それと、改行位置などを変えて少し見やすくなったかなー…と。
タツミへ質問をしようとしていた矢先、賊狩りの話が舞い込んでしまい、お預けとなってしまったお楽しみ。
正直賊など狩ったところで意味も無い、もちろん帝国からすれば掃除が出来て、治安的にも良いのだろう。
帝都近郊での話だが。イェーガーズの実力も把握したいのだろうエスデスは丁度いいと言ったが、
相手が相手だ。大した実力を持たないゴミを狩ってもメンバーの実力は測れない。
しかし、愚痴ってもしかたない。さっさと殺してタツミへの問答を行いたい。
現在はエスデスがメンバーへの覚悟の確認をしており、ドクターが理解不能な事を言い終わって次は俺の番だった。
「ソープ、お前はどうだ? 心配はしていないが、心意気を知っておきたい」
「いや、少しは心配したらどうだ。部下だろう……まあいいや、とりあえず殺す事に文句はない」
「なら良い、では――」
「ただ、一つ条件を付けさせてくれ」
その言葉にエスデスが不審がる。
「条件…とは? 大臣からの命令か?」
いや、違う。個人的な事だ。エスデスはやはり俺がオネストの部下だと言うのに疑いを掛けているようだ。
こいつら仲が良さそうに見えて、それぞれの目的の為に偶々協力関係にあるだけそうだし、実際こうなると疑われるのは仕方ないか。
「そうじゃない。いい加減俺をオネスト大臣の犬みたいに思うのはやめろ。あのデブは関係ない。
条件ってのは一人か二人捕縛させて欲しい。少しやってみたい事、と言うかいつもやってる事がある」
俺の提示した条件が不思議なのか、首を傾げるエスデス。
「なんだ、なにか儀式的なものがあるのか?」
「いや…まあ無理なら良いんだ。隊長はエスデス将軍なんだからな。命令には忠実に従うのみだ」
そういうと、まあ構わんかと言うように息を吐き、
「いいぞ、好きにやれ。別に投降されたから助けるという訳ではなさそうだしな」
「なら良かった。じゃあそういう事で頼む」
そろそろエスデスとも親しくなっておくべきか。オネストは悪巧みが多すぎる。
エスデスがこれだけ警戒してるのが証拠だ。やりにくい。
「皆迷いが無くて結構だ、そうでなくてはな…では出撃! いくぞタツミ」
「え…俺も!?」
■■
「作戦はどうしましょう?」
砦の近くに来てランがどういった作戦で崩しにかかるか考える。
エスデスは後方待機、メンバーの実力把握の為に好きにやらせるのだろう。
タツミはエスデスの隣に。
この作戦中は会話は無理そうだ。
「もちろん! 正義は堂々と正面から行きます!」
いや正義は関係ないように思う。
だがヒーローなどは特に工夫などせず確かに正面からだった気がするし、あながち間違いでもないのか?
「ソープさん、貴方はどうしますか。私達は各々の帝具を把握していますが、貴方の帝具はウィルスと言う事しか分かっていないので」
そうだな、後方のサポートなのか、前線で敵を吹き飛ばすのかいまいち把握しきれないのだろう。
実際、どちらでも構わない。だが、エスデスの好み的には派手に戦うのがいいのかもしれない。
ここは前線で派手に行かせてもらうとしよう。
「どうせ今の状態じゃチームワークも無い、前線で暴れさせてもらうよ」
「大丈夫なんですか? ウィルスを散布するなど、そういった戦い方かと思っていましたが」
「それは無理だな。最初に見せたとおりあのウィルスは敵味方が関係ない。それに敵を強化するだけだよ。別にウィルス型の帝具だからって毒だけ使う訳じゃないさ。心配するな」
何気に初めて心配をされたかもしれない。
そんな感じで、砦の目の前まで歩いて来たが、
どうやら向こうも気づいたようだ。
山門が開き、中から大人数が飛び出してきた。
やんややんやと罵倒を口にしていく山賊達。
そんな賊達の言葉を無視し、
「まずは私とドクターの帝具で道を開きます。コロ――5番」
ぐおっとコロ、帝具≪ヘカントンケイル≫が巨大化したと思えば、
そのままセリューの腕へ噛み付き、
「失った両腕のかわりに、ドクターから授かった新しい力…」
巨大なドリルがセリューの腕に装備されていた。
(ほぉ…こりゃすげえな)
両腕が義手なのは知っていたが、こんな玩具も付けられるのか。
「“十王の裁き”」
――正義 閻魔槍―ー
無暗に突っ込んできた賊達はバラバラに吹っ飛び、その四肢を宙へと浮かばせる。
ヘカトンケイルもその鋭い牙で敵を食いちぎり、結構な数を減らした。
まあ砦の中にはもっといる。捕縛は中に居るやつに絞るか。
「山門を閉じろ! 早く!」
流石にやばいと思ったのか、敵が扉を閉じたが、
「次! 7番!!」
今度はまるで戦車にでも付いてるかのような砲塔が腕に装備され、そのまま発射。
派手な音と共に山門は破られた。
いいねぇ…十王って事は10番まで装備があるのか。
とりあえずセリューの武装は分かった。
(扉も開いたし、いくか)
と、駆け始めるが、同時に走り出した奴がいた。
「あれ…ソープも行くの?」
クロメ、まあ帝具は刀だし前線で戦うのは当たり前か。
「ま、前線で暴れるって言ったしな。気を付けろよ?」
「大丈夫だよ、ソープも気を付けて」
そのまま砦の中へ駆け込み、二手に分かれる。
(久々に戦うが、鈍ってないといいな)
■■
「おいおい兄ちゃん、一人で突っ込んでくるなんて無謀じゃねえか? ええ!?」
ソープはクロメと二手に別れた後、賊に囲まれていた。
手に持っているのは斧、ナイフや銃など一般的な武装だが、
相手の人数はかなりの物であった。
だが、対してソープの顔には怯えも無く、寧ろ欠伸すら出そうな面持ちである。
「そんなカッカするなよ。大体兄ちゃんって言うがお前らより年上だぞ」
「黙ってろ! 余裕ぶっこいてるのも今の内だぞ!? この人数だ、後で命乞いしてもただじゃおかねえからなぁ!」
相手のその言葉に、溜息を吐きながら下を向くソープ。
少しの会話も楽しめない相手につまらなく感じたのか、砦に入る前より覇気が薄れていて、そのまま蹲ってしょぼくれそうな雰囲気だった。
「あのさ、確かに人数的にはそっちが勝ってるけど、そんなん見りゃ分かる事だろ? それなのに単身でここに来てる時点で気付けよ、
お前らの実力じゃ―」
そう言って顔を上げた瞬間、
パン、と乾いた音が響いたと同時にソープが仰け反り、そのまま背中を地面へ付けようとする。
音の発生源は賊の手にある銃、その銃で見事に頭を撃ちぬいたようだった。
「ハッ! 暢気に会話してるからだよ甘ちゃんが。こんなもん先手必勝だろうが、てめぇにいくら実力があろうと…って、は?」
が、そのまま倒れ込まず、足を地面へと縫い付け踏みとどまる。
確実に頭へと当ったのは賊全員が確認していたが、それでもまだ動くという現状に一瞬時間が止まったように賊達の動きが止まる。
「その通りだ、会話なんて必要ないな。いかんな、腕どころか思考も鈍ってるようだ。すまん、ここからは言葉はナシで行くよ」
踏ん張った態勢のまま、言葉を放ったと思いきや、ソープの姿が消える。
「なっ――」
どこへと賊が口にする前に、一人が吹っ飛んだ。正確には頭だけ吹き飛んで行った。
その物言わぬ死体と化した前には足を振り上げた彼の姿が。
脚力のみで、頭を上空へと吹き飛ばしたようだった。相手の身体を浮かせず、頭だけを吹き飛ばすその威力は凄まじい。
まず人間の力では不可能だろう。それこそ義足でスタイリッシュが改造でも施していない限り。
例え改造された義足だろうと、この短い移動での助走では精々顎を粉砕する程度だ。そんな人間離れした脚力を持ってして、
それでも動きは止まらずに、まるで口を開く猶予すら与えないかのようにまた姿が掻き消える。
その動きは“縮地”に近い。だがそれは圧倒的な力で行われており、脚力に頼らず、力任せではない縮地とは異なっている。
実際にソープがいた地面を見れば、地面が捲れあがっている。
どれほどの馬力で踏み込んでいるかが分かる。そしてその力を存分に生かし、振り上げれば――簡単に人の頭は吹き飛ぶだろう。
そのまま相手に有無を言わせず、次々とその頭部を吹き飛ばしては、消え、現れたかと思えばまた消える。
その繰り返しで賊の人数は半数に減った。
だが、そのままでいる賊ではなく、
「お、お前ら! 固まれ! バラバラになるな。相手の姿が見えないんじゃ埒があかねぇ!」
そう言って声を張り上げ、それぞれが動き一か所へと固まる。
そうする事で、相手を近づけさせず尚且つ攻撃された際は素早く反応できるという現時点では取るべき一つの手だった。
が、それは悪手だった。ソープが普通の速いだけの者であったなら全く正解であり、生存への道であった。
しかし彼は“帝具使い”。
あり得ないであろう事を起こすのが、帝具使い。
シャン――と鈴の音がなるような音がした。
「―――」
賊達が最後に見たのは、人ひとりあるのではないかと言うほど大きな刃の放つ光だった。
■■
「やっちまったよ…」
俺は心底後悔している。
何せ相手の言葉に応答し、ただひたすらに殺してしまったからだ。
やはり鈍っている。それこそ戦いの途中で気付けた筈だ。
今回での戦いでそう痛感してしまう。まるで素人だ。
各個撃破に移って、力任せな移動法からの蹴りで頭を飛ばすまでは良かった。
だが、賊達も馬鹿ではないと思ったよ。こっちの人間ビックリショーみたいな動きに惑わされず、
一か所に固まるという行動を取った。
ああ、やるなぁなんて思ってたのも束の間、つい…だ。
つい、そのまま帝具を使って何十人もいた賊達の上半身と下半身を別れさせてしまった。
癖って言うのか、そもそもあの動きは相手を固めさせる為の物だった。
訓練された兵士は、戦いのいろはとまでは言わないが、基礎的な行動を取る。
即ち、ああやって各個撃破にこちらが動くと一か所に固まるのだ。
だが、それが俺の策。相手はこちらの動きを捉えられなくても、攻撃した直後は隙が必ず生じてしまう。
だからこそ固まり、反撃の隙を生み出そうとする。
しかしそれは帝具使いの俺には悪手となる。
俺の帝具は全身の変形、変体と言う方が正しいのか?
そうして腕を大きな刃へと変える事が出来る。
それをこの馬鹿げた力で持ってして、薙ぎ、回転しながら突っ込む。
すると、綺麗に相手方の胴体は上と下のパーツへと生まれ変わるのだ。
まあ相手によってはパターンを変えるが、主な攻撃方法はこれだ。
しかし、今回はやり過ぎた。
中途半端に染みついた動きは、鈍った思考と体について行かず、勢い余って全員死亡。
結果、残ったのは大量のタンパク質の塊だ。
「駄目だな、タツミとの会話なんぞ気にしてる場合じゃなかった。いかんぞこれは。鈍り過ぎだ」
そうしてしょぼくれていると、他のメンバーは片づけ終わったのか、
全員でこちらに向かってきていた。
「あれ、どうしたの? なんだか落ち込んでるみたいだけど――って、え?」
なにやら全員が青褪めた顔をしている。
しかも何故かクロメは抜刀し、こちらに刃を向けている。
「なんだ、どうした皆。そしてクロメの嬢ちゃんはなんで刀を抜いた。もしかしてまだ生き残りがいたか?」
それは何とも朗報だ。体の鈍り具合も把握出来て、更には生き残りで“アレ”も出来る。
一石二鳥じゃないか?
「どうしたじゃないよ! 頭が!」
「頭ァ? それがどうか――」
ボルスに頭と言われて額を触ると、
「あーこれか」
最初に貰った一発の銃弾の後が残っていたようだ。
まあ中に弾丸が残ってるようだし、傷が塞がらないのも当たり前か。
「動かないで、今、私が――」
クロメが八房を構えながらが近づいてくる。
死んでないぞ。
「ちょい待て、今治す」
そう言うと、中に残った弾丸が傷口から出てくる。
そして額の肉が盛り上がり、傷口が塞がる。
「こんなもんか」
「どういう……こと?」
八房を構えたままのクロメはそう問いかけてくる。
確かにこれは不思議だろう。
「帝具だよ。俺の帝具はウィルス型の帝具、細胞を変異させて不死の怪物へと変貌させる」
「じゃ、じゃあソープさんって不死身なんですか?」
「まあな…」
ウェイブはまだ半信半疑なのか、少し不安そうだ。
「あら残念。アタシの帝具の見せどころと思ったのに」
「いや、頭ぶち込まれてたらドクターでも治せないだろ」
確かにとドクターは笑っている。気楽そうだ。やっぱコイツ信用出来ない。
どうにも怪しいというか、一々目の奥の感情が透けて見える。
人体実験、駒、興味深い。様々な感情が目の奥で渦巻いてる。
こりゃ、早々に手を打つべきなのか。
「良かった、私ビックリしちゃったよ。頭から血がどんどん出てくるんだもの」
「いやすまんな。心配かけて」
「流石ですソープさん! 正義は頭を撃たれたくらいでは倒れませんよね!」
ボルスは相変わらずこちらを心配してくれていたようだ。
覆面を被っていてもその気持ちは伝わる。
セリューはいつも通りどこかズレているが、個性なのかね。
「そう言えばソープさん。賊の捕縛はしなかったんですか?」
ランは切り替えが早いのか、既に周囲の状況を確認して生き残りが居ない事を知ったようだ。
それ言われるとへこむな。
「失敗した。勢い余って皆殺しだよ」
「だから落ち込んでたんだ。意外とメンタル弱いの?」
「それはないなぁ。自分の鈍り具合に落ち込んでた」
ぐっと手を握り締め、力を込めて見るが。
もう馴染んだのか、指が掌に食い込む事も無い。
力加減は大切だと分かった。
「それにしても、鮮やかな切り口ね。一体どうしたのこれ」
「これだこれ」
死体を確認したドクターが興味津々に聞くので、
腕を刃へと変体させ、上へ掲げる。
「すげぇ! カッコいいじゃないですか、ソープさん!」
「お、おう…そうか?」
「ますます興味深いわ!」
目をキラキラと輝かせながら興奮するウェイブ。こういうの好きなのか。今度他のも見せてやろう。
ドクターは刀身を触りながら、別な意味で興奮している。
「それも帝具、ですか。随分応用性が高そうですね」
まあな、と返しながら腕を元に戻し、周辺を見やる。
「もう生き残りはいないみたいだな。砦の外はどうだったラン」
「抜かりなく、ですね。一人も逃がしていませんよ」
「じゃあ作戦終了、万事滞りなく終わりか」
今回の作戦で色々分かった。
今後はこうはならない。一度の失敗は構わないが、二度は無いように努めるのが俺だ。
他の武装も確認しておくべきだろう。確かに俺は不死だが、だからと言って油断は何を招くか分からない。
事実、油断していた俺はオネストに捕まった。慢心、奢り、停滞は良くない。
俺の“目的”の為にも、この部隊は絶好の場だ。
今度こそ、俺はやり遂げる。
その為には――、
「タツミ、お前が鍵になるんだろうな…」
「何か言った?」
「なんでもないよ。ほれ、さっさと帰って初の作戦成功でも祝おうぜクロメの嬢ちゃん」
頭を撫で、誤魔化しながら砦を出る為に歩く。
ああ、そうだ。
「『頭、洗っとけよ』…でしょ?」
クロメにいつか言った言葉を重ねられ、思わず笑ってしまった。
結構短めの戦闘でしたので、手抜き感がありますね…。
時間を掛けるとまたズルズルと投稿を行わなくなりそうなので、
短めにしようかとプロットを見直しております。
誤字脱字がある、改行の所為で見にくいなどのご意見をいただけると幸いです。