インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
最初の場面から原作とはかけ離れていきます
九月一日。
それは学校の始業式で学生にとっては断罪の日であり、冬休みという長期休暇が訪れるまで通わなければならない地獄の一丁目。
このIS学園も例外ではなく、長い休みでだらけた生徒達の神経を叩き直す儀式でもある。
しかし今年だけは地獄の一丁目にはならなかった。
それは──
「山田君、ひっさしぶり!」
「夏休みが明けても山田君がいるから学園生活が灰色人生から薔薇色人生だよ」
「また、フリーダムが間近で観れるね~」
「うんうん、山田君が戦う姿はまさに戦場に舞い降りた天使だよ」
教室に着くや否や先に来ていたクラスメイトが近付いて話しかけてくる。
後から来たクラスメイトも僕を見つけると久しぶりと言ってくれる。
「はーい、みんな席について」
教室にエドワース先生が入って来るとクラスメイトは自分の席へと戻った。
「みんな、おはよう。今日から学園生活が再開するけど、だらけて身体に脂肪を付けてたりしてないわよね?」
エドワース先生の問いに何人かは顔をしかめてヤバいという表情をした。
「新学期早々だけどビッグニュースがあるわ。なんと4組に新しい子が来るわよ!」
「また転校生よ!」
「もしかして新しい男性操縦者とか!」
「先生! どんな人なんですか!」
転校生がまた来たらしく、僕のクラスに編入されるらしい。
鈴といい、シャルロットといい、ラウラといい……転校生が多いなこの学園。
「まあまあ、落ち着いて。百聞は、えっと……」
「百聞は一見にしかず、ですよね?」
「そう、それよ更識さん。まあ、どんな人かは見ればわかるわ。入って来て」
「失礼する」
入ってきた生徒は長い銀髪で左目に眼帯を付けている。
見ればわかると言ったがこれはどうみても……。
「みんなは知ってると思うけど自己紹介お願いね」
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。本日付で1組から4組に編入した。好きな食べ物は嫁の作った料理。好きな飲み物はファンタ。これからよろしく頼む」
教室にはいって来たのは転校生ではなくラウラだった。
転校生や男性操縦者を期待していた生徒は見て分かるようにかなり残念な顔をしていた。
「先生……転校生じゃないんですね」
「転校生が来るって一言も言ってないわよ? 私は新しい子が来るって言っただけで勘違いしたみんなが悪いのよ?」
「先生ー! 期待していたテンション返してくださいよー!」
「そうだー! 夏休み明けで落ち込んでいるんですから!」
編入したラウラを無視して、わいわいガヤガヤと騒ぎ立てていく。
「はいはい、騒ぐのは良いけど1組の織斑先生と3組のリア先生が来るから」
二人の教師が来ると言うと一瞬で静まりかえった。
千冬さんは言うまでもなく、リア先生は千冬さんの次に恐ろしい人だから二人が来たら相当な物だ。
「質問とかは休み時間にしなさい。それじゃあクラス代表は号令」
「起立、礼」
クラス代表である僕の号令をして休み時間になるとラウラの席にぞろぞろとやって来る。
「ボーデヴィッヒさんって、ドイツから来たんだよね? ドイツってソーセージが有名って聞いたけど」
「あぁ、ソーセージは定番だな。全員が思うソーセージはフランクフルターだろう」
「フランクフルター? フランクフルトじゃないの?」
「日本の訛りでフルターからフルトに変わったのだろう。それとドイツではソーセージの事をヴルストと呼ぶ」
初めて会ったときのような鋭さや近寄りがたい雰囲気はなく、クラスメイトの質問にラウラは淡々と答える。
「バームクーヘンって真ん中に穴があるけど、どうしてなの?」
「あれは専用の調理機を使っているからだ。芯になる棒に生地を少しずつ塗りながら焼いて何層にして作る
「だからなんだ。納得」
バームクーヘンってそうやって作るんだ。穴が空いている他のお菓子もそうなのかな?
「ドイツといえば色んなアニメキャラいるよね!」
「ジョジョとか柴犬とかストパンとか」
「後のふたつの作品はわからないがジョジョということはシュトロハイムのことか」
「そう! 我がドイツの科学は世界一ぃぃぃぃ!」
「俺の身体わぁぁぁぁ! 我がゲルマン民族の最高知能の結晶であり、誇りである! つまり、全ての人間を越えたのだぁぁぁぁ!」
「ど、胴体も機械なのかぁぁぁぁ!」
両手を頭に組んで腹部をあげるクラスメイトにラウラもノリノリで乗ってくれた。
「あ、ラウラがいたわよ」
ジョジョのワンシーンを演じていると鈴が教室に来て彼女以外にも一夏、箒、セシリアさんもやってきた。
「ラウラ、4組にいたのか。SHRが始まっても来なかったからどうしたのかと思った」
「すまんな驚かせて。上からの命令で二学期を迎えた日に1組から4組に編入するよう言われた。この事はIS学園にも通達されている」
「じゃあ、護衛任務って」
「嫁と同じクラスにする事も含まれているだろう。別クラスだと有事の際は守れないからな」
身辺護衛ってそういった意味だったんだ。
「護衛って言うけどSPとかの仕事に入っているの?」
「いや、私は軍隊に所属して特殊部隊の隊長でもある。ちなみに階級は少佐だ」
軍人だと教えると一部の人が歓喜した。
「リアル少佐! リアル少佐きたこれ!」
「しかもドイツで少佐だからシュトロハイム少佐じゃん!」
「眼帯で隠している左目ってもしかして紫外線発射装置とか搭載しているの?」
「あ、あぁ……これはその……」
どうして眼帯をしているのかと聞かれてどう答えるか戸惑っていた。
これはラウラの出生にも関わるし、あまり言えない内容なんだよね。
「も、もしかして訓練とかで目が見えなくなったとか……」
「失明しているわけでもないが……この目はみんなが見れば気分を悪くするかもしれない」
二次元のオッドアイはあくまで架空の物だからカッコいいと思えるが実際にそうなっていると気味が悪いと言われると思い込んでいる。
「大丈夫だよラウラ。みんな、良い人だから」
「……わかった。眼帯を外すが思ったことがあったらはっきり言ってくれ。侮辱する言葉でも受け入れる」
覚悟を決めたラウラは眼帯を外して
「詳しい事情は話せないがある事で私の目は本来の赤い目ではなく、金色の目に変色した。部下は部隊の誇りとして眼帯を付けているが私の場合はこの目を隠すために付けている」
シュヴァルツェ・ハーゼ隊の人達は眼帯を付けていて全員が金色の目をしているのかと思った変色したのはラウラだけで彼女が言ったように部隊の誇りと目の保護ためにしているらしい。
「嫌なものを見せたな。すまない」
金色の目をしている左目を手で隠す。
「片方だけが違う色なのは気味が悪いだろう……」
「そんなことないよ。金色の目も綺麗だよ」
「カラコンじゃない本物のオッドアイを見たの初めて」
「軍人で少佐で特殊部隊の隊長でオッドアイで何かの事件に巻き込まれた……って、どれだけ盛り込んだら気が済むのよ!」
ラウラの履歴にツッコミを入れると周りが笑い出し、突っ込まれた本人は鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情をする。
「気持ち悪いとは思わないのか? 両目が違う色なんだぞ?」
「片方の目が違うと言ってもボーデヴィッヒさんは普通だし」
「そうそう、私のネタもちゃんと乗ってくれたから」
オッドアイのことは特に気にしていないようでラウラの編入に歓迎していた。
◇
ラウラの編入騒動がおさまり次の日。
クラスと馴染んでいて、クラリッサさんの影響のおかげなのかアニメ好きな4組とは馬が合っていた。
『それでは両者は所定位置に移動してください』
今日の授業は3組と4組の合同授業でクラス代表同士の試合をしている。
相手の3組代表は打鉄を装着して
「よ、よろしくお願いします!」
「うん、こちらこそ」
緊張ぎみの3組代表に挨拶して、試合開始のブザーが鳴る。
「いきます!」
ショットガンは扇状に拡散するので上か下に回避する必要がある。
撃ち切るとその場に捨てて、物理盾とサブマシンガンをコールした。
「使う武器に迷いがないのは良いことだね」
ラミネートアンチビームシールドで防ぎながらルプス・ビームライフルを撃つ。
(まだだ……フルバーストが出来るのはほんの一瞬)
タイミングを待ちながら回避行動を続けてサブマシンガンを切らして別の武器を取り出そうとした。
「そこだっ!」
両腰のクスィフィアス・レール砲とバックパックのバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を展開させて、撃ち込む。
「ライフルがっ!」
狙ったのは機体ではなく、呼び出した武器で誘爆を防ぐのに物理盾で正面を隠した。
(今だっ!)
「まだよ!」
打鉄の固定装備である肩部シールドの裏側に連装式ミサイルが搭載されていて発射された。
(裏側に仕込むのは想定通り!)
肩部シールドに武装を搭載するのは戦術のひとつと知っているので焦りを感じず、ピクウス76mm近接防御機関砲を撃って迎撃した。
「そんなっ!」
「見えにくい場所に入れる発想は良かったけど」
手に持っている物理盾を踏み台にバク転して──
「僕の前じゃあ、通用しないよ!」
5つの銃口が彼女の機体に向けて、一斉に射撃をした。
自身の作戦を見抜かれて、回避する余裕がなく、被弾すると試合終了のブザーが鳴る。
『試合終了。勝者、4組クラス代表、山田悠人』
機械音のアナウンスが響き、試合が終わると拍手と歓声が沸き起こる。
「山田く~ん! おめでとう!」
「最後のフルバースト、カッコ良かった!」
観客席にいるクラスメイトや3組の生徒達から声援を送られた。
「これならいけると思ったのに……」
「でも、迷いがなくて使う武器の選択も悪くなかったよ」
「本当ですか!」
「そのまま努力すればオファーが来るかもよ」
「はい、頑張ります!」
ピットに戻ろうと立ち上がろうとしたら──
「大丈夫?」
「その……緊張して、終わったと感じたら動けなくなって」
クラス代表だからその責任に押し潰されて力が抜けてしまったのだろう。
「仕方ない、運んであげるから動かないで」
「えっ? ひゃあ!」
打鉄を抱えながらバックパックのウィングを広げて、ピットに飛んでいく。
「あ~! 山田君に抱き抱えられてる!」
「えっ! なにそれズルい!」
周りからブーイングされるが抗議する余裕もないのでそのままピットにいく。
◇
「よし、到着っと」
床に足が着いて、打鉄をおろした。
「降りるときはしゃがむのを忘れてないよね?」
「はい、そうしないとISも立ったままになりますから」
膝を曲げてしっかりとしゃがむと装着解除して打鉄から降りた。
「山田君の専用機は
「武装を取り付けているから必要ないんだよ」
フリーダムを待機状態であるブレスレットに戻す。
「ゆうとぉ!」
ピットの出入り口からシャルロットが出て来て、僕にむかって抱きついてきた。
勢いがあったので後退りするもしっかりと受け止める。
「すごい格好良かったよ悠人」
3組のクラス代表がいる前なのに遠慮せずに甘えてくる……って、シャルロットさん!立派に育った貴女の胸部装甲がおもいっきり当たっているんですけど!
「あの、シャルロット。その……当たって」
「悠人がすぐ勝って時間が余ってるからラウラと簪の試合が始まるらしいよ。はやく、いこ」
「じ、じゃあ。また次の合同授業で」
「は、はい!お疲れ様です」
ラウラと簪がやっているらしいのでピットを出て観客席にいく。
◇
拡張領域から制服を取り出してISスーツの上から着て、観客席に行くと上空ではラウラと簪が戦っている。
ラウラの手にはブルパップ式アサルトライフルを持っていて銃身下にはマスターキーと呼ばれるショットガンが装着されている。
シュヴァルツェア・レーゲンの左側には以前なかった
「ラウラの武装はアサルトシュラウドを参考にしているようだ」
「デュエルの改修機体だよね?」
大型レールカノン砲は一点集中による攻撃でミサイルは面制圧による攻撃だろう。
腕部にあるプラズマ手刀がビームサーベルの代用となっていてバランスが良い機体になっている。
ミサイルが着弾する前に簪の周りに障壁が現れて被弾を防いだ。
「広範囲のシールドでミサイルを防いだよ」
「あれは打鉄弐式の専用パッケージ。夏休みの完成したって聞いた」
学年別トーナメントまでに機体が完成したおかげでパッケージの開発が進められた。
簪が使っているのはシールドパッケージである広範囲障壁『不動岩山』で周辺に障壁を展開してミサイルを防いだ。
「山嵐から逃れられると思う?」
不動岩山で防いだ隙に山嵐のマルチ・ロックオン・システムが完了していて計48発のミサイルが放たれる。
「避けられないなら撃ち落とすのみ!」
山嵐から発射されるミサイルがラウラに向かって飛んでいくがマスターキーのトリガーを引き、散弾がミサイルを撃ち落としていく。
「すごーい! ミサイル全部落とした!」
「負けるなー! どっちも頑張れー!」
互いに戦術の読み合いをしながら攻防を繰り返していく。
「負けられない……」
鈴、ラウラ、簪は夏休みを使って機体強化をしている。
追い越すことや互角に戦うことが出来なくてもせめて粘るだけ粘っていきたい。
ラウラは二学期から4組に編入しましたので合同授業ではラウラも登場します
機体についてですがラウラはレールガンしか射撃武器がないので武装面を強化して汎用性を高めました
簪は学年別トーナメントまでに機体が完成したので夏休み中にパッケージ製作を着手、原作9巻から登場した不動岩山は二学期から使用可能で打鉄弐式の防御面が強化されました
クラスメイトが言ったことですが下記がそれぞれの略称です
柴犬=シュヴァルツェアマーケン
ストパン=ストライクウィッチーズ
フリーダムの戦闘シーンは読者様からの要望でサービスシーンとして執筆しました