雪ノ下さんと由比ヶ浜さんを絶望させた。二人は不登校にまで追いやった。無論、私の評価もだだ下がり。これでいい。
みんなから嫌われるのも、私の絶望だから。希望なんてなくていい、ただ絶望さえあれば、構いやしない。
「ねえ」
「…………なに」
私がご飯を食べていると、クラスの女王、三浦 優美子と呼ばれるだっせえ女王がきた。
「結衣が学校来なくなったのはあんたのせいなんだってね」
「それを誰から?」
「ヒキオから聞き出した」
つまり比企谷くんを恐喝したんですね。よかったじゃないですか。
「あんたさ、調子乗るなよ」
「私がいつ調子に乗りました?似非女王さん」
「……!」
私の挑発にすぐ乗るとは。政治もなにも知らない箱入り女王様だ。
「あんたさ、なめてんの?」
「いえ?なにもなめてませんよ?」
「いい加減にしろし。あんた調子乗ってっと潰すぞ」
「そう脅すんですか。器の小さい絶対王様になったら支持率0どころかマイナスのK点を余裕でぶっ飛びそうな三浦 優美子ちゃん」
「馴れ馴れしくすんなし!」
手を振りかぶる。が、それはある男の手により止められた。
「優美子、暴力はよくないよ」
「…………ちっ」
おーこえーこえ。私は別に殴られてもよかったよ。絶望に陥れるのなら、どんな暴力も受けるし、絶望のためなら殺人も厭わないよ。人々に夢と希望を与えるのがヒーローなら、私はさしずめ人々に現実と絶望を与える悪役でしょうか。それはそれでいいですね。
「神谷さんも、悪い言葉遣いはよくないよ」
「ふうん。葉山くんはそういうやつだったね」
人々に希望を与えてると思い込んでる偽善野郎。周りの間抜けな女子どもはそんな容姿だけに好意を持ち、内面まで見ようとしない。
ああいうやつは腹黒いと決まっているのにな。
まあ、葉山くんも絶望に落とすのは難しいなー。でも、いずれかは仲間入りさせてあげるよ。
私は絶望の象徴、葉山くんは希望の象徴。
彼はヒーローだ。運動神経も良くて、成績優秀。非の打ち所がない生徒だ。そんな彼は、人の皮を被っている化け物。かくいう私もそうだ。
「あーはいはい。そういうのいいんで。雪ノ下さんが好きな葉山くん」
一瞬、場が凍りついた。葉山くんも引きつった笑みを浮かべていて、こちらを睨んでくる。
そこまでして信頼を失いたくなかったんだ。そこまでしないと自分を肯定出来ないから。希望の象徴は誰かがいないと真意を発揮できない無能者と、解釈しておこう。
「隼人……今のほんと?」
「そ、そんなわけないだろ」
「嘘つくなんて最低ですね、本当のこと言えばいいのに。優美子のことなんか眼中にない、興味ないブサイクだから消えてくれと」
「…………ぶち殺す!」
三浦さーん。そんなに逆上しないでくださいよ。弔い合戦ですか?由比ヶ浜さんの。ふぅん。へえ。
「落ち着け優美子!」
「そこで三浦さんを止めると、私がさっき言った言葉を肯定するという意味に捉えますけど」
「そうじゃないんだ。争いごとはよくないってことで」
「単なるこじつけですよそれは。私を殴らせるなら殴らせてください。それが私の糧となりますから」
葉山くんは優しいね。こんな私にですら手を差し伸べてくるんだから。
でも、それは自分自身のため、自分自身が弱いから、そう自分を騙しているだけだ。
「そうかもしれない。でも、俺は優美子を邪魔だとも思ったことは一度たりともないぞ。そこは勘違いしないでもらおうか」
「ふーん。そ。別にいいけど。興味ないし」
「あんた……!」
「そこまでだ、優美子。行くぞ」
そうして、似非女王と偽善王子が去って言った。