凪のあすから おもいのカケラ   作:柊羽(復帰中)

6 / 50
最近やることが色々あって、時間通りに出せなくなってきてます……


第六話 それぞれの休日①

4月もあっという間に過ぎていった。

 

そして最終日。この日を耐えれば明日は祝日で休みで、そのまま5月のゴールデンウィークに突入する。

 

この際いっそ繋がってくれと思うが、日にちの関係で一日平常授業をやって三日間の連休となっている。

 

この連休を待ちに待っていた生徒は多くいるだろうが、これにはそれなりの"宿題"が付きものだ。

 

 

授業の終了を告げるベルの音が聞こえてきた。

 

「ほいじゃ、来週の月曜は授業ないから……。教科書28ページの練習問題と、問題集の10ページから17ページまで宿題ね」

 

「うえええーー」

 

「問題集のページ多いなぁ。しかもよりによって問題結構つまってんじゃん」

 

「もう少し減らせないんですか-?せっかくのゴールデンウィークなのに」

 

数学担当教師である喜来睦樹(きらいともき)が出した宿題に対して、予想通りのブーイングが飛び交う。

 

「何だかんだ言って、どっかしら時間はあるでしょ?それに今日までやったことの復習がほとんどだから、パパッとできるさ」

 

喜来先生は終始笑顔で返すが、彼らの何人かはまだぶつくさ言っていた。

 

 

「ふぃー、終わったー」

 

一気に脱力し、澄澪は机に突っ伏す。

 

「澄澪、授業中何回も私に聞いてきたんだからさ、ちゃんと復習しないとダメだよ?」

 

「はぁ、数学やだなー。モフモフプー」

 

「は?」

 

澄澪と沙月の一方的な謎の会話をしている間に、大塚先生が教室に入ってきた。

 

「ほらほら、席に座れ。ホームルームちゃっちゃと終わらせるぞ」

 

手をパンパン叩いて生徒に着席を促す。

 

「明日から三連休だ。んで、月曜授業でまた三連休。特に時間割変更もなし。充実した休みを。では……」

 

誰もが「終わり」と先生は言うだろうと思っていた。が、大塚先生はニヤリと口角を上げると、持ってきたカゴから髪の束を取り出す。

 

「終わりとなる前に、今日の国語の時間に配り忘れてた宿題配るぞー」

 

「うわあああああああああ」

 

見事に彼らの中で浮かんでいた国語は宿題ない説が、砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ、ピピピッ……。

 

一定のリズムで機械音が鳴っているのが聞こえた。

 

目を閉じたまま、手で音の出所を探る。

 

大体いつもの場所にそれはあり、頂点部分のボタンを押した。

 

ムクリと起き上がり、目覚まし時計を見る。時刻は午前7時半を示す。

 

眠い目をこすり、はぁ、とため息をついた。まだ膝の傷が少し痛む。

 

ベッドから出て、洋斗は自室のドアを開けた。

 

 

「あら、おはよう」

 

「おはよ」

 

1階に降りてリビングに向かった。そこには母がいて、もう既に朝食の準備ができていた。

 

椅子に座り、トーストにバターを塗っていく。

 

「午前中に学校の宿題終わらせちゃいなよ?昨日も進めたんでしょ」

 

「うん」

 

「明日は13時から先生が来るから、それまでにそっちの予習復習もしときなさい。学校の方の勉強でわからないところもちゃんと聞くんだよ?」

 

「学校のは簡単だから大丈夫だよ」

 

「ま、当然よね。むしろ余裕でないと困るわ」

 

洋斗の母は笑顔でそう言い、自分の既に食べ終えた皿を片し始める。

 

 

洋斗は何処か憂鬱そうに、パンをかじった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、暇」

 

そう、自室の天井に向かって呟いてみる。

 

床に寝転がり、先程まで読んでいた漫画本を置く。

 

一樹は当然、宿題をさっさと取り組むことなく最初の連休を過ごしていた。彼以外にも大勢いることだろう。

 

 

すると1階から母親の声が聞こえた。

 

「一樹。お母さん今から仕事行ってくるから。昼ご飯は自分でなんとかしてー」

 

「はーい」

 

そう大きい声で返事をする。それを聞いた母はすぐに玄関を出ていった。

 

そして、一樹は机の上に掛けられた時計を見る。時刻はまもなく正午だ。

 

母に昼飯をどうにかして食えという場合、基本一樹は料理なんてしないので冷凍食品などで済ます。

 

 

が、今日は偶にある"冷凍食品ストックしてないデー"だった。冷凍庫の引き出しを見て確認した一樹はため息を吐く。

 

こういう時は、外食しかない。しかし1人で食べるのも何だかな、と思った一樹。

 

 

 

 

 

『ああ、いいぜ。丁度俺もこれから昼飯だったし』

 

「おお、大生センキュー。じゃ、今からそっち行くわ」

 

『オーケー』

 

リビングにある小さな棚の上に置かれた固定電話の受話器を置く。

 

大生の前に幹大と隆広にも電話したが、どちらも今は出かけていた。

 

 

自室に駆け戻り、机に置いていた財布と家の鍵を持ち、靴を履く。

 

ドアの鍵を閉め、大生の家へと向かう。彼の家とは大して距離はない。

 

 

家に着き、石壁に付けられたチャイムを鳴らす。するとすぐに大生が出てきた。

 

「今日はどこ行く?」

 

「今日はフライな気分。一樹は?」

 

「俺は何でもいいさ。フライならあそこだね」

 

満場一致(2人だけだが)で目的地は決まった。少し歩くと、何件か店がある。そばなど和食の店、今日行く洋食の店、カフェテリアなどだ。

 

店に入ると、席はまだ全然空いていた。むしろ、人口の関係もあって満席の状態をほぼ見たことがない。

 

いらっしゃいと生きのいい声で出迎えられ、窓際の2人席に座った。すぐに店員が水とおしぼりを2人分持ってくる。2人はメニューを見て少し考えた後、店員に伝えた。

 

2人とも"フライ盛り合わせ定食"を選んだ。

 

来るまでの待ち時間、2人は何気ない会話をする。が、唐突に大生が切り込んできた。

 

「なぁ、吉野川についてどう思ってんの?」

 

「ブッ!」

 

あまりにイレギュラーなため、一樹は飲んでいた水を吹き出しそうになる。

 

「ゲホッ、ゲホッ……。い、いきなり何だよ」

 

「何だよって、只単に聞いてみただけ」

 

「べ、別に……。まあ、なんて言うか、元気があるなって」

 

動揺を隠しきれていない一樹に対し、淡々と表情を変えずに大生は聞いてくる。それでさらに焦る一樹だったが、なんとかごまかしながら返答した。

 

「確かに、彼女は元気だね。初日から俺らと仲良くなろうとしてた。今はそれなりに壁も無くなってきてる。そのうち他のやつも打ち解けてくると思うんだけど……」

 

「けど?」

 

大生は澄澪をちゃんと評価していた。今現在澄澪が一番陸の人間と仲良くしている。続いて沙月も、澄澪と一緒にいるために話す機会が増えている。

 

航大に関しては、まだ陸の人間(特に幹大と隆広)と反発しているところもあるが、彼の言動は海の仲間を思ってのことなので、彼は決して悪いやつじゃないと大生は考えていた。しかし……。

 

「蔵本と二軒屋については、どうもよくわからない」

 

「ああ、なんとなくわかるかも」

 

「二軒屋はただボーッとしてるだけかもしれないが、蔵本は"謎の少年"って感じ。初日の時だって、吉成を一言で止めるんだから、あの中でリーダー的なポジションかな。それに、あいつは基本俺らと目を合わさない」

 

「……そうかも」

 

思えば、一樹も何回か目撃していた。初日の件もそうだし、普段から窓の外の海を見ているイメージだった。

 

「あいつが一番本音を隠して傍観者してる。ま、そこら辺はあくまで想像だけどね」

 

そう大生が言ったところで、定食2人前が運ばれてきた。一旦会話は中止して、目の前の食を堪能し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「里実ちゃーん、注文したもの持ってきたよ」

 

「はーい、ありがとうございます!」

 

里実はすぐさま声の主へと駆け寄る。

 

彼のトラックの荷台には様々な野菜などが種類ごとに段ボールの中に入っている。

 

 

ここ、『スーパー・マツシゲ』はこの久里ノ上唯一のスーパーである。勿論、大型スーパーなどではなく小規模だが、陸と海両方の人たちがよく使うお店である。

 

この店主は里実の祖父で、休日などは里実や里実の母がお手伝いなどをしている。また2人のアルバイトもいる。

 

品物の調達は隣町から行っていて、その度に頼んでいる会社の方たちがトラックで持ってきてくれる。里実が小学生の頃から彼らとは既に顔見知りだ。

 

 

「あ、私も手伝うよ」

 

「ありがとうございます」

 

段ボールを下ろしていると、1人の女性がこちらに来る。

 

彼女は池谷汐帆(いけのたにしほ)。ここのアルバイト店員だ。汐帆は海の人間で、今年で22歳。牡丹色のセミロングヘアだ。

 

3人で協力して段ボールを全て下ろし終わり、裏の倉庫に持って行く。

 

その作業が終わると、会社の方はトラックに乗って帰って行った。

 

「おお、お二人さんお疲れ様」

 

奥から一人の老人が出てきた。彼が里実の祖父。白い作業着を身につけている。丁度裏で商品に出す魚をさばいていたのだろう。

 

「お爺ちゃん、こっちは終わったよ」

 

「そうかい。こちらも終わりそうだから、梱包が終わったら出してくれ」

 

そう言って再び奥の調理場に戻っていった。それとほぼ同時のタイミングで一人の来客があった。

 

「うっす、委員長」

 

「あ、隆広君。いらっしゃい」

 

茶色の肩掛けバッグを持った坊主頭、隆広が店内に入る。

 

「今日はレタスにトマト、あとは……」

 

おそらく親に渡されたメモだろうか、それを手に持って確認しながら買い物かごに商品を入れていく。

 

「親に頼まれたのかな?」

 

「ええ、まあ。家でゴロゴロしてんだったら買い物してこーい、ってね」

 

汐帆に聞かれると、少し恥ずかしそうにして隆広はでこあたりをかく。彼の昔からの癖でもある。

 

「ふふ、隆広君らしいね。でも、ちゃんと宿題終わらせないと先生に怒られるよ?」

 

「う……。そうだけどさ、やる気出ないんだよね。俺ってば、最終日にやる気出るマンだし。でも、あの人提出物には厳しいしなぁ」

 

最終日にまとめてやるという典型的なダメパターンである。それを中1の頃にも隆広はやったが、見事に全部終わらなかった。それに対して大塚先生はまずそれにマイナス点をつけ、宿題をやって出す日が延びるほどさらにマイナスを付けると言った。

 

これは誰も嬉しがる人などいないので、早急に次の日に出すのであった。

 

「そういえば、幹大君は?」

 

「ああ、あいつは漁に出てるよ。この三連休は全部手伝いに出るらしい」

 

「そうなんだ。……大変だね」

 

いつもあの二人は一緒にいるので、ふと里実は疑問になった。

 

幹大の父は漁師をしている。普段は父と今年18の兄が漁をしている。そして休日などは、将来のために幹大に父が指導しているのだそうだ。

 

里実も幹大も幼い頃から仕事については色々見てきたが、漁師は苦労が自分らよりも遙かに多いということを里実は知っている。

 

 

隆広は会計を済ませ、買い物袋を乗ってきた自転車のカゴに入れてペダルをこぎ出す。

 

彼の後ろ姿が角を曲がって見えなくなるまで、里実は見ていた。

 

 

 

 

「ね、海っ子五人組はどう?」

 

「やっと少しはお互い慣れてきたみたいですね。特にすみれいちゃんは陸の女子と仲良く話すようになりましたよ」

 

同じ海の人間として気になるのか、転校してきたことを話してから、汐帆はよく里実に彼らの様子を聞くようになった。

 

「そっかー。よかったよかった。最初はどうなるかと思ってたけど、なんとかなりそうね。昔からずっと見てきたから、なんだか親にでもなった気分」

 

安堵の表情で、お昼休憩に持ってきたおにぎりを頬張る。

 

彼女は彼ら五人組が小学生の時からの付き合いで、汐帆はお姉さんポジションでよく面倒を見ていた。

 

「昔から航大は変わらないけど、海遥と洋斗もやんちゃだったんだよー。三人してはしゃぎ出すからもう大変」

 

「へー、全然想像つかないです。今の二人はなんていうか、大人しいというか……。でも、何か違うような」

 

汐帆の話を聞いてその頃を想像して見るが、あの二人が騒いで走り回っているのがむしろ似合わない。

 

なのでその思考は一旦停止させ、その二人の現在の様子を改めて思い出す。けれど、それはそれで大変なもので、唯々物静かな性格だけとは言いがたいものだった。

 

「小さい頃の話ですから、成長して性格が真逆になるようなこともあるとは思いますが……。それにしてもあの二人、特に蔵本君。あの人は、なんて言うか、ちゃんと目をこちらに向けてないって言うか」

 

里実はなんとか言葉に言い表そうと、なんとか絞り出す。それを聞いて、汐帆はおにぎりを口に運ぼうとした手を止めた。

 

「なんだか、あっちから一方的に壁を作っているみたいで。二軒屋君はただボーッとしてるだけですが、それはそれで関わらないようにしてるにも見えるのですが……、何かあったとかあります?」

 

 

そう投げかけるが、少しの間汐帆は沈黙した。そして急に元のように笑顔で、

 

「うーん、別にないんじゃない。みんな成長して、考え方とか、色々変わるんだよ」

 

うん、おいしい、とおにぎりを頬張るが、その姿が変に笑顔を作っているように里実には見えた。

 

「……ところでさ、あの三人のうち誰がカッコいいとか話にならないの?」

 

「え、ええええ??!」

 

急に里実の方を向いた途端、そんな質問を投げかける。いや、里実からしてはぶん投げられたようなものだった。唐突すぎて変な声が出た。

 

「普通、転校生が来たら、徐々にそんな話出てこない?あの三人だって個々でいいところあるし、あっちもその気なら尽くしてくれるとは思うんだけど……。あ、もう陸の方に好きな人がいるのか」

 

「ちょ、勝手に話し進めないでくださいよ-!」

 

ニヤニヤする汐帆に対して、赤くなりながら汐帆の肩を叩く里実。赤くなってんじゃーん、などと汐帆に徹底的にイジられる里実は、先程抱いた疑問をすっかり忘れてしまった。




前書きでも言ったとおり、やらなくてはいけない課題など増えてきているので、少なくとも来週は投稿出来ませんのであしからず
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。