インフィニット・ストラトスW ハーフボイルド一夏 作:ベロリンガRX
俺の名前は織斑一夏、鳴海探偵事務所で働いているハードボイルド探偵………見習い………だった男だ。
なぜ過去形なのかというと現在俺はIS学園と言うIS操縦者育成用の特殊国立高等学校に入学しちまったからだ。
本来なら藍越学園に入学する予定だったんだが、俺としたことが、試験会場を間違えてしまったらしく、IS学園の試験会場に潜り込んでしまった。その時に偶然そこに置いてあったISに触れると、これまた偶然ISが起動しちまった。
かくして俺は世界で初めて“ISを起動出来る男”としてこのIS学園に入学させられちまったのさ………
「織斑くん、織斑一夏くんっ」
ふと気づくと、山田先生が俺を呼んでいる。どうやら自己紹介をしろとの催促らしい。
少し顔を上げて山田先生の方を見ると、山田先生はオロオロしながら
「おっ、織斑くん、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってるかな?ゴ、ゴメンね、ゴメンね!で、でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だからね、その、自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」
・・・随分と頭の低い先生だ、それでいいのか教師。
「あー、すいません山田先生、少し考え事をしていました。ですから特に怒ってたりはしていませんよ。頭を上げてくださいよ」
「ほ、本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ。絶対ですよ!」
俺はそんなに信用ならないのだろうか、はたまた単にそういう性分なのだろうか、十中八九間違いなく後者だろうな。
「大丈夫ですよ、それよりもあまり生徒相手に頭なんか下げてたらカッコつかないですよ。教師なんですからもっと堂々としてればいいと思いますよ。」
「あっ、そ、そうですよね、ゴメンね、みっともないところ見せちゃって」
言ったそばからペコペコしだした、ホントに背も頭も低いなこの人。
そんなことを思いながら席を立つ。同時に教室の全ての視線が俺に向けられる。当然といえば当然だが、あまりいい気分ではないな。物珍しいのはわかるが勘弁してほしい。俺は客寄せパンダじゃないんだ。
「さて、改めて自己紹介させてもらおう。俺の名前は織斑一夏、今日からこのクラスでみんなと一緒にISのことを学ぶことになった。因みに将来の夢はハードボイルドな探偵になることだ。まぁ、これからよろしく頼むぜ。」
決まった。今日も最っ高にハードボイルドだぜ………
「何がハードボイルドだ馬鹿者」
パァン!
「あだっ」
突如俺の後頭部を激痛が襲った。突然の事態に混乱してしまった俺はいきなり殴ってきた名前も知らぬ暴力教師に向かって啖呵を切る
「いってぇなぁ何すんだよってげぇ関羽ぅ!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者が!」
ドゴッ!
また叩かれた。しかも今度は角の方で叩いてきやがった。というか、なぜにこんな所にいらっしゃるのかね姉上様は………
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
相変わらずの暴君発言である。するとクラスメイト達の黄色い声援が響いた。
「キャーーーーーー!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉さまのためなら死ねます!」
なんだこれは。なんなんだこれは。突如として世界は混沌に包まれてしまった。千冬姉もかなりうんざりしているようだ。まさかこれは恒例行事だとでも言うのだろうか。
「・・・毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」
どうやら本当に恒例行事らしい。しかしどうやら千冬姉の台詞は火に油をぶちまける行為だったらしく
「きゃあああああああっ!お姉さま!もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして~!」
何がなんだかわからない………
「で?もっとマシな自己紹介は出来んのか、お前は」
「おいおい、まるで俺の自己紹介がダメだったみたいじゃないか、千冬姉――」
バァァン!また打ったよこの人。人の頭を打楽器か何かと勘違いしてるんじゃなかろうか。
「織斑先生と呼べ」
「……わかりましたよ、織斑先生」
「え……?織斑くんって、あの千冬様の弟……?」
「それじゃあ、世界で唯一男で『IS』を使えるのっていうのも、それが関係して……」
「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」
間違っても『試験会場間違えてテスト用のISに触れたら偶然動いちゃったぜ☆』なんて事言えんな……
「………………」
1日時間目の基礎理論授業が終わって休み時間。
俺は特に何をするでもなく考え事をしていた。何を考えていたかというともちろんこれからの生活、そして何より探偵としての仕事をどうするか、ということである。
いくら見習いとはいえ俺もおやっさんの弟子だ。どんな状況だろうと探偵稼業を疎かにすることなんか出来やしない。ただ、こんなところじゃ事件なんか起きたとしても俺じゃなくて教師の方にいくんだろうなぁ……
「……ちょっといいか」
「ん?」
突然、話しかけられた。振り返ってみるとそこには懐かしい顔があった。
「……箒か」
「……………」
篠ノ之箒。彼女に会うのは実に六年ぶりになる。しかし髪型は今も昔も相変わらずポニーテールだ。しかし久しぶりの再会だというのにもっと愛想よくできないのだろうか……
「廊下でいいか?」
「別にどこでも構わねぇぜ」
箒の後について行く。妙に箒の顔が怖かったのかどうかは知らねぇがそこに集まっていた女子集団が少し怯えながら道を空ける。
「そういえば」
「何だ?」
箒がなかなか話しかけてこないのでこちらから話しかけてみる。
「去年の剣道の全国大会で優勝したってな。おめでとう」
「……………」
俺の言葉を聞くなり、箒の顔がみるみるうちに赤いトマトみたいになっていく。どうやら照れているようだ。
「なんでそんなこと知ってるんだ」
「そりゃあもちろん新聞で見たからに決まってるだろ?」
「な、なんで新聞なんか見てるんだっ」
「新聞くらい見るだろ、俺は探偵だからな。世の中の事はよく知っておくべきだから新聞を見るのは当然だろう?」
それ以前にたとえ俺が探偵を目指していなかったとしても新聞くらい見ててもいいと思うんだが……
「さっきから気になっていたんだが、なぜ探偵なんだ?」
「そういえば箒にはまだおやっさんの事とか話してなかったっけ」
「おやっさん?」
「あぁ、俺の師匠さ。俺はおやっさんに憧れてハードボイルドな探偵を目指してるんだ」
おやっさんから見ればまだまだひよっ子だろうけど、いつかは俺も帽子の似合うハードボイルドな男になってみせるぜ。
「しかし本当に久しぶりだな。六年ぶりだが、箒ってすぐにわかったぜ」
「え……」
「髪型、変えてないんだな」
箒も今の髪型がよほど気に入っているのだろう。かくいう俺も箒はやっぱりこの髪型が一番だと思うな。
「よ、よく覚えているものだな……」
「ま、幼馴染のことくらい覚えてるさ」
「………………」
ギロリと俺を睨みつける箒。おやっさんに会う前の俺なら気づかなかっただろうが、これはおそらく箒の照れ隠しだ。
キーンコーンカーンコーン。
どうやら時間のようだ。これからまた地獄の授業が始まる。
「さ、時間だし俺たちも戻ろうぜ」
「わ、わかっている」
顔を背けてスタスタと歩き出す箒。今まで気づかなかったが、どうやら箒は相当な照れ屋だったようだ。おやっさんの下で修行してきたおかげで箒のことを前より少し知ることができた。
パァンッ!
「とっとと席に付け、織斑」
「………手厳しいねぇ、織斑先生は」
パァンッ!パァンッ!
まさかの二連続HITだった。
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