魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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当初の予定
・出たな諸悪の根源

現実
・……諸悪の根源ってどっちだっけ?


まどマギ×Fate 13

 鹿目まどかは朝から身体が重かった。

 彼女が美樹家で目を覚ますのは、決して珍しい事ではない。何ならつい数日前に泊まったばかりだ。正直な話、第二の我が家と称しても構わないくらいには、互いに行き来している。

 どうやら自分は、美樹家のソファーで寝ていたらしい。ゆっくりと周囲の惨状を見渡しながら、まどかはそう結論付けた。ちなみに身体が重い理由は、友人の美樹さやかが抱き着いているからだった。抱き枕代わりにされていたらしく、緩み切った幸せそうな寝顔が良く見える。

 

「……ごめんね、さやかちゃん」

 

 丁寧にさやかの腕を外し、まどかは拘束から脱出した。友人は未だに起きる気配はない。

 既に窓の外には太陽が昇っており、街の営みの音が窓を通して耳まで届いている。時計を見れば、AM9:30。これは立派な寝坊だ。

 

「あー……ええと……そっか、臨時休校になったんだっけ」

 

 一瞬頭に遅刻の文字が浮かび上がるが、昨日の病院前のテロ騒ぎで、今日の学校は臨時休校になった事を思い出す。だから昨日は遅くまで騒いでいたのだ。

 視線を床に移すと、そこにはワインのボトルを抱えて力尽きた暁美ほむらがいた。しかも下着だけの姿で。そして悪夢でも見ているのか、しかめっ面で呻き声を上げている。元が美人なこともあり、とんでもなく酷い絵面だ。

 なんでこんなことになったのだろうか。まどかはまだ覚醒しきっていない頭をフルに働かせながら、原因を思い出そうとする。だが脳裏に蘇ったのは、ボトルをマイク代わりに下着姿で熱唱するほむらの姿だった。そしてそれを見て、合いの手を入れながらタオルを振り回す自分たちの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……頭が痛いわ」

「ほむらに同じく」

 

 AM11:30。

 やや長めのシャワータイムを終えて、さやかとほむらがバスルームから出てくる。2人は苦渋の表情を浮かべており、ほむらに至っては絶不調故か顔面蒼白である。

 まどかは2人にホットミルクを渡した。

 

「はい。士郎さん直伝のホットミルク」

「ありがとう……士郎さん直伝?」

「うん。メールしたら作り方教えてくれたから」

 

 なるほど、とさやかは頷いた。そう言えば昨日の帰り際に、連絡先を交換した覚えがある。

 ホットミルクを受け取り、2人は力なく椅子に座った。そして一口。昨日より幾分か甘めなのは、まどかの好みが反映されているからだろうか。さやかとしては、こっちの方が好みだ。

 昨日は何があったんだっけ。ちびちびと飲みながら、昨日の事を回想する。だが出てきた記憶は下着姿で熱唱するほむらだけだ。自身の絶不調の理由については、原因のげの字すら思い当たらない。

 ちらりと、さやかはほむらに視線を向けた。彼女も同じようにちびちびとホットミルクを飲んでいる。それも無表情で。蝋人形の如き顔の白さで。調子の悪さ的には、ほむらの方が重症らしい。

 

「……士郎さん、他になんか言ってた?」

「えーっと……あ、お大事に、だって。あと牛乳のお金は要らないって」

「牛乳のお金?」

「牛乳、士郎さんが買ってきたものだから」

 

 そう言えば昨日、少しだけ席を外していた記憶がある。あれって牛乳を買いに行っていたのか。

 良い人だなぁ、と。さやかは思った。別に牛乳程度、気になんかしなくてもいいのに。

 

「良い人だなぁ……絶対良い人過ぎて、苦労するタイプだわ」

「……そう言えば、あの2人はいつの間にかに消えていたわね」

「士郎さんと杏子の事? それならあの後すぐに帰ったよ」

 

 あの後、とは士郎が牛乳を買って戻ってきたときのことである。

 どうやらほむらは、その辺りから記憶が無いらしい。

 その事を指摘すると、ほむらは何とも言葉にし難い表情を浮かべた。

 

「……頭が痛いのよ。思い出そうとすると。何故か」

 

 頭を抱えて、虚ろな目でダイニングテーブルに視線を落とす。どうやら予想以上に重症らしい。

 

「あー……いーんじゃない、思い出さなくて」

 

 さやかは刺激をしないように、なるべく丁寧に言葉を選んだ。彼女はほむらの身に何があったかを知っているし覚えている。思い出せないのなら、それに越したことはないとすら思っていた。

 

「あと、幾ら魔法少女だからアルコールに耐性があるとは言え、ワインの一気飲みは止めた方がいいって」

「ワイン? 一気飲み?」

「アンタ、昨日やったばっかじゃん……」

 

 昨日の夜、ほむらは冷蔵庫からワインを取り出すと、まどかたちが止める前に一気に飲み干した。ぶっちゃけ自棄酒だった。ちなみにワインは美樹家のモノである。つまりはさやかの許可を待たずしての暴挙でもあった。

 とは言え、その事を咎める気はさやかには無い。何せ昨日の報道で、魔法少女暁美ほむらの姿は全国区になってしまったのだ。手ぶれが激しく、辺りも暗いため、一見すればほむら本人だとは分かり辛いが、多分同業者が見れば分かってしまうのだろう。事実、昨日の遅くにさやかとまどかのスマホに、マミから確認のメールが入っていた。今N○Kで報道されているあれって、もしかして暁美さん?

 ほむらは未だに思い出せないのか、相変わらずのしかめっ面で首を傾げた。どうにも今現在の彼女は、かなりのポンコツである。

 

「大量に水分を取って、早くアルコール分を排出するように、だって。もしくはレモンとかお蕎麦を食べると良いみたい」

「レモンと蕎麦、ねぇ……冷蔵庫にあったっけ?」

「えーと、ちょっと探してみるね」

 

 掃除を中断し、小走りでまどかはキッチンへと向かう。

 その様相を目で追いながら、ぽつりとさやかは言葉を零した。

 

「しっかし、アレね……まどかってエプロン姿が似合うわー……」

「全面的に同意するわ」

 

 まどかは水色のエプロンを身に着けている。きっとホットミルクを用意した際に着用して、そのままだったのだろう。そしてそれを見て意図せず零れた言葉に反応するほむら。

 ピシガシグッグッ。視線を合わせずに2人は拳と親指を合わせた。グッド。2人の認識に相違はない。

 

「惜しむらくは、エプロンがピンクじゃない事ね」

「しゃーない。アレ、私のだし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……無理」

「が、頑張ろう、ほむらちゃん」

 

 PM1:30。

 ほむらは力尽きたかのように天井を見上げた。そして大きく溜息を吐き出す。彼女の目前には半分程度に減ったざる蕎麦が置かれている。

 ほむらはまどかの応援に力なく首を振ると、そのままズルズルと座高を下げて行った。

 

「幾ら何でも小食でしょ。あとでレモンパフェも来るんだよ?」

「……昨日のが残っているのよ」

 

 さやかの言葉に力なく返す。まだ注文が全品揃っていないという事実に、ほむらは思わず項垂れた。

 3人がいるのは、美樹家の近所にあるファミレスである。ちょうど昼食の時間帯だった事、誰も料理が出来ない事、そしてファミレスに行けば都合よくレモンも蕎麦も摂取できる事から、3人はファミレスで食事をすることにしたのだ。ちなみにまどかはシーフードドリアとバニラアイスを、さやかは本日のパスタとハーフサイズのビスマルク、そしてマンゴーパフェを頼んでいる。

 

「……無理。気持ち悪いのは飲み過ぎじゃなくて食べ過ぎのせいよ」

「えー、あれから半日以上経っているのに?」

「うーん、私ももう少し食べた方が良いと思うけどなぁ」

 

 ほむらは細い。多分、クラスで一番細い。小柄なまどかに心配されるくらいに、細い。

 まどかの記憶にある限りでは、ほむらがマトモに食事を摂っていたのは、昨日のチーズフォンデュくらいである。昼時はふらっといなくなるし、マミとのティータイム時にはコーヒーのみだった。それも砂糖もミルクも入れないブラック。今日のオーダー時すら、ホットコーヒー一杯で済まそうとしていたくらいだ。それでいながら魔法少女として激しく動き回っているのだから、まどかとしてはいつか倒れるんじゃないかと心配で仕方が無い。

 

「栄養って大事だよ?」

「……ええ、分かっているわ。でも入らないものは入らないのよ」

「ほむらってさ、何か好きな食べ物はあるの?」

「無いわ……強いて言うなら、カ○リーメイトかしら」

 

 ああ、これはダメだ。まどかとさやかは思わず天を仰ぎ見た。それはあまりにも予想外の回答だった。

 一方でほむらは、2人の反応に少しだけ驚いていた。と言うか何故にそんな反応をされたのかが分からなかった。自身が何か言葉を間違えたのは察したが、何故に間違えたのかは分からなかった。つまりはポンコツなのだ。

 

「……ダメだよ。ダメ、ダーメ。ダメダメだよ、本当に。マジありえない」

「ほむらちゃん……そんなのって、ないよ……」

 

 別に世間一般のイメージが持つような、女の子らしい好みを上げろとは言わない。言わないが、幾ら何でもカ○リーメイトは予想外だ。

 ほむらに返答を聞いて、まどかとさやかは嫌な想像をしていた。それは2人にとっては訊くのが恐ろしいと思える想像であり、出来る事ならが訊かない方が良いと思えていた。

 だが訊かぬことには話も始まらない。

 

「もしかしてだけど……ほむらちゃんって、あまり遊びに行かなかったりする?」

「ええ」

 

 OK、神は死んだ。

 まどかとさやかは懐からスマホを取り出すと、速攻で何かを検索し始めた。それを若干引いた表情で眺めるほむら。何やら嫌な予感がしたが、それ以上に現状をどうにかするような思考が、今の彼女にはできていない。つまりは無防備にも任せるしかないのだ。

 そしてそんな嫌な予感は、2人から発せられた言葉で現実のものとなる。

 

「ほむら」

「ほむらちゃん」

 

 ズイッ、と。ドアップで映る2人の顔。

 

「「今日は遊びに行こうっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん、次はこれを着てみよう!」

「待って、まどか。私、財布、余裕ない……」

「大丈夫大丈夫、着るだけ着るだけ」

 

 PM2:30。

 街の中心部から少し外れたショッピングモール、その一角にあるアパレルショップ。

 まどかとさやかは自身のセンスを駆使して、ほむらの洋服を選んでいた。まどかはファンシー系を、さやかはカジュアル系を中心に、ほむらのもとへ持っていく。そして着替えたその姿を写真にとって保存すると、別の服を着るように促した。ぶっちゃけ着せ替え人形である。

 尤も、服なんてサイズが合えば何でもいいと宣った時点で、彼女の運命は決定したのかもしれない。他人の機微には敏い癖に、自分の事となると途端にズボラになるのは、彼女の悪いところである。

 

「清純な感じで攻めていこうよ」

「いや、少しボーイッシュで意外性を出すのはどう?」

「ならこれとこれだね。あ、あとパーカーも」

「よしっ、ほむら、次はこれで!」

「……どうかしら?」

「んー……髪形、アレンジしてみよっか」

「そうだね。ほむらちゃん、ポニーテールにしてみよう」

「……ポニーテールの仕方が分からないわ」

「え? じゃあ私が巻いてあげる!」

 

 まどかは櫛とヘアゴムを取り出すと、ほむらに少し身を屈める様に指示した。そしてほむらの髪を一房かるく掴んで撫ぜた。枝毛はなし。流れる様な、と言う形容が思い浮かぶほどの、綺麗な髪だ。

 髪を湿らせる必要は無いかも。櫛を通すと、抵抗をほとんど感じることなく滑らすことが出来た。こんなにも上質な髪を、まどかは触れたことが無い。

 ある程度櫛を通したところで、顎と、耳と、そして結ぶ箇所を直線状に、ポニーテールを巻く。

 

「じゃじゃーん、完成!」

「……なんか不思議な感覚ね」

「あれ、ほむらちゃんって、髪形を変えない方?」

「ええ、あまり興味が無かったから」

 

 その言葉を聞いて、思わずまどかは天を仰ぎ見た。何ともったいないことか。

 

「できたー? どれどれ……おお、イイ感じイイ感じ」

「でしょでしょ? よしっ、次は何にしよっか?」

「……チャイナドレスなんてどう?」

「いや、この黒髪には十二単衣とか似合うと思うな」

「……幾ら何でも、ここには無いでしょう」

 

 ほむらの冷静なツッコミに我に返ったのか。少し恥ずかしそうに頭を2人は掻いた。

 着替え終わったNEWほむらの写真を撮ると、店内の物色へと戻る。

 

「うーん、茶色で攻めるかな」

「いや、ここは薄紫で行こうよ。このワンピースと……あと薄手のカーディガン」

「それって若干マタニティっぽくない?」

「ほむらちゃんならアリじゃない?」

「……アリだね」

 

 何となく不穏な話をしているっぽいな、と。試着室の外にて聞こえる会話から、そうほむらは判断した。どうやらまだまだお着換えタイムは終わらないらしい。

 鏡を見ると、何時にも増して感情の失せた眼の少女が映っていた。それを見て思う。時間停止して逃げ出そうかしら。だが友人がこんなにも自分のために服を選んでいるのに、それを無下にするのは躊躇われる。そしてその躊躇いの間に、新たな洋服を渡される。暫し洋服を睨み付けていた彼女だったが、諦めたように溜息を吐くと、試着する事に決めた。

 

「……どうかしら?」

「……いい」

「ナイス、まどか」

 

 ピシガシグッグッ。さやかとまどかは視線を合わせると、互いの拳と親指を合わせた。グッド。2人の目前には想像以上の破壊力を持った少女がいる。これはまるで芸術だ。

 まどかはどこからか眼鏡を取り出すと、ほむらに渡した。黒ぶちのどこにでもあるような眼鏡。促されるままに付けるほむら。その姿を見て、さやかは親指を立てた。

 

「……グッド。何この破壊力」

「いいなぁ。ほむらちゃんって、何でも似合うね」

「……貴女たちのセンスが良いのよ」

「っ! ……ヤバい、今のセリフ、グッと来た」

「えへへ、嬉しいね」

 

 元々ほむらは自身の美的センスには欠片の関心も抱いていない。前述の通り、服は着られれば充分だし、それ以上の機能を求める事も無い。だから今の賞賛の言葉は、彼女の心からの本心であった。

 ……そろそろ着せ替え人形状態から脱したい、などと言う邪な感情については一切無い。無いと言ったら無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

「お」

「あら」

「ん?」

 

 PM4:00。

 ショッピングモール内にあるアミューズメントパークに、まどかたちは来ていた。つい先日入ったばかりの最新のプリクラで遊ぶためだった。

 病院前のテロ事件もあり、おそらくは人が少ないであろうと予想して足を運んだわけだが、意外な先客が店内にはいた。

 

「杏子ちゃん?」

「あー……お前らか」

 

 佐倉杏子。

 つい先日知り合ったばかりの魔法少女である。

 

「こんなところでどうしたの?」

「暇つぶしだよ」

「士郎さんは?」

「アイツならマミのところに行っている」

「巴マミのところに。……成程。つまり、貴女は手持ち無沙汰ってわけね」

「そう言ってんじゃねーか」

 

 杏子はパンパンに膨らんだ袋を抱えている。覗いて見えるのはお菓子の袋詰め。つまりはUFOキャッチャーの景品なのだろう。根こそぎ奪われたのか、UFOキャッチャーの中身は寂しくなっている。

 杏子は景品の袋を開けると、中からうんまい棒を3本取り出した。そしてそれぞれを3人に向ける。

 

「食うかい?」

「うん、ありがとう」

「サンキュー」

「頂くわ」

 

 サクサクもぐもぐ。受け取ってすぐに食べる。少し動いたおかげで、ほむらの胃にも余裕が戻ったらしい。

 

「……昨日よりはマシな顔になってんな」

「おかげさまで、ね」

「昨日の今日で、よく街に出る気になったな」

「あの映像で私と分かる人はいないわ。いたとしても、シラを切り通せば良いだけ」

 

 ほむらの言葉は決して虚勢ではない。昨日の魔法少女の姿を見ても、一般人ならばまず誰か分からないだろうし、仮に知り合いに問われたとしても、言葉の通りシラを切れば良いだけである。無論、貫き通せるかは本人次第だが、ほむらに限って言えばその心配は無いと言えよう。

 実際、髪を掻き上げたほむらの顔には、感情の揺らぎは一切見られなかった。

 

「まぁ、今日の昼頃まではヤバかったけどね」

「黙りなさい、美樹さやか。ええ、黙りなさい」

 

 さやかからの思わぬツッコミ。間髪入れずに反応するほむら。

 完璧だったはずの鉄面皮に罅が入り、昔の呼び名が出て来てしまう辺り、今のは割と致命的な一言だったらしい。余裕そうに見えるのは表面だけか。色々と台無しである。

 

「そう言えば何で士郎さんはマミさんのところへ?」

 

 まどかは正確に空気を読むと、状況を変えるために杏子に質問を投げた。それは全くの自然で、さりげなく、且つベストなタイミングでの言葉だった。

 杏子はまどかの質問に表情を歪めると、盛大な溜息を吐いた。可愛らしい顔が台無しだった。

 

「……アレだよ、ルビーとかって言う奴の件」

「ルビー?」

 

 それは意外な返答だった。まさか杏子の口から、今この場でルビーの名前が出るとは思わなかったのだ。

 

「何でマミさん?」

「あたしがマミなら知っているかもしれない、って言ったからだろうな」

 

 成程、と。3人はその言葉を聞いて納得をした。衛宮士郎がこの地を訪れた理由は、逃げ出したルビーを連れ戻す為であると聞いた。ならばルビーの情報を入手するために、魔法少女であるマミに訊きに行くのは当然と言えよう。

 

「そう言えばルビーの奴、昨日から見てないね」

 

 さやかの記憶にある限りでは、ほむらを魔法少女にして逃げ出したのが、最後にルビーを見た記憶である。そしてそれはまどかもほむらも、はたまた杏子も同じである。

 

「……いなくていいわ、あんな奴」

「同感だね」

 

 被害を受けた魔法少女2人組からの評価は、芳しくないどころではない。と言うか散々である。思い出すのも嫌なのか、2人とも表現し難い何とも言えない表情を浮かべていた。

 まどかとしては姿を見せないルビーの事が、正直心配で仕方がないが、とりあえずこの場は自分の意見を言うことなく黙ったままにすることにした。まどかは空気が読める良い子である。それに、ルビーがトラブルの中心になることはあっても、ルビー当人がトラブルに巻き込まれる姿は想像できない。要は本人の欲望以外の面で、彼女の困っている姿が想像できないのだ。

 

「そう言えばさ、アンタは士郎さんと一緒に話に同席しなかったんだ」

 

 さやかが疑問を口にする。昨日の怒り具合から、杏子も情報が欲しいんじゃないのか、と考えての疑問だった。

 

「ああ? ……あたしは良いんだよ。別に」

「……ルビーに関わらなくて済むなら、それに越したことは無いわ」

 

 杏子の返答。ほむらの同調。

 その言葉を聞いて、まどかは妙な違和感を覚えた。例えるのなら、魚の小骨が喉に引っかかった様な感覚。さやかは何も気が付いていないようだが、まどかには気になって仕方が無い。

 とは言え、違和感の正体は不明だ。今この場で考えても仕方が無いと結論付けると、まどかは思考の片隅へと追いやった。

 

「杏子もいるならちょうどいいや。ねぇ、4人でプリクラ撮らない?」

 

 さやかは近くのプリクラを指さした。つい先日入ったばかりの最新式。デコるもピカるも美白もメイクもお手の物。オーソドックスからアレンジまで何でも一手に引き受ける最新式から、丁度人が出た後だった。他に並んでそうな人もいない。

 

「今日は客も少ないし、最新式を速攻で体験できるチャンスなんだよね。ほら、行こうよ」

「プリクラぁ? あたしは別に……」

「行こうよ、杏子ちゃん。ね?」

「そうよ、杏子。来なさい」

 

 ガシッ。杏子の手をまどかが掴み、背中をほむらが押す。そしてグイグイとプリクラへ向かわさせる。

 杏子は面倒くさげな表情を浮かべていたが、抵抗の力は弱かった。と言うか1mも進まない内に、自分の足で歩き始めた。そして忙しく設定をしているさやかの下に着くと、設定に手間取っている彼女を押しのけて、代わりに設定を始め出した。

 

「ちょ、ちょ」

「アンタさぁ、どうしたいのさ」

「ええと……いや、一先ずはオーソドックスに撮りたいんだけど……」

「じゃあ盛るな。色々と試そうとするから、わけが分からなくなるんだ」

「う、うん」

「はいよ、これでオッケーだ。ほら、2人とも来い」

 

 慣れた手つきである。さやかが四苦八苦していたのが嘘のようだ。相変わらず表情は面倒くさげだし口調もぶっきら棒だが、今回と言いうんまい棒と言い前回助けてもらった時と言い、意外と優しくて面倒見が良い。

 まどかは思った。杏子ちゃんって、ツンデレなのかな。

 

「おっ、こっからなら分かるよ! まどかもほむらも入って入って!」

「4人も入れるの?」

「入れるぜ。ま、あたしは入らねーから狭い事は――――」

「何言ってんの、杏子も一緒一緒」

 

 出ようとした杏子の腕に、さやかは自身の腕を絡めた。不意の一発に不覚にもよろける杏子を、そのまま引き寄せる。そしてまどかが優しく受け止め、無理矢理に中心に固定した。

 

「お、おい!」

「暴れない、暴れない」

「じゃあ、撮るよー」

「……え、ええと」

「ほむらちゃん、枠の中に入って! 後は音声の通りにすれば大丈夫だよっ!」

「いや、おい、お前ら……」

「はいっ、チーズ!」

 

 ――――カシャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PM5:30。

 ショッピングモール内のカフェ。

 

「いやー、綺麗に撮れたね。流石は最新式」

「はい、ほむらちゃん。杏子ちゃんも」

「……ま、貰っとくぜ」

「ありがとう。……でも、どこに貼ればいいの?」

「手帳とかスマホとかに貼っている奴が多いな」

「そーゆーこと。はい、ほむら」

「……これは?」

「プリクラ用の手帳」

 

 さやかが鞄から手帳を取り出す。年頃の女の子が持つような、可愛らしい絵柄が前面に押し出された一品。

 

「ほむらって、今回が初プリクラでしょ」

「私たちからのプレゼントだよ。はい、杏子ちゃんにも」

「……ま、くれるってんなら貰っとくぜ」

「私とまどかのセンスが光る一品よ。さ、ありがたく貰っておきなさーい」

「まどか……ありがとう。大切にするわ」

「えへへ」

「……え、いや、私にお礼は?」

「くれるんでしょ?」

「いやそうだけど……」

「冗談よ。ありがとう、さやか」

 

 ほむらが微笑む。どこか艶やかな表情で。そしてそれを見て、さやかは頬を掻いた。何故だか無性に照れ臭かった。その笑顔は、今までのほむらの印象を覆すような、威力のある一撃だった。

 ほむらは手帳を開くと、早速受け取ったプリクラを貼る。記念すべき1ページ目に、4人が映ったプリクラを貼る。並べるように貼る。隙間なく貼る。

 

「……いやいや待って待って違う違う違う違ーう!」

「え、え?」

「ほむらちゃん、違うの。ちょっと貸して、ね?」

 

 まどかはほむらから手帳を受け取ると、プリクラを貼り直す。そして懐からペンを取り出し、何かを書き込んだ。

 

「あーゆー風にね、文字を描いたり絵を描いたり……あとはシールを貼ったりするの」

「うん、そう言う事。はい、ほむらちゃん」

 

 4人で初めてのプリクラ♡。まどかから渡された手帳には、今日の日付と共に、そう書いてあった。ピンク色の可愛らしい文字だった。

 

「さっきのほむらみたいに、ベターって貼り付ける人もいるけど……一応これさ、絵柄付きの手帳だからさ」

「こんな風に手帳の絵を活かしたり、書き込んだり、色々とアレンジした方が良いと思うよ」

「そーゆーことっ」

「……」

 

 受け取った手帳の、記念すべき1ページ目をほむらは凝視していた。まどかが笑って、さやかが笑って、杏子が焦りの表情を浮かべていて。そして、自分は一番後ろで困ったような表情でピースサインを出している。固い表情で、固いし仕草で、ピースサインを出している。

 それはほむらの人生で、初めてのプリクラ。

 

「……綺麗ね。こんなに綺麗に映るのね」

「ま、最新機だからね。またお小遣いもらったら来ようよ」

「そうだね。その時までに今度はどんな写真を撮るか決めておこうよ」

 

 プリクラ1回400円。最低でも3回くらいは色々と撮るので、結構値段は嵩張る。まだ中学生のまどかたちには、意外と重たい出費なのだ。

 

「杏子ちゃんも、また撮ろうね」

「……そうだな。機会があったらな」

 

 杏子は手帳を片手で弄っていた。赤色の、小さな手帳。人差し指の先でクルクルと回していた。

 まどかの言葉に適当な相槌を打つと、杏子は会話もそこそこに席を立つ。

 

「あたしは帰るぜ、じゃあな。今日は……まぁ、楽しかったよ」

「え、帰るの? 一緒にご飯食べないの?」

「予定があんだよ。じゃあな」

 

 手を振り、杏子は振り向きもせずにカフェを出て行った。元はまどかたちが強引に誘ったとはいえ、あまりの素っ気無さに、別れ方としてはちょっと寂しい。

 

「もしかしたら、迷惑……だったのかなぁ」

「それは無いと思うわ」

 

 まどかの言葉を、優しくほむらは否定した。

 

「もしも本当に嫌なら、あの子はもっと早くに見切りをつけているわ。そうしなかったのは、楽しかったからよ」

「……それなら、嬉しいね」

「まぁ出会って一日程度だし? これから仲を深めれば良いってことだよね。……そーれーよーり」

 

 さやかは残っていた抹茶ラテを飲み干すと、ストローの先をほむらに向けた。

 

「杏子で思い出したけど、士郎さんにお礼を言わないと。……特に、ほむら」

「……何の事かしら。全く身に覚えが無いわ」

「あんな痴態を晒しといて、よく言えるね」

「そうだよ、ほむらちゃん。士郎さん、ほむらちゃんの事心配していたんだから」

 

 士郎自身はルビーによる直接的被害に遭ったことはないが、間接的被害ならこの世の誰よりも受けている。つまりは被害者の面々が正気に戻った後、どのような行動をとるのかについては、ある程度なら予測することが出来るのだ。そして彼の経験上、大別して二つに分けることが出来る。即ち、キレるか、自棄になるか。

 まどかたちに連絡先を渡したのも、ルビーの情報の入手……と言うよりは、実はほむらのアフターケアとしての意味合いの方が強い。

 

「ま、とりあえずそこらへんはご飯でも食べながら考えようよ」

 

 士郎へのお礼は、再び彼と会った時にでもすればいい。連絡先も知っている事だし。

 話題を提起した張本人でもありながら、さやかはすぐに食事へと話題を移した。彼女にとっての今現在の最優事項とは、如何にして自己主張の強い腹の虫を収めるかである。

 

「そうだね。ご飯、どうする?」

「……私は軽いものがいいわ」

「例えば?」

「……コーヒー」

「ダメ、却下」

「ほむらちゃんって、本当に小食だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PM6:30

 ショッピングモールから歩いて10分程度の距離にある喫茶店。アーネンエルベ。

 まどかたちは、つい先日食べ損ねた絶品のパイを食べに、アーネンエルベに訪れた。……訪れたのだが、

 

「あれ? マミさん?」

「あら、3人とも一昨日ぶりね」

 

 店内には先客が1名。

 巴マミ。

 鮮やかな金髪と、中学生離れした発育の良さが特徴的な少女である。

 

「あれ? マミさんって士郎さんとお話していたんじゃ……」

「あら、知っていたのね。でも、お話は終わったわ。そんなに長くなる内容でもなかったしね」

「ルビーの事についてだったんですよね?」

「ええ、そうよ。衛宮さん、随分と貴方達の事を心配していたわ。……特に、暁美さん」

 

 うぐっ。隣の少女から、確かにまどかはその声を聞いた。苦虫を嚙み潰したような声だった。

 ……誰の声だったかは、本人の名誉のために伏せるが。

 

「やっぱりあの魔法少女って、暁美さんだったのね」

「……何の話かしら。私には皆目見当がつかないわ」

「しらを切り通せば良いってものじゃないと思うわよ」

 

 ため息混じりにマミは言葉を吐き出した。そして紅茶を一口。一つ一つの仕草が優雅で気品に溢れている。

 対してほむらは動かない。一歩として動かない。固く口元を結び、表情の一つも変えやしない。感情の一つも揺らぎやしない。全く以って対極的な2人である。

 

「とりあえず座ったらどうかしら?」

「……結こ」

「喜んで!」

 

 ほむらの口をまどかが塞ぎ、さやかが肯定の意を示す。そして無理矢理にほむらを一緒のテーブルに座らせた。

 

『ほむら、色々と言いたいことはあるだろうけど、マミさんは心配してくれているのっ!』

『……分かっているわよ』

『ならお願いだからもう少し愛想良くしようっ! ねっ?』

 

 テレパシーでさやかが懇願する。彼女もなんだかんだで空気が読める良い子なのだ。

 まどかに連れられる形で、渋々と言った様子でほむらは座った。何だか最後の最後に随分と大きなトラブルが発生しそうである。ハッキリ言ってまどかたちの心臓に悪い。

 まどかとさやかは手早くメニューを選び、店員を呼んだ。

 

「すいませーん、アップルパイを一つ! バニラアイスをつけてください!」

「あとオレンジパイをお願いします! あと、私もバニラアイスをお願いします!」

「それとクルミのパイを一つ! トッピングに生クリームとチョコチップ、それとカフェオレのアイスをつけてください」

「……よくそんなに入るわね」

「いや、これほむらのだから」

「は?」

「マミさんはどうしますか?」

「私はもう頼んであるから大丈夫よ。あ、店員さん、私の分は皆と一緒に出してもらっていいかしら?」

「待って、私、そんなに食べれない……」

「大丈夫大丈夫。じゃあ店員さん、以上でお願いします」

 

 ほむらの救いを求める言葉は無情にも跳ね除けられる。去りゆく店員の後ろ姿。そしてほむらを突き落とした張本人でもあるさやかは、どこ吹く風と言った様子でメニューを見ていた。まだ食べるつもりなのだろうか。

 

「大丈夫だよ、ほむらちゃん。みんなで分け合うから」

「分け合う?」

「パイなら四等分に出来るでしょ。つまりは味の違う絶品パイを、四種類も食べられるってわけよ」

「トッピングは適当に決めたけど、苦手だったら私たちが貰うから心配しないで」

「……私、一切れくらいでいいのだけど」

「ダメ、却下。食べなされ」

 

 相変わらずの小食っぷりである。この分だとまどかが朝に食べる食事量の方が、ほむらが1日に摂る食事量よりも多いかもしれない。

 クスクスクス。そんなことを考えていたまどかの耳に、押し殺し切れない笑い声が届く。巴マミからだった。先ほどとは打って変わって狼狽する姿を見せるほむらを見て、彼女は笑っていた。

 

「あらあら、最初のイメージと全然違うわね」

「……」

「むくれても隠せてないわよ」

「ふふっ」

 

 マミの指摘に追随するようにまどかは笑った。いつも鉄面皮のほむらが無防備な表情を見せるのは喜ばしいことなのだ。加えて彼女は、僅かに赤面している。それだけでもレア度は段違いだ。

 さやかに至っては顔を俯かせて肩を震わせていた。必死で笑いを堪えているのは明白だ。我慢しているようだが、全く隠せていない。幸か不幸か、ほむらにはそれを咎められるほどの余裕が無いようだが。

 

「――――ところで、結局昨日は何があったのかしら」

 

 ほむらを除く皆の笑いの発作が漸く収まったところで、マミは昨日の出来事について訊いてきた。打ちのめされたほむらは何も言うつもりが無いらしく、そっぽを向いたままである。因みにさやかはまだ笑いを堪えている。仕方が無いので、まどかが説明をすることにした。

 

「私とさやかちゃん、魔女の結界に巻き込まれちゃったんです。それで、杏子ちゃんと士郎さんと、ほむらちゃんと、あとルビーが助けに来てくれたんですけど……ちょっとルビーが暴走しちゃって」

「衛宮さんも言っていたわね。ルビーさんが暴走して暁美さんに迷惑をかけてしまった、って。……つまり、テレビのあの暁美さんは、ルビーさんの暴走の被害を受けた後だったって事ね」

「……あんな奴にさん付けする必要は無いわ」

「あ、あはは……」

 

 ほむらの口から、この世の全てを呪うような重低音の声が発せられる。どうやら昨日の件は完全にトラウマとなってしまったらしい。

 話の方向性を逸らすために、慌ててまどかは口を開いた。

 

「そ、それで……そうだ、魔女は無事に倒せました。グリーフシードは多分士郎さんたちが回収したと思います」

「そう……無事に倒せたのね」

「はい。杏子ちゃんと士郎さんが倒してくれました」

「衛宮さんと……佐倉さんが、ね……」

「はい。……マミさん?」

 

 一瞬、マミの表情に影が差す。まどかの言葉に、慌ててマミは手を振った。ううん、何でも無いわ。

 だがその言葉を無視して、まどかは言葉を重ねた。

 

「……もしかして、マミさんって、杏子ちゃんと知り合いなんですか?」

 

 佐倉さん。マミは杏子の事をそう呼んだ。

 マミ。杏子はマミの事をそう呼んだ。

 まるで互いは知り合いの様である。それも、まどかたちと出会うずっと前から。

 

「……ええ、そうよ。昔の知り合いよ」

 

 マミはまどかの言葉を肯定した。どこか遠い眼で。懐かしむような眼で。

 それは同じ中学生の少女とは思えぬ、どこか達観したような眼だった。

 

「あの子は――佐倉さんは元気だった?」

「は、はい。さっきまで一緒に――そうだ、プリクラ撮ってきたんです。これ……」

 

 まどかは鞄から自分のプリクラ帳を取り出すと、今日記録したばかりのページを開いた。

 初めての4人でのプリクラ♡。そう書いた矢印の先に、杏子は映っている。

 

「……あら、ふふっ、元気そうね」

 

 焦ったような表情で杏子は映っている。その眼は4人の中で、唯一カメラを向いていない。でも、それすらマミにとっては嬉しい便りなのだろう。

 笑みを浮かべる彼女は、今までのイメージを覆すくらいに、年相応の少女のモノで、

 

「……そんなに気になるなら、次は貴女も皆と一緒に撮ればいいわ」

「あら、意外なお誘いね。……でも、私が一緒で良いのかしら?」

「それを決めるのは私ではないわ」

 

 マミに視線を合わせることなくほむらは言い切った。相変わらずマミに対してはどこか距離を感じる彼女ではあるが、その一言は今までの距離を大きく埋める一言だった。

 思わずまどかは口元を綻ばせた。前を見れば、さやかも口元が蠢いている。ニヨニヨと蠢いている。

 

「そーゆーことですよっ、マミさん」

「今度は皆で一緒に撮りましょう! 杏子ちゃんなら任せて下さいっ!」

 

 まどかは思い出していた。今日違和感を覚えた、杏子の言葉を。

 ――――ああ? ……あたしは良いんだよ。別に。

 あの言葉はきっと、マミとの間柄の事を考えての言葉だったのだろう。

 杏子とマミの間に何があったかは知らない。知らないが、それを理由に距離を開けたままなのは宜しくない。離れたままなのは宜しくない。

 それに、何より。

 マミに対して壁を作っていたほむらだって歩み寄った。

 ならば、今すぐに詰めるのは無理でも。マミと杏子も、同じようになれるはずである。一緒にプリクラを撮れるくらいには、きっとなれるはずである。

 

「……もしも佐倉さんも交えて、5人で撮れたら、きっと素敵な事でしょうね」

「――――あったりまえじゃないですかぁ!」

 

 ドン、と。胸を叩いてさやかは同調した。彼女もまどかと同じことを思っていた。

 彼女たちは綺麗なものが好きだ。正しくて、可愛らしくて、前を向けるモノが好きだ。明るくて、眩しくて、優しいモノが好きだ。未来には希望が溢れていると信じているし、キラキラとした日常を疑っていなかった。

 だから。今は距離のある仲だとしても。

 きっと皆で笑い合うことが出来るって、心の底から思っている。信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として訪れた非日常とその住人。

 日常にいたはずの少女たちは、今や非日常と日常の溶けあった狭間にいた。

 そしてそんな日々を繰り返しながら時は流れ――――

 彼女らの幸福だった日々は終わりを告げる。

 

 

 

 月明かりの照らす夜。

 開いた窓。

 俯き、表情の見えぬ少女。

 その少女に影が差す。

 少女は問うた。誰、と。

 影は答えた。自身の名と、目的を。

 

 

 

「僕の名前はキュウべぇ」

 

 

 

「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 

 

 





 おまけ


 昨日のAM1:30くらい。


「たーおせない夜が続きー星にいーのるけーどー、へーやのまーどからじゃー空がー狭ーいー」
「イェイイェイイェイ!!」
「今回もダメ? どうして? 聞きたくなるけーどー、不ー確定要素だらけの日々はーつらーいー」
「ウォウウォウウォウ!!」
「ずーっと探しているー、たーおしかーたー、ねーがーわーくばこーれーでー終ーわりにーしーてーよ」
「ハイサイハイサーイ!!」
「わるぷすー!!」



「……ねぇねぇ、さやかちゃん。ほむらちゃんが歌っているこれって、何の歌?」
「しーらなーい」
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