インフィニット・ストラトスW ハーフボイルド一夏 作:ベロリンガRX
俺の名前は織斑一夏。鳴海探偵事務所で探偵見習いをやっていた男だ。
現在俺は政府特命とやらで急遽寮に無理矢理ねじ込まれたらしい。
「えーと……1025室は……ここか」
部屋番号を確認して、ドアに鍵を差し込もうとした。しかし耳を澄ますと、中からシャワーの音が聞こえてくる。どうやら俺は一人部屋ではないらしい。探偵稼業をやっているおかげでこういう普通なら聞き逃すような小さな音でも聞こえるようになっているというのは面倒がなくてとても助かる。もし俺がおやっさんと出会ってなかったら、おそらく何も考えずに入室してシャワーから上がった誰かと遭遇してひどい目にあっていたことだろう。
しばらく外で待っているとシャワーの音が止まった。どうやら出てきたようだ。
「おい、中の人。俺は今日から此処であんたと相部屋になった織斑一夏だ。荷物の整理とかがあるんで出来ればさっさと着替えてくれねぇか?」
「なっ、い、一夏か!?」
部屋の中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。間違いない。箒だ。
「箒だったのか。そいつは都合がいい。とりあえず早く着替えてくれ」
「ちょ、ちょっと待ってろ!」
そう言うとバタバタと音が聞こえてくる。いくらなんでも慌てすぎだろう。
しばらくしたあと、箒が部屋から顔を覗かせてきた。
「……入れ」
「おう、邪魔するぜ」
箒は随分と慌てていたのか、着ている剣道着はかなり緩めだった。
ベッドに腰を下ろす箒。いつものように俺を睨みつける。何をそんなに照れているのだろうか?やはり男に女の部屋を見られるというのは恥ずかしいのだろうか?
「お前が、私の同居人だというのか?」
「まぁな」
「ど、どういうつもりだ」
「は?」
「どういうつもりだと聞いているっ!男女七歳にして同衾せず!常識だ!」
「まぁそう固いこと言うなよ。俺とお前の中だろう?」
「なっ…………」
みるみるうちに顔が赤くなる。ほんと箒はこう言うのに耐性がないな。
「お、お、お……」
「お?」
「お前から、希望したのか……?私の部屋にしろと……」
「いや、俺が希望したわけじゃない。本来なら一度おやっさんのところに戻って挨拶を済ますつもりだったんだがな……」
「そ、そうか……」
こんどは妙にションボリとしてしまった。……ふむ。
「……まぁ、他の見ず知らずの人と相部屋になるよりは、箒と一緒になれたのはラッキーだと思うけどな」
「そっ、そうか」
なぜだろう、さっきと同じセリフなのに反応が正反対だ。なかなかに斬新だ。
「まぁ、それはそれとして、今の状況についてだが……」
「そうだな、男女一つ屋根の下でくらすってなるなら、ある程度線引きは必要不可欠だろうな」
「そ、そういうことだ。まずはシャワーの使用時間だ。私は七時から八時。一夏は八時から九時だ」
「まぁ、シャワーの時間なら俺は何時でもいいんだがな」
「しかし、お前はしばらく会わないうちに本当に変わったな」
「当然だろ。六年も間があけば人間変化の一つくらいするさ」
特に俺の場合は、おやっさんのおかげで劇的に変わっただろうからな……
「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」
千冬姉に唐突にそんなことを言われたのは三時間目が始まってすぐのことだ。
「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」
「専用機……か」
正直、予想外だった。ISのことを何も知らない素人同然の俺に専用機が回ってくるとは夢にも思わなかった。
周りのクラスメイトも羨ましがっている。しかしこれは嬉しい誤算というやつだろう。
これでこちらもセシリアと同じく専用機で戦える。その分相手が警戒してくると苦しくなるが、そこはこれから届くISの性能に期待するしかない。もちろん、俺自身も練習は欠かさないがそれだけで勝てるほど世の中甘くない事も十分承知だ。
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」
またあんたかセシリア。あんた結構暇なんだね。あんたが余裕ぶってる間にこっちはあんたのISの事も少しづつ調べさせてもらってるんだがね。そんな余裕ぶってていいのかね?まぁ俺からすれば全然OKだけども。
「まぁ?一応勝負は見えていますけど?流石にフェアではありませんものね」
「? 何がだよ?」
「あら、ご存知ないのね。いいですわ、庶民のあなたに教えて差し上げましょう。このわたくし、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますの」
「ふーん」
いや知ってるし。絶賛検索中だし。出るかどうかわからんけど。
「……馬鹿にしてますの?」
「いや、俺に他人を馬鹿にする資格なんかねぇさ」
「ふん、まあ。どちらにしろこのクラスの代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであると言う事をお忘れなく」
そしてセシリアはそのまま立ち去っていった。正直時間の無駄だったな。
「ねぇ。君って噂のコでしょ?」
食堂で箒と一緒に飯を食べてると、隣から女子に話しかけられる。見ると、三年生のようだ。
「まぁ、たぶんそうだと思うぜ」
とりあえず返事をすると、先輩は俺の隣の席にかけた。
「代表候補生のコと勝負するって聞いたけど、ほんと?」
「ああ、そうだが」
「でも君、素人だよね?IS稼働時間はいくつくらい?」
「大体二十分くらいだと思うが」
「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がものをいうの。その対戦相手、代表候補生なんでしょ?だったら軽く三百時間はやってるわよ」
まぁ大体それくらいの予想はつく。だがそんなことで引き下がるようではハードボイルドは語れない。
「でさ、私が教えてあげよっか?ISについて」
ふむ、こいつはちょうどいい。本当は箒に教えてもらおうと思っていたが、多分箒は部活で忙しいだろう。
「ああ、ぜ」
是非に、と言おうとした言葉は、箒の言葉に遮られた。
「結構です。私が教えることになっていますので」
これは予想外。まさか箒が自分から言い出してくるとは……
「あなたも一年生でしょ?私の方がうまく教えられると思うなぁ」
「……私は、篠ノ之束の妹ですから」
「篠ノ之って――ええ!?」
「ですので、結構です。」
まさかそこまでして俺に教えたかったのか。そんなこんなで、俺は箒にISの事を教わる……前に剣道の稽古につきあわさせられることになっちまった。
「少し剣が鈍ってるな」
「まぁ、トレーニング自体は怠らなかったけど、もう随分剣を握ってなかったからなぁ」
「ふむ、そうか……よし、体自体はなまっていないんだ、この際鍛え直すか」
「おいおいISはどうしたISは」
「いや、これもブレードを使うときに役に立つはずだ。これから毎日、放課後三時間、私が稽古をつけてやろう!」
俺は知っている。こうなった箒を止めれるのは千冬姉くらいだということを。
「ハァ……わかったよ。付き合ってやるぜ」
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