魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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自分はどっちも行けますが、どちらかと言われるとこし餡派です。

次の話は番外編を予定しております。


まどマギ×Fate 2

 まどかたちが彼女を見つけたのは偶然だった。

 昼休みの終わり。急いで教室へ戻ろうと駆けた途中。

 ガラス張りの壁を隔てた向こう側に、その人物は居た。

 鮮やかな金色の髪の毛。

 同世代にしては珍しい縦ロールの髪形。

 発育の良い(どこがとは言わないが、ルビー曰く『アレは人類の至宝』)体型。

 見かけたのは一瞬だったが、見間違えようはない。

 

「巴マミさん? ええ、知っているわ。三年生の子よね」

 

 先生に訊くことで、この学園の生徒である裏付けも取った。

 美人で、成績優秀で、スポーツ万能で、且つそのことを鼻に掛けない、まさに完璧超人。

 先生方の中では結構有名な人物であるらしい。

 

「いやー、年上の金髪縦ロールにあの身体。何も言う事は無い。申し分ないですね、本当に」

「ルビー。ちょっと静かにしてほしいかな」

『いやー、年上の金髪縦ロールにあの身体。何も言う事は無い。申し分ないですね、本当に』

「……直接脳内に言えば綺麗に言い直しても良いって話じゃ無いと思うんだよね、うん」

『まどかさんもさやかさんも私と同じように出来ますよ?』

「え、マジ? ……聞こえる、2人とも?』

『……本当だ。ルビーの言う通り、さやかちゃんの声が聞こえる』

 

 休み時間の合間。

 そんな際どいやり取りを挟みつつ。

 

『……てかこのテレパシーっての? いつの間に出来るようになったのさ?』

『それはですねー、お二人が寝ている間に(お二人の唾液で)パスを繋げたからですねー』

『またいつの間に……って、ちょっと待った。ルビー、アンタ今何て言った』

『それはですねー、お二人が寝ている間に(お二人の唾液で)パスを繋げたからですねー、と言いました』

「……は?」

『簡易的にでもパスを繋げるには、自分の情報を他人に与えなきゃいけないんですよー』

「え……え?」

『あ、でも安心して下さい。お二人のファーストキスまでは奪っていないので』

「ちょっ、え、ええぇぇえええええええっ!?」

「……美樹さん。ちょっと、廊下に出ましょうか」

「あ、いや、せ、先生……違うんです! これは、その、あの……っ」

「美樹さん、廊下」

 

 

 

 時間は放課後に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巴マミが彼女を見つけたのは偶然だった。

 放課後の校舎。担任に頼まれた雑用を済ませた帰り。

 報告の為に出向いた職員室の前に、その人物は居た。

 柔らかな桃色の髪の毛。

 その髪の色にマッチした赤いリボン。

 自分とは違う、中学生らしい小柄な体躯。

 あの日見かけたのは一瞬だったが、見間違えようはない。

 

「あの子は、確か……」

 

 昨日助けた女の子の一人。そしてステッキを握りしめていた子だ。残念ながら名前は聞けなかったが、あのステッキのおかげでよく覚えている。

 ……そう、よく覚えている。

 何故か興奮していたステッキを。

 何故か自律行動しているステッキを。

 何故か人の様に喋ることが出来るステッキを。

 ……ああ、そうとも。よく覚えている。

 

「……あの子も魔法少女なのかしら?」

 

 一目見ただけではただの学生にしか見えなかったが、あのステッキが固有の武装なら話は違ってくる。

 マミの相棒は、あの場にいた少女たちとはまだ魔法少女の契約をしていないと言っていた。だがあのステッキは少なくとも魔法少女の存在を知っていた。ならば、あの子も魔法少女ではない、と決めつけるのは早計だ。

 ……尤も。仮に魔法少女だったとしても、敵を前にして腰を抜かしてしまう辺り、まだ成りたての新米のようではあるが。

 

「……あ、急がないと」

 

 暫し思考に耽っていたマミだが、下校を告げるチャイムの音で、本来の自分の目的を思い出す。

 雑用は終わった。ならば報告をしなければならない。それが終わって、雑用は晴れて終わりを迎えるのだ。

 

「あ……」

 

 向こうもこちらに気が付いたのだろう。驚いたように目を開いたところから察するに、昨日の事は覚えているらしい。

 

「……昨日の子、で良いかしら?」

「は、はいっ! 私、鹿目まどかっていいます」

「鹿目さんね。昨日も言ったけど、巴マミよ。よろしくね」

「よろしくお願いしますっ。それと、昨日の事なんですけど……」

「ちょっと待ってね。私、先生に報告しなくちゃいけない事があるの。それが終わってからで良い?」

「はいっ、勿論です。……あ、でも、ごめんなさい。友達が、その、まだ用事が終わっていないので、少し待ってもらっても良いですか?」

「ええ、構わないわ」

 

 友達と言うのは、おそらくは昨日一緒に居たもう一人の子だろう。快活そうな水色の髪の子をマミは思い浮かべる。

 

「ちなみにその友達は何処に?」

「ええと、そのですね……職員室にいます」

 

 それはそうだ、とマミは納得した。でなければわざわざ職員室の前で待っているわけがない。

 

「それと……今日は先生の機嫌が悪いので、少し時間が掛かっています」

 

 続いて紡がれた言葉を、マミは理解できなかった。

 

「もう30分以上経っているので、多分反省文を書かされているんだと思います」

「ん、うん?」

「ルビーが……タイミングが悪くなければなぁ……」

 

 後半は独り言だ。マミの反応なんて考慮していない。

 それでもマミは察した。何かが彼女と、その友達の身にあったのだと。

 そしてその何かとは、自分も関わる事になると。

 何故かは分からぬが。そう、マミは、察した――――いや、確信した。

 そしてその確信は、疲れ果てた表情で出てきた青髪の子と、何処からか聞こえる無駄に明るい声によって、現実のものになる。

 

「……ごめん、まどか、お待たせ……」

「お疲れ様、さやかちゃん」

「いやー、絞られましたねぇ。さやかさん、今後はもう少し注意をした方が良いかと」

「誰のせいで……っ」

「あはー☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、上がって。一人暮らしだから遠慮することはないわ。ろくなおもてなしの準備もないんだけどね」

「お邪魔します……」

「うーん、年上ポジションのみならず、まさかの一人暮らしと言うシチュエーションまで備えているとは……何て恐ろしい……っ」

「ルビー……アンタって奴は……」

 

 場所は変わって、巴マミ宅。

 無事に合流できた3人と1本は、昨日の件について公共の場で話すのはマズイという考えから、都合よく一人暮らしをしているマミの家で話をすることになったのだ。

 後ろから聞こえるルビーの声を無視して、マミは台所へと向かった。

 

「飲み物は紅茶で良いかしら? 他は……牛乳しかないわね」

「……牛乳。マミさんの牛乳……」

「ルビー、ちょっと黙ろう」

「マミさん、私たちは紅茶で大丈夫ですっ!」

「分かったわ、ちょっと待っててね」

 

 ルビーの声が聞こえぬ様に、まどかは大声でマミに返答をした。未だかつてないほどに2人の頭はフル回転で働いている。無論ルビーへの牽制の為である。

 

「ルビー、頼むから余計な事言わないでよ」

「失礼ですねーさやかさん。私が何時、何処で、どんな余計な事言ったというのですか?」

「……ルビー、お願い、黙って」

 

 心労と言う言葉には馴染みが無いが、きっと今の疲労感はそれがもたらしたものだろう。

 ルビーの考えなど分からないが、昨日から振り回されっぱなしのまどかとさやかからすれば、ルビーの言葉一つ一つに警戒をするのは当然の事と言えた。

 ――――マミさんにまで、同じ目には遭わせない。

 言葉に出さずとも2人は同じ考えを持っていた。同じ時間を共有していた2人だからこその思考だった。

 ほむらとは異なりマミはルビーの存在を受け入れているようだが、いつ拒絶されるかもわからない。命の恩人に余計な心労を与えるのは本意ではないのだ。

 

「お待たせ」

 

 暫くしてマミが戻ってくる。手に持つお盆にはティーポットとカップが4つ。

 

「一応ルビーさんの分も持ってきたけど、貴女は飲めるのかしら?」

「お気持ちは嬉しいですけど、残念ながら食事できないんですよねー」

「そう、残念ね」

 

 まどかとさやかの前にカップが置かれ、ポットから透き通るような濃い紅色の液体が注がれる。

 

「ダージリンよ。こっちにあるのは、右から順にミルクと砂糖とレモンと蜂蜜。好きに入れていいから」

「は、はい。ありがとうございます」

「うーん、本格的ですねぇ」

 

 紅茶の香りが鼻孔をくすぐる。市販の紅茶では嗅ぐことはできない。芳しい香りとは、まさにこの事を言うのだろう。

 ちょっとした感動を覚えながら、2人はあっという間に飲み干してしまう。

 

「……美味しい」

「そう? それは良かった」

 

 思わず零れたその言葉に、マミは嬉しそうは頷いた。

 そして空になったカップにおかわりを注ぐ。

 

「おかわりは幾らでもあるから遠慮しないで。……でももうすぐ夕食の時間だろうし、飲み過ぎは勧めないけどね」

 

 柔らかく微笑むその姿を見て。

 大人の風格だ、と2人は思った。同じことを自分たちの両親にも感じたことはあったが、まさか年齢の一つしか違わない先輩に感じるとは思わなかった。何というか、心を掴まれた感じだった。

 理想を体現したような先輩。

 そんな表現がぴったりだ。

 

「さて……それじゃあ本題に入りましょうか」

 

 まどかたちの反対側に座ると、マミは雰囲気を一変させた。先ほどまでの優し気な雰囲気は健在だが、どこか重々しい表情を浮かべている。

 自然と2人は背を正した。

 その様子にマミは少しだけ微笑みを零して、懐に手を入れる。

 取り出したのは、黄色い宝石。

 

「改めて自己紹介をするわね」

 

 

 

「私の名前は巴マミ。――――見滝原市に住む、魔法少女よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――つまり、何でも一つ願いを叶えられる代わりに魔法少女になって」

「魔女と戦い続ける、って事ですか?」

「簡潔に言えばそうなるわね」

 

 マミの話が終わるころには、既に外は夜の帳で覆われていた。

 小休止を得るように、マミはすっかり冷えた紅茶を口に含んだ。

 

「魔女は普通の人たちには感知できない。だからキュゥべぇに選ばれた魔法少女が倒すしかないの」

「戦い、続けるんですよね?」

「そうね。でも、納得はしているわ」

「命がけ、なんですよね?」

「ええ、命がけよ。想像しているよりもずっと、ね」

 

 マミによって語られた内容は、2人にとっては想像以上のものだった。

 魔女の存在。終わりの無い戦い。たった一つだけ許される奇跡。

 日曜日の朝に放送されているような、子供向けのファンシーな魔法少女……を思い浮かべていたわけではないが、それでも思考と現実に大きな差があったことは否めない。

 ――――仕方のない事ね。

 黙りこくる2人を見て、マミは気づかれぬ様に息を吐き出す。本当ならこんな重々しい話はしたくなかったが、2人がキュゥべぇに選ばれている以上はちゃんと魔法少女の存在について説明をする必要はある。魔法少女になってから、やっぱり私には無理でした辞めさせて下さい、なんてわけにはいかないのだから。2人がどんな選択をするにしても、後悔だけはしてほしくないから。

 

『二度と他人のために魔法を使ったりしない。この力は全て自分のためだけに使い切る』

 

 少しだけ、昔を思い出す。

 嘗て共に戦った仲間の事を。

 時計の音だけが、耳に響く。

 

 

 

「一つ……いや、二つ質問良いでしょうか?」

 

 

 

 そんな重苦しい沈黙を破ったのは、意外にもルビーだった。

 

「一つ目。マミさんの説明で魔法少女の使命については分かりました。が、何故に魔法少女が魔女と戦わなければならないのでしょうか?」

「ルビー、聞いていた? 魔法少女が戦わないと、魔女による被害が出てしまうって――――」

「いえ、さやかさん。それは使命であって理由ではありません。……別の言い方をしましょう。何故魔法少女は命がけで、魔女とだけ戦い続けなければならないのでしょうか?」

 

 魔女とだけ。その強調された言葉の意味を、まどかとさやかは察せない。

 が、魔法少女であるマミは正しく理解した。

 

「質問の回答だけど……それはね、魔女を退治することによって見返りを得ることが出来るの。詳しく説明すると長くなっちゃうけど……そうね、これを見て」

 

 マミは先ほどから取り出した黄色い宝石を、まどかたちに見えるように持ち上げた。

 

「これはソウルジェム。私たちが魔法少女になる際に必要な宝石よ」

 

 綺麗、とまどかは思った。室内の光を反射しているのか、鮮やかな黄色い輝きが煌いている。

 

「でもこれは、使いすぎると黒く濁ってしまう。そうなると魔法少女は十全に力を発揮できなくなってしまうの」

「え、それってマズいんじゃ……」

「そうよ。でもその濁りを消す方法が一つだけあるの。それが――――」

「魔女を倒すことで得られる見返り、ですか」

「――――察しが良いのね。その通りよ」

 

 カラン、と。音を立てて黒い球状の装飾品がテーブルの上に置かれる。

 

「これはグリーフシード。ソウルジェムの濁りを消すアイテムよ」

「これが見返りなんですね」

「そうよ。魔法少女として活動するには、魔女を倒し続けるしかないの」

「……ちなみにですが、もしもグリーフシードを使わずにソウルジェムが濁り切ってしまった場合には、どのような事が起こるのでしょうか?」

「……ごめんなさい。残念ながらそこまでは分からないわ」

「そうですか……」

 

 ふむ、と。考え込むようにルビーは身体を折り曲げた。羽で自らの五芒星を撫でながら思考する。

 

「では二つ目ですが……キュゥべぇさんと今お話しできますか?」

「キュゥべぇ? えーと……ちょっと待ってね……」

「……」

「……ごめんなさい、今はダメみたい」

「ダメみたい、と言うのは?」

「私たち魔法少女はテレパシーが使えるの。キュゥべぇとも出来るんだけど、今は届かない場所に居るみたい」

「彼が居そうな場所とかは分かりますか?」

「残念ながらそれも分からないわ。魔法少女の才能を持つ子を探しているみたいだから、決まった場所に居る事は少ないの」

「そうですか……」

「私で良かったら答えるけど?」

「いえ……これ以上は遅くなるので、今日のところは大丈夫です」

 

 ルビーの言葉で、初めてまどかたちは時間が午後八時を回ったことに気が付く。もう立派な夜の時間帯。と言うかいつもなら夕食を終える時間帯だ。

 ヤバい、とまどかとさやかは思った。2人とも家に一切の連絡をしていないからだ。

 

「わ、わわっ! ご、ごめんなさい、マミさん。私たち、帰りますねっ!」

「や、ヤバいっ、お話はまた明日でも良いですか!? ちょっと今日は家に帰らないとマズいのでっ!」

 

 慌ただしく帰りの支度を2人は始める。まどかもさやかも、まだ中学二年生の少女である。夜遅くまで出歩くことは出来ない。

 ましてやまどかは昨日さやかの家に泊まったばかり。もう少し詳しい話を聞きたいが、流石に2日続けての外泊は厳しいものがある。

 

「ごめんなさい、マミさん。紅茶、ごちそうさまでしたっ!」

「マミさんっ! また明日、続きをよろしくお願いしますっ!」

「――――ええ、また明日ね」

 

 

 




 おまけ

 放課後、職員室。

「いいですか、美樹さん。学生の本分は勉強です。色々と疲れる事はあるでしょうし、悩みもあるでしょうが、それを理由に本分を疎かにするのは間違っていると言わざるを得ません。授業中に寝てしまった挙句、夢に起こされるようであれば、相談くらいして下さい。抱え込んでいては解決するものも解決しません」
「はい……ごめんなさい」
「そもそも恋愛なんて麻疹のようなものです。大人になれば甘酸っぱい思い出で済むものです。当たって砕けろぐらいの勢いで、悩むより動くべきですよ」
「は、はぁ……」
「尤も、相手がシュークリームを食べる際に皿の有無で文句を言う人だったり、目玉焼きにかけるもので文句を言うような人ならば話は別です。そんな人とは後々苦労することになるのですから、スパッと別れた方が美樹さんのためです」
「……」
「大体ですね――――」

(……悩みって、恋愛じゃないんだよなぁ)
『いやー、気持ちは分からなくもないですが高望みしすぎですねぇ。時には妥協する事も必要でしょうに』
『る、ルビー!?』
『はぁい、御呼ばれ頂きましたルビーちゃんですよー。それにしても中々に濃い先生ですねー』
『いやいやいや、何でアンタは此処居るのよ!? まどかと居るんじゃ無いの!?』
『まどかさんですか? いえ、こっちの方が面白そうなんでついてきちゃいました☆』
『ついてきたじゃないわよっ、今はマズイってのに――――』

「――――てことです。……美樹さん、聞いていますか?」
「あ、え、ええと…………は、はい! 勿論ですっ! 先生が正しいですっ!」
「……美樹さん。お団子はこし餡と粒餡、どっちが良いかと聞いたのですが」
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