけた口調で再度のおねだりをし始めるのを見ると、彼女のリミッタ―が外れて抑えきれなくなってしまっているのではないかという思いを抱く。

 しかし、それを知りつつも俺の身体がエリチカのことを求めていた。 抑えられなくなっていたのは、こちらの方だったのかもしれない。

 

 

『んっ――――ちゅる――――ちゅる―――――あっ、はぁん―――――』

 

 

 再び彼女を抱き寄せると、今度は俺の方から仕掛ける。 彼女の舌が入り込んでくる前に、俺の舌が彼女の口の中に侵入し、あらゆる個所を舐め回し始める。 エリチカが舐め回したところはもちろんのこと、唇裏や口の上骨、舌の付け根となるところにまでをも舐め回した。

 そうした部分に快感を覚えるのか、舐める度に嬌声を漏らすのだ。 仕返しをするみたいに、そうしたところに狙いを定めて何度も弄ると、さらにとろけた表情をしてみせるため男心をくすぐらせた。

 

 

 

「蒼一……! 好き………んっ、んんっ………大好き………! ちゅ……ん……愛しているわ………♡」

 

 

 唇を何度も引き離しながら俺に愛の籠った言葉を連呼する。 言葉と共に彼女の強い想いが俺の心に入ってくる。 それがとてもやさしく、傷付いた心身を抱きしめるように包み込んでくれるので、思わず感涙をひと筋流す。 その気持ちに応えるべく、こちらもエリチカを包みだす。

 

 

「ありがとう……エリチカ。 俺も………お前のことを……愛しているよ………」

 

 

 言葉と共に添えるやさしい口付け。 激しく交じらせるものなど必要ない。 彼女に必要なのは俺の純粋なる気持ちだけ。 それ以外のモノは、不純物として取り去らせるのだ。

 

 この言葉と……この想いとを……目の前にいる、愛おしい大切な人のために贈るのだ。

 

 

 それを受け取ったエリチカは、溢れんばかりの涙を流し、俺を強く抱きしめた。 俺も彼女の気持ちに寄り添うように、その身体を抱きしめてあげるのであった――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ♪ 絵里も結構わがままなのね♪」

 

「それに、かなりの甘えん坊さんにこ♪」

 

 

 俺がエリチカを抱きしめている横で、真姫とにこがニヤニヤしながらこちらを見つめていた。

 

 そう言えばそうだった。 ここには、この2人もいたんだってことをすっかり忘れてしまっていた。 それほどまでに、俺の心はエリチカに惹き込まれてしまっていたのかと、若干ながらも恥ずかしい気持ちとなる。

 

 

 だがその一方で、彼女たちの身体に変化が生じていることに気が付いてしまう。

 それを見て、ああ、なるほどとこちらもニヤつきながら納得してみせる。

 

 

 

 

「ほら、お前たちもこっちに来てもいいんだぞ?」

 

 

「「っ―――――!!」」

 

 

 2人に言葉をかけると、身体をビクンと跳ね上がらせて、共に焦るような表情を見せ始めていた。 そりゃあそうだ。 2人とも俺たちのやり取りを横で見ていたのだから、身体がウズウズして仕方なかったのだろうよ。

 

 そして、そんな2人に向けて手を差し伸べて見せる。

 

 

 すると、2人は瞬時に俺の手を握るために走りだし、そのまま俺の身体へと引き込まれていったのだ。

 

 

「蒼一………わたし………」

 

 

 初めに俺の許に来た真姫は、物欲しそうな顔で俺にねだり始める。 真姫が何を求めているのかなど、すぐに分かることだった。 舌で舐めながら潤いを持たせたその唇がすべてを物語っているのだから。

 

 

 

『んっ――――――――』

 

 

 尖がった唇を指で触れるような感じの口付けをすると、すぐに甘い吐息が真姫の口から漏れ出す。 とてもシンプルであるが、とても慣れた口運びをするその口付けは、なんとも真姫らしい素直なモノで、その愛が十分に伝わってくるのだ。

 

 

『ちゅっ――――んちゅ、んっ――――』

 

 

 苺よりも甘いその口付けを息が続く限り何度も行う。 息が口の中に吐き出される度に、その想いを吸い込みまた感じるのだ。 他の誰よりも多くの数を行ったのにも関わらず、毎度のこと違った想いを感じとるのは、なんと不思議なことだろう。 それを感じるだけで、俺は癒されるのだった。

 

 

 

 

「あ~ん♪ もう、真姫ちゃんだけずるぅ~い! にこにも早く頂戴よぉ~」

 

 

 俺と真姫とのやりとりを見て、恨めしそうな視線を送り続けるにこは、居ても立っても居られないそんな状態にあった。 真姫はそれを悟ると、唇を離して俺の背後に着いて、そのまま抱きついた。 真姫から出る温もりが俺に安心感を持たせてくれるのだった。

 

 

「もう、待ちくたびれちゃったわ~。 にこはまだ、一度しかしていなかったから、今回はたっくさん蒼一のことを教えてもらうにこ♡」

 

 

 すぐ近くにまで来たにこは、俺の両頬を掴んでそのまま俺の唇を奪いに来る。

 

 

 

『んんっ―――――――』

 

 

 蕾のように小さな唇が、強気になりながら口付けし始める。 数が少ないからだろう、にこの口運びには、まだぎこちなさがあり、思うような口付けができなさそうで必死になっていた。

 しかし、その様子も可愛く見えてしまうので、このまま見続けていたいとも感じてしまうのだ。

 

 

 仕方ないか―――――――

 

 

 そう思いながら、口付けの主導権を俺が手にした。 今度は俺がその唇に向かって襲いに掛かった。

 

 

『んんっ!! んちゅるる―――――はぁっ―――――んっ、んちゅっ、はぁっ―――――』

 

 

 にこの後頭部に触れて、こちらに引き寄せると、そこからどんどん強気に唇を押し付けていく。 それは、さっきエリチカに対して行ったことと同じような感じで、それを息苦しそうに受けるにこは、終始嬉しそうな表情で俺のことを見つめ続けていたのだった。

 

 

「はぁ……はぁ………もう、蒼一ったら……強引、なんだから………♡」

 

 

 きちんと整われていた表情が、これでもかと言うほどにとろけだし、息を荒々しく乱していた。 さすがに、やり過ぎなところまでやってしまったように思えたのだが………これでよかったのだろうか………?

 

 

「ふふっ、にこちゃん嬉しそう♪ 絵里ももう蒼一にメロメロな感じね♪」

 

 

 背後で囁いてくる小悪魔のような真姫が、2人の姿を見てそんなことを話す。 しかし、その声が何やら更なる誘惑を行おうとしているみたいで、一瞬背筋が震えてしまう。

 

 だが、そんな詮索はする間もなかったようだった――――――

 

 

 

 

「蒼一。 まだ、夜はこれからよ? こんなところでへばってちゃもたないわよ………」

 

 

 囁くような声を耳元に吹きかけられると、感情が異常なほどに高ぶり始め出した。 全身がかなり熱く火照り始める。 直感的に感じ始める誘惑がすぐそこにまで来ていたのだった。

 

 

 

「そうね………まだ、蒼一の愛が物足りないわ……もっと……もっと、私に注いで頂戴……♡」

 

「今度は、にこが蒼一に愛情を注いであげる番よ。 簡単に寝られるとは思わないことね……♡」

 

 

 反応が薄らいでいた2人もまた、真姫に合わせるみたく立ち直ると、俺のことを獲物を捕えようとする猛獣のような瞳で俺を追い詰め始め出していた。

 

 

 すると、3人が一斉に自分たちが来ている服を、はらりはらりと風になびかれて散る花弁のように1枚ずつ脱ぎ始め出す。 そしていつしか、彼女たちの身体を覆うベールが1枚となった状態で俺の前に立った。 3人の異なるスタイルに合わさった濃厚色の大人な下着と、そこからはみ出る豊満な肉体が、嫌でも俺の目に入り込んでしまうため、情欲が燃え盛る炎のように高まる。 それに、3人とも恥じらうこともなく、大胆にその身体を見せつけてくるので逃げようにも逃げられないと言った感じだった。

 

 

 

 

『さあ………蒼一(アナタ)の心を捕まえちゃうわ♡♡♡』

 

 

 

「あ…あはっ………あはははは……………」

 

 

 

 深まる夜の暗闇の中、暁が昇りだすまで、俺は3人の女豹の餌食となり果てていくのだった…………

 

 

 

(次回へ続く)

 




どうも、うp主です。

今回で絵里編は終了です。


そして……次が………s………
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