センチネルに戻ったのは、別にここから転移した直後ならいつでもいいからってワケでおよそ1時間後の朝9時くらいの時間に戻って来た。
戻って最初に取り掛かったのは……
≪カリカリ……≫
イチカ「……」
執務室に籠っての書類の始末だった。
何故かと言うと、俺も騎士団のナンバー2だから執務をするのは当たり前。っと言うのは建て前で、本当の理由はミールが書類を片付けないから俺が処理を行う為だ。
これは余談にしかならないけど、肝心のミールは別の用事で今王都にはおらず、ソニアさんは常備軍幹部の会議に出席してて忙しい上、他の人達も殆ど別件とかで留守にしてて、今居るとすればモブ騎士とかだ。
イチカ「はぁ……」
終わらない……書類が山の様に溜まってるから終わる気がしない……
≪コンコンコンッ≫
そんな時に部屋のドアを叩く音が聞こえて来た。
一体誰なんだろう?
イチカ「どうぞ」
≪ガチャッ≫
士官「イチカ様、お忙しいところ失礼します」
誰かと思えば軍の士官だった。
イチカ「どうかしましたか?」
士官「実は東方辺境の守備隊の一群が、何者かの手によって壊滅したと報告がありました」
イチカ「えっ!?」
どうやら今回は部隊壊滅の報だった。
って!壊滅だと!?
イチカ「一体どういう事ですか!?詳しく話して下さい!!」
士官「は…はいそれが、なんでも森の中で訓練をしていた際に突然現れた謎の男1人によって、4~5人を除いて全員やられたと……」
イチカ「何だって!?」
大変だ!すぐに部隊を送らなきゃ…って……
イチカ「考えてみれば、手空きですぐに動ける有力な騎士って俺だけじゃん……」
士官「まさにその通りですイチカ様」
参ったな…けど報告を受けた以上は行く他無いか……
イチカ「分かった、なら俺1人で行こう。それと、この事は騎士団長らには本人が戻って来た時に伝えて増援軍を派遣して欲しいって伝えてくれますか?」
士官「勿論ですが、お一人で大丈夫ですか?」
イチカ「何も無いとは思いますが、何かあればすぐに連絡しますので」
士官「畏まりました」
ならこれで決まりだ。
イチカ「では行って参ります」
士官「はい…くれぐれもお気を付けて……(本当に大丈夫かな、一人で行って?)」
っということで俺は部屋を出て自室で装備を整えて出撃した。
何が待っているかも知らず……
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アストロリアスの東側は、北から流れる風と東の山脈より流れる冷たい風がぶつかるところで、センチネルでは夏場でも冷夏な寒冷地帯が広がる場所だ。
ここらは寒いところだけど、その割には作物の育ちが良いせいか農業が盛んで畑が至るところに点在する場所だ。
そして今、そんなのどかな田園地帯を馬に乗って進んでいる。
イチカ「静かだな……」
王都から離れ、国境にも近いところだからか静かだ。しかも人一人いない。
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それはさて置き、目的の東方警備隊の砦に到着。
隊長「お待ちしておりました炎騎士様、さあどうぞ」
そこで待ってた守備隊長に案内されて中へと進んだ。
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案内された場所は砦の医務室…なんだけど、そこに広がってた光景に思わず顔を覆いたくなってしまった。
並んでいたのは守備隊員の遺体、しかもその数100を下らない程でどれもこれも傷口が深く床は遺体から流れ落ちたと思しき血で一色に染まっていた。
イチカ「酷い、一体誰がこんなことを?」
隊長「それが我々にもよく分からないのです。彼らが訓練より戻って来るのがあまりに遅いと思って森を探し回って発見した時には既にやられた後で……」
イチカ「誰かさえ分からないと?」
隊長「そう言うことになります」
なんてことだ、こんな酷いことをするなんて、とてもと言って許せない!
イチカ「遺体が発見された場所は?」
隊長「この砦のすぐ裏に広がる森の中です。ですが、あれから随分時間が経ちますから犯人は何処かへ移動したと思いますが……」
イチカ「例え時すでに遅しといえども、犯人が残したでしょう痕跡くらいは残ってる筈です。それに、こんな光景を見せられて黙っているワケには行きません」
隊長「そうですか。分かりました、なら自分達も同行します」
イチカ「ご厚意は有難いですが結構です。これは俺自身で片を付けます」
隊長「えっ、まさか一人で行かれるのですか!?
危険です!もしあなた様に何かあれば、この国の未来が……!!」
イチカ「ご心配には及びません。それにここの戦力が僅かな中で唯一残った人員を使うワケには行きませんからね」
隊長「……、炎騎士様がそう仰るのでしたら異論はありません。ですが、くれぐれも無茶はしないで下さい」
イチカ「はい。それと後ほど増援が来ると思いますので、その時は事情を詳しく説明しておいてください」
隊長「はっ、お気を付けて」
そういったワケで、俺は手掛かりだけでも見つけようと、砦を出て現場の森へと入って行った。
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その頃の王都……
ミール「何ですって、イチカが!?」
士官「はっ、皆様が出払っているということでお一人で出発されまして……」
ソニア「止めなかったの?!」
士官「それは……」
ティア「考えつかなかったのかしら?」
士官「率直に言えばそうです」
用事から戻った全員がイチカの事で士官を問いただしていた。
ミール「それで、本人は何も言ってなかったのか?」
士官「いえそれが…皆様が戻られましたらこの事をお伝えして欲しい事に加え、増援をお願いするよう頼まれまして」
エクセラ「はぁ……こんな事なら私も一緒に残ってるべきだったな」
士官からの報告を聞いてエクセラは先程までの自分に後悔した。
実はエクセラは、先程まで王都内を散歩して買い物やら食べ歩きやらしてたのだ。
幾らロンバルディア帝国の元皇女とはいえ、彼女もまた一人の女子。流行りとかは熟知していなきゃならないと、王都の市場をよく散策しているのだ。
ソニア「ともかく、ぼやいてばかりしてはいられないわ」
ミール「そうね、イチカ一人だと何かあるかもしれないしね。
準備が整い次第出撃よ」
『はい!』
とはいえ、落ち込んではいられないと気持ちを入れ替えた全員は出撃の為準備に入り、1時間後に増援軍200名余を引き連れ出撃した。
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一方……
イチカ「はぁ…結構歩いたな……」
犯人の手掛かりを求めて森の中を歩き回っていた。
最初に問題の現場へは向かったけど、そこは犯人の証拠らしきものは何一つ見つからなかった。
元よりその場は地面が5cm位抉られてた程度で殆ど荒れていなかった。それから察するに、戦闘はそれ程経過せずほぼ一瞬で終わったとしか言いようが無いだろう。だが問題なのは、そんな事の出来る手だれが何処にいるかだ。
帝国のゼストにも出来なくは無いだろうけど、ここは東の辺境で王都からせいぜい400km以上離れている。こんなところまで帝国軍が来るのなら、わざわざこんな辺境じゃなくて王都へ通じる北部の主要な道路を通るに違いないからまずあり得ない。
だとすると一体誰なのか?謎は深まるばかりだ。
っと、それはさて置き……
イチカ「それはいいけど、困ったな……」
今俺は森の中で迷っていた。何処も彼処も同じ風景だからどっちがどっちかなのかも分からないから正直今どこへ行こうとしてるのかさえ分からない。
そんな時……
『主…主聞こえる?』
イチカ「えっ、その声はイフリート?」
イフリート『気を付けて主、近くに恐ろしい奴がいるわ』
普段は全くといって出て来ないイフリートが、珍しくも俺に話し掛けてきた。
ってか、恐ろしい奴って誰なの?
イフリート『何でもいいからここから離れて、ここで奴に会ったら戦って無事には済まないわ』
おいおい、そんな怖い奴かよ?
それより……
イチカ「だったら行くしかないさ。第一、砦の兵を襲った奴かもしれないんだ。おめおめと逃げ出したりなんか出来るものか」
イフリート『やめた方がいいわよ。幾ら主でも敵うかやら……』
そんな事言われてもなぁ……こんなところで迷ってしまった以上どうすることも出来ないしな……
そんな中出たのは、一箇所だけ野原のようにひらけた場所。そんなところの中央に、青い鎧を身に纏った大きな斧を持った大男が立っていた。
イチカ「あいつは?」
イフリート『危険よ!今すぐここから離れて!!』
イチカ「そうはいかないよ。何せ奴が犯人かもしれないんだ、声を掛けるくらいはしておかないと」
イフリート『でも!!』
俺を止めようとするイフリートに構わず、その男に声を掛ける。
イチカ「お前、この辺の奴か?」
「む?
お前は…間違いない、ヤツと同じ目、ヤツと同じあのオーラ、そしてヤツと同じあの鎧だ。
フフフ…フフフフ…フハハハハハハハ!血が…血が滾るぞ!!」
男は振り向いて俺の顔を見ると、何か不敵な笑みを浮かべながら喋り出した。
イチカ「お前一体誰だ?いきなり俺の顔見て笑い出して、何者なんだ?」
イフリート『彼の名はバルバトス、大昔に勇者パーティと同等に渡りあったとされる凶戦士。
確か、何千年も前に封印された筈なのに何故……?』
バルバトス「誰と話してるかは知らんが、くだくだと言わずに俺を楽しませろ。
今日の俺は実に紳士的だ、ラク〜にいかせてやる」
イチカ「どうやら、話の通じる相手ではなさそうだな。
ならば腹を括って挑むまでだ!」
イフリート『えっ!?チョット待ちなさい!!』
勇者パーティと同等に渡り合ったと聞いた俺は、イフリートそっちのけに剣を手に取ってバルバトスに戦いを挑んだ。
まぁ…今回はこのくらいで……
次回はバルバトスとの戦闘……
出来れば年末までに仕上げて投稿したいところですが、果たして間にあうかやら……