インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
シャルルとガンダムSEED観賞をして次の日、僕は一夏達と別行動をしている。
今日は整備室にいるクラスメイトの手伝いをしようとしている。
「簪さん」
「山田君……いらっしゃい」
軽く手を振ると簪さんはそれに応えるように頷いた。
更識先輩には言われていないが妹と仲良くしてほしいと言ってたので整備室にいる簪さんの手伝いをしたいと思った。
「昨日、ちょうどランチャーストライカーパックを使ってね。はい、稼働データ」
ランチャーストライカーのデータを簪さんに渡した。
「ありがとう」
ランチャーストライカーのデータをもらった簪さんは自分のISを整備する。
簪さんの専用機である『打鉄弐式』は本来なら完成された状態で彼女の元にいく予定だった。しかし、一夏の専用機を最優先され、打鉄弐式を開発していたスタッフを全て抜かれて、打鉄弐式の開発がストップしてしまった。
そこで簪さんは自分でつくると言って打鉄弐式を引き取って開発している。
「ごめんね簪さん。僕の幼馴染みのせいで簪さんの機体が完成しなくて」
「唯一の男性操縦者だから優先されるのは当たり前、別に気にしてない」
黙々と打鉄弐式を整備している簪さん。
本当はものすごく怒っているのは僕でも分かっている。けど、男性のISデータが必要なのは当たり前でもある。女子の稼働データよりも数少ない男子のデータを優先するだろう。
「僕に何か出来ることはある?」
「なら……シールドエネルギーの出力調整お願い出来る?」
「あいあいさー」
僕もディスプレイを操作して簪さんのお手伝いをする。
「そういえば昨日、シャルルと一緒にSEED観たんだよね。シャルル、ガンダム観たことないんだって」
「ふーん」
他愛のない話をしながらディスプレイを操作する。
「最初のストライクがジンを倒すシーンだけど、まさか僕も体験するとは思わなかったよ。イーゲルシュテルンが使えなくて使えたのはアーマーシュナイダーだけだったし」
「あれは私も驚いた。まるで山田君がキラみたいにみえたから」
「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」
「ふふっ」
こうやってボケたりしながら少しづつだが打鉄弐式の機体を完成させていく。
◇
また次の日、今日は打鉄弐式の稼働テストのためにアリーナにいる。
「山田悠人、ストライク、行きます!」
簪さんの打鉄弐式が飛び、僕もその後ろについていく。
今回のストライカーパックは高機動戦闘型であるエールストライカーパックを装備している。
4基の高出力スラスターと可動式ウィングを備え、下にある2基のスラスターも可動出来るのでストライクが動かなくても曲がったり上昇下降も出来る。
「簪さん、打鉄弐式の出力は大丈夫?」
「今のところ大丈夫」
ディスプレイを呼び出して打鉄弐式の状態を確認、調整をする。
なにかあってもいいように簪さんの近くから離れず、周りも警戒する。
「ん……?」
打鉄弐式の脚部ブースターがおかしい……ときどき付かなくなったりしている。
「簪さん、足のブースターだけ━━」
脚部のブースターの調子がおかしいと伝えようとしら──
ボフンッ!
「……ッ!?」
脚部ブースターが爆発を起こした。
「制御が利かない……どうして……」
脚部ブースターが動かなくなり焦っている。なんとかしようとディスプレイを操作するが『エラー』と表示される。
「なんで……どうして……」
何度ディスプレイを操作しても『エラー』しか表示されず
「きゃ!」
打鉄弐式が操作不能になり空から地面へ落下していく。
「私じゃ……やっぱり……」
もう無理だと悟り、目をつぶる。
「簪!」
自分を呼ぶ声にハッとなり、目を開けると……。
「はやく僕の手に捕まって!」
エールストライカーのスラスターを出力全開にして手を出す。
「はやく!」
空で落ちていくなか、簪さんの手をなんとか捕まえて僕のほうに寄せるとエールストライカーを地面に向けて出力を上げる。
「くそ、あがれ……!」
2人分の重量なので中々上昇せず、地面まで落ちていく。
「山田君、私はいいから」
「大丈夫、別の方法を思い付いた」
「こんな状況で」
「なんとかなる方法はあるわけないとでも?」
「エールストライカー、パージ!」
エールストライカーパックを外し、ストライクのスラスターを使ってなんとか姿勢制御をした。
「
エールストライカーパックを踏み台にして別の場所に移動、装着者がいなくなったエールストライカーパックはそのまま粒子となって収納される。
ストライクの全スラスターを使って落下加速を落とす。
「ふぅ……かなり危なかった」
地面に足をつけるときにはもう大丈夫だった。
「あ、あの……」
「なに?」
「そろそろ離れても……」
肩と膝の裏を持って支える、俗にいう『お姫さま抱っこ』をしていた。
「あ、ごめん」
足からおろして簪さんは僕から離れる。
「今日は故障した脚部を修理して終わろうか」
「そう……だね……」
整備室に戻ると打鉄弐式の壊れた脚部を修理する。
「ごめん山田君……」
「なんで謝るの?」
「私が山田君に危険な目に遭わせたから……」
自分の不甲斐ないせいで僕が危ない目にあったことに落ち込んでいる。
「別に怪我もなかったから大丈夫だよ」
「うん……」
「まあ、この反省を生かして次、頑張ろう」
◇
またまた次の日、今回は近接格闘の訓練をするためにアリーナにいる。
「はぁぁぁぁ!」
簪さんは薙刀を持って僕に接近する。
「うぉぉぉぉ!」
両手に持っている対艦刀『シュベルトゲベール』で薙刀の刃を防ぐ。
今、装備しているストライカーパックはソードストライカー。
ソードストライカーは近接格闘用のストライカーパックでシュベルトゲベール以外に左肩に装着しているビームブーメランの『マイダスメッサー』と腕に装着しているのはアンカーを搭載した『ロケットアンカーパンツァーアイゼン』を装備にしている。
「まだまだ!」
薙刀の振りを防ぎ、隙をみてシュベルトゲベールを振りかざす。
なんとか簪さんに食い付こうとしてるが身丈程の大剣なんて持ったことがないので
「ふっ、はぁ!」
薙刀で防がれると柄の部分が僕にあたる。
「くっ……」
それにしても簪さんはすごく強い。眼鏡をかけてアニメ好きだから運動とか苦手そうに見えたが簪さんの動きは武道の道を歩んでいる動きだ。
「動きが鈍くなってるよ!」
シュベルトゲベールが弾かれると薙刀の刃がストライクに命中する。
「くそぉ!」
疲れを知りながらもがむしゃらにシュベルトゲベールを振る。
◇
「はぁ……簪さんって強いね」
試合は僕が負けてしまった。
「薙刀術習ってるから……」
「薙刀って槍とどう違うの?」
見た目からして槍は突きで薙刀は振るうのは分かるけど、どう違うのかが分からない。
「槍は見たまま、突きに特化した武器。戦国時代の鎧は革に漆を塗って固めた物を縫い合わせた鎧が主流で刀等の斬る武器には強いけど槍という突く武器には弱い」
「ふんふん」
「薙刀は平安時代にある武器で最初は長刀と呼ばれたけど、室町時代に打刀……今で言う日本刀が登場して短刀と区別するために薙刀という言葉に変えられた。火縄銃が使われるようになってからは薙刀は衰退して僧侶……武蔵坊弁慶って人は分かる?」
「うん、白い布を頭全体に巻いて黒い袴を着た大柄の男の人でしょ?」
「そう、その人と同じ僧侶や婦女子が使う武器に変わった」
「へぇ~」
「実は薙刀は女性がよく使われていた武器であくまで自衛用として使われていた。集団で使うことは槍も薙刀も同じだね」
それは知らなかった。槍はまあ、なんとなく予想していたが薙刀って女性が使う武器だったのは知らなかった。
「勉強になったよ。ありがとう」
「ど、どういたしまして……」
お礼を言うと簪さんは顔を赤くしてそっぽ向いてしまった。
「キリがいいから今日は終わろうか」
「山田君」
更衣室のベンチで休んでいた僕は立ち上がってベンチから離れると
「なに簪さん?」
「えっと……その……」
顔が未だに真っ赤である。どうしたんだろう。
「なにか相談があるの?」
「相談というか……その……」
口を開こうとしたがまた閉ざす。それを何度か繰り返している。
「なにもないなら僕は行くけど」
「待って!」
扉を開けて出ようとしたら僕の手を掴んだ。
「わ、私のことはか、か、簪って呼び捨てでいいから」
自分が言いたいことをなんとか口に出してくれた。
「うん、わかった。なら、僕のことは悠人って呼んで」
「悠人……君」
「じゃあ僕は行くね簪」
そろそろ行こうとするがまだ僕の手を離してくれなかった。
「簪?」
「今日、部屋に来ていいかな?」
「部屋に?」
「私も……ガンダムみたいから……」
簪もガンダム観たかったんだ。クラスメイトでDVD持っている人少ないしね。
「なんだそんなことか。いいよ」
「なら、このまま一緒に……」
「そうだね」
簪に手を掴まれたまま更衣室を出る。
◇
夕食を食べ終えたあと私は悠人君の部屋でガンダムSEEDを観ている。
「キラってすごいよね。同期で造られた4機を1人で相手してるんだから」
悠人君の隣に座っているのは同居人のデュノア君。彼はガンダムの戦いに夢中になっている。
「キラもすごいけどこれだとザフトの赤服はエリート(笑)になっちゃうよね」
「ははっ」
悠人君のジョークにデュノア君が笑った。
「けど、小さい頃から一緒の友達が敵になるなんて複雑になるよね」
「普通のアニメとかは敵は完全に悪って書かれるけどガンダムの敵役にも信念というのがあるんだ。クルーゼが言ってたでしょ『正義は双方にある。それは互いに相容れない、戦場に立つものは全て、己の正義の為に敵を討つ』ってね」
「ガンダムって奥深いんだね」
「だから何度観てもおもしろいんだ」
2人の話声を聞きながら私はガンダムを見ていた。
◇
「私は……」
気付いたときにはシャワーを浴びていた。
悠人君と一緒にガンダムを見ていたのに内容が全くはいってこなかった。
「悠人君……」
彼は私と同じように織斑一夏に未来を奪われた被害者なのに彼は恨み事を一つも言わず、むしろ私に謝ってきた。自分の友達のせいで専用機が来なくてと。
「ゆうとくん……」
彼は私に話しかけてくれた。他の人とは違う趣味を持っていたのに彼だけは私と同じ趣味を持って話してくれた。
「ゆうと……くん」
本当なら1人で専用機を造り上げようとしたが彼が手伝いをしてくれた。
いつもの私ならいらないと言って断っていたが彼だけはなぜか手伝ってほしいと思ってしまう。
「ゆ……う……と……」
私の手伝いをしてくれて、危ないときには助けてくれて、まるで彼は……。
「ヒーロー……」
顔が真っ赤なのはシャワーのお湯が熱いからだと思う。
今はそうでありたい。
まだ悠人のことは憧れの人として見てます