魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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ルビーが幻視したなにかは、つい先日私が実際に見た夢の内容です。
精神的に疲れる事が頻発すると、変な夢見る事多いよね!

※21/11/7 誤字脱字修正


まどマギ×Fate 21

 夜の風見野を駆ける。

 桃色の魔法少女。

 

 

 

 

 美樹さやかが風見野市に来ている。

 それをまどかが分かったのは、魔法少女になった事で、さやかの魔力を感知することが出来た為だ。

 とは言え、魔法少女になったばかりのまどかに、魔力の分別などつくはずもない。

 実際のところ。まどかは魔法少女となった事で、この街にある幾つかの大きな魔力の波動を感知しただけだ。当然、その詳細など分かるはずも無い。

 

 だが

 だが、だが。

 

 その中の一つ。温かく、どこか知己を覚える魔力。

 直感的にまどかは悟った。それが、美樹さやかのものであると。

 

 そしてもう一つ。

 

 さやかの魔力の近くには、別個の魔力が2つあった。

 その魔力は、風見野にある他の魔力と比べても、とりわけ大きい。

 当然、さやかよりもだ。

 

 故にまどかは駆ける。

 己の友人の為に。

 

 

 

 

 

 そんな状況を思えば。

 まどかが無意識で魔力を消費する事で、ルビーがぶっ壊れそうなほどに多大な過負荷を受けている事など、些末な事であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まどかが目的の場所に着くと同時に、装いが変身前の私服へと変わる――いや、戻る。魔力切れによる変身解除。まどかは建造物を踏み台に、目的地まで最大速力で突っ走ってきただけだが、その為の身体能力の強化や重力緩和の為の魔力は、平行世界から流れてきたのを使用している。その流量の制御に限界が来れば、自動的にリンクも切れる。それだけの話だ。

 とは言え、まどかはそんな細かい原理など知りもしないし、気にしてもいない。

 真に賞賛されるべきはルビーである。初めての変身で、どれだけの平行世界からの干渉があるかも分からない状況。ほむらと言う前例はあるものの、流量の正確な予測は困難。少しでも目測が誤れば、途端に制御を失った魔力がまどかを蹂躙するであろう。そうなれば、如何に才能に溢れている彼女とて――いや、才能に溢れているからこそ、平行世界からの過干渉でまどかは別物に変化する可能性がある。

 故に。この変身は、ルビーのキャパギリギリいっぱいだった。それでも最低限の目的を達成するまで制御しきったルビーの所業は、神業と言うにふさわしい。……残念ながら、その技量の凄さを分かる者はこの場にいないのだが。

 

 

 

「ここにさやかちゃんが……」

 

 自分の変身が解除されている事にも気が付かず、まどかは目前の建物を見上げた。

 大きな建物だ。だがビルとか、工場とか、そういうものではない。夜目には全体像が分かり辛いが、形からして、教会だろうか。

 見たところ運営はされていない様で、灯りは見えない。夜であることもあいまり、かなり不気味な外観となっている。普段のまどかであれば、恐れが先に出て、近寄る事すらできないだろう。

 だが今は、友人に危機が迫っている。

 怖いなど。そんな事は言っていられない。

 

「さやかちゃん!」

 

 掛け声とともに、まどかは扉を開け――――ようとして、その重さに返り討ちに遭う。僅かも扉は動かない。逆によろめく。

 

「ふ、ぬぅぅうううううううう!!!」

 

 年頃の少女が出すには如何なものかと思う低すぎる声。腹筋に両足、両腕に目一杯力を込める。力の入れ過ぎで真っ赤になる顔。だが悲しいかな。それでも、扉は開かない。まどかが非力とか関係なく、恐らくは鍵がかかっているのだろう。

 ならば。力でダメならマジカルパワー。こういう時こそ魔法少女の力を発揮するべきだ。

 まどかはルビーに声を掛けた。

 

「ルビー、扉を開けたいの!」

「は、はい! 分かりました!」

 

 NOとは言えない。必死なマイマスターにNOとは言えない。

 ルビーは己を叱咤する。ほんの一瞬。本当に一瞬だけ。

 ちょっと扉を開ければ、それでおしまいだから。

 気合を入れる様に、深呼吸。ワンツー、ワンツー。

 ダイジョウブ、ルビー、マダコワレナイ。

 

「行きますよ、まどかさん」

「うん!」

「はぁぁぁぁぁぁ――――」

 

 パキッ。あ、これヤバいかも。ルビーは自身の内の奥の奥から聞こえた音に恐れを抱く。何というか……致命的な感じの音だった。大切な何かに損傷をきたしたような音だった。

 そしてルビーの脳裏を何かが過る。

 焼け付くナニカ。

 零れる大切なもの。

 削れる意識。

 魔術工房。

 満面のクソジジィの笑み。

 あ、ウソ。やべぇぞこれ。

 封印。

 ラブリーだったマイファーストマスター。

 使命感。

 Yes I am!

 唐変木。

 解放と放置。

 マイラブリーマスター。

 杏子さん。

 カレイドルビー

 平行世界。

 まじかるほむほむ。

 魔法少女の真実。

 キュウべぇめが。

 飛んで、

 跳ねて、

 走って、

 放って、

 さぁさぁ今宵も無礼講。

 そこ行くお嬢さん、shall we dance?

 チュッチュッ、AhhhhhLalalalalalalalalala!

 チュッチュッ、AhhhhhLalalalalalalalalala!

 世惑え、世迷え、世回れ、世回れ。

 神は天にいまし、全て世は事もなし。

 天下泰平。遥か遠き理想郷のその先へ。

 あ、そうそう。あのナマモノ絶対殺す。

 地獄の果てまで追って殺す。

 

 

 

 ――――カチッ

 

 

 

「……何をしているの?」

「んへぁ?」

 

 果たして走馬燈なのか混乱なのか願望なのか。訳の分からないモノを幻視して挙動不審になるルビー。彼女は意図せず空中を彷徨い、何故かその場で回転し始めていた。

 そんな彼女を救う様に、ふわりと布が被せられる。そして引き寄せられ、布越しに柔らかで掴まれ覚えのある五指に固定された。

 振り向けば動かぬまどか。

 そして前には、

 

「ほむらさん?」

 

 暁美ほむらが相変わらずの無表情――――に、少しの困惑を含んだ顔で、ルビーを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暁美ほむらが何故此処にいるのか。

 そんなのはルビーは知らない。

 もしもまどかの変身制御をしていなかったら、道中で彼女の存在、或いは接近に気が付けたかもしれないが、それは今更言っても仕方が無い事だ。

 

「あぁ、いや、最近の、趣味なんですよ。怖がりなまどかさんとの、夜の廃墟のお散歩ツアー」

「馬鹿なの?」

 

 まどかが、ではなくルビーが。

 ルビーのファニー且つインタラスティングな、小粋なジョークは切って捨てられる。薄々感づいていた事だが、この暁美ほむらと言う少女は、ジョークがあまり通じないタイプの人間だ。まぁ、ジョーク自体の質もクソみたいに悪いのだが。

 誤魔化しは効かないなかな。まどかはともかく、さやかなら爆笑間違いなしのジョーク(ルビー主観)が効かなかった事を残念に思いつつも、とりあえず口を開く。

 

「士郎さんをデートに誘ったんですけど振られちゃったんですよ。可愛い美少女と行く風見野の美味しいラーメン屋巡わわわわわわわわわわわわわごめんなさい冗談です!」

 

 返答は言葉では無く銃口だった。六芒星に密着する形で銃を押し付けられる。もうほむらの顔には無表情以外の何も浮かんでいない。

 ルビーの弁解と同時に、世界が流れを取り戻す。頬を撫ぜる冷たい風。草木の騒めき。土の匂い。そして息を呑む可愛らしい声。

 

「ほむらちゃん!?」

 

 まどかからすれば、いきなりルビーが友達に組み伏せられているのだ。流れの意味不明さに理解が追い付くはずもない。が、そこは曲がりなりにも非常識と隣り合わせの激動の日々を送った経験が、まどかから呆けると言う選択肢を奪った。

 ほむら。ルビー。楯。銃。魔法。時間停止。逃走。猶予。

 幾つもの単語が断片的にまどかの脳裏を過る。引き延ばされた時間の中で、何が最善か。言葉を糧に脳を回して、結論を導くより先に、咄嗟にほむらの服を掴む――――いや、抱き着く。

 

「まどか!?」

「離さないから!」

 

 ほむらは時間を止めて、自由に行動が出来る。そして彼女が触れているモノも、同様に時の流れを無視することが出来る。それは先日の病院前の騒動で直に経験して知った事だ。

 ならば、こうして捕まえていれば。

 ほむらは逃げられない。

 

「……まどか、痛いわ」

「でも、ほむらちゃん逃げちゃうもん」

「大丈夫。私は逃げないわ」

「嘘。昨日逃げたよ」

 

 都合が悪くなると逃げるのは人としての防衛本能だ。恥ずべきことじゃない。が、悲しいかな。この場においては、ほむらの行動を縛る過ちでしか無かった。

 非力なまどかを振り払うのは、魔法少女としての力を以てすれば難しい事では無い。だがここで振り払ってしまえば、2人の隔たりは決定的なものとなるだろう。それが分かっているからこそ、ほむらはあやす様に言葉を選んだ。

 

「……私じゃなくて、他に目的があったんじゃないの?」

「あるよ。けど、ほむらちゃんがいるって事は、大丈夫な事だと思う」

「要領が得ないわ」

「ほむらちゃんが此処にいるって事は、さやかちゃんと一緒にこの中にいるのは、きっと杏子ちゃんでしょ」

 

 まどかは別に確証がなく言っているわけじゃない。

 昨日、ほむらと杏子は一緒に行動していた。風見野に魔法少女が入って来ることを忌避していた杏子が、だ。そして魔力反応があったこの場所に、ほむらがいる事。教会内の魔力を放って、わざわざルビーに絡んでいる事。ならば、この教会内にいるのが、杏子であると推測するのは難しい話ではない。

 

「だったら平気だよ」

「……昨日、杏子はさやかに怪我を負わせたわ」

「そうだね。でも、本当に拒絶するなら、わざわざここまで放ってはおかないよ」

「……仮にそうだとして、話が拗れて争いになったらどうするの?」

「うーん……そうだね、さやかちゃんってば、思い込み激しいし喧嘩もよくしちゃうからね……」

 

 てぃひひ。思わず苦笑いをまどかは浮かべた。ほむらの言う通りで、寧ろその可能性が高い事をまどかは知っている。だってまどかとさやかの仲は、言葉で簡単に言い表させられるような物じゃない。彼女はほむら以上にさやかの事をよく知っているのだ。

 だから、

 

「でも、争いにはならないよ」

 

 少しだけ。ほんの少しだけ怒りを込めて。

 まどかは否定の言葉を口にした。

 

「ううん、違うかな……ちょっとした事で口論にはなっちゃうかな」

「……どっちよ」

「でもね、さやかちゃんから手を出しはしないよ」

 

 真っすぐな眼で、ほむらを見る。いや、射貫く。

 

「ほむらちゃんがさやかちゃんを杏子ちゃんと2人きりにしたって事は、杏子ちゃんが手出しをしないって信頼しているからだよね」

「……」

「だったら、争いにはならないよ」

 

 根拠、と言うには乏しすぎる。さやかを、ほむらを、杏子を。彼女たちへの信頼を前提にした言葉。それもまどか自身の主観が大分入っている。信じろと言うには無理がある話だ。

 だがまどかは引かない。

 ほむらが争いになるかもと言った原因は、さやかによって起こされる事が前提とした言葉だ。

 まどかはそれを感じ取ったからこそ、引かない。引くはずがない。

 空気が読める良い子であれど、友人を乏されて黙っていられる程、まどかはまだ大人じゃない。

 

「それとね。私、ほむらちゃんにも確認したいことがあるの」

「……」

「もう、逃がさないよ」

 

 いつかの日にルビーは言っていた。喧嘩売ってしまえ、と。

 あの時のまどかはルビーの言葉を疑ったが、今なら分かる。

 どれだけ誰かの心を叩いても、同じように叩き返してくれるとは限らない。

 思い通りに行かない事を、他者の判断で解決を試みる等、都合が良いにも程がある。

 ならばこそ。自分の思う様に解決をするのならば。

 自分から行動していくしかないのだ。

 

「全部答えてもらうからね」

 

 笑顔だった。

 清々しさを感じる笑顔だった。

 だがそこには、有無を言わさぬ迫力も伴われていた。

 そしてもう一つ爆弾を。

 

「……あと、さっき、争いになったらどうするの、って言ったよね?」

「え、ええ……」

「争いになったら……たぶん、さやかちゃんが負けるよね」

「……」

「でも大丈夫。安心して。怪我して、さやかちゃんが二度と動けなくなったりしても、私が魔法少女になって回復してあげるから」

 

 

 

「だって、魔法少女は何でも叶えられるんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うわっ、まどかさん、超態度悪い。

 傍で聞いていたルビーは、ラブリーな筈のマイマスターの変貌に若干引いていた。ほむらがまどかを魔法少女にしたくないと知っているが故の発言。実際にはルビーの手で一度魔法少女になっているが、この場でのまどかの魔法少女発言は、キュウべぇを介して成る事を前提にしている。契約と、その後の末路を知らないからこその、無知故の交渉だ。

 だがほむらには効果抜群である。

 彼女は眼に見えて動揺をしていた。いつもの無表情さも、冷静さも、そこには何もいない。年相応の少女としての焦りを、隠す余裕も無く曝け出していた。

 

「逃がさないよ」

 

 まどかはがっちりとほむらを抱きしめ直す。此処で逃がすわけにはいかない。そもそもの話、まどかたちが風見野に来たのは、ほむらと杏子の敵対の真相を確かめる為。原因であるほむらに会えたのは、僥倖と言う他ないのだ。

 暫し呆けていたルビーだったが、ふよふよとほむらの傍まで浮くと、器用にも羽で親指を立てるジャスチャーを見せた。

 

「まどかさん、ほむらさんの事を心配していたんですよ。ずーっと。それこそ、昨日から寝られないくらいに」

 

 マイマスターの言葉足らずな部分は、自分が補う。それだけだ。まどかをただの嫌な奴には終わらせない。

 

「ほむらさん。教えてください。何でわざわざ敵対をするんですか?」

 

 魔法少女の真実については伏せる。ほむらはともかくとして、まどかが真実を知れば、友人の定められた末路を想い、錯乱するであろうことが容易に想像できるからだ。

 

「ワルプルギスの夜ですか?」

 

 何故その名前を? そう言いたげに、ほむらは眼を見開いた。……なんてことはない、ルビーは士郎から聞いただけだ。

 

「なんでも最強最悪の魔女だそうですね。それこそ、誰も倒せないくらいの」

 

 まどかと敵対するのであれば、魔法少女にさせないからで理由がつながる。だがさやかにも敵対の意志を見せるのは辻褄が合わない。幾ら未成年の少女たちとは言え、行動に一貫性が無いのだ。

 ならば。今回の敵対は、魔法少女になる以外の理由がある。そう考えるのが最も自然だ。

 

「もしかしてですけど、まどかさんとさやかさんを、ワルプルギスの夜に巻き込ませない為ですか?」

 

 というかそうであってほしいとルビーは思っている。魔法少女になったから敵対するしかない、なんて考えだったらもうどうしようもないのだ。

 

「……仮にそうだとしても、あなた達が気にする事では無いわ」

 

 おい。ルビーはずっこけそうだった。何故にこの期に及んで意地を張ろうとするのか。そう言う状況でもあるまいに。

 どうしたものかと頭を悩ませる。悩ませども、このままでは意地っ張りのほむらに全否定される未来しか見えない。ほむらはそうでもいいかもしれないが、ルビーとまどかはそう言う訳には行かないのだ。

 

「……じゃあ、ほむらさんが照れちゃうせいで言葉にしない――あ、違う、できないだけで、まどかさんとさやかさんの身を案じて止まない心優しくて可愛い才色兼備で心を開く事だけがちょっぴり苦手な魔法少女って事で話を進めますけど」

「……」

「わっ、ほむらちゃん少しだけ心臓の音が不規則になったよ。あとちょっと温かくなった」

 

 褒められるのには慣れていないらしい。年相応の可愛い側面を見て、ルビーは心の中でニンマリと笑った。惜しむらくはこの場面を切り取り永久保存する術を持たない事だが、この思い出だけでも暫くは戦える。

 ほむらが真実を話そうとしないなら、此方の知っている情報だけで話を進める。それだけだ。

 

「まどかさん。仮にですけど、ものすごい魔女と戦うことになったらどうします?」

「怖いけど、戦うよ」

「何故ですか?」

「だって、戦わなきゃみんなに被害が出るんだよね? だったら、戦って、倒さないと」

「護るために、ですか」

「うん。それ、今言っていたワル……なんだっけ?」

「ワルプルギスの夜です」

「そう、それそれ。みんな、マミさんやほむらちゃんや杏子ちゃんは、それと戦うんでしょ? きっとさやかちゃんもそうだよね。なら、私も戦わないと」

「……まど、か」

「痛い目に遭うのは嫌だけど、友達を置いてはいけないもん」

 

 100点満点の回答ですよ、まどかさん。心の中でルビーは親指を立てた。それでこそマイラブリースイートマスターだ。可愛さだけじゃなくて勇気も。出会ったころの少女からの成長に、思わず涙が溢れてきそうだった。まるで子を見る親の心境だった。

 

「私は戦うよ。ね、ルビー」

「勿論ですとも。この身がぶっ壊れて再生不可能になっても、私はまどかさんに尽力しますよ」

 

 まどかの言葉に深くルビーは頷いた。マスターに尽力する。それこそが魔術礼装として生まれた本当の使命でもあるからだ。

 

「だから、ね。ほむらちゃん、本当の事を言って。私は、まだほむらちゃんから信用無いかもしれないけど、出来る事をするよ」

「戦うにあたっても、勿論キュウべぇなんかに契約はさせませんよ。まどかさんは私と契約する運命にありますからね~」

「てぃひひ、そうだね」

「……私は、まどかを魔法少女にしたくないんだけど」

 

 漸く。ほむらは口を開いた。そっぽをむいて、小声で。今までにあった覇気は消え失せていた。年相応の少女としての声だった。ある意味で、彼女の本心からの声だった。

 

「なら、魔法少女以外の道で頑張るだけです。そうでしょう?」

「勿論だよ。……ほむらちゃんの気持ちは嬉しいけど、あまり甘く見てほしくないかな」

「まどか?」

「ほむらちゃんはね、私が、友達を放って置くように見えるの?」

「……そんなわけ、ないじゃない」

 

 多分今のこの一言は、ほむらの中の核心に触れる内容だったのだろう。

 一転して、ほむらは顔を歪ませた。悲痛に満ちた顔だった。まどかの言葉を否定し、片を震わせ、今にも泣き出しそうになるくらいに――――ほむらはその顔から、声から、態度から、被っていた仮面を失くしていた。

 

「だよね」

 

 ぱっ。あれほどに強く抱きしめていたのを、まどかは解放した。解放して、ほむらの頭を優しく包み込む。

 

「良いんだよ、強がらなくて」

 

 それは見事な身体捌きだった。ほむらの身体を引き、彼女の頭が胸に埋まるように位置取りを変える。為す術もなく、ほむらはまどかに包まれた。幼子が母にあやされるように。それは実に慈しみに満ちた光景だった。

 

「私は、ほむらちゃんとも友達のつもりだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖母か。

 ルビーは思った。

 聖母でなければ神様か。

 あれでオチない人はいるまい。ルビーだったら間違いなくオチている自信がある。あんな美少女に撫でられながら優しく包まれたら、それだけでルビーからすれば絶頂ものである。汚らしく涙を流しながらアヘ顔ダブルピースまでするだろう。それは予感ではなく確信だった。

 

 だがほむらは強靭な精神力でそれに耐える。

 

 暫く撫でられていたほむらだったが、その手を除けて、ゆっくりと背筋を伸ばした。

 

「大丈夫よ、まどか。私は、大丈夫」

「ほむらちゃん?」

「貴方の言うとおりね。私は……でも、ごめんなさい。言えないことがあるの」

 

 そして宣言。まどかの言葉に、柔らかく、優しく、しかし拒絶の言葉を重ねる。

 

「私はやらなければならないことがあるの。それに、貴女を巻き込みたくない」

「友達だから?」

「……そうよ」

 

 ほむらは一呼吸の後に、自分を取り戻していた。いつもの鉄面皮を張り付け、感情を抑制する。揺らぎ、表面化したはずの戸惑いは、既に彼女からは消え失せていた。

 

「じゃあ、杏子ちゃんに訊くよ」

 

 空気を読んで下さ――――いや、空気を読んだからこそか。いつになく積極的なまどか。ルビーとしては今までにない見事過ぎるまどかの行動力に、逆に頭が痛くなってくる。この場での美しくオシャレな流れは、間違いなく押し黙っている事だが、まどかはそれを認めない。そうなったのは過去のルビーの発言や所業が大いに関わっているのだが、そんなことルビーが気付くはずもない。

 流石に予想外過ぎたのか、ほむらも思わず固まっていた。今日のほむらは感情が大忙しだ。

 

「ったく、うっせーと思ったら何をやってるかねぇ」

「あれ、まどかじゃん。どうしたのさ、こんな時間に」

 

 そしてそこに、まさにタイミングよく現れる杏子とさやか。

 昨日の諍いが嘘のように、2人は仲良く扉を開いて出てきた。

 

「さやかちゃん! 無事!?」

「無事だよ。ま、色々あったけど」

「ハン、人の気も知らねーで」

「はいはい。分かったって」

 

 忌々し気な杏子と、面倒くさげなさやか。傍目で見れば仲は改善されていないように見えるが、声から刺々しさは消えている。まどかには分からないが、2人の間で何かが解決したのだろう。それは喜ばしい事だ。

 ふぅ、と。息を吐く。同時に、少しよろめいた。脳が無重力状態かのように一瞬軽さを覚え、目に映る世界がダブつき二重になった。

 あれ? まどかの疑問が脳裏を過り、形と為す前に、

 

「まどかさん!?」

「まどか!?」

 

 相棒と、親友の焦った声が聞こえ、

 

「まどかっ!」

 

 最後に。

 ほむらの声が聞こえたところで。

 

 ――――あ、ダメ

 

 まどかの意識は暗闇に囚われ、落ちた。

 

 

 




おまけ


※その頃の巴家

「はい……はい。いえいえ、お礼なんて……お気になさらないで下さい。はい。ではどうぞ、失礼します……」

 ピッ

「誰からだい、マミ」
「鹿目さんのお父さんからよ」
「まどかの? へぇ、さっきはさやかの家族からも掛かってきてたよね」
「そうよ、キュウべぇ。……ハァ」
「? どうしたんだい?」
「……えーっとね、何だか私、最近は口裏合わせ的な、こういう役目が多いなぁって」

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