インフィニット・ストラトスW ハーフボイルド一夏 作:ベロリンガRX
俺の名前は織斑一夏。鳴海探偵事務所で探偵見習いをやっていたダンディでハードボイルドな男だ。
あれからクラス代表の件も滞りなく俺に、いや俺達に決まり、フィリップも同じクラスに転入となった。
セシリアもなんだか刺が取れたように雰囲気が良くなり、これからの学園生活も少しはマシになるだろう……
「ねぇ、転校生の噂聞いた?」
「あぁ、今の時期に転校なんて珍しいよな」
今はまだ四月だ。この時期に転校してくるくらいならはじめからIS学園に入学しておけば良かったんじゃないだろうか。
「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」
「中国……か」
「中国の代表候補生か、実に興味深い」
「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」
セシリアは相変わらずの態度である。
「セシリアちゃんも負けてられないよね」
「ええ、わたくしもブルーティアーズもそう簡単に遅れは取りませんわ」
そしていつの間にかセシリアがフィリップと仲良くなっていた。何があったんだ……
「しかし、一体どんな奴が来るのか……」
「気になるよね、一夏」
「そうだな、もしかしたらいずれ戦う事になるかもしれねぇしな……」
代表候補生というからにはそれなりの実力者に違いない。いずれぶつかる時が来るとしたら、相手の情報は調べておきたい。まぁ、そういうのはフィリップがいれば大体は解決するんだが……
「織斑くん、フィリップくん、がんばってねー」
「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」
「―――その情報、古いよ」
ふと、教室の入口から聞いたことのある声が聞こえてきた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
「お前……鈴か?」
「そうよ。中国代表候補生、風鈴音。今日は宣戦布告にきt「鈴ちゃん!久しぶりだね」ってええっ!?フィリップくん!?」
「どうしたんだい鈴ちゃん。君のことだから一夏がいることを知ったから此処に来たんじゃないの?」
「えっと、いや、そうだけど、じゃなくて、フィリップくんがいるなんてあたし聞いてない!」
初めは気取っていた言い回しだったが、フィリップの登場に驚いたのかいつも通りに戻ってしまった。
「相変わらずみたいだな、鈴お前も元気そうでなによりだ」
「……一夏、あんたも相変わらず荘吉おじさんの真似事やってんの?はっきり言ってその帽子全然似合ってないから」
「なっ、なんだと?」
「おじさんからも言われてたでしょう?『お前に帽子はまだ早い』って。ハーフボイルドが気取ったってカッコつく訳ないでしょう?」
「ハーフボイルドって言うなあぁぁぁぁぁ!!」
「おい、一夏こいつは誰だ?知り合いか?」
俺が鈴と話していると箒がむすっとした顔で聞いてきた。
「フィリップさんとも知り合いみたいでしたけど……どういった関係なんですの?」
セシリアも食いついてきた。
「まぁ、幼馴染ってやつね。フィリップくんとも大体一夏と同じ時期にあったよね?」
「そうだね、大体四年前くらいだね」
そういえば俺たちの付き合いもそれくらいになるのか……俺がしみじみと昔を思い出していると
「おい、もうSHRの時間だ。さっさと教室に戻れ」
千冬姉がドアの前で仁王立ちしていた。
「あれ、もうそんな時間ですか。それじゃあ戻りますね。またあとで来るからね!一夏!」
そう言って鈴は去っていった。
「お前たちも早く席に付け」
「はいはいわかってますからその出席簿をちらつかせるのをやめていただきたいんだが」
いい加減俺の頭皮というかそれ以前に俺の帽子がやられるから勘弁してくれ。
「待ってたわよ、一夏!」
食堂に行こうとしている俺たちの前に鈴がなんか立ちふさがった。
「いや、別に待っててくれなんて言ってねぇけどな」
「何よ、あたしみたいなカワイイ女の子に待っててもらえたんだから少しはありがたく思いなさいよ」
「どうでもいいけどそこどいてくれ。通行の邪魔だぞ」
「う、うるさいわね。わかってるわよ」
俺に言われて通路を塞いでいた鈴はテーブルについた。俺たちも同じテーブルで食べることにしよう。
「それにしても本当に久しぶりだね。鈴ちゃんも元気だったかい?」
「うん、あたしは元気にしてたわよ。フィリップくんは?」
「僕も特に病気になることも無かったよ」
「そう。それで一夏は?風邪とかひかなかったの?」
「なんだよその言い方?俺は風邪なんかひかねぇっての」
「そうだよ。一夏は馬鹿だから風邪をひかないって言ってたのは鈴ちゃんじゃないか」
「……お前まだあの時の事覚えてんのかよ」
久々の再会に会話が弾む俺達。そこに話においてけぼりにされていた箒が入ってきた。
「一夏。コイツが言っていた幼馴染とはどういうことか説明してもらいたいんだが……」
「説明もなにもそのままだろ?箒が引っ越していったのが小四の終わりだったろ?鈴は小五の頭に転校してきたんだよ」
そういえばこの幼馴染が顔を合わせるのは初めてだったな。二人が仲良くなれるように俺が後押ししてやるかな。
「んで、こっちが箒だ。前に話してた小学校からの幼馴染で、俺の通ってた剣術道場の娘だ」
「ほうほうほう、なるほどなるほど……」
鈴はジロジロと、舐めまわすように箒を見ている。まるで品定めをしているかのように。
「初めまして。これからよろしくね」
「ああ。こちらこそ」
互いに握手を交わす二人。だが箒の方が妙に鈴を睨んでいる。何か警戒しているのだろうか。
「ンンンッ!わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、風鈴音さん?」
「ああ、大丈夫。忘れてなんかいないよ。イギリス代表候補生、セシリア・オルコットさん」
「そう、ならいいのですけど」
「鈴ちゃん、セシリアちゃんのことも知ってたのかい?」
「とーぜん。いずれは鳴海探偵事務所の所長になるんだから。これくらい当たり前よ!」
「おいちょっと待て。なんでお前がおやっさんの事務所の所長になるんだよ」
「いいじゃない別に。ハーフボイルドのアンタには所長なんて務まらないだろうし」
「だからハーフボイルドとか言うんじゃねぇ!」
「おい一夏、コイツはおやっさんとか言う人とも知り合いなのか?」
「あぁ、こいつの両親がおやっさんの親戚なんだよ」
「なるほど、そういうことか」
俺が鈴と出会ったのもおやっさんがきっかけだったんだよなぁ……おやっさんは俺にたくさんのかけがえのないものを与えてくれたんだ。そうしみじみ思っていると
「それで一夏、最近おじさんの具合はどうなの?」
鈴が思いっきり俺の地雷を踏み潰した。
「おやっさんは………まだ、目を覚まさないんだ……」
「……そっか、ごめんね。こんな時に聞いちゃって」
一気に場の空気が最悪になってしまった(むしろしてしまった)。
だがそんな状況でも俺たちに救いの手を差し伸べる(空気を読まないとも言う)相棒の存在がある。頼むフィリップ、お前が俺達の最後の希望だ。
「鳴海荘吉は二年前に僕と一夏が誘拐された時にISと生身の状態で戦い、瀕死の重傷を負ってしまったんだ。幸い織斑千冬が助けに来たから何とか一命はとりとめたけど、あれ以来ずっと意識不明のままなんだ」
希望なんてなかった(空気読んでくれよ)。
鈴が所長と合体しました。
そしておやっさんはギリギリ生きている状態らしい。