魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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シリアスばかり書いていると色々と爆発したくなります。
そろそろ限界。


まどマギ×Fate 18

 ほむらの言葉を聞き、さやかはそれ以上の追及を止めた。

 さやかは自身とほむらの間に存在する深い溝を敏感に感じ取ったのだろう。

 そっか、と。1人で納得をすると、彼女は一足先に屋上を後にした。

 だが分かった気になっているのは彼女の悪癖だ。

 

「どうしてあんな事を言ったの、ほむらちゃん」

 

 陽は刻々と落ちていくだろう。

 春先とは言え、陽は未だ長いとは言えない。

 そんなオレンジ色に染まった世界の中で、不退転の意志を込めた言葉をまどかはほむらにぶつけた。まどかにしては珍しい、人を咎めるような語調だった。

 

「本当のことを言って」

 

 その眼はほむらを捉えて離さない。真実を聞くまでは一切退かぬという強い意志。普段は他者と争う事を良しとしないまどかの、これは初めてとも言える明確な敵対行動だ。

 

「言葉の通りよ、まどか。……私の目的はあなた達を魔法少女にしない事。一緒に居たのは、その為よ」

「嘘」

「……」

「違うでしょ。キュゥべぇと契約したら、でしょ」

 

 ほむらは何も言わない。まどかの言葉に対し、固く口元を結んでいる。

 まどかはそれを肯定と判断し、言葉を続けた。

 

「私はキュゥべぇと契約する事で何が起こるかは分からない。だけど、『魔法少女』にさせない為なら、私たちとルビーを遠ざけるはずだよね」

「……」

「それをしなかったってことは、キュゥべぇと契約する事に問題があるんだよね?」

 

 ルビーはこれまでに何度もまどかたちに契約を迫っていた。何ならほむらと杏子はルビーと契約して魔法少女にされている。

 だから、そう。ほむらは知っているのだ。ルビーと契約すると魔法少女になるという事を知っているのだ。

 だが彼女はルビーの事を嫌えど、まどかやさやかから無理矢理に引き剥がそうとはしなかった。あれだけ魔法少女になる事を防ごうとしているのに、だ。

 ならばほむらにとっての魔法少女とは、ルビーと契約する事で成る魔法少女では無く、キュゥべぇと契約することで成る魔法少女であるということは想像に難くない。

 

「……何でなの、ほむらちゃん」

 

 他人任せで抽象的な質問だ。だがそれは、それだけ訊きたいことがあるという事に他ならない。

 まどかの言葉に、ほむらは何も言わない。彼女の長い髪が風に遊ばれている。かつて一緒に買い物に行ったときに、髪形をアレンジする際に触った髪だ。

 そう。

 一緒に遊んだ。服を選んで、試着して回って、食事をして、プリクラを撮って、記念の手帳をそろえた。

 一緒に学んだ。勉強をして、授業を受けて、宿題をして、時々先生に怒られたりもした。

 今日までの日々はまどかの記憶の中で色あせない情景としてこの先ずっと存在し続けるだろう。

 あの日に撮ったプリクラは、まどかの手帳に大切な日々の瞬間としてずっと存在するだろう。

 そんな初めて出会った日から今日に至るまでの、その全てを否定するなんて。

 

「こんな悲しい事……ないよ」

 

 視界がぼやける。感情が抑えきれずに溢れる。拭っても拭っても、一度溢れたものは止まらない。

 無理もない。利害だけの関係。まだ第二次性徴期の少女にとって、この現実は受け止めるには過酷だ。

 

「……まどか」

 

 そしてまどかは。鹿目まどかは。

 自ら拭った視界のその先で。

 この時ほむらが浮かべた表情を、きっと忘れることはないだろう。否、未来永劫忘れやしないだろう。

 

「私は――――」

「ほむら、ちゃん……?」

「――――ッ」

 

 

 ――――カチッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、ほむらがそんな顔を、ねぇ……」

 

 夕暮れに染まる見滝原中学校。その正門。

 ほむらとの会話を先に切り上げたさやかは、そこでまどかを待っていた。

 そして待つこと10分。漸く屋上から降りてきたまどかから、自身がいない場での話を聞いたさやかは、少し困ったように顔を顰めた。

 

「泣きそう、か。アイツにしては随分珍しいね」

「さやかちゃん」

「……分かってるよ」

 

 皮肉気にさやかは言葉を零した。だがまどかの窘めるような口調に、すぐにそれを打ち消す様に笑顔を浮かべる。

 

「ほむらだって同じ人間なんだから、もう少し話せば分かり合えるかも、でしょ?」

 

 まどかの意を最大限に汲んだ言葉。

 鉄仮面を張り付けたようで、少し抜けていて、それでも決して自分の弱みは見せなかった暁美ほむら。彼女が泣きそうな表情を浮かべるとは、さやかには到底思えない。だが親友であるまどかの発言を疑うつもりは無かった。

 

「私もさっきはカッとなっちゃったけどさ、ほむらが本心を全部言ったとは思えないんだよね。だって結構口下手じゃん、ほむらって」

「うん。頭良いのに、誤解を招く発言が多いと思う」

「さっきだって全部諦めたような言い方してたけどさ。そもそもアイツは私たちの何を知っているんだー、って話じゃん」

 

 屋上では感情的になりその場を後にしてしまったさやかだが、少し落ち着いて考えてみればほむらの行動には合理性が欠けている事に気が付ける。そんなに魔法少女になって欲しくなければ、ちゃんとした理由と相応の対応をしろ、と言う話である。

 

「あー、思い返したら思い返したらで腹が立つ」

「さやかちゃんってば……」

 

 困ったように顔を顰めるまどかには悪いが、さやかのほむら評は絶賛急降下中である。昨日までは一緒に遊んで、笑って、語り合った仲であったがために、その反動はかなり大きい。

 普通に謝るだけじゃ許さん。と言うかほむらって謝るのだろうか。

 さやかの頭の中のわずかに残っている冷静な部分が、ちょっとした疑問を抱いた。

 何せほむらは感情の薄そうな外見に反してかなり強引で強情な部分がある。さやかとの初対面時の屋上でのやりとりだってそうだった。

 

「そう言えばアイツって、随分とまどかには優しいよね」

「そんなことないよ」

「分かってるって。まどかはそんなに心配しなくてだいじょーぶ」

 

 ポンポンポン。自身より低い位置にあるまどかの頭を、子供をあやすかのようにさやかは優しく叩いた。

 

「アイツの真意は分かんないけど、とりあえず敵対するつもりはないからさ。私はこれまで通り接するよ」

 

 その言葉を聞いて、まどかはそっと胸を撫でおろした。さやかの直情的な気に加えて、ほむらの突き放すような言い方は、互いが敵対する可能性を孕んでいたからだ。どっちが悪いかと言えばほむらの方だが、さやかもさやかで頑固なので、一度仲が拗れてしまえば修復は容易ではない。

 

「私はこれからパトロール行くけど、まどかはどうする?」

「私も行きたいなぁ。マミさんは先にっているんだよね?」

「そうだよ。ルビーは?」

「ルビーなら士郎さんのところに行くって言ってたよ。そろそろ戻って来るって言っていたけど……テレパシーが届く範囲じゃないみたい。まだ家には戻っていないと思う」

 

 まどかとルビー間のテレパシーが届くのは、大体鹿目家から見滝原中学校くらいの距離である。つまりは現在地点からの発信に応答が無いという事は、まだ鹿目家には帰らずにどっかをほっつき歩いている事になる。

 

「長いね。いつもはこれくらいの時間帯にはこっちにいるのに。前に言っていた別の案件絡みって事?」

「そうみたい。でも、夕方には帰って来るって言ってたんだけどなぁ」

 

 今日は士郎さんところに行ってきますねー。遅くても夕方には帰ってきまーす。

 そう言ってまどかが家を出るのと同じタイミングでルビーは風見野へと飛んで行った。つい今朝の事である。

 

「まぁいいや。じゃあとりあえずマミさんの方へ行ってみよっか。風見野の方面にいるみたいだし、上手くいけばルビーと合流できるかも」

 

 普段のパトロールはマミとルビーも一緒の4人組で行っている。役割としてはマミが主砲、ルビーが索敵、さやかはサポート、まどかは見学、といった具合だ。魔女の魔力探知と言う面に目を向けると、ルビーはマミ以上の索敵能力を持っており、彼女の存在は魔女退治の時間短縮に大きく貢献しているのだ。

 

「とりあえずマミさんにテレパシーを――って、ヤバッ」

「さやかちゃん?」

「マミさん、先に魔女の結界に入るって。遭遇しちゃったみたい」

「ええ!? 急がないと!」

「とりあえず風見野行きのバスに乗ろう! そっちの方が早い!」

 

 都合良く来た風見野行きのバスに乗り込む。日常は守る、魔女を倒す。両方やらなくてはならないのが魔法少女の辛いところだ。

 魔女の存在に緊張感を持ちつつも、2人でいると自然とほぐれていく。駆け出しの新人魔法少女と、その親友。2人で1人。それで漸く一人前。だけどそれでも良いじゃないか。

 バスで談笑する2人に、不安や恐れの顔は見られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はたして、この時。

 まどかが、そしてさやかが。

 ルビーやマミとの合流を最優先にしていれば。

 もしかしたら結果は違ったのかもしれない。

 

 

 

 だがそんなものは仮定の話。

 彼女たちに訪れた現実に変化はしない。

 それは予定調和のような結果。

 数多の平行世界と、同じ結果。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルビーがまどかたちの下に辿り着いた時には、全てが終わった後だった。

 抉られたアスファルト。

 強引に引かれた線。

 片膝をつくさやか。

 怯えた様子のまどか。

 そして――――

 

「帰れよ。遊び半分で首突っ込まれるのってさ、ホントムカつくんだわ」

 

 線の向こう側。

 槍を構えた杏子。

 彼女は冷たい眼でまどかたちを見ている。

 そしてその槍には、赤い液体が付着している。

 

「まどかさん! 遅くなりました、これはいったい……?」

 

 ルビーの思考を混乱が埋め尽くす。

 何故杏子はあんなにも冷たい眼をしているのか。

 何故さやかは息も絶え絶えに膝をついているのか。

 そして何故、何故まどかはこんなにも怯えているのか。

 

「ルビー……あの……これ……」

「ん? ああ……ちょうどいいところに来たね。そこのトーシロを連れ帰ってくんない?」

 

 まどかに状況の説明を願うが、それよりも先に杏子に言葉を被せられた。

 杏子が顎で指し示したのは……さやか。

 

「杏子さん……これはいったい、何が起きたのでしょうか?」

 

 場の支配権を握っているのは杏子。素早く推察すると、ルビーは杏子に状況の解釈を求めた。

 

「さやかさんが負傷しているのは、魔女が現れたからでしょうか? それとも別の――――」

「アタシがやった」

「――――ッ!」

「アタシが、やった」

 

 幼子に言い聞かせる様に。不自然なほどの冷静さで。

 そう杏子は言った。自分の所業だと認めた。

 

「こっから先は風見野。アタシのテリトリー。そこのバカはそれが分からず侵入してきたから、少し黙ってもらっているってワケ」

「杏子さん……」

「言った通りさ、ルーキー。アンタが魔法少女である以上、こっちには入って来るなって事」

 

 訳が分からない。そう、ルビーは思った。数日前まで仲良く遊んでいたのに、何故こうなっているのか。

 

「キュゥべぇかマミによく教わっておきな。じゃ、そう言う事だから」

「ま、待ってよ杏子ちゃん!」

「ああ?」

 

 最後に会った時とは別人のような、冷たい感情の見えない眼。

 呼び止めたまどかが尻込みしてしまうほどに、それは有無を言わさぬ暴力を孕んでいる。

 

「な、何でこんなことするの? 協力……しようよ」

「そんなのはさ、アンタらだけでやってればいいんだよ。アタシは結構」

「で、でも」

「しつこいね、アンタも。……そこのトーシロと同じように、痛い目見なきゃわかんないかなぁ?」

 

 穂先がまどかに向けられる。赤い液体が付着した刃が光っている。

 ただのそれだけで。まどかは呼吸を忘れるくらいの恐ろしさを覚えた。……無理もない。彼女はまだ中学生。幾ら非日常に触れようとも、暴力的な恐怖はそう易々とは受け入れられない。

 

「……黙って聞いていれば……ウザいね、アンタって」

「……もう回復したのか。結構深めにイッたつもりだったけど?」

「アンタの腕が悪かったんでしょ」

「待って下さい!」

 

 一触即発。慌ててさやかと杏子の間に入り込み、両者を落ち着かせようとルビーは声を張り上げた。

 

「何が起きたのか分かりませんが、一旦戻りましょう! 杏子さんには後日説明を――――」

「いらない、そんなの」

「さやかさん!?」

「そういうこった」

「杏子さん!?」

 

 ああ、ダメだ。ルビーはそう思った。ルビーが見たいのは可愛らしい少女がキャッキャッウフフするパラダイスであって、こんな殴ッ血killな絵面ではない。間違っても敵意と殺意が織り交ぜになってぶつかり合う世界ではない。そんなのは某週刊少年誌の役割だ。

 世界はもっと甘くてかわいくて優しい世界であるべきなのだ。砂糖とクリームとなんかふわふわしたもので構成されるべきなのだ。血みどろの刃も、重火器も、少女同士の争いも、キュゥべぇも、この世界には必要ないのだ。

 

「ええい、ほむらさん! 説明を願います! いるのは分かっているんですよぅ!」

「え、ほむらちゃんいるの?」

「いますいます! 魔力で感知できます! そこの裏路地に隠れていることは分かっています!」

「……」

「出て来て下さい! 出てこないとまどかさんと契約して――――」

「何かしら」

「うひゃい!?」

 

 多分、ルビーの人生で一番驚いた瞬間かもしれない。

 感知していた筈の魔力が一瞬消えた、と思ったら再感知よりも先に声を掛けられる。冷たい感情を含まない声で、だ。

 ついでに、六芒星の隙間に細く冷たいものを通される。

 

「貴女の思惑は分かっているわ。適当に騒ぎ立てて場を有耶無耶にしよう、ってところでしょう」

「そ、そんな事は……」

「別にどっちでもいいの。……この際だからハッキリ言っておくわ」

 

 

 

「私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵」

 

 

 

「貴女はどっちなの? マジカルルビー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜から隔絶するように、紫色の少女はその身を翻した。並び立つまどかとさやかを視界から外し、一瞬だけルビーを捉えて、すぐに流した。

 そしてその背後で、赤色の少女がつまらなそうに鼻を鳴らした。同じものを見ることなく、視線を外したまま紫色の少女の肩に手を置いた。

 

 魔法が発動するのはすぐだった。

 

 ルビーは目だけでちらりと周囲を確認する。2人はいない。

 今度は魔力で周囲を確認する。2人はいない。

 遠くに感じる魔力で、一先ずの危険は去ったと胸を撫でおろす。背筋を覆う悪寒が緩和されるのを感じながら、ルビーは夜空に向かって真っ直ぐに見上げた。

 何も見えない。人工の灯りに遮られ、何も見えない。

 まどかはルビーの様子から2人が離れた事を察すると、そのまま腰を落とした。正しくは、腰が抜けた。震えた両足に力が入らず、立つことが出来なかった。

 さやかは抜いたサーベルを杖代わりにして、体重を預けた。口からは重々しい息が零れる。彼女もまた限界が近かった。それでも崩れることを拒否したのは、新米魔法少女としての意地の様なものだった。

 

「……一先ず、良かったです」

 

 口にしてからルビーは思った。何が良かったです、だ。己の不用意な発言を腹の中で罵り、しかし表面上は変えずに言葉を紡いだ。

 

「マミさんと合流しましょう。動けますか?」

「ちょっと、キツイ、かな」

「ごめん、ルビー……足が言う事を聞いてくれない」

「では、位置情報を発信しますので、そのままにしてください」

 

 魔力を自身を中心に波紋のように大気中に広げる。その大部分はすぐにマナとして還元されてしまうが、近くにいるであろうマミに気づかせるのに訳は無い。

 何故さやかは怪我をしているのか。

 何故杏子は敵対したのか。

 何故ほむらは杏子と消えたのか。

 ほむらも敵対してしまうのか。

 疑問は数あれど、その全てを飲み込んで、努めて明るくルビーは言葉を発した。

 

 

 

「マミさんの魔力が引っかかりました。多分、すぐです。もう少しだけ我慢してください」

 




おまけ

※さやかVS杏子……のすぐ近くの魔女の結界内にて


「……何で美樹さんも鹿目さんもルビーさんも来ないのかしら? 近くにいるはず、よねぇ?」
「■■■■■■」
「あ、ごめんなさいね。もう少しこのまま拘束させてもらうわ。えーと、10分くらい?」
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