シンデレラプロジェクト、プロジェクトルーム。
一次オーディションで合格していた十一人のアイドル候補生が集まっていた。
「お時間頂き、ありがとうございます。今回集まって頂いたのは他でもありません。明日、正式にシンデレラプロジェクトが始動します」
その言葉に、黄色い声がルーム内に響き渡った。
にょわー、とか、覚醒の刻、とか、ロシア語とか。
皆が待ちに待った時である。
印税生活とか言ってる少女もいるが、それはさておき。
「お待たせしました。先日、欠員補充の三名が揃いましたので、早速ですが明日、宣材写真を撮影します」
「せんざい、写真?」
「あ、私それ知ってるよー! 決めポーズするんでしょ?」
「決めポーズ? だったらみりあもできるよー!」
せんざい、が変換できなかったのだろう。
赤城みりあが首を傾げていると、城ヶ崎莉嘉がすかさず補足した。
そういった知識が中学生なのにあるというのは、姉の城ヶ崎美嘉のおかげか。
マセた様子の莉嘉に、みりあも大きく自己主張しながら手を上げた。
決めポーズ、間違ってはいないが、少しニュアンスが違う。
わかりやすくていいけど、と陣内は苦笑しながら訂正した。
「決めポーズというか、自分らしい様子でいいからね」
「そうなると、みくはやっぱり猫ちゃんポーズだにゃ!」
「私はロックな感じかな」
「ロックな感じってどんな感じにゃ?」
「え、それはあの……こんな感じだよ!」
猫キャラで売り出す予定の前川みくが、自称ロックなアイドルを目指している多田李衣菜につっこむ。
ロックな感じ、ということで李衣菜はエアギターを披露。
慣れてない様子に、みくは愛想笑いしかできなかった。
この子にわかにゃ、と。
「服装は各々でご用意ください。当プロジェクトは個性を重視していますので、ご自由で構いません」
「それじゃあ、私は制服にしようかなぁ。あ、智絵里ちゃん、お菓子食べる?」
「い、いただきます。私の高校、制服無いから、どうしようかな……」
「私服でいいんじゃないかなぁ? 智絵里ちゃんの服、可愛いもん!」
「ほ、本当に? ありがとう」
のほほんとした様子で手作りのお菓子を勧める三村かな子。
緒方智絵里はこんがり焼けたクッキーを、一枚手にとった。
両手に持って食べる様子は小動物を思わせる。
「また、当日は撮影用にメイクさんもつきますが、ご不安でしたらご自身の道具をお持ちください」
「よーし、きらりは自分の持ってくるにぃ! 杏ちゃんはどうすゆー?」
「え~? 私はこのままでいいよ~」
「そんなのもったいないよぉ。じゃあじゃあ、きらりが杏ちゃんを可愛いくしてあげるにぃ!」
「別にいいってば~。この格好のアイドル見たら、仕事なんか頼む気なくなると思うし」
諸星きらりは可愛いものが大好きで、オシャレも好きなので、自前の化粧道具を持ってくることにした。
対してソファでだらけている双葉杏はそういったことにまったく頓着しないようだ。
『必要悪』とプリントされたTシャツを着用している杏は、しっかりしていれば可愛い少女だ。
ただ、できる限り働かないことを至上としている杏は見た目にあまり気を使わないので、仲の良いきらりがいろいろとお節介することで、なんとか成り立っている。
「簡単な説明は以上となります。詳細は書面にてお渡ししますが、何か質問はございますか?」
「あの、道具を持ち込んでも大丈夫でしょうか。せっかくなので、ラクロスのクロスを持とうかなって」
「大丈夫ですよ」
「フフフ……我も魔界の神器を手にしようぞ(私は日傘を持っていきます!)」
「あー、神崎さん。日傘だったら問題ないよ」
「ビノークル……双眼鏡も、大丈夫ですカ?」
「はい、大丈夫です」
プロジェクトメンバー最年長の新田美波は、ラクロスサークルに所属していることもあり、関連する道具を持ち込むようだ。クライアントに活発で健康な印象を与えることができるだろう。
神崎蘭子は独特の言語を操り、武内はたまにしか意味を理解できないが、陣内がおおよその意味はつかめているようなので、コミュニケーションは任せている。また、自分のメモ帳に『魔界の神器=日傘』と記した。いつか辞典が出来上がるだろう。
ロシア語と、少し慣れない日本語を話すのはアナスタシア。天体観察が趣味の彼女にとって、双眼鏡はよく似合うと思われた。
「質問は以上でよろしいでしょうか。でしたら、事前にご連絡した通り、これから基礎レッスンを受けて頂きますので、旧館のレッスンフロアまでお願いします」
「まずはボーカルレッスン。その後にダンスレッスン。最後にビジュアルレッスンって流れね。ビジュアルが終わったら、シャワー浴びたい人はシャワー浴びて、着替えてからプロジェクトルームに戻ってくること」
「「「はーい」」」
「それでは、移動をお願いします」
武内の声を合図に、プロジェクトメンバーは各自更衣室へ向かった。
騒がしかったプロジェクトルームに静けさが戻る。
以前までは武内と陣内、千川しか出入りしなかったこの部屋に総勢14名のアイドル達が集まることになる。
こんなもんじゃないだろうな、と陣内はそう遠くない未来を思った。
「タケさん、先に降りてますね」
「ええ。私も後で向かいます」
今回、メンバーに集まってもらったのは、各員の力量チェックと、適性チェックである。
アイドルの大事な三要素のボーカル・ダンス・ビジュアル。
それぞれの得意不得意を把握することで、今後のレッスン内容や、後々売り出していく方針に加味していくという訳だ。
また、更に大事なチェック項目に、人間関係がある。
誰と誰の仲が良くて、誰と一緒だと笑っていることが多い、とか、誰は気遣いができる、誰はムードメーカーである、などなど。
レッスンを受けていると、疲れることや、落ち込むことが多い。
そこでの人間性をよく見ることで、今後のユニット構成等を考えていくつもりだった。
雑務が残っている武内を残し、陣内は一足先にレッスンフロアへと向かった。
ボーカルレッスン。
担当はトレーナー姉妹の三女、青木明。
長女、次女と比べて厳しくはなく、女性的な性格で、比較的若年のアイドルたちに好かれている。
彼女が指導するのはボーカル、つまり歌声、いや声といってもよい。
アイドルとして人気になるためには必要な要素の一つである。
ライブには行かない、でも音楽は聞く、といったライトなファン層にとって、ボーカルはそのアイドル自体を決めるようなものでもある。
また、アイドルに興味が無い層にも、CMや音楽番組、ラジオで耳にして、そこから気に入ってファンになってもらえる可能性も大いにあるため、欠くことのできない要素だ。
レッスン全部に最初から最後まで立ち会う陣内はところどころでメモを記していく。
「(小中学生組は元気で押すしかないかな……でも神崎さんは特徴的な声をしている。性格と合わさってコアなファンができるかもしれない。一番多い高校生組はアナスタシアさんと三村さんがいい声だ。大学生の新田さんは文句ないな)」
一つ、声といっても十人十色。
綺麗な声、可愛い声、透き通るような声、よく響く声。
表現が様々あり、どれも悪いとはいえない。
ただ、中でも陣内が重視するのは、よく通る声、だった。
どういう声か、といわれると難しいが、重視する理由の一つにライブがある。
ライブはマイクとスピーカーを通して観客へ声を届けるが、その際にこもってしまうと、響いてしまって何を言っているかわからなくなってしまう事がある。
もちろん会場によるけれど、どの会場でも安定して歌声を響かせることができれば、それは大きな武器となる。
キャラクター性も大事だが、まず、よく通る声を基礎に、そこから個性を付け加えていきたい、というのが陣内の心情だった。
「(まあ、タケさんとかプロジェクト方針としては個性が第一だから、難しいだろうけど)」
会社の方針には従う。
しかし、持論を無くすわけではないので、いつか自身がプロデューサーとして立つ時に、知識や経験は蓄えておきたかった。
レッスンは大詰めに入っていた。
流れとしては、全員で発声練習、その後一般的な曲をフルで。
最後に数組に分かれて『お願い!シンデレラ』を歌う。
その最後の組がちょうど始まったところだった。
「前川さん、初レッスンはどう?」
「歌うだけだけど、カラオケとは違って、ちょっと疲れるにゃ」
壁によりかかって休憩しているみくに声をかける。
確かに、少し息があがっているように見えた。
「お腹から声出してる証拠だよ。本当は踊りながら歌うんだし、頑張ろう」
「もちろんにゃ!」
ガッツポーズするみくや、他のメンバーにも声をかけている内に、ボーカルレッスンは終わった。
ダンスレッスン
担当はトレーナー姉妹の次女、青木聖。
中性的な喋り方、といえば聞こえはいいが、要は男勝りだ。
長女の麗ほどではないにせよ、厳しく指導する様子は小さいアイドル達には怖く、大人のアイドルたちには丁度よいくらいだった。
彼女が指導するのはダンス、体の動かし方。
ボーカルとは違い、見ている観客をより惹きつけるための要素だ。
ユニットであればどれだけ綺麗に揃っているか、ソロであればどれだけ大きな動きができるか。
ボーカル重視のアイドルであればそこまで踊ることはないかもしれないが、プロジェクトメンバー全員曲も大いにあり得るシンデレラプロジェクトのメンバーはダンスの力も必要とされる。
「(ダンスに関しては、赤城さんも城ヶ崎も良い感じだ。元気な様子がより映える。前川さんと多田さんも体がよく動いている。どっちもキャラクター強いけど、むしろそこが合うかもしれないな)」
横では武内も手帳に何かしら書き込んでいる様子だった。
ダンスレッスンから武内が参加したことにより、各メンバーに少し気合が入る。
「(そりゃあ、プロデューサーのお眼鏡に適えば真っ先にデビューできるかもしれないし、気合入るか)」
ダンスレッスンは、簡単なステップをいくつか練習し、最後にそのステップを組み合わせて通す流れだった。
いくら広いレッスンルームといえど、全員を見ると指導が行き届かないこともあるので、今回も数組に分かれていた。
「双葉さん……大丈夫?」
「もう無理。帰りたい。けどここから一歩も動きたくない……」
息も絶え絶え。
そんな様子の杏に陣内は心配になってしまう程だった。
「まだビジュアルレッスンもあるから、無理しないようにね」
「だから、もう無理だってばー。それじゃ杏は早退するねっ!」
うつ伏せの状態から、まるでビーチフラッグのように勢い良く起き上がった杏。
その肩をすかさず武内が掴んだ。
「双葉さん、お元気そうなので、まだお願いします」
「うぅ、ヒットマンみたいなプロデューサーが休ませてくれないよ……杏に帰る権利をーっ!」
「だめです」
傍から見ると事案だな、と陣内は思わずにいられなかった。
ビジュアルレッスン。
担当はトレーナー姉妹の四女、青木慶。
まだ学校に通っており、トレーナー業と両立させている最年少トレーナーだ。
若いということもあり、三女の明と共に若いアイドルからは好かれている。
彼女が指導するのはビジュアル、外見というか見られ方だ。
笑顔の振りまき方一つで印象は大きく変わる。
元気いっぱいの笑顔、少し儚げな笑顔、ほくそ笑む笑顔。
それらを、ジャンプしながら、手を振りながら、口元を隠しながら。
そうすることでキャラクターが確立されていき、よりファンを惹きつけたり、仕事も取りやすくなったりする。
ビジュアルは自然にできるアイドルもいれば、努力して作り上げたアイドルもいるので、レッスンにてその辺りは見極めなければならなかった。
「(緒方さんはボーカルとダンスが厳しい分、ビジュアルでカバーできる。触れると壊れてしまいそうな印象はいけるな。同じく双葉さんもビジュアルで勝負できる。まあ、彼女はキャラクター的にも歌って踊るタイプではないし。それにしても、諸星さんは圧倒的だ……身長がまったく足を引っ張っていない。むしろモデルとしてもいけるなコレは)」
明日の宣材写真撮影の練習も兼ねて、メンバーには被写体になってもらう。
ちなみに撮影役は陣内。
本番でも撮影するのは男性だし、トレーナーの慶は指導をしたい、武内は全体を見たい、ということでこうなった。
陣内としても、レンズを通してみると、また違う観点が見つけられるので、これはこれで良い経験となった。
「あー、緒方さん。視線もらえる?」
「は、はい! こう、ですか……?」
伏し目がち、視線を逸しがちな智絵里に声をかけるも、撮影されるのは苦手そうだった。
まあ、カメラマンやスタッフだけならいいとして、今回は合同レッスンなので他のメンバーにも見られている。
より恥ずかしくなってしまうのは仕方がない。
ただ、その状態からの上目遣いはなかなかにクるものがある。
「――」
「あの、サブプロデューサーさん……?」
「っ、ごめん、ボーッとしてた」
「いくら智絵里ちゃんが可愛いからって、見惚れちゃダメですよっ」
「ちょっ、ルキトレさん!?」
慶と陣内のやり取りに、智絵里も緊張が解けた。
くすっ、と笑う様子を撮影した一枚は、今日撮影した中で最高という評価を得た。
各メンバーが着替え終わり、プロジェクトルームに戻る。
今日はこれで終わりだ。
「皆さん、お疲れ様でした。本日の業務は以上となります。明日また、よろしくお願いします」
「「「お疲れ様でした!」」」
武内と陣内はオフィススペースに入り、アイドル候補生達は各々くつろいだり、帰り支度をして寄り道について話し合ったりしていた。
「P君達、また明日ねー!」
「おつかれさまでしたー!」
アイドルがいるうちは開けっ放しにしているドアから、莉嘉とみりあが声をかけて帰っていく。
年が近いのもあって、仲が良い様子だ。気も合うのだろう。
「それじゃ、明日もロックによろしくお願いします!」
「プロデューサーさん達、お疲れ様でした~」
「あ、あの、今日はありがとうございましたっ」
李衣菜とかな子、智絵里も帰るようだった。
ロックによろしくってなんだ。
かな子は相変わらず癒やされる雰囲気のまま。
智絵里は陣内に向かって頭を下げて去っていった。
「(ビジュアルレッスンの一枚のことかな……大事そうに持ってたし)」
先ほどのレッスンの際に撮影した写真、その中でも各自気に入ったものを選び、持ち帰らせていた。
記念もあるし、初心を忘れないように、という意味を込めている。
ルーキートレーナーの慶に感謝だった。
「タケさん、コーヒー淹れましょうか?」
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、ついでなんでお気になさらず」
喉も乾いたし、この先仕事も残っているし、ということで、陣内はプロジェクトルーム内にあるコーヒーメーカーに向かう。
社内に無料のドリンクサーバーがあるが、このフロアにはない。
わざわざ階を移動してまで取りにいくのも面倒だ、と武内・陣内・千川で合意を取り、それなりのコーヒーメーカーを1台、ルームに設置していた。
粉は武内か陣内が外出した際に買ってきて、千川がいるなら千川がコーヒーを淹れる。いない時は誰かがついでに。
そういった感じで持ちつ持たれつ、利用していた。
武内と自前のカップを手にオフィススペースを出ると、まだ幾人かのメンバーが残っていた。
ソファに座って談笑している姿は微笑ましくなる。
杏は寝ていたが。
「サブプロデューサーさん、お疲れ様です」
「新田さんもお疲れ様」
コーヒーメーカーに向かっていると、美波が声をかけてきた。
「今日のレッスンはどうだった?」
「ちょっと疲れちゃいました。スポーツとは違う筋肉を使ってるみたいで……でも、楽しいです!」
「ラクロスやってる新田さんで疲れちゃうレベルだと、皆はもっと大変だろうなー。どう? 諸星さんは」
粉が切れていた。
時折メンバーに顔を向けながら、陣内はコーヒーメーカーに粉を詰めていく。
「私もちょーっと疲れたにぃ。でもぉ、あたらすぃことに挑戦するのはハピハピって感じ!」
「そうね、きらりちゃんの言うとおり、挑戦しているから、楽しいのかも」
「でも、もっともーっとみくは挑戦したいにゃ!」
「私もヴゥィザァフ……挑戦、したいでス」
「フフフ……天界への階梯を駆け上がろうぞ!(目指すはトップアイドルです!)」
寮組のみく、アナスタシア、蘭子も話に加わってきた。
ただ、やはり蘭子の言葉はあまり通じていないのか、雰囲気で察するような状況になっている。
「神崎さん、まずはスタミナつけないと。ダンスの時、結構息あがってたよ」
「うぅ……さすがは瞳を持つもの、我の真の姿を見抜くとは(うぅ、バテてるとこ、見られちゃいました~)」
「まあ、早い段階で足りないところがわかったんだし、これから頑張ろうよ」
「今は黒き翼に魔力をためる時!(これからレッスン頑張ります!)」
「その意気だ」
陣内が蘭子と会話していると、他のメンバーが口をポカンと開けたままになって二人を見ていた。
寝ていた杏も起きるぐらいだった。
「サブプロデューサーって厨二病だったの?」
「男の子は一度は通る道なんじゃないかな……。そういう双葉さんだって、わかるでしょ?」
「だいたいのことはねー。でもプロデューサーはわかってないよ」
「そこは俺がフォローするさ。さて、それじゃあオフィススペースにいるから、何かあったら声かけて」
そう言って、陣内はコーヒーを両手にオフィススペースへ入っていった。
ふと、時計を見たみくが慌てだす。
「あっ、もうこんな時間にゃ! 早く帰らないと寮母さんから叱られちゃうにゃ!」
「寮母さん、怒ると怖いでス」
「城の番人の雷……っ!?(寮母さんのゲンコツはイヤだよぉ~!)」
「アーニャちゃん、蘭子ちゃん、急ぐにゃ! それじゃ、お先にゃ!」
何かしら当番があるのだろう。
寮組三人は急いでプロジェクトルームを出ていった。
慌ただしい様子に苦笑する美波ときらり。
「私もそろそろ帰ろうかな。きらりちゃんと杏ちゃんは?」
「杏も帰るー。でも動きたくなーい」
「飴ちゃんあげるから、一緒に帰ろー?」
「仕方ないなぁ。起き上がるとしますか」
「ふふ、それじゃ、一緒に帰りましょう! プロデューサーさん、お先に失礼します」
「Pチャン、また明日ねぇー!」
「杏は明日はオフで……」
「ええ、お疲れ様でした。また明日、よろしくお願いします。双葉さんも」
ぐでー、ときらりに手を引かれながら杏は帰っていった。
とてもきらりと同い年には見えない様子に、美波も苦笑しつつ退室した。
プロジェクトルームに静けさが戻る。
「女三人で姦しいとはいうものですね」
「そうですね。皆さん、コミュニケーションも取れているようで安心しました」
「年頃の女の子は顔合わせれば、すぐに友達ですね。男には中々できない芸当だな……」
お世辞にも感情が表に出にくい武内は、陣内の呟きに黙って頷いていた。
「今日のレッスンの報告書、後で共有に入れときますよ」
「お願いします」
「何か、ユニット案とか閃きました?」
「いえ、そこまでは。ただ、なんとなくの印象はつかめたと思います。サブロー君はどうでしたか?」
「うーん、俺もだいたいなんですけど、パッと出るのは、神崎さんはソロ。城ヶ崎さんと赤城さんは誰か面倒見のよさそうな年長者とユニットって感じでしょうか」
先ほどの会話を思い出しても、蘭子と他のメンバーは意思疎通がうまく取れていない。杏はなんとなく理解できているだろうけど、ユニットを組むにしてはバランスが取れていないのでNG。となると、個性を考慮してもソロが最も良さそうだった。
年少組の莉嘉とみりあは一緒に組ませたほうが良い、と陣内は考えていた。小学5年生と中学1年生、2つも年が離れているが、精神年齢は大きな差ではない。様々なことに好奇心旺盛なところも似ており、どちらかを優遇することで不和が生まれる可能性が否定できなかった。そこで二人はセットにして、もう一人年長者を組ませることで全体のバランスを取った方がいい、と考えた。
欠員補充組の卯月、凛、あともう一人は、蘭子・莉嘉・みりあとは相性が良いとは思えなかったので考えからは除外した。
「――良い案かと思います。もしもの場合は採用してもいいですか?」
「えっ、あ、はい! もちろん大丈夫ですけど、こんな思いつきでいいんですか?」
「こういうものは熟考するより、インスピレーションに任せた方がよい時があります。それに、サブロー君は思いつきではなく、今日一日を振り返って、相性を考えた上で発言していると思われるので、問題ありません」
確かに様々な要素を考えた上で発言した陣内だったが、まさかの高評価に驚きを隠せなかった。
その様子に武内はほんの少し笑みを浮かべた。
「成長している証です」
「っ、ありがとうございます! もっと頑張ります!」
「ええ、お願いします。そういえば、明日の段取りは大丈夫ですか?」
陣内は手帳を開いて、目当てのページを見つける。
「バッチリです。まずは最後の一人と打ち合わせですね。名前はえっと……」
「本田未央さん、ですね」
灰かぶり達が、揃う。
「NO MAKE」を参考にしています。