––––––––神谷さんってなに考えてるかわからないよね。
––––––––正直言ってキモい。
私の名前は神谷 沙織。総武高校に通う高校2年生。彼氏はいなくて、友達も少ない。
私は昔から自分がないと言われていた。
それもそのはず。私はこの世界に絶望している。退屈していて世界の全てに絶望している。
よく私は虚ろと言われるけど、まさにその通りだと私は思う。
「神谷。このレポートはなんだ」
「世界の絶望についてですけど?」
そんな私が、職員室で平塚教諭に尋問を受けている最中だ。
「それはタイトルでわかる。問題はなぜこれをまとめようかと思ったってことだ」
「世界に絶望は必要ですから。絶望の必要性についてまとめただけですけど」
「だからといってなぜこうなる。君はなんか悩み事でもあるのか」
「いえ」
「悩み事があるなら奉仕部というところにいくといい。相談に乗ってくれるだろう」
奉仕部……?
「なんですかそれ」
「生徒が生徒の悩みを解決してくれるところだ。気が向くといくといい」
「はあ」
どれ、ちょっくら見にいって見ますかね。
「わかりました。行ってみます」
「うむ」
平塚教諭は笑顔で頷き、帰っていいと促す。
私は早速奉仕部へ行くとした。
奉仕部の前に立つと、なんだか話し声が聞こえてくる。
ゆきのん?ヒッキー?誰だそりゃ。
とりあえず、私はドアを開けてみた。
「あら」
「…………げ」
由比ヶ浜さん。小声でげって言ったの聞こえてますよ。
まあ、そうだわな。私は自慢じゃないが嫌われている。もっとも、人間という生物に絶望し、希望を見出せず、どうしてもアンチテーゼを取ってしまうからね。慣れている。
「こんにちは」
「や、やっはろー沙織ちゃん」
「うん」
由比ヶ浜さんが引きつった笑みを浮かべて挨拶をしてくる。そんなに嫌ならしなくてもいいんだけどね。
「お前……失礼だろ」
「そうね、由比ヶ浜さん。そういう態度はよくないと思うわよ」
「だ、だよねー……。ごめんね、沙織ちゃん」
「いえ。私が嫌われてるのは知ってますし。包み隠さず嫌と伝えていいんですよ。私は傷つきませんし、なにも遠慮する必要なんてありませんよ」
私には感情がない。泣くことも、笑うこともない。それを全て忘れてしまった。だから私はなにを言われても傷つかないし、感じたりしない。
「え、えーと……」
「コミュ力高い由比ヶ浜ですら嫌う相手とか何者だよ」
「そうね。正直怖いわ」
「えーと……そうだね……」
「それで依頼って何かしら」
「えーと、世界を絶望に染めるお手伝いを」
「…………あなた、本気で言ってるの?」
「半分、ね」
絶望がないとつまらないじゃん。全てが希望だなんて気持ち悪いにも程がある。
「悪いけどお断りするわ。第一、まともなことを、述べてから出直しなさい」
「そっか。君たちも私のことがわからないんだ」
「それが依頼か?」
「うん、ら君たちに依頼というのは私を見つけて欲しいんだよ。私を」
この人たちは私を見つけられるのだろうか。この人たちは私を見つけた途端どんな顔するのだろうか楽しみだ。