インフィニット・ストラトスW ハーフボイルド一夏 作:ベロリンガRX
俺の名前は織斑一夏。鳴海探偵事務所で探偵見習いをやっていたクールでハードボイルドな男だ。
先日の襲撃事件のせいでクラス対抗戦は中止。ISはフィリップの言ったとおり無登録のコアを使った無人のISだった。そして、スパイダーメモリを使っていたドーパントは、メモリを直接使った副作用のせいでショック死した。
フィリップ曰く、ドライバーを使わずにメモリを使ったせいでメモリの毒を消すことができずに死んでしまったのだという。
そして、一難去ってまた一難という状況がやって来た。
転校生がやって来たのだ。それも、2人も。
普通なら他のクラスに回すんじゃねぇのかと思っていたが、本人たちを見た途端にこのクラスにやって来た理由が分かった。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
転校生その1、シャルル・デュノア。フィリップと同じく人懐っこそうな顔。礼儀の正しい立ち振る舞い。中性的に整った顔。髪は濃い金髪。そして一番の問題は―――
「お、男……?」
そう、シャルル・デュノアは男なのである。俺とフィリップに次いで3番目の男のIS操縦者が現れたのだった。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方達がいると聞いて本国より転入を―――」
「きゃああああああああーーーーーーっ!」
予想通りの女子からの黄色い悲鳴が響き渡る。
「男子キタ━(゚∀゚)━!」
「フィリップ君とは違う方向でカワイイ系!」
「美形!守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれて良かった~~~~!」
相変わらずやかましいなオイ。
「3人目の男子か……実に興味深い」
フィリップにもいい感じにスイッチが入ったようだ。
そして千冬姉が女子たちを鎮めて二人目の紹介に入る。
「……………………………」
が、一言も喋らない。腕組みした状態で俺たちを下らなそうに見ている。
「……挨拶をしろ。ラウラ」
「はい、教官」
しかし千冬姉に言われた途端にその態度は一変。いきなり佇まいを直して素直に返事をする。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
ラウラと呼ばれた転校生はピッと伸ばした手を体の横につけ、足をかかとで合わせて背筋を伸ばしている。どう見ても軍人、それも千冬姉を『教官』と読んでいるので間違いなくドイツ軍人だろう。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
転校生その2、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
輝くような銀髪。腰近くまで長くおろしている。左目に眼帯。そして開いている方の右目は赤色を宿しているが、その温度は限りなくゼロに近い。正直言って気に入らねぇ。
「あ、あの、以上……ですか?」
「以上だ」
沈黙。教室の空気が完全に静寂に包まれた。その時、教室のドアを開けて誰かが入ってきた。
「失礼する。俺の教室は此処で間違いないか?」
「遅いぞ、照井。もう少し早く来い」
「すまない、少し用事があって遅れた」
赤いスーツを身にまとった男はラウラの隣りに立った。
「照井……竜だ」
そしてラウラと同じような自己紹介をした。しかし、今回は男だ。女子たちが黙っていられるはずもなく―――
「きゃああああああああああああああ―――ッ」
「4人目!また私達のクラスに男子が!」
「超イケメン!凄い好みのタイプ!」
「お父さんお母さん産んでくれてありがとうーー!!」
やっぱりやかましいなうちのクラスは。
「あの、照井君もやっぱり織斑くんとかの事聞いて転入してきたの?」
女子の誰かが3人目の転校生、照井竜に話しかけるが――
「俺に質問をするな」
帰ってきたのは何とも冷めた答えだった。
しかし、あの男……あの雰囲気……ハードボイルドだ……
「! 貴様が――」
俺は照井に気を取られて俺に迫ってくるラウラに気づけなかった。
そして次の瞬間――
パシンッ!
「…………」
「ってぇ……」
殴られた。いきなりなんだコイツは?
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
「随分な挨拶じゃねぇか……いきなり平手打ちは無いんじゃねぇか?」
「ふん……」
無視しやがった。何事もなかったかのようにスタスタと空いている席に座ると目を閉じ、動かなくなってしまった。
「まったく……なんなんだよ一体……」
それからHRが終わり、ISの模擬戦闘を行う為に着替えてグラウンドに集合ということになった。
シャルルが着替えるのに少し手間取っていたが(俺はISが特殊なので着替える必要無し)
他にはこれといって問題は……そういえば照井がいなかったな。
そして、結果から言うと、照井は諸事情により授業には出られなかったらしい。詳しいことは解らなかったが何処かのお偉いさん方に呼び出されたとかなんとか。
実習訓練も何事もなく(?)終わり、いつものメンバー+シャルルでISの特訓をすることになった。
俺のISはかなり特殊な部類に入るが、基本的なところは同じなので、射撃の練習とかを見てもらっていたのだが、急にアリーナ内がざわつきはじめた。
「ねぇ、ちょっとアレ……」
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」
注目の的になっていたのは、もう一人の転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
転校初日以来、クラスの誰ともつるもうとしない、それどころか会話さえしない孤高の女子。はっきり言って俺はコイツが気に入らねぇ。あきらかに相手を見下しているような態度が特に。
「おい」
ISのオープンチャンネルで声が飛んでくる。
「……何か用かよ?」
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」
「いきなりそんな事言われても、僕たちには君と戦う理由がないね」
俺の代わりにフィリップが答える。
「貴様にはなくても私にはある」
「言ってろ、お子様のワガママになんか付き合ってられるか」
「黙れ!貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成し得ただろうことは用意に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」
「なんでお前に認めてもらわなきゃいけねぇんだ?俺は俺だ。俺の戦いは俺が決める」
「ならば、戦わざるを得ないようにしてやる!」
次の瞬間にラウラのISが戦闘状態にシフトする。そして、左肩の大型実弾砲が火を噴いた。
ギイィン!!
「ちょっとあんた!いきなりぶっ放すなんてあたし聞いてないんだけど!?」
鈴がギリギリのところで実弾を弾き、衝撃砲を準備態勢へとシフトさせる。
「どうやらドイツ軍人には常識というものが欠如しているようですわね」
セシリアもブルーティアーズを待機させている。
「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。……ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」
どうやらあいつはどうしても喧嘩がしたくて仕方がないようだ。
「何?やるの?そんなにボコられたいの?大したマゾっぷりね」
「あらあら鈴さん、こちらの方はとうも言語をお持ちでないようですから、あまりいじめるのはかわいそうですわよ?」
二人とも既に臨戦態勢である。少しは煽り耐性を身につけてもらいたい。
「やるならさっさと来い。どうせ貴様らでは相手にならん。下らん種馬を取り合う様なメスに、この私が負けるものか」
ブチッ
明らかに行ってはいけないことを言ってしまった。鈴は知らないが、セシリアはフィリップに気があるようだったし、二人とも堪忍袋の緒が切れてしまったようだった。
「今なんて言った?あたしの耳には『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえたけど?」
「フィリップさんは関係ありません!フィリップさんは種馬なんかじゃありませんわ!今すぐ訂正してもらいますわよ!」
一発触発。まさに二人が飛びかかろうとした次の瞬間――
「待て、そいつには俺の相手をしてもらう」
突如として現れた照井が二人の前に立ちふさがった。
「ちょっと邪魔しないでよ!あいつは直接ぶっ飛ばしてやんないと気がすまないんだから!」
「そうです!あなたは引っ込んでてください!」
「専用気持ちなら誰でもいいんだろう?俺も丁度、お前に聞きたいことがある」
「誰でも同じだ。貴様ごときに私が負けるはずがない」
もはや照井に二人の言葉は届いていない。照井はバイクのスロットルのようなベルトを腰に装着する。ベルトの中心には見覚えのあるスロットがある。
そして照井が取り出したのは、赤いメモリだった。
「ガイアメモリ!」
「照井竜のISもメモリを使ったISなのか」
フィリップも予想外の出来事に驚きを隠せないようだ。
照井は赤いガイアメモリのボタンを押す。
<アクセル>
「変……身ッ!」
照井は力強く叫ぶとアクセルメモリをスロットに挿入し、スロットルを捻る。
<アクセル>
バイクの様な音を響かせながら、照井のIS……「アクセル」が姿を現した。
「さぁ………振り切るぜ」
シャル&ラウラ+A(アクセル)予定通り出せたね。結構無理矢理な気もするけどw