なにぶん即興だったので1,000字と大変短く、設定も全く違うのですが、ちょっとした箸休めとしてお収め下さい。
全く独立していますので、いつ読んでもネタバレに相当する情報はないと思われます。
……無いよね?
……以前会った時とは、まるで様変わりしていた。
もはや彼女は何もかもが違っている。あんな言葉をその唇から発しただろうか。
あんな挙動を起こす手足だったか。そもそもあんな髪色だったか。
何もかもが違ってしまった。
「テーイートークー!」
向かってくる彼女の姿は見目麗しいの文字通り。栗色の髪、紫黒の瞳、白い肌は磁器のよう。埠頭に立って迎える私を認めると、すぐに海を走って寄ってきた。それに、私は曖昧な笑みを浮かべながら右手を振る。彼女もそれに手を振り返す。ご機嫌な犬の尻尾みたいだ。
さて、彼女はあんな人だったろうか。
水面上で膝を少し折ってバネを溜め、跳躍。埠頭と海面の高低差など物ともしないジャンプ力だ。
一杯の速力と合わせて、矢のような放物線を描いて跳んでいる。
「ラーブ!ラーブ!ラ――――――――ブ!」
太陽のような表情で飛んで来るその体はまるで砲弾だ。真正面から受け止めるなんて難しい。
だから、その体を腕で受けると同時に回転。前進力を回転の力に変えてここで彼女を留めた。
彼女はこんなことをしただろうか。
回転が収まると、彼女は少し拗ねた様子で、
「テイトク、ワタシはHammerじゃないデース!」
「解ってるよ、でも逆再生のハンマー投げってこんな感じだったね」
「やっぱりワタシHammer扱いデース!?」
こんな彼女は理解できない。
「ねぇ、金剛」
「何デス?」
私は初めて彼女に問いかける。今までそれに類する言葉は掛けて来なかった。
できるかできないか、はいかいいえか、それくらいのことしか問わなかった。なにしろそれで成り立つお仕事だ。
私は成すべきことに適合する者を選んで派遣する、そういう役目だから。
けれど、今は違う。私は是非を問うものではない、言葉を求めて問いかけた。
「……昔のあなたって、どんなだったっけ」
だから、残酷な言葉を吐いてしまう。
「やめて、ください」
こうしてあなたが目を曇らせるように。
「わたしで居られなかったわたしを、おもいださせないで」
「私が好きなあなたは、あなたが捨てたあなただったのにね」
「おねがい、やめてください、そんなこといわないでください」
「かわいい金剛、かわいそうな金剛、なんで金剛になってしまったのかしらね」
「やめて、やめてください。おねがいです、そんなつらいことをいわないでください」
「卑屈なあなたが好きだったのにねぇ」
ああ、こんなにいじめがいがある子になって。
これはこれで綺麗になったね。
……と、言うわけで本来は『曇った金剛書きたい』というコンセプトだったのですが、いざ書き始めると明確なテーマが降りてきまして、それで現在のような形になりました。
この設定をそのまま採用しなかった理由は、ここから発展させるのが正直難しいからです。
そもそも即興30分リミットの一発ネタだったので、これをどうこうするという発想も無かったんですが……。
というわけで、これはこれで別物の超超短編として読んでもらえれば幸いです。
別物なのになんで別に投稿しないかというかは、まぁこれが全ての始まりだったので……。
それではこれからも『女提督は金剛だけを愛しすぎてる。』連載版の方を、何卒宜しくお願い申し上げます。
そのうちひとりぼっち惑星で発信したアーキタイプ2も公開しようと思いますので、良ければ是非。