インフィニット・ストラトスW ハーフボイルド一夏 作:ベロリンガRX
俺の名前は織斑一夏。鳴海探偵事務所で探偵見習いをやっていたダンディでハードボイルドな男だ。
前回フィリップの言葉のマキシマムドライブによって場の空気がメモリブレイクされてしまい、俺たちはなんともいたたまれない気分になり、鈴もそそくさとその場を立ち去っていった。
それから箒とセシリアが俺達にISの特訓の件で少しいがみ合ったと思ったら割とあっさり仲直りしてしまったり鈴が箒に部屋を変われと迫ったりと色々あったが、まぁこの場では割愛させてもらおう。それから数週間後、クラス対抗戦の第一回戦。つまり俺達と鈴の試合の日となった。
会場はもちろん満員御礼。ただでさえ男のISだということに加え、フィリップと二人で操縦するというとんでも事実に皆興味津々なのだろう。
しかし周りのことをきにしている余裕は無い。相手は鈴、中国の代表候補生だ。鈴のIS『甲龍』もセシリアのブルーティアーズと同等……もしくはそれ以上のスペックを誇るのかもしれない。油断は禁物だ。そう気を引き締めていると、選手入場のアナウンスが聞こえてきた。
「おし、行くぜフィリップ」
<ジョーカー>
「あぁわかった、それじゃあ行ってくるね」
「はい、頑張ってくださいね。フィリップさん」
<サイクロン>
「「変身!!」」
<サイクロン・ジョーカー>
もう何度目の変身かわからなくなるほどの特訓を重ねてきた俺達。さっきまで少し不安だったが、フィリップと一つになることで心に余裕が生まれる。例え相手が誰だろうと負けない自身が溢れてくる。さぁ、勝負だ鈴。
両者が定位置につく。二人……いや、三人の間に会話はない。鈴もフィリップも試合開始の合図をひたすらに待ち続けている。そして……
『それでは両者、試合を開始してください』
ブザーが会場に響き渡る。それがなり止むと共に鈴の青龍刀と俺の拳がぶつかり合う。
ガキィンッ!!
剣相手に素手で向かってくるとは思っていなかったのか、鈴の表情が驚愕に染まる。だが、それも一瞬の出来事である。すぐさま鈴は立て続けに青龍刀を振り下ろす。なぎ払う。切り上げる。何とか俺もそれをさばくが、このままでは消耗戦になるばかりだろう。
「一夏、此処は一旦距離を置いたほうがいい」
「ああ、分かってる」
すぐさま後ろに後退するが――
「――甘いっ!!」
鈴の肩アーマーが開く。何かが来るっ!直感的にそれを感じ取った俺は回避行動に移る。しかし時既に遅し。俺は目に見えない何かに殴り飛ばされた。
「ぐあぁっ!!」
「今のはジャブだからね。まだまだこんなのでへばらないでよ!」
不敵な笑みを浮かべる鈴。またさっきのが来る。それも、さっきのよりも何倍もの威力のヤツが!しかし牽制をまともに受けて体制を崩した俺に本命を躱す術はなく――
ドゴッ!!
「ガハァッ!!」
強烈な一撃をくらい、地面に叩きつけられる。エネルギーもかなり持って行かれてしまった。これはマズイ。
「クソっ、おいフィリップ。アレの正体がわかるか?」
「アレはおそらく『衝撃砲』だ。少し前にあのISを検索した時に情報が載っていた。確か、空間に圧力をかけて砲身を生成し、余波で生じる衝撃を砲弾として打ち出すらしい」
「なるほど、空気砲みたいなもんか」
「威力はそれの比じゃないけどね」
そんなことはたった今身をもって理解したばかりだ。しかしどうする……目に見えない砲弾をどう攻略するか……
「よくかわすじゃない。『龍砲』は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに」
「なめんなよ、俺たちを誰だと思ってやがる?」
「僕たちは二人で一人の探偵。そう簡単に負けはしないよ」
(とはいったものの、どうするフィリップ。ハイパーセンサーに空間の歪みとかを探らさせてるが遅すぎる)
(そうだね……そうだ、僕に一ついい案がある。一夏だから出来る名案がね)
「なるほど、そいつはいい。」
「何よ、頭の中で作戦会議?いくらフィリップくんが天才だからってあたしの『龍砲』は防げないでしょ?」
「さぁて、そいつはどうかなぁ?」
随分と余裕そうだが、それもここまでだ。俺達の本当の実力を見せつけてやろう。ドライバーからジョーカーメモリを引き抜き、メタルメモリと交換する。
<サイクロン・メタル>
「さぁ、ここからが本番だぞ!」
「なぁに?今更武器を出してくるとか、あんた手抜いてたんじゃないでしょうね?」
「そんなわけ無いだろ?」
「僕たちはいつだって本気さ」
「ふぅん、まぁいいわ。なんだろうと全部撃ち落としてあげるわ!」
衝撃砲が唸りを上げる。ギリギリのところで何とか回避する。そして再び衝撃砲が飛んでくる前に瞬時加速で一気に距離を詰める。
ギィン!ガァン!
メタルシャフトと鈴の両刃の青龍刀がぶつかり合い、火花を散らす。一進一退の攻防が続く中、俺達はチャンスを伺っていた。おそらく、俺達が鈴に勝つにはこの衝撃砲を封じなければならない。ではどうするか?答えは簡単だ。
「このっ、吹っ飛びなさい!」
鈴が距離を開けて衝撃砲を放とうとした瞬間。俺は瞬時加速を使ってその距離を縮める。
<メタル・マキシマムドライブ>
「「メタルツイスター!!」」
ドゴォッ!!
凄まじい衝撃が走る。右の二つの衝撃砲は何とか潰したが左の衝撃砲に吹き飛ばされてしまう。
「グッ……あんたも無理するわねぇ……捨て身の一撃とか、正直笑えないわよ?」
「でもこれで鈴ちゃんの衝撃砲の威力も半減だ。一夏が『馬鹿』だからこそ出来た作戦さ」
「そうそう俺だから出来たっておいフィリップ!お前俺だから出来るってそう言う意味かよ!?」
「まぁ僕も相棒の事は信じてたから、きっと成功すると思ってたよ」
「そんな信じられ方されても嬉しくねぇよ!!」
……と、とにかくこれで俺たちにも勝機が出てきただろう。あとは左の肩と腕の衝撃砲を潰せば……
そう思っていた次の瞬間。
ズドオオオオオオオンッ!!!
アリーナ全体を襲う巨大な衝撃と共にステージ中央から煙が上がっている。何かがアリーナのシールドを突き破って入ってきたらしい。
「こいつは……」
「一夏、気をつけて。何かがいるよ」
そして煙が晴れて、姿を隠していた奴らが姿を現した。
そこにいたのは、Wと同じく全てを包み隠す全身装甲のISと――
――蜘蛛の姿をした怪物だった。
バトライドウォーが楽しみすぎて毎日が色々とヤバい。マジヤバい。どれくらいヤバいかって言うと、マジヤバい。