魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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皆様、あけましておめでとうございます。
最終更新から半年ぶりの更新……そして初投稿から3年以上経過しました。
今年中に……完結させたいなぁ。


まどマギ×Fate 19

 嗅ぎ慣れた街の空気。

 歩き慣れた通学路。

 見慣れた学校。 

 いつもの教室。

 いつもの喧騒。

 

 

 

 一つ違う事があるとすれば。

 

 

 

 そこに、貴女がいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美樹さやかは体調不良で今日は休み。明日は普通に登校できるという。

 暁美ほむらも体調不良により休み。但し彼女は持病が悪化したらしく、治療に専念するという事で、暫くは登校できない。面会謝絶だとか、なんとか。

 2人分の席の空いた教室。

 それ以外は何時もの通り。

 クラスの喧騒も。

 先生の与太話も。

 刻む時間も。

 その殆どが。

 いつも通り。

 

 

 

 

 

「それでですね、凛さんった酷いんですよ。せっかく彼氏の前で素直にさせただけだって言うのに――――」

「うん」

「あとこんなこともありましたね。凛さんは――――」

「うん」

「それと――――」

「うん」

「――――」

「うん」

「――――」

「うん」

「――――」

「うん」

 

 

 

 

 ――――ゴツンッ!

 

 

 

「痛っ!」

「いたっ、じゃないですよ! もぉ……」

 

 痛みで我に返る。思いっきり叩かれた頭。ジンジンと訴える痛みが考え事をしていたまどかを無理矢理に現実に引き戻した。

 若干涙目になりながら、痛みを与えた原因に焦点を合わせる。そこには呆れ顔のルビー。ステッキの癖に表情? なんて疑問は今更だ。

 それから周囲を見渡す。今のやり取りを第三者に見られていないか、という確認だ。

 だがまどかの目に映ったのは、教室ではなく屋上。誰も居ない屋上。

 

「言っておきますけど、今お昼休みですからね」

 

 まどかの疑問を察したルビーの一言。言われてみれば、今のまどかは膝の上に弁当を広げていた。備え付けの時計は12:20分を示している。尚、お弁当の中身は全くと言っても良いほど減っていない。

 どうやら自分は考え事をしたまま授業を受け、お昼休みに入り、いつものように弁当を持って屋上に上がり、食事を始めようとしたらしい。……1人で。状況からまどかはそう推測した。全く以ってその推測通りだった。

 

「その様子ですと、ここまでぜ~んぶ無意識って感じですかね」

「えへへ……」

「可愛く笑ったって騙されませーん」

 

 まどかは知らぬことだが。朝起きて、食事して、学校に着いて、授業を受けて。此処に至るまでの彼女は、自動操作で動くロボットの様なものだった。母親や友人はそんなまどかの様子に気付いていたようだが、それすら意に介していない。ルビーとしては心配なことこの上ない。

 だが逆の意味で捉えれば。無意識で行動できる程度には、まどかがまだ日常に意識を置いている証明でもある。

 

「ほら、食べる時に食べないと! お父様が丹精込めて作ってくれたのでしょう?」

「あ、うん……そうだね!」

 

 ルビーの言葉に応じる様に、まどかは卵焼きを口へと運んだ。だけど咀嚼に時間が掛かり、中々飲み込めない。

 お茶の力を借りて何とか胃に落とすと、まどかは箸を置いた。父親には申し訳ないが、とてもでは無いがこれ以上は食べられる気がしなかった。

 その様子を見て、ルビーはそっと溜息を飲み込んだ。そして強引に会話を変える。

 

「さやかさんが休みなのは仕方ないにしても、ほむらさんも休みなのは困ったものですねぇ」

 

 そう言えば朝に、先生がそんな事を言っていた記憶がある。さやかは体調不良、ほむらも体調不良。辛うじて残っている記憶を引っ張り出し、思いっきりまどかは溜息を吐いた。

 

「まどかさーん、幸せ逃げますよ」

「うん、そうだね……」

「あちゃー、重傷ですねこりゃ」

 

 ルビーはルビーで困っていた。それは絶賛欠席中のほむら……だけでなく、目の前で溜息を吐くマイマスターについてもだった。

 非日常に巻き込まれた時も、魔女の結界に捕らわれた時も、魔女に襲われた時も、杏子が怒り狂った時も、さやかが魔法少女になった時も。なんだかんだ言って冷静で我を保っていたまどかの、突然の消沈。その原因を推察するのは実に簡単だ。

 さやか。そして、ほむら。

 或いは彼女と仲のいい友人たちと言い換えてもいい。

 

「ほら、シャンとしてください! マミさんが来ますよ!」

 

 ルビーの言葉に、一瞬まどかは疑問を抱き、すぐに氷解させた。

 今日は土曜日。半日で授業は終わり。

 にも関わらず何故自分はお弁当を持って屋上にいるのか。

 それはマミに、今後のほむらたちとの接し方について相談をするため。

 そのために、わざわざ土曜日の放課後も残っているのだ。

 やばいやばい。無様な己を叱咤す様に、まどかは自身の頬を叩いた。相談する側が腑抜けてどうするのかという話だ。

 

「その意気ですよ。女の子は度胸と愛嬌です」

 

 ルビーの戯けた言葉に曖昧な相槌を打って、まどかは気持ちを新たにした。

 そうとも。

 皆の仲を修復する。

 その為には、こんなところで意気消沈をしている場合ではないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……ダメかぁ」

 

 昼下がり。午後14:30の鹿目家。

 まどかは自室のベッドに倒れ込むと、落胆の溜息を零した。

 

「こればっかりは……仕方ないですねぇ……」

 

 続いてルビーも相槌を打ちながら、まどかの傍に降り立った。

 ……結論から言ってしまえば。マミへの相談は、解決に足るような結論に至らなかったのだ。

 勿論、マミに全ての解決の期待をするのは、幾ら何でも重荷が過ぎる。それはまどかとて重々承知している。

 それでも期待はしてしまっていたのだ。

 

「……どうしよ」

 

 天井を見上げて、またも溜息。年頃の少女に似つかわしくない重さが、事の深刻さを物語っていた。

 一方でルビーも同じ気持ちだ。マイマスターには溜息なんて吐いてほしくない。しかして状況は悪くなる一方。キュウべぇだけでも溢れるほどの問題があるのに、その上ほむらと杏子の敵対は予想外にも程がある。

 何が原因なのか。本当にさやかが魔法少女となった事だけなのか。

 ただのそれだけで、敵対してしまうほどに深刻な問題なのだろうか。

 それがルビーには分からない。

 

「うーん、魔術師の方がまだ分かりやすい」

 

 魔術師の最終目的なんてのは大半が決まっている。だから手段も行動もある程度の予測が付けられる。無論、時には衛宮士郎の様にトンデモナイのがいるが、そんなのは突然変異的なアレなのでノーカウント。

 一方で魔法少女は違う。彼女たちは騙されて魔法少女になっている。彼女たちの目的は魔女と戦う事だが、活発的に活動しないものだっているだろう。ロクな教育がされていない分、思考や判断は個人の色が強く出て、行動が読みづらい。……それはベテランになればなるほど強くなっていくだろう。

 一般への犠牲が出ない様行動しようとするマミ。

 利己的に、必要な分の行動しかしない杏子。

 そして。魔法少女が増える事を忌避するほむら。

 この近辺に住む魔法少女たちは、皆それぞれの特色が強く出ている。

 

「……そう言えば、何で士郎さんは無事なんでしょうか?」

 

 杏子は風見野をテリトリーとして、魔法少女になったばかりのさやかですら侵入を拒んだ。

 では何故、士郎は平気なのか。単純な実力で言えばさやかよりも数段は上。加えて魔女を労せず制する程度には戦闘慣れしている。

 魔法少女では無いから? グリーフシードを必要としないから?

 ……或いは、その実力で無理矢理杏子を下したのか。下して、調教して、逆らえないようにした? あんなことやこんなことをした? 規制に引っかかるようなR18的なアレを?

 

「……それは違うと思うなぁ」

「んへ? あ、え、聞こえていました?」

「聞こえているよ。もう……」

 

 失敬失敬。イカンイカン。テヘペロでござる。

 まどかに指摘されて自分の失態にルビーは気が付いた。口に出してしまうとは随分な失態である。ちなみにルビーは意図的に本音を伏せようとすると、その部分が駄々洩れになってしまうクソじじぃによるクソッたれな機能がある。判定はかなりシビア(ルビー目線)なので、話す時にはわりかし注意が必要なのだ。前述の士郎への被害はまだしも、魔法少女の本質がバレてしまった日には、かなり状況がマズくなってしまう。

 

「……そう言えば、士郎さんがいたか」

「? どうしたの?」

「士郎さんって、風見野市に居るんですよ。杏子さんと行動しているみたいですし、彼経由で今回の件について何か分からないかなって」

 

 下手にルビーやまどかが動くよりも、杏子については士郎の方が上手く聞き出せるだろう。そこは適材適所である。使えるものは何でも使っていかなければ。

 まどかはスマホを取り出すと、某連絡用アプリを起動して無料電話を掛ける。流石に鹿目家から士郎のいるウィークリーマンションまでは、ルビーもテレパシーを飛ばすことは出来ない。

 ……だが幾らコールしても、士郎は通話に出てこない。

 

「……何か、あったのかなぁ」

「忙しいだけじゃないですか? 魔女退治中とか?」

 

 ルビーの言葉を、まどかは首を振って否定した。魔女の結界の中にいると電波は届かない。それは彼女自身が身を以って経験している事だ。

 ルビー自身も内心では不安が過っていた。何せ状況が状況だ。真面目な話、戦闘慣れしている彼ならば、ある程度の相手には初見であれど後れを取る事は無い。それこそ魔女であれど、魔法少女であれど。故に、電話に出れない状況と言うのは何とは無しに不安に思ってしまう。

 まどかは電話を切ると、メッセージだけを送った。相談したいことがあるので、また後でかけます。そうして懐にしまうと、外出用の身支度を始める。

 

「どこに行くんですか?」

「士郎さんのところに行こうかな、って」

「え、でも、それは……」

「杏子ちゃん、魔法少女は入って来るな、って言っていたんだよね。でも、私魔法少女じゃないし」

 

 それは言葉遊びと同じだ。そうルビーは言おうとしたが、寸でのところで堪える。まどかの理論は置いておいても、行動する事には一理あるからだ。

 ……最悪争いごとになっても、まどかとはコッソリ契約済みである。無理矢理にでも魔法少女化すれば、Aランクの魔術障壁、物理保護、治癒促進、身体能力強化によって、幾らほむらや杏子が相手と言えど、まどかがダメージを負うことはまずない。まどかから離れぬ様に行動をすれば、彼女の身はまず安泰だ。

 ヘッド部分だけの姿になると、隙間にチェーンを通しネックレスと化して、上着を羽織ったまどかの首に自らかかる。

 

「士郎さんの場所知らないでしょう。……危険そうだったら、すぐ引き返しますからね」

「うんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言えば。士郎の住んでいるウィークリーマンションまでは、何の問題も無く到着することが出来た。道中でほむらに会うことも、杏子に会うことも、或いは魔女の結界に巻き込まれることも無く、つつがなく。

 だが呼び鈴を押しても士郎は出てこない。ノックをしても出てこない。魔力の反応も無い当たり、本当に留守なのだろう。

 だからと言って踵を返しては、何にもならない。

 

「ちょーっと待っててくださいね。内側から開けますんで」

 

 ルビーは郵便受けの中に身を滑り込ませて、室内に不法侵入する。そして鍵を開けて、まどかを室内に招き入れた。

 

「中で待ちましょう。その方が確実です」

「い、いいのかなぁ……」

「良いです。私が許します。ま、日が暮れるまで待ちましょう」

 

 どうせお人好しの士郎の事だ。不法侵入をしたところで、事情をちゃんと説明すれば、責められることは万が一にもあるまい。

 まだ迷っているまどかを無理矢理に招き入れると、ルビーは先導する形でリビングへと向かった。

 

「ちょっと他の部屋漁って来るので、此処で待っていてください」

「それはダメだって」

「いえいえ。ちょっと古い知り合いに連絡を取るだけです」

「あ、待って!」

 

 慌ててまどかはルビーを追った。勝手知ったる我が家の様に振る舞うルビーではあるが、まどかからすればそうはいかない。ただでさえ不法侵入中なのに、留守の間に迷惑をかけるような事まではするわけにはいかないのだ。

 

「……此処が士郎さんの部屋?」

「そうですね」

 

 ルビーの後をって入った部屋は、まどかの知る部屋とは大きく違っていた。

 何も無い。

 いや、それは語弊がある。備え付けの家具。きちんと畳まれた布団。無造作に置かれたバッグ。そして机の上に転がるグリーフシード……

 物はある。ただ何と言うか、生活臭がしないのだ。

 

「うーん、流石に無いか……」

 

 バッグに身を突っ込んでいたルビーは、残念そうに落胆しながら顔を出した。お目当ての物は見つからなかったらしい。

 

「何を探しているの?」

「スマホとか、そう言った通信機器ですね。もしくは宝石がついた代物とか」

「ほ、宝石!?」

「はい。きっとそれが通信代わりになると思うので」

「え、ど、どういうこと?」

 

 宝石が通信代わりに? まどかの脳内は疑問でいっぱいだ。

 

「魔術師って、科学技術に疎いのが大半なんですよ。士郎さんみたいなのは稀有中の稀有で、科学に頼らないのが殆どなんです」

「……どういうこと?」

「例えばですけど……火をつけるのに、まどかさんだったらどんな手を使います?」

「えーと……コンロを捻るとか、かなぁ」

「ですよね。でも魔術師は魔力を通しやすく発火しやすい材質を用いて、発火の魔術を使って、そうやって漸く火を付けようとするんです。コンロを捻ったり、ライターを使えばすぐだって言うのに、わざわざそんな手間をかけるんです」

「科学技術に頼らないために?」

「そういうことです」

 

 知りもしない世界の話だ。まるでジャングルの奥地に住まう原住民である。まどかは全裸で踊っている部族の姿を想像した。

 

「そんなわけで、士郎さんなら宝石を媒介にして連絡を取ったりしないかなぁ、って思ってそれっぽいものを探しているんですけどねぇ」

「ルビーが連絡を取ろうとしている人って、そんなに科学技術がダメなの?」

「もうダメダメ中のダメダメですよ。番組の録画も出来ないくらいですから。まぁ、しようとするだけマシな部類とも言えますが……」

 

 それはヤバい。思わずまどかは苦笑いを零した。いったいその人は、見たい番組とかどうしているのだろうか。

 

「うーん……此処には無いですね」

「持ち歩いているのかな?」

「可能性は高いですね。加工しているとはいえ宝石ですから、高価なものですし」

 

 それにしても宝石を通信代わりとは贅沢な話である。魔術師とは金持ちの集まりなのだろうか。まどかの頭の中では、湯水のように消費される宝石の山が展開されている。

 

「ねぇ、ルビー」

「何でしょうか?」

「魔術師って、なんなの?」

 

 当たり前のように言葉がポンポンと交わされるが、まどかは魔術師の事を知らない。魔法少女とは違うのだろうか。魔法使いとは言わないのだろうか。

 

「うーん……そうですね……」

「?」

「一言で言えば……ろくでなし、ですね」

 

 まさかの斜め上の返答だ。まどかとしては開いた口が塞がらない。

 

「いい機会だから教えますけど、一般的な魔術師って言うのは自分以外はどうでもいいと思うような屑の連中です。士郎さんみたいなのは例外中の例外で、本当なら関りあいになるべきじゃありません」

「そ、そんなに?」

「ええ。私の製作者なんかも酷いですよ。弟子志願者の悉くを廃人にして捨てていますから」

「廃、人?」

 

 ふざけているのだろうか。最初まどかはそう思った。だがルビーの口調は珍しくおちゃらけておらず、どこか無機質さを感じる響きを併せ持っていた。

 

「ま、クソじじぃの事は置いておいて……私の知っている魔術師は比較的まともな方が多いですが、それでもやっぱり普通じゃないですね。まどかさんたちの常識は基本的に通用しない相手ばかりです」

「ええ……」

「目的のために他の全てを平気で犠牲に出来る人達が一般の魔術師ですから。人の姿をした魔女とでも思っていて下さい」

「うわぁ……」

 

 散々な酷評である。まどかとしては反応に困る言葉の羅列だ。

 だが実際には、これでもルビーはまどかが理解しやすい様にと、かなり事実を捻じ曲げて伝えている。本当の意味での魔術師について説明をしていたら――――こんなものではすまない。

 とは言え、どこかしらで詳細な説明は必要だろう。……彼女たちの身を護るためにも。特にまどかと、ほむらについては。

 

「……ま、これからの活動には不必要な知識ですよ。なんたってまどかさんは、私と魔法少女のコンビを組むんですから!」

「て、てぃひひ……」

 

 苦笑いを零す。何だか変な空気になってしまったのを、取り払おうとしてくれるのだ。ここは素直に乗っておくべきだろう。

 まどかは空気の読める良い子なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも一緒にいる2人ではあるが、意外と会話の話題は付き合ない。

 好きな芸能人。

 ちょっとしたゴシップ。

 この春のトレンド。

 着てみたい服装。

 コーディネート。

 ルビーの理想の魔法少女像。

 可愛らしく華やかに。

 基調は桃色。

 ポップ&キュート。

 こんなのどうかな?

 ドストライクです。 

 ガチャリ。バタン。ドサッ。

 噛み合っている様な噛み合っていない様なそんな会話をしていると、玄関の方で物音がした。

 

「ん、あれ? 帰ってきましたかね?」

「え? ……ええ、ちょっとヤバいよ!」

 

 ルビーの一言でまどかは現実に戻って来る。幾ら顔見知りと言えど、今の自分たちは不法侵入中。ルビーは良いと言っていたが、それはルビー自身の勝手な理論である。

 怒られるかなぁ。不安から頭の中で言い訳を幾つか上げるが、すぐに消した。言葉を弄するよりも、まずは誠心誠意謝ろう。それが一番だ。

 ルビーはルビーでいつものように先に行ってしまったので、追随するように席を立ち、

 

 

 

「し、士郎さん!?」

 

 

 

 困惑しているルビーの声。しっかりしてください、大丈夫ですか!? 明らかに不穏な言葉が聞こえる。

 キュッ、と。何故か心臓を締め付けられるような。そんな感覚をまどかは覚えた。息が上手くできない。――――扉の先を見るのが恐ろしい。本能で、そう感じてしまう。

 お願い。だが何に対して、或いは誰に対してそう願っているのか。それすらも分からない。

 ただただ。嫌な予感を心の内に収め、恐る恐る扉の先へ移動し――――

 

 

 

「っ! 士郎さんっ!?」

 

 

 

 見たるは。

 青褪めた顔で倒れ込む、待ち人の姿。

 

 

 




おまけ


「ねぇ、ルビー。宝石をどうやって通信機器として使うの?」
「術式を組み込んだ宝石を万年筆とかにつけるんですよ。同じものを2つ用意して、それぞれ送信用と受信用に分ける。そうすると、送信用のペンで書いた内容が、遠く離れた受信用のペンでも同じように書いてくれるんです。こんな感じですかね」
「ゴメンね、ルビー。ちょっと何言っているか分からないかな」

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