遊戯神と神子〜遊戯魔法の使い手〜   作:美山 朱雀

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投入!(。・ω・)σ ⌒*ぽい


二話

 あれから五年、リオン・フォン・リクシスは八歳になりました。

 

 リクシス家の先祖は剣術の名家で、この国が生まれた時から国王に仕える古参貴族である。

 リクシス家はリクシス領を収めていて、辺境伯の爵位を持っていて、そこそこ裕福な家庭だ。

 

「リオン! もっとしっかり剣を握れ! ほら、足元がお留守だぞ!」

 

「はあ……はあ……、はい!」

 

「まだ行けるか?」

 

「まだまだです!」

 

 そんなリクシス家の庭からは毎日の様に剣戟の音が聞こえる。

 俺が五年前に「魔法師にも騎士にもなる」と宣言してから毎日こうして両親に鍛えられている。

 俺の肩は血だらけで息も荒く、満身創痍だ。

 この家には治癒魔法が使える優秀な魔導師がいるので真剣で修行している。

 真剣の方が痛みで体が覚えやすいのだとか。

 

「あなた、今日はここで中止よ! リオンの血が足りてないわ」

 

 そう言って俺に駆け寄ってくる赤い髪の女性はセリア・フォン・リクシス────俺の母さんだ。

 母さんは俺の肩に片手を当てつつもう片方の手で俺の頭に触れる。

 

治癒(ハイヒール)診断(メディカルチェック)……。問題無いようね。リオン、終わったわよ」

 

 毎回修行終わりには母さんに治癒魔法と健康診断をしてもらっている。

 

「リオン、早く自分の戦闘スタイルを確立しないとこのままじゃ家から一生離れられないぞ?」

 

 この金髪の男────ランバート・フォン・リクシスは俺の父さん。

 父さんは剣の達人で、世界的にも有名だ。剣術の文献にも載っているくらいで、先祖から伝わる由緒正しいリクシス流剣術(リクシス家の子孫のみが引き継げる)の継承者だ。

 

 だが剣術を習うにあたって、家訓とされている「リクシス流剣術に自分の戦闘スタイル(オリジナルセンス)を加えること」が必須項目とされ、与えられたものは伝承者が認めるまで死ぬことすら許されないと言われている。

 戦闘スタイルとは剣術の流派に自分で考えた剣術を取り込むことである。

 

「父さん、はぁ、はぁ、魔法剣士って意味わかる?」

 

 この家にはかなりの量の本がある。しかしどの本にも魔法剣士というスタイルは見たこともなかった。

 もちろん、万能メイドのメイド長も聞いたことがないと言っていた。

 

「何だ、それは?」

 

 俺は呼吸を整え、服の汚れを軽く払うと立ち上がる。

 

「えっと、中衛職なんだけど、魔法を使いながら剣も使って戦うんだ。そうしたら遠い敵にも近い敵にも対応できるでしょ?」

 

 それを聞いた父さんは暫く放心したかのように微動だにしなかった。

 

「そうか。リオン、お前は天才だな! 確かにそれなら一人で大量の魔物に対応できるぞ」

 

「でしょ? だから僕は魔法剣士をリクシス流剣術に僕の戦闘スタイルとして取り組むことにするよ」

 

 それを聞いた父さんは俺の頭を撫でながら褒めてくれた。

 

「リオン、その年でリクシス流剣術に戦闘スタイルを考えついて取り組むことなんて早々できないぞ? 大したもんだ、父さんだって戦闘スタイルを編み出すのは十五歳になるまで無理だったのにな」

 

 俺は撫でられるのが照れくさくて父さんの手をどける。そんな親子のコミュニケーションをとっていると隣から拗ねたような声がする。

 

「貴方達私を忘れてない? この後は魔法の勉強があるんですけど?」

 

 すっかり母さんの存在を忘れていたため俺と父さんは戦々恐々だ。

 母さんは怒らせちゃいけないことをこの前学んだ。

 あれは父さんが王都に用事があると言って帰ってくる日が遅れた理由が「美人な女性に言い寄られて中々帰れなかった」という事が発覚したときに、普段は可愛らしい母さんが般若のようになりいっそ死んだ方が楽なんじゃないかと父さんを哀れに思ったほどだ。

 

「何でそんなに二人共ビクビクしているの?」

 

 いやいや、母さん。貴女は今可愛らしく小首を傾げていますけど、怒った時にはその姿は微塵も感じられないほどの怒気で溢れかえっているんですよ。

 

「さ、さあ母さん。魔法の修行を始めようか」

 

 俺は魔法の修行をする為に自室へ魔法着を取りに行く。

 

「皆様、鍛錬の前に昼食をとられてはいかがですか? 時間もお昼頃ですし、リオン様も汗を流したいのでは?」

 

 そう言って俺達に昼ご飯を勧めてきたのは万能メイド長、ミリアだ。

 確かに汗と砂まみれのこの状態で魔法の鍛錬なんかしたくないな。

 

「父さん、母さん。ミリアの言う通り昼食にしましょう。僕は汗を流しに風呂に入ってきます」

 

「そうね。貴方それでいいかしら?」

 

「いいよ。僕は昨日領主の仕事を今日の分まで終わらせておいたから問題ない。リオン、汗を流して着替えてから食堂に来なさい」

 

「はい。では失礼します」

 

 許可を得たので早速屋敷に戻り、風呂に向かう。

 俺は修行でいつも使っている愛用の剣を風呂場の脱衣所に立てかけるとそのまま服を脱いで風呂に入った。

 風呂場は広く、浴槽は浅めのプールのようだ。

 

 俺はお湯を体にかけて石鹸で頭を洗う。

 シャンプーは無いものの、頭を洗うための石鹸もあり、石鹸に使われている芳香剤にニラムの香油を使っているため、髪に優しい石鹸となっている。

 そのまま体も洗い終えると浴槽に肩までしっかりと浸かる。

 

「今日も父さんは強かったな……。正直勝てる気がしないのは気のせいだろうか」

 

 だってありえるか? 完全な背中からの不意打ちをフェイントに見せかけてそのまま正面から叩き切ろうとしたのに、ハンデだとか言って目を瞑ったまま全ていなして撃退されたんだぞ。

 

 その時間はいなしてから反撃まで一秒に満たない。

 到底人間業とは思えないが、じいちゃんには父さんでも未だに勝てないとか言ってたし……。

 うちの家系は人間を辞めているのか? 手刀でドラゴンを屠る人なんて聞いたことないぞ……。

 

 父さんはドラゴンを倒すのに剣が必要なのだがじいちゃんは手刀(素手)だけで倒せるらしい。

 そもそもドラゴン自体が魔物の中では上位に君臨するバケモノで、王国の宮廷魔道士が二十人と近衛騎士団の団員が十人、そのエリート様たちが総攻撃を仕掛けてやっと倒せるのがドラゴンなのだ。

 

 それを単騎で倒せてしまう父さんは同じバケモノだと思う。

 そう考えるとやはり確実にじいちゃんは人間どころかバケモノも越えていると思うんだ。

 

「っと、そろそろ逆上せそうだし、上がるか」

 

 思っていたより長く浸かってしまった。俺は慌てて浴槽から出ると、風呂場から出る時に軽く汗を流し、風呂から上がるとバスローブを着て立て掛けてある剣を手に取る。

 その後自室に戻りバスローブから魔法着に着替え、急いで食堂に向かった。

 

「遅れて申し訳ありません! 少し長く浸かってしまいました!」

 

 俺は食堂に駆け込むと真っ先に謝り、自分の席に着く。

 

「リオン、落ちつきなさい。私達は待ってないから」

 

 母さんは俺を軽く注意したあと父さんの肩に軽く頭を乗せる。

 そこで俺は少しだけ悪戯心が湧いた。

 

「そうですよね。母さんと父さんは仲良く待っていてくれましたよね。この間も服装を変えて何処かへ出かけて行ったから何かあったのかと思えば、唯々二人で街に仲良くデートをしに行っただけでした。

 そのデートではいつものバカップル振りに磨きがかかり終始イチャついてお互いにキスばかりしていましたもんね」

 

 すると母さんは、ぽふっと顔を真っ赤に染めて父さんの肩に顔を隠した。

 一方父さんは何も恥ずかしがることはなく、堂々とした振る舞いでいたが、疑問に思ってしまった事がひとつあったようだ。

 

「リオン、それに間違いはないが一体どうやってそこまで把握したんだ? 確かその日はエリモア嬢が家に来て、お前はその相手をしていたはず。尾行はできないだろ?」

 

 エリモア嬢とは俺の幼馴染みであり、婚約者だ。

 薄くピンクがかった白髪(はくはつ)に、可愛らしい顔立ちで、将来は確実に美人になるだろう。

 

「貴方がそうやって余計なことを言うからリオンが色々勘違いするんですっ」

 

 ぽかぽかと父さんを叩きながら母さんはその真っ赤に染めた顔のまま抗議する。

 母さん可愛いな、おい。

 まったくもって羨ましいね、父さんは叩かれていても満更でもなさそうだし、俺も将来はそんな可愛い奥さんが欲しいよ。

 

「簡単だよ、魔法の触手みたいなのをこのリクシス領全体に伸ばして誰がどこで何をしているかを察知しているだけ。ただ何が起きているのかわかっても実際には見えないから人権侵害にはならないよ」

 

「お前いつの間にそんな事まで出来るようになったんだ……。セリアこれは君が教えたのかい?」

 

 コクリと無言で頷く母さん。実はこれ、父さんが王都から帰ってきた時に、帰りが遅くなっていてから心配した母さんが使っていた魔法なんだ。

 それで調べてたら父さんが女の人に言い寄られているのを見つけて父さんは地獄に落ちた。

 つまり、これを教えたのは母さんだから、俺に罪はない。

 

「セリア、別に教えちゃいけないとは言わないけど今後はよく考えて物事教えようね?」

 

「だってリオンの物覚えがいいからつい……」

 

「それは僕も思うけど、自分で墓穴掘ってたら意味無いよ? 今回は別にただ僕とセリアの愛が息子にバレただけさ、気にすることはないよ」

 

「貴方……、そうよね。次から気をつけるわ」

 

 俺は二人が自分達だけの世界に飛び立ち始めたので軽く咳払いをする。

 

「ん、んん。父さんも母さんも仲がいいのはわかったから、そろそろご飯食べよう? 冷めちゃうよ」

 

 元はと言えば俺が遅れた原因なのだが、母さんは慌てていて、自分達が原因で冷めると思い込んでる。

 父さんは「誤魔化されないぞ」とこちらを軽く睨み、食事に手をつけ始めた。

 

 父さんが手を付けたので俺と母さんも食事に手をつけ、食べ始める。

 

「母さん。今日はどんな魔法の修行するの?」

 

「そ、そうねぇ。今日はいつもと同じかな」

 

 母さん、何故に焦る。

 

「今日は僕も仕事が無いから久し振りに二人の修行を見に行こうかな」

 

「え、ええ!? ラ、ランバート。貴方は……、ほら! 一部の村で麦が育たないって言っていたじゃない? それは大丈夫なの?」

 

「ああ、あそこはリオンが考えてくれたフヨウド? を使って畑の環境から改善したから今は問題ないよ」

 

 母さんは俺を見て「余計なことしやがって」的な目で見る。

 俺は領主の息子として父さんを手助けしてあげただけなのに……。普通これ褒められるところだよ?

 

「じゃ、じゃあ、あれは? 畑に害虫がいるから作物が育たないって前言ってたわよね?」

 

「それもリオンが解決してくれたんだよ。作物同士の組み合わせや、ハーブ等を植えることである程度予防できたんだ。今いる害虫は精油を風魔法で噴霧して地道に殺しているよ」

 

 母さん、やめれ。その顔で睨まないで下さい。お願いします。チビっちゃいそうです。

 だってほら、父さんが前に死にかけていたのを思い出すから、ね? 落ち着こう?

 

「……リオン」

 

「は、はい!」

 

「第八位魔法のペーパーテストの範囲を広げるわ。枚数は十枚から三十枚に増量ね」

 

 ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!? さ、三十枚!?

 その範囲までだと父さんとの修行の合間を縫って、これから毎日徹夜して……。それでも間に合わない!! し、死んじゃいますっ。

 

「母さん、何でそんなに怒ってるの? 僕は父さんが困っていたから助けてあげただけなのに……」

 

「セリア……。何故そこまで怒っているのか知らないけど第八位魔法って一つ覚えるのに宮廷魔道士が少なくても一年以上かかると言われている魔法だよ? それを十枚ってだけでもすごい量なのに三十枚はやり過ぎじゃない? リオンが解決してくれなかったらそれだけで村人の生活に支障が出ていた場合もあるんだ。それは理不尽ってやつじゃないかな」

 

 ナイスフォローだ、父さん!

 俺は母さんが怒っている理由を知っているけど分からないふりをしている。何故なら俺は一ミリたりとも悪くないからだ。

 

 俺は母さんの言う通りにしていただけ、父さんが困っていたから助けてあげただけ。それだけだ。

 

「じゃあ、妥協して十五枚ね。午後から魔法の鍛錬を始めるから食事が終わったらいつもの場所に移動するわ」

 

 よ、よかったぁ。十五枚ならまだ何とか希望は見える!

 父さん、この御恩は一生忘れません。

 

「そうか、場所を移動するということはセリアの転移魔法を使うのかい?」

 

「そ、そうね。私の(・・)転移魔法を使うわ」

 

 あれ? いつもは俺に練習だからと言って転移魔法は俺が使っているのに今日はいいのか?

 それを聞こうとして口を開いた瞬間母さんから睨まれた。

 

「…………」

 

 わかった。黙っていればいいのね……。

 せめて質問ぐらいさせてくれよ。全く。

 

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