魔法少女まどか☆マギカ×Fate   作:くまー

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……やらかしたかもしれない。後悔はしてないけど。
衣装はまどかのとか、マジカル紙袋辺りを想像してください。大体そんな感じを想定しているから。

※ただし、へそは出ている。異論は認めない。


まどマギ×Fate 6

 まどかたちと別れたルビーは、見滝原市の上空をふよふよと移動していた。向かう先は宣言した通りのまどかの自宅である鹿目家――ではなく、どこか適当にそこら辺を。つまりは目的なんて定めていない。別にまどかたちに嘘はついていない。宣言した行先はあくまでも最終的な行先。つまりは鹿目家に着くまではどこを闊歩しようとルビーの勝手なのだ。

 

「はぁぁぁぁぁ、何でクソじじぃの縁の建物がこの街にあるんですかね……サイアク」

 

 上空という誰も見ることができない場所である事を良い事に、盛大な溜息と愚痴を吐き出すルビー。それは普段から無駄に明るい彼女にしては珍しくも陰鬱な響きを含んでいた。この世の全てを呪うかのような響きだった。そしてその理由は先ほどまどかたちと交わした会話の中にある。

 

『ん? 店名? アーネンエルベだけど?』

 

 アーネンエルベ。またの名を、魔法使いの匣。それは世界のどこかにあると言われる喫茶店。

 

「はぁぁぁぁぁ……サイアク、何でクソじじぃの事を思い出さなきゃいけないんですかねぇ」

 

 そしてその建造には魔法使いであるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが関わっている。クソじじぃことキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが関わっている。ルビーからすればあのじじぃを思い出すというだけで忌避したい場所だ。せっかくいい気分だったのに。と言うかあのじじぃは唯一無二の第二魔法を安く売り渡し過ぎである。自身の存在を棚に上げて、そうルビーは思った。

 

「あーヤダヤダ。……まぁ、気を取り直してキュートでリリカルなマスター候補でも探すと……ん?」

 

 ふと。

 そんなルビーの視界に、見覚えのある人物が映った。

 

「……おや? あれは――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ まどマギ×Fate ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの住宅地を歩く。

 二つの人影。

 

「お。士郎、コンビニだ。ちょっと休憩しよーぜ」

「……またか。さっきも休憩したぞ」

「いいじゃねーか、ちょっとした寄り道さ。肉まん食いたいし」

「……今度は肉まんか。夕飯食えなくなるぞ」

「それは別腹だ」

「……」

 

 鮮やかな紅色の長髪を揺らしながら少女が進行方向の先に見えるコンビニを指さした。何処の街にもあるような青と白の色が特徴的なチェーン店。そしてその入り口には値引きの広告がこれでもかと堂々と自己アピールしていた。『中華まん、今だけ全品100円!』。

 少女の後ろを歩いていた赤銅色の髪の青年――衛宮士郎――は、そんな広告と少女を交互に見ると、疲れたように己の目頭を押さえた。そして心の中で溜息を吐き出す。

 

「杏子、お前本当に巴さんのところに案内する気はあるんだよな?」

「ったりめーだろ。言ったことは守るさ」

「……その割にはさっきから食ってばっかの気がするんだが」

「情報提供料だ」

「昼飯の時も同じこと言ってなかったか」

「じゃあアレだ。道案内料」

 

 全く悪びれる気も無く少女――佐倉杏子――は言い切った。自身の正当性を全く疑わぬ語調だった。振り返ったその表情には挑発的な笑みが浮かんでいた。そしてその口にはアイスの棒が1本咥えられている。ちなみに左手には2本握られている。そのどれもが士郎がつい10分前に別のコンビニで買い与えたアイスの成れの果てだ。

 士郎は溜息を吐き出した。今度は心の中ではなく、実際に口から。

 

「……これで最後だぞ」

「おう、夕飯まではそれで我慢するぜ」

 

 つい10分前も同じ言葉を吐き、同じ言葉を聞いた覚えがある。だが全て飲み込んで、代わりに懐から財布を取り出した。

 中から取り出したのは一万円札が1枚。

 

「い、一万円!? 良いのか!?」

「……好きに買ってこい。但しお釣りは返せ」

「おお……一万円……分かった! サンキュ!」

 

 信じられないと言いたげな表情で渡された一万円札と士郎とを見比べていた杏子だったが、士郎の言葉で現実に回帰するとお礼もそこそこにコンビニへと走っていた。それを見て士郎は溜息を吐き出す。あの調子だと1円も残らないな。とは言え杏子のご機嫌を損なえば目的の達成は難しくなる。

 巴マミ。杏子が知る魔法少女の一人。もしかしたら士郎の望む情報を持っているかもしれない人物。

 情報、案内、接触、交渉……目的のためには杏子の協力が必要不可欠なのだ。必要経費だ、と心の中で割り切る。決して甘やかしているわけではない。

 

「……帰ったらバイト増やさなきゃな」

 

 少しずつ減っていく通帳の中身を想い、切実な言葉が零れる。ちょっと出費が激しいなぁ、とその使用用途について恋人と話し合ったのはつい最近だ。何せ恋人の研究は金がかかるのだ。あまり無駄には出来ない。

 加えて残念ながら今回の依頼の成功報酬は確約されていない。一方的に厄介事を押し付けられただけに過ぎないのだ。つまりはタダ働きになる可能性が高い。

 無論、士郎としては費用の請求はするつもりだ。だが相手は文字通りの人外。人としての理から外れた存在だ。こちらの道理が通用するとは到底思えなかった。

 

「……」

 

 無言で傍の塀に背を預ける。ぼうっとコンビニを眺める。そして思う。

 杏子の奴、半分くらいは戻してくれないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、アレって士郎さんですよね。……何故に?」

 

 赤銅色の髪の青年。衛宮士郎。知っている。彼はルビーの元マスター――遠坂凛――の想い人だ。ルビーも会ったことがある。朴訥そうな雰囲気が印象的な青年だ。

 だがルビーの記憶が正しければ、彼は凛と一緒にイギリスに行ったはずだ。日本にいるはずがない。

 

「……帰省、ですかね?」

 

 可能性が高いとすればそれだ。

 だが仮にそうだとすれば、一つの疑問が生じる。

 言うまでもなく、それは先ほどまで士郎と一緒に居た少女について。

 

「凛さんとの間に子供が……いや、それだと年齢が……」

 

 最後に凛と会ったのは彼女がイギリスに行く前日だ。その時にはまだ彼女は独り身であったと記憶している。身籠ってもいなかったはずだ。

 と言うか仮に身籠っていたとしても、少女の外見年齢は中学生くらい――つまりはまどかたちと同い年くらいだ。士郎の若々しさと釣り合わない。

 

「あー……現地妻?」

 

 かなり失礼な事を考える。本人が聞いたら激怒間違いなしだろう。と言うかルビーも自分で言葉にしておいてそこまで信憑性があるとは思っていない。何せ相手は真面目一辺倒の衛宮士郎である。真面目で、堅物で、女性には奥手で、ぶっちゃけヘタレな衛宮士郎である。彼が遠坂凛以外の女性と関係を持つなんてルビーからすれば考えられないのだ。

 とは言えワリとモテるのも衛宮士郎である。底抜けのお人好し、家事上手、若干童顔、そのくせ身体は引き締まっている、そして一途、と女性受けする資質は持っている。ピンとこない? じゃあ逆に女性として考えてみよう。底抜けのお人好し、家事上手、若干童顔、体つきは貧相なわけではない、寧ろ出ているところは出ている、そして一途。何この可愛い生き物、何故女の子じゃないのか。

 

「うーん、平行世界の士郎さんが女の子ならアリなんですけどねぇ……いや、無理か」

 

 どれだけ萌えポイント押さえていようと、男であるだけでルビーからすれば対象外だ。ましてや思春期を過ぎた大人の年齢。仮に彼の性別が反転しようと食指が沸くとは思えない。ルビーのストライクゾーンは小学生から中学生。そしてギリギリ高校生。大人は……まぁ素質次第と言ったところか。

 

「……で、結局どういう関係なんでしょうか?」

 

 違う方向に逸れつつあった思考を元に戻し、疑問を口に出して再確認する。現地妻の線は無いにしても、親戚の子の可能性はある。或いは時計塔の学友とか。魔術師仲間とか。

 

「ま、そんな事はどうでもいいですね」

 

 関係性については今はそこまで重要ではない。気にならないと言えばウソになるが、それ以上に気になる事がルビーにはあるのだ。

 即ち、少女からも魔法少女になり得る素質を感じたという点について。

 ルビーの魔法少女センサーに触れたという点について。

 

「百聞は一見に如かずって言いますし!」

 

 暫しの葛藤も無くルビーは己の次の行動を選択した。つまりは急降下。眼下で一人呆けている士郎に向け急降下。思い立ったが吉日。即断即決即行動はルビーの持ち味なのだ。

 

「しーろーぅさーんっ!」

 

 急降下による勢いも何のその。士郎の眼前にピタッと止まると、ルビーはポーズを決めるかの如く一回転した。

 神秘の秘匿? 知らない知らない。

 

「お久しぶりです、士郎さんっ! ところでさっきのキュートな女の子とはどのような関係で?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、士郎さんっ! ところでさっきのキュートな女の子とはどのような関係で?」

 

 話は全く変わらないが、衛宮士郎がこの地にやってきたのは師匠の師匠ことキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグから依頼を受けたからである。内容は逃亡した魔術礼装カレイドステッキを捕獲する事。カレイドステッキとは大師父が制作した超一級の魔術礼装であり、精霊の人格が埋め込まれているせいか人間のように会話が可能なステッキである。と言うか目の前のステッキである。

 

 目の前の、ステッキである。

 

 もう一度言おう。士郎がこの地に来たのは、カレイドステッキ回収の依頼を受けたからである。そしてカレイドステッキとはルビーの事である。目の前でふよふよ浮いている愉快型魔術礼装の事である。

 

「……ルビー?」

「何ですか、士郎さん。そんなハトがティロ・フィナーレ喰らったような顔なんかして」

 

 ティロ・フィナーレって何だよ、と士郎が思ったかどうかは別として。

 間違いない、コイツはルビーだ。たった一回の会話で士郎は確信した。身に刻まれたトラウマが全力で反応していた。と言うかこんなのが他にもいたらこの世は終わりだ。凛はショックで発狂するに違いない。

 ガシッ、と。反射的に手が伸び、赤色の柄を掴んだ。

 

「へ?」

「帰るぞ、ルビー。大師父がお冠だ」

 

 語調は思ったよりも冷静だった。突然の状況にも士郎の身体は正しく行動してくれていた。今自分がしなければならないことをしっかり認識することが出来ていた。

 

「大師父から聞いたぞ。逃げ出したんだってな」

「は、へ、え?」

「じゃあ行くぞー」

「ちょ、ちょっと待って下さい!?」

 

 士郎は懐から袋を取り出した。一見すればどこにでもあるような麻袋だが、ルビーの眼は魔力を感知していた。つまりは普通の麻袋ではあるまい。ルビーが逃げ出さないようにと用意された特注品である可能性が高い。

 先ほどまでの楽天的な思考から一転、慌ててルビーは口を開いた。

 

「勝手にしろって言われたから勝手にしているだけなんですよっ! 逃げ出したわけじゃありませんっ! てか封印を解いたのってあのクソじじぃなんですよっ!」

「はいはい、分かった分かった」

「絶対分かってないですよね、聞いていないですよねっ!?」

「キイテルキイテル」

「ああああああああああああああっ!!!」

 

 説得は不可能。と言うか聞く耳すら持ってくれない。

 身を捩らせて必死に逃げ出そうとするルビー。上下左右にどったんばったん。だがルビーの動きも何のその。士郎の右手はルビーを掴んだまま離さない。

 

「被害者の方々への謝罪はやっておくから気にするな」

「違います、違いますっ! どうか話を、話を訊いて下さいっ!」

「おい、暴れんなよ……っと」

「止めてええぇぇえええええええっ!」

 

 近所迷惑など知った事ではない。ついには大声を上げて逃れようとするルビー。形振り構わないその様子に流石に士郎の動きも阻害される。慌てて両手でルビーを掴んだ。

 

「離してええぇぇええええええええっ!」

「こンの……っ」

 

 声だけ聞けば暴漢に襲われる女性だろう。現実にはステッキを掴んでいる青年が居るだけだが。

 道行く人が怪訝な顔をして士郎たちへと視線を向ける。が、すぐに一人芝居と判断して目を背けた。頭が可哀そうな人として見られているのは間違いない。誰だって面倒事には関わりたくないものだ。幸か不幸か士郎はその視線に気が付いていないが。

 

「あああああああああああああ……あっ」

 

 ふと。何かに気が付いたかのようにルビーは声を上げるのを止めた。そして士郎の方へと向く。

 

「士郎さん、ごめんなさい」

「あ?」

「テヘペロ☆」

 

 知らない事を責めるのは間違っている。真に責を負うべきは正しく士郎にルビーの特性を伝えなかった大師父や遠坂凛にあるのだから。

 ふざけた言葉と共に士郎の両手から柄が消える。何が起きたか分からずにバランスを崩して転ぶ士郎。

 

「私はまだ帰りませんっ!」

 

 清々しいほどの宣言と共にルビーは遠のいた。何てことは無い。士郎の掴んでいた柄の部分は、ルビーの意思一つで消すことが可能だった。たったそれだけの事。

 もはやヘッドの部分だけになったルビーを捉える事は出来まい。……今の士郎では。

 だが士郎の眼は一人の少女も映していた。

 

「杏子! そいつを捕まえてくれ! ルビーだっ! その五芒星だっ!」

 

 ルビーの進行方向の先。つまりはコンビニ。そこからタイミングよく杏子が出てきていた。阿呆みたいに大きな袋を抱えて。幸せそうな顔で中華まんを頬張りながら。

 

「ああ? ……へぶっ!?」

 

 声に反応して顔を上げた杏子の――その鼻に何か固い物がぶつかる。衝撃で頭が仰け反り、一瞬の間を置いて鼻先が熱と痛みを訴える。

 ドロリ、と。

 生暖かい液体が零れる事を察知し、反射的に杏子は拭った。掌には赤い液体――つまりは鼻血――がついていた。

 

「っ、こンのっ……」

 

 瞬間的に頭に血が上る。彼女は無抵抗主義者ではない。右の頬を張られたら相手の左頬に全力で右ストレートをぶっ放すし、喧嘩を売られたら万倍にして返す。つまりはやられたらやり返すのは当然と言えた。泣き寝入りなんぞまっぴら御免だった。

 目の前に浮いている金色のソレを敵と断定すると、杏子は魔力を込めた五指で掴み取った。最短距離を最速で走る右手。金色のヘッドを握り潰すかの如く全力を込める。血の付いた左手に全力を込める。

 

 ――――ちなみに。そう、ちなみに。全くの余談ではあるが。

 

 カレイドステッキと契約する際には最低限必要な条件が3点ある。

 1点目は接触による使用契約を経る事。

 2点目は血液を媒介にマスター認証を行う事。

 そして3点目。カレイドステッキの人格を司るルビーの許可が下りる事。

 

 つまりは、極端な事を言えば。

 

 血のついた手でルビーを掴んでいれば、それだけで契約は事足りる。

 

 

 

 知らなかったのだから仕方が無い。

 そう。誰が悪いわけでもない。

 これは各々が最善の為に行動しようとした結果でしかなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは眩いほどの赤い光だった。

 眩さに反射的に士郎は目を覆い。

 その間に全ては終わっていた。

 

 黒色のブーツソックスと赤色のブーツ。

 黒色の線が入った赤色のミニスカート。

 ミニスカートには大きな赤いリボンと幾重にも重なった白色と薄桃色のフリルがついている。

 赤色を基調として銀色の細い線が入ったベアトップ。

 肘まで覆う赤色のロンググローブ。

 首には赤色の細いチョーカーが巻かれている。

 髪形は変わっていないが、髪飾りは大きな黒色のリボンへと変貌していた。

 そして右手にはステッキ。悪夢の権化であるカレイドステッキ。

 ――――カレイドステッキ。

 

 

 

 少女はルビーを上空へと放り投げて一回転する。そしてステッキの柄の部分を掴むと、片足を上げて決めポーズを取り、士郎へとステッキを突き付けた。

 

 

 

「愛と勇気の魔法少女カレイドルビー、ここに誕生! さぁ、士郎っ! 魔女退治の時間よっ!」

 

 

 




 おまけ


「……」
「どうしたのさ、まどか。そんないきなりキョロキョロして」
「あ、ううん……その……どっかでルビーが人に迷惑をかけているような気がして……」
「あー……」
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