魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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GW終了日にやっとこさ更新。

しかも長くなり過ぎた為、前後編に分けています。

後編は後日投稿するので、続きは暫しお待ちください。


まどマギ×Fate 10

 魔女の結界に入り込んでしまった事を察知し、暫し呆けていたまどかとさやかだったが、いつまでもそのままではいられない。

 魔女の結界は人に有害である。そう2人はマミから教えられていた。捕らわれれば最後、魔女の養分として何一つ残す事無く食べられてしまうのだ。

 ならば、呆けていてることは悪手である。現実に回帰した2人は、ルビーにはテレパシーで、マミにはメールで連絡を取ろうとする。……だが、

 

「……ダメ。ルビーに届かないよ」

「こっちもだよ。スマホの表示がおかしい……」

 

 2人の眼前に突き付けられたのは、連絡不能と言う結果。テレパシーにルビーが反応する様子は無く、さやかのスマホは文字化けをしていて動かない。

 外部への連絡手段は何一つ機能しない。講じられる手段を封じられ、2人の思考が凍り付く。

 

 ――――トンッ

 

 そんな2人の思考を現実に引き戻したのは、背後から聞こえた何かが落ちる音。

 反射的に2人は音の方へと顔を向け――――視界に映ったのは、黒いキャンディが一つ。黒い包装紙で巻かれたキャンディが一つ転がっている。

 

「……びっくりしたぁ」

「内装が剥がれたのかもね……あはは、心臓に悪いや」

 

 予想外の音に2人が脳裏に描いたのは、初日に自分たちを襲ってきた使い魔たち。白い綿毛でできた、珍妙な人形の使い魔。

 だが実際に落ちてきたのはキャンディー。その音の正体に、2人は不安から一転し、安堵から笑みを零した。

 

 ――――トンッ、トンッ

 

 続けてキャンディーが2つ落ちてくる。どちらも黒い包装紙で巻かれており、よくよく見れば的の様な大きな円が描かれていた。そしてその何れにも二つの突起物が付いている。

 

「……ふふっ、変なキャンディ」

「ははっ、そうだね。あれじゃまるで足が――――」

 

 ――――ぴょこっ

 

「足が――――」

 

 ――――ぴょこぴょこっ

 

「あ、足が――――」

 

 ――――ぶるぶるっ

 

「は、生えてるね……」

 

 ――――ギョロッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「いやああぁぁああああああああああああっ!!!」」

 

 お菓子の世界をまどかとさやかは爆走していた。恥も外聞もなく、涙や鼻水を垂れ流し、スカートが捲れて中身が見えているのも気にせず走る。華の女子中学生と言えど、今の2人にそんな言葉を気にする余裕はないのだ。

 そしてそんな2人を追うのは三つのキャンディっぽい何か。追走するように、2人と同じスピードで追いかけている。

 絵面だけを見れば何とファンシーな事か。お菓子の世界。可愛らしい女子中学生。後を追う黒色のキャンディモドキ。どこかの童話と言われても、きっと納得するに違いない。……先を行く少女たちが鬼気迫る表情で、叫び声を上げながら走っていなければの話だが。

 

「な、な、何あれーっ!?」

「きもいきもいきもいきもいきもーいっ!!!」

 

 先行く2人に余裕はない。全力で走り続ける。キャンディモドキに捕まらぬよう走り続ける。恐らく今の2人ならば、オリンピックに日本代表として出場できるだろう。それぐらいに必死なのだ。

 そうとも。ファンシーな空間に騙されてはいるが……よく考えてほしい。

 まずキャンディモドキの大きさはまどかたちと同程度はある。

 加えてキャンディモドキには足が生えているのである。

 そして人間と同じように動いているのである。

 全力で走る女子中学生と同程度のスピードで追って来るのである。

 想像してほしい。その有様を。その光景を。その場面を

 足の生えた巨大なキャンディーモドキが猛スピードで追いかけてくる状況を。

 ……誰だって逃げる。逃げない筈が無い。もしも逃げない人がいるとすれば、それは危機管理能力が欠如した馬鹿だけだ。

 

「いや、いや、いやあああああああああああああああっ!!!」

「あああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

 真っすぐ走る。振り向きもせず走る。現れた十字路で右を選択。振り返ると、後ろからは相変わらずキャンディモドキが追いかけてくる。まだ追いかけてくる。視線を前に戻してひたすら真っすぐ走る。次の十字路も右へ。そしてまた真っすぐ走る。

 入り組んだ迷路のような道。何処をどう走っても光景は変わらない。立ち並ぶお菓子の建造物。目印らしき目印なんてない。2人は何処をどう走ったかは勿論、どの程度の距離を走ったのかもわからない。前へ、前へ、右へ、前へ、今度は左へ。道の選択は直感だ。

 2人を突き動かしているのは恐怖である。理解の範疇から外れた化け物への恐怖心だけである。

 だがそんな追いかけっこは、唐突に終わりを告げる。

 現れた丁字路。その右を選び……

 

「……っ、嘘、これって……」

 

 足を止める。2人の目の前に佇むは壁。巨大なケーキの壁。左右に逃れるスペースもない袋小路。

 つまりは……行き止まり。

 振り返れば、ちょうどキャンディモドキたちが姿を現したところで――――

 

「まどか、こっちっ!」

 

 ケーキとケーキの隙間。そこにさやかは僅かな隙間を見つけると、迷うことなくまどかの手を引き飛び込んだ。そして隙間に身体を押し込むようにして前へ進む。道の幅は先へ行くほど細くなっており、つまりは狭くて動き辛くなっていく。幸いなのは壁の素材がケーキであることだ。服が汚れるのを厭わず、掘り進むようにすれば、どうにか前へと進むことができる。

 

「ぬぅ――――っ!」

 

 水を掻き分ける様に、大きく右腕を前へと伸ばし続ける。そうして掻き出したクリームとスポンジを後ろへ放り投げ、少しずつ前へと進む。

 後ろを振り返る余裕はさやかにはない。左手でまどかを抱き寄せ、我武者羅に前へと進み――――その指先が、ついに空を切った。

 

「――――っらぁ!」

 

 空を切ったという事は、その先は開けた場所である可能性が高い。しめたとばかりにさやかは全体重を乗せて飛び込んだ。幾ら素材がケーキであるとは言え、掻き分け続けるのには体力がいる。それでなくてもここまでノンストップで走り続けてきたのだ。これ以上は消費する体力が無い。

 さやかの目論見通り、決死のダイブの先は大通り。

 クリームのせいで服はドロドロになってしまったが、一先ずは脱出成功だ。

 

「さやかちゃんっ! やったよ、逃げ切れたよっ!」

「へへっ、どんなもんよ……」

 

 振り返れば、自分たちが飛び込んだ入り口から、此方を恨めしそうに見ているキャンディモドキたちの姿が見える。恐らくあの巨体では2人が通った隙間には入れないのだろう。脅威から逃れたと言う事実に、さやかは力なく笑みを零した。

 

「あー……疲れた……」

「ふふっ、そうだね……」

 

 脅威から距離を取れた事で、身体が緊張から解放されたのだろう。急に笑い出した膝を止めることが出来ず、まどかは地面に腰を下ろした。暫くは立てそうになかった。

 さやかは仰向けに倒れ込んだまま、呼吸を整えようとする。心臓が暴れているかの如く鼓動を刻んでいた。このままだと口から出てきそうなくらいだった。

 そうして2人仲良く天井を見上げる。

 高く、薄暗く、先は見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5分程度の休憩の後、2人はゆっくりとだが先へ進むことにした。

 とは言え、どこか行く当てがあるわけでは無い。

 この場に留まるよりは、動き回って出口を探した方が良いと言う判断からだ。

 

「あー、シャワー浴びたい」

「クリームまみれだもんね。あーあ、このままだと制服ダメになるかも」

 

 2人は制服とシャツを脱いで、上半身のみ下着姿になっていた。何せ制服とシャツはクリームまみれでベトベト。このまま着続けるのは、ハッキリ言って気持ちが悪かった。

 人目は無し、不快感、我慢できない。

 脱ぐことへの逡巡はあって無いようなものだった。

 

「もうケーキはいいや。てか甘いものはもういいや。渋いお茶とか煎餅が食べたい」

「あはは、そうだね。……ホント、暫くはいいや」

 

 まどかもさやかもケーキは大好物だが、ここまでクリームまみれになると流石に辟易する。一ヶ月分は食べた気分だ。実際には食べてないのだけど。

 早く状況をほむらかマミかルビーに伝え、魔女の結界を解決し、帰って熱いシャワーでクリームを洗い流したい。

 当初の目的など忘れ、ベトベトの身体を引きずりながら、そんな事を2人は思った。

 

「……そう言えば、さやかちゃん」

「ん、何?」

「あの時聞こえた声って、もしかしてルビーかな?」

 

 あの時とは2人が結界に入る直前の事。走っていた2人に掛けられた忠告の声。

 ――――まどかさんっ、さやかさんっ、ダメですっ、退いて下さいっ!

 

「……あー、そう言えば。確かにルビーの声だよね、あれって」

「やっぱりそうだよね。あれってルビーだよね」

 

 なんだか遠い記憶の事の様に思えるが、確かにあの時の声はルビーのものだった。

 

「私たちを止めようとしてたって事は、ルビーは魔女の結界を察知していたのかな?」

 

 仮にそうだとすれば、ルビーは魔女の結界の存在、そしてその中に2人が入り込んでいる事を知っている事になる。

 だとすれば、

 

「だったら、もう少し待てばほむらやマミさんが来てくれるかもね」

 

 止めようとしたという事は、ルビー自身は結界内に入っていない可能性が高い。ならば、魔女の結界を良く知るほむらかマミに連絡を取りに行くのは自然な事の筈。

 もしも懸念点があるとすれば、ルビーが2人に余計な事を言ってないかどうかだ。特にほむらに。まぁそんなことはないかと思うが……

 

「……とりあえず、そしたら魔女を探した方が早いかもね」

「そうだね。もしかしたら他の魔法少女が退治に来ているかもしれないし」

 

 魔法少女は魔女を倒し、グリーフシードを集めなければならない。マミはそう言っていた。魔法少女として活動を続けるにはグリーフシードが必要なのだ。

 ならば、場所も分からぬところでウロウロしているよりも、魔女が確実にいる中心部にて隠れている方が、ほむらやマミと会える可能性は高い。

 それに。幸いにして、この見滝原市にはほむらとマミ以外にも魔法少女がいる。

 佐倉杏子。

 本来なら隣町に住んでいるらしいが、昨日の写真を見る限りでは見滝原にも来ているらしい。

 

「問題はどこが中心か、だよね」

「うーん、特徴とか聞いておけばよかったね」

 

 初日に魔女の結界に捕らわれた時は、何も分からぬまま逃げ回り、気が付けば脱出していた。ほむらは魔法少女に関する事は教えてくれないし、マミからはまだ詳しく話を聞けていない。つまりは残念ながら、このままでは2人に打つ手は無いのだ。

 

「……とりあえず、中心っぽいところへ向かってみる?」

「中心っぽいところ?」

「うん。あそこ」

 

 そう言ってまどかが指さしたのは、一際大きなお菓子の塔。

 

「あー、なるほど。確かに中心っぽい」

「でしょ。とりあえず行ってみよう」

 

 道に迷ったら、とりあえず誰もが目に付く目立つところへ向かう。

 困ったときは定石どおりに動くのが一番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言えば、2人の考えに間違いはなかった。

 他の建造物と異なり、やや乱雑に作られたお菓子の塔。飴細工の窓のすぐ上からビスケットでできた煙突が飛び出ている。それに何をイメージしたかもわからぬ突起物が無数に――あ、多分コレRockyとうんまい棒だ。箱と袋が傍らに積まれている。……兎にも角にも、近くで見れば、これはちょっとした珍妙なオブジェだ。

 そしてその塔の扉が壊され、開け放たれていた。扉の破片が砕かれて転がっている。力任せに壊したような惨状。さらにその周囲には、ボロボロのキャンディモドキたちが倒れている――いや、ボロボロなんて形容は生温いだろう。一体一体が切り刻まれて少なからず欠損している。絶命しているのは素人目にも分かった。

 想像を超えたグロテスクさに、まどかは直視できずに顔を背けた。

 

「……これは酷いね」

 

 例えそれが先ほどまで襲ってきた敵であっても、その末路をそう簡単には受け入れる事は出来ない。受け入れるには、2人は魔法少女の世界を知らなすぎであり、何よりも優しすぎるのだ。

 さやかは意図的にキャンディモドキたちを視界から外し、開け放たれた扉のその先へと視線を集中した。黒々とした空間が続いていた。

 

「……行こう、まどか」

 

 この惨状を行った人物が誰かは分からない。ほむらかもしれないし、マミかもしない。或いは佐倉杏子を始めとする、別の魔法少女によるものなのかもしれない。

 だが誰であれ、その人物がこの扉の先に居る事は確かである。無造作に転がる敵の成れの果てが、如実にその事実を示していた。道を示すかのように、扉の先に転がっているのが見えるのだ。

 ならば、行くしかない。行くしか選択肢はない。

 さやかは強く鋭く息を吐き出した。そして覚悟を決めるかのように、自身の頬を強く叩く。

 

「うん、行こう。さやかちゃん」

 

 一方でまどかも覚悟を決めた。外見からは想像もつかぬが、彼女は芯の強い子であり、滅多な事では泣き言を言わない。ましてやさやかが覚悟を決めたのだ。例えそれが虚勢であっても、友人が決めた覚悟を崩すような真似だけはしたくなかった。

 そしてそれはさやかも同じだった。もしもこの場にいるのがさやかだけだったら、きっと覚悟なんかできずに泣き崩れていただろう。耐えられなかっただろう。彼女が虚勢を張れるのはまどかがいるからであり、まどかがいる限りは、張りぼて以下の虚勢であっても張り続ける自信があった。

 2人で漸く一人前。良いじゃないか、それで。足りないところは互いが補えば良い。

 

「うん、怖くない」

「そうだね、怖くないよ」

 

 互いに顔を見合わせて、笑みを零す。そして手を握り合った。

 そうとも。もう怖くない。それだけはこの奇妙な世界における、紛れもない事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転がっているキャンディモドキたちを丁寧に避けながら歩く。その惨状からは眼を背け、ただ真っすぐに道の続きを目指して。

 特に会話をすることは無い。必要が無いのだ。心臓は平常通りに鼓動を刻んでいる。恐れや不安は、握り合った手から感じる互いの体温がかき消してくれていた。

 もしも口に出すことがあるとすれば――――

 

「……長っ」

「ね、長いよね」

「入り口は……おお、遠い」

「うーん、でもまだ先は長そう」

 

 まどかの言葉の通り、道の先はまだ終わりが見えない。真っすぐの一本道。入り口はすでに大分遠くなっている。

 愚痴とも軽口ともつかぬ言葉が零れるのは自然な事。ましてやこらえ性の無いさやかからすれば、良くもまぁここまで黙って歩けたと思えるくらいだ。

 そして一度口を開いてしまえば、あとは連鎖的に会話は続いていく。

 何時になったら出口に着くのか。

 誰がこの道の先にいるのだろうか。

 この結界を出たらどうしようか。

 とりあえずシャワーを浴びたいよ。

 そうだね、へばりついて気持ち悪いもんね。

 でもケーキの中を掘り進むって貴重な経験だったなぁ。

 もっとゆっくり、それも食べながら進みたかったけどね。

 それは私だって同じだよ、あー惜しいことした。

 

「……あれ?」

「もしかして出口?」

 

 そんな取り留めの会話をしていた2人の前が唐突に開ける。尤も見た目的には大して変わらない。無造作に隆起しているお菓子の山が無駄な自己主張をしているだけで、ここもお菓子の世界である事には変わらない。唯一異なる点があるとすれば、先ほどまでの場所とは異なり、壁や天井が目視できる事だろう。

 ここが魔女の結界の中心?

 まどかとさやかは同じ疑問を抱いた。さっきまでの場所もそうだが、魔女の居場所としてはファンシーすぎたからだ。

 

 

 

「へぇ、珍しい。まさか意識持ちの一般人がアイツ以外にもいるとはねぇ」

 

 

 

 そんな2人の頭上から声がかかる。

 ほむらでもない、マミでもない、聞いた事の無い声。

 声のした方向はお菓子の山。その頂点を見上げると、そこには少女が座っていた。

 そう、少女だ。

 見上げている状況では細部まで分からない。だが声の感じから察するに、恐らくは少女で、それも同年代くらいだろうか。

 

「あなたは……?」

 

 至極真っ当な質問をまどかは口にした。決して大きな声ではなかったが、良く通る声量ではあった。

 少女の耳にも届いたのだろう。少しだけ意識をまどかたちの方へ向け、

 

「どーだって良いだろ、んな事はさ」

 

 如何にも面倒くさげに問いかけを無視した。表情は見えないが、きっと態度と同じくらい面倒くさげな表情なのだろう。ありありと想像できた。

 

「ちょっと、何よその態度!」

 

 一方で。

 そんな扱いに声を荒げたのはさやかである。結界内を彷徨い、化け物に追われ、漸く自分たち以外の人に出会えたと思ったら、このおざなりな態度。ここまでの理不尽すぎる道程も手伝い、有体に言えば彼女は少女に対して腹を立てていた。

 だがそんなさやかの態度にもどこ吹く風。

 少女はハエでも払うかのように手を振り、さやかの言葉に無視を決め込む。

 

「こ、このっ」

 

 瞬間湯沸かし器の如く、さやかの怒りのメーターが頂点に達する。元々さやかはそれほど気が長くない。思い込みが激しくて喧嘩もよくしちゃうけど、優しくて勇気があって困っている子がいれば一生懸命……と言うのはまどかからのさやか評である。要はぶっちゃけ短気で喧嘩っ早い側面があるのだ。

 つまりはここまで露骨な態度を取られると、ただでさえ現状余裕の無いさやかの精神的許容量が溢れるのは当然の事なのだ。何もおかしくは無いのだ。

 

「死にたくなけりゃ黙ってそこに隠れてな。もう少しの辛抱さ」

 

 そんなさやかに先んじるように、少女は注意を促した。

 

「もうすぐ孵るんだ。とりあえず黙ってろ」

 

 視線を向けずに吐き捨てられたその言葉。

 ビキィッと。確かにまどかはそんな音を聞いた。具体的にはすぐ隣からだった。すぐ隣の親友からだった。人体からは絶対に鳴ってはいけない音だった。

 まどかは思わず天を仰ぎ見た。さやかちゃん、人体からそんな音がするのはおかしいと思うの。良くないことだと思うの。絶対に何か異常が起きている筈だよ。

 

「こ、こいつっ……」

 

 震えるさやかの声。最早見るまでもない。どんな表情でいるかは簡単に想像が付いた。

 だがさやかの怒りも無理はない。誰だってこんな風にあしらわれたら良い気分ではないだろう。まどかだって、さやかが先に怒っているから一歩引いた立場で見ることが出来ているだけだ。……それにしたって短気ではあると思うが。

 どうどう。まるでペットをあやすかのように、手慣れた様子でまどかはさやかを押さえつけた。このままでは全く話が進まないからだ。

 

「それって、ここが魔女の結界の中心って事?」

 

 まどかはさやかに先んじて疑問をぶつけた。少女が魔法少女であることを前提にした疑問だった。

 先ほどの少女の言葉。もう少しの辛抱、もうすぐ孵る。そして不自然すぎるほどに落ち着き払った態度。

 まどかには少女が魔法少女である確証があった。

 

「……その問いかけは、アンタらも魔法少女って事か? にしてはど素人みたいだが」

「ううん、違う。私たちは知っているだけ」

 

 そう。知っているだけ。

 知っているし、才能も有るらしいが、2人はまだ魔法少女ではない。

 ここにきて初めて、少女はまどかたちに視線を合わせた。意志の強そうな眼差しだった。

 

「……なるほど。知っているだけ、ね」

「……」

「さっきの質問だけど、アンタの推測の通りさ。ここは結界の中心だよ」

「魔女はいるの?」

「いや、まだいない」

「まだ?」

「ああ。……まぁ、とりあえず黙って隠れていな。それが一番だ」

 

 少女は立ち上がると、自らの胸元に手を置いた。

 赤光が身体を包み、瞬きの間に姿を変える。

 薄青色のパーカーが濃い赤色をした神父服風の衣装に。

 黒色の短パンは薄赤色のスカートに。

 そして少女の背丈を超えるような大槍が手元には握られている。

 ――――魔法少女。ほむらとマミ以外の、新たな魔法少女。

 

「じゃあな」

 

 少女は最後にその一言だけをまどかたちに投げかけると、お菓子の山から飛び降りた。まるで散歩にも出かけるような気軽さだった。

 

 




おまけ

「ねぇ、まどか」
「何、さやかちゃん」
「ここには私たち以外誰も居ません」
「そうだね」
「服はクリームでベトベトです」
「そうだね」
「ぶっちゃけブラもベトベトです」
「ダメです」
「……」
「……」
「……」
「……まどか」
「ダメです」
「いや、誰も」
「ダメです」
「見て――――」
「さやかちゃん。ダメです。絶対ダメです。言わせません、脱がせません、許しません」
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