首都高のシンデレラ 2nd   作:囃子とも

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3rd 久永の正体

 

 久永には、ある種の嗅覚が備わっている。

 それは、金の匂いに敏感だという事。

 言葉としての聞こえは悪いが、アイドルをプロデュースする上では、もっとも重要な事の一つだと言えよう。

 仕事の入らないアイドルが所属しているという事は、言い方を変えれば不良在庫を抱えている事と同義になる。

 個々のアイドルに見合った仕事を付けられなければ、プロデューサーとしての能力は無いと断言できる。

 

 その日。応接室で、拓海と久永は打ち合わせを行っていた。

「……これ本気でやれって?」

 企画書を読みながら、拓海は不満気だった。

「不満ですか?」

 久永は、温和な笑みのまま答えた。

「当然だろ!!」

 拓海は声を荒げて猛抗議した。

「料理は、苦手でしたか?」

「違う!! お料理教室ってのは兎も角……なんで料理番組に、わざわざ水着にエプロンでやらなくちゃいけねーんだよ!!」

 企画書は、深夜のCS番組のオファーだったが、内容はかなりナンパなものだった。

 こう言った、肌を露出して男に媚びるような内容は、拓海が一番嫌う事だ。

「向井さんが一番適任だと、僕は思ってますよ?」

 久永は、何食わぬ顔でそう言った。

「あたしはこれでも、硬派で売ってんだ!! こんな真似したら、天上天下喧嘩上等の特攻隊長の名が泣くぜ!!」

 拓海は、ますますヒートアップしていく。

「向井さんは、確かに有名なレディースチームの特攻隊長で、地元の女子高でも女番長でしたね。

 喧嘩は負け知らずで、単車に乗せれば鬼の様に速かった……」

「その通りだ!!」

「……じゃあ、何も問題ありませんね?」

「なんで、そうなるんだよ!!」

 話は平行線のままで進まない様だが、久永は人差し指で眼鏡の位置を直した。

「……例えばの話です。

 向井さんが、複数の暴漢に襲われそうになったとしましょう。相手は十人で、向井さんは一人だけ……。

 もしも、手元に何かの武器があったとしたら……。鉄パイプでもバールでも、ナイフでも良いでしょう。

 向井さんは、その武器を使いますか? それとも使いませんか?」

 拓海は、そのシュチエーションを脳内に浮かびあげた。

「そりゃ……間違いなく使うだろうな」

 その結論を聞き、久永はニコッとした。

「そうなりますよね。

 だからこそ、この企画内容は向井さんが適任なんです」

「…………」

 拓海は憮然としたままだが、久永はそのまま言葉を続ける。

「タレントにしてもアイドルにしても、売れていく為には何かしらの長所。いわば、武器になる物が必要なんです。

 歌唱力や、ダンスの上手さ、ビジュアル面、トーク力など、必要なものは多岐にわたります。

 向井さんであれば、そのルックスとプロポーションは、間違いなく大きな武器になります。それは、僕が保証しましょう。

 世の男性陣を虜に出来る可能性を秘めているんです。向井さんにしか、出来ない仕事なんです」

 久永の意見を聞き、拓海はしばらく思考を巡らせる。

「…………」

 あまり納得出来ない拓海だが、ルックスやプロポーションを褒められれば、そこまで悪い気もしない。

 

 多少の葛藤はありながらも、拓海の出した結論は。

「……なんか、言いくるめられてるような気がしなくもねーけどさ。

 ま、やるだけやってみるよ……」

 その一言を聞き、久永はニコリと笑みを見せていた。

「ありがとうございます。ぜひとも、よろしくお願いします」

 久永は拓海に向け、頭を下げた。

 

 何せ、このオファーに真っ先に食いついたのは、久永本人だ。おまけに、ほぼ事後承諾の格好である。

 しかし、346プロの中でも抜群のプロポーションを持つ拓海を、ここで生かさない手はないと考えた。だからこそ、内容は別問題として、このオファーを受ける事にしたのだ。

 当然、久永は拓海を説得できる自信があった。だからこそ、事後承諾で拓海に了承を得たのだ。厳密にいえば、説得というよりも、丸め込むと形容した方が良いかも知れないが。

「……じゃ、また打ち合わせの日取りが決まったら教えてくれ」

「はい。追って連絡いたしますから」

 そう言い残して、拓海は応接室を後にした。

 

 説得もひと段落して、久永は一息ついた。

「……あの天邪鬼を、簡単に言いくるめるなんてね。凄いんですね」

 入れ替わりで応接室に入ってきたのは、夏樹だった。

「木村さんですか。一部始終見てたんですね?」

 久永は、夏樹をジッとみつめた。

「ええ……。あのバカ、たいして売れてないのに、仕事を選ぶんですよ。Vシネマに出たいだとかさ……。

 こういうグラビアだとかの仕事は、あーだこーだ言って、蹴ってきたんですよね……」

 夏樹は押し殺すように笑った。

「……まだ、彼女は若いですからね。思い通りにいかない事に、不満を持つ事も多いでしょう。

 ですが、今後売れていく為には、経験を積んでもらうことが優先なんですよ」

「経験ですか……」

「ええ。例えば、木村さんはギターを弾きますよね?」

「そうですね。ガキの頃から、四六時中ピックを持ってましたよ」

「でも、最初からギターを弾けた訳では無かったでしょう」

「そりゃ、そうですよ。何回、Fコードの部分で挫折しそうになったか、分からんくらいです」

「つまり、そういう事です。同じことを繰り返したとしても、経験を積むことは財産になります。

 その過程で、何を学ぶのかが重要なんです。向井さんが、よっぽどのバカじゃなければ、きっと何かを学んでくれる筈です」

 久永は、そう言いながら笑みを作っていた。

(……そうは言っても、アイツは相当なアホだからなぁ)

 と、夏樹は内心で思っていた。

 

 時計の針は、一般企業で言う所の定時時間を少し過ぎていた。もっとも、芸能プロダクションと言う仕事柄、あまり定時時間という物は、あてにならないのだが。

「もうこんな時間じゃん……。車屋にいかなきゃ」

 時刻を見て、夏樹は我に返った。

「車屋? 何かの用事を?」

 久永が興味をそそられた様だと。夏樹は、確かにそう感じた。

「ええ。少し前に買ったんですよ……RX-8をね」

「エイト……ですか。最後のロータリーエンジン搭載車ですね。アメリカでも、人気ありましたよ。良い車を選びましたね」

 久永の言葉に、夏樹は嬉しそうな顔を見せた。

「……って言っても、行きつけの車屋で勧められたから買ったんですけどね」

 続けざまにそうおどけた。

 

 その時だ。久永の携帯電話が鳴りだした。

「ちょっと失礼しますね」

 ことわりを入れてから電話に出る。画面に表示されている名前は、部長だった。

「はい、久永です。

 ……ええ。はい……。そういう事ですね。

 わかりました。すぐに持っていきます」

 ものの一分少々で、電話は終わった。

「仕事ですか?」

 反射的に、夏樹は内容を聞いてしまう。

「仕事……と言えば仕事かもしれませんね。

 社用車のカローラバンが、車検だから行きつけの車屋に持って行ってくれと言われましたよ。そのまま仕事は上がりで良いみたいです」

 久永に頼まれた内容は、完全な雑務だった。

「ま……うちのスタッフの人手不足は、あたしらも重々承知ですからね」

 夏樹は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

「仕方ありませんよ。これも仕事ですから」

 久永は、特に気に留める様子は無い。

「せっかくだから、車屋まで先導しますよ。事務所の車も、あたしのエイトも同じ店で買った奴ですから」

「助かります。お願いしますね」

 二人は、外の駐車場へと向った。

 

 駐車場の片隅に止まっていた、古いカローラバン。これが車検に持っていく車だ。

「……ナンバーは34。これですね」

 久永はナンバーを確認し、ロックを解除する。

「んじゃ、あたしはあっちに止めてるんで。出口の辺りで、ハザードつけて止まってますね」

 そう言い残し、夏樹は自分の愛車の元へ向かう。遠目から見ても、明るいブルーのRX-8は良く目立っていた。

 

 久永もカローラバンに乗り込んで、イグニッションにキーを差し込んだ。

(……100系のカローラバンか。てっきり、フィールダー辺りと思ってたけどね。それにしても、随分年季の入った営業車だ……)

 薄汚れた白い塗装に、色あせたダッシュボード。見た目は、オンボロの営業車なのだが。

 イグニッションオン。セルモーターが回り、エンジンに火が入った瞬間だ。

 うなりを上げるエキゾーストノートは、営業車のそれではなかった。

「……これは!!」

 久永は、思わず言葉を出していた。

(この音は……間違いなく4A-Gだ。カローラバンには、1500ccの5Eエンジンまでしかなかった筈だけど……)

 軽くアクセルを煽ってフリッピングしてみると、タコメーターは瞬時に反応を示し、NAの心地よいサウンドが室内に響いた。

(……このふけ上がり方は、恐らく5バルブエンジンだね)

 左手をシフトレバーに持っていく。シフトノブには、6速まで刻まれている。

(……きっと、ピンゾロ(AE111系)のBZ-Rのエンジンとミッションを、そのまま移植しているんだ。たしかに、E100系にはそのまま載せられるけど……)

 久永は、自然とほくそ笑んでいた。

「営業車を、4A-Gに乗せ換える……。随分と、変わった事をする車屋さんですね」

 ギアを一側に入れ、ゆっくりとクラッチを繋ぐ。カローラバンがじっくりと動き出す時には、RX-8はハザートを点灯させて待ち構えていた。

 

 夏樹のRX-8に先導されて、おおよそ10分で目的の車屋に到着した。

 うっすらと汚れた看板には、内藤自動車と記されていた。それ程店舗は大きくないし、たたずまいも小汚い。

「……ここですか?」

 久永は、カローラから降りて夏樹に聞く。

「そうですよ。ちょっと、店主を呼んでみます」

 そう告げて、夏樹もRX-8から降りた。

「……内藤さーん?」

 シャッターは空いているが、中から誰も出てこない。

「留守なんでしょうかね?」

 久永はそう呟いた。

「おかしいな……。普段だったら、居るんだけどなぁ」

 夏樹は首を傾げた。

「内藤さーん? 夜逃げでもしたんですかー?」

 

「アホ!! 人聞きの悪いこと言ってるんじゃねぇよ!!」

 突如、後ろから声をかけられ、夏樹は肩をビクリとさせた。

「ああ、出かけてたんですね……」

 夏樹と久永は、後ろを振り返る。

「昼食に行ってたんだよ。もう夕方だけどね~」

 店主である内藤に、アルバイトの美世。ツナギ姿の従業員二名が、そこに立っていた。

 

「君は……」

 久永は、美世の姿に驚きを隠せないでいた。

「どうもです、久永さん♪」

「原田さんが、どうしてまた車屋に?」

「レッスンとか仕事が無いときは、ここでバイトしてるんですよ。驚きました?」

 美世はいたずらっぽい笑みを作っている。

「……いえ。むしろ納得出来ましたよ。

 初めてお会いした時に、握手しましたよね?」

 そう言ってから、久永は美世の右手を取った。そして、手のひらを凝視する。

「その時に、感じたんです。手の質感が、アイドルの質感じゃないって事です」

「……?」

「本質的に、女性は手が汚れる事を嫌います。洗剤を使っている内に起きてしまう、あかぎれや肌荒れは勿論。農作業による土の汚れもそうですが……油汚れなんかは、特に嫌います。

 原田さんの手は、ざらついた質感でした。恐らく、油汚れで黒ずんでしまっている……いわば職人の手だと感じました。

 アイドルの手ではありませんが、僕はそういった手は嫌いじゃないんですよ」

 そう言いながら、久永はその手を放した。

「へぇ……」

 美世の見せた笑みは、実に不敵なものだった。

 

「んで、木村のエイトはオイル交換だったろ。その兄ちゃんの乗ってきたカローラは、車検だったよな」

 内藤は、本題を切り出した。

「そうです。今日じゃないと、しばらく忙しくてダメそうなんで」

 夏樹は、そう答える。

「そんじゃ、こっちはリフトに上げるからよ。美世は、カローラをあっちに寄せて代車のミラを出してくれ」

「オーケーです」

 内藤の指示に、美世はテキパキと動く。

(……ここは、良さそうな車屋ですね)

 久永は根拠はなくとも、そう確信できた。

 

 閉店間際の最後の一仕事で、内藤はRX-8のオイル交換に取り掛かる。

 作業を近くで見つめる夏樹に向け、内藤はウンチクをしゃべる。

「ロータリーエンジンってのは、2ストロークエンジンと同じ構造をしてる。

 ローターの中心で回転を受け止めるエキセントリックシャフトに、エンジンオイルが流れて潤滑させるようになってるからな。構造上、オイルを喰っちまうのは仕方がない事だ」

「あたしの昔乗ってた原チャリも、2ストでしたね。オイルの事とか何も知らなくて、気が付いたらエンジンが焼き付きましたよ」

「ま、そういう事はどんな車でも起こりうるからな。

 ロータリーは特殊だと言われるが、日常のメンテナンスは普通のレシプロエンジンと変わりはねぇ。

 そりゃ、高価な専用のオイルを入れた方が良いに決まってる。だが、高いオイルを入れたからって、交換距離を伸ばす真似はしない方がエンジンの為だ。

 ガンガンにぶん回すつもりがないなら、マツダ純正の十分。こいつを3000キロごとにきっちりかえる。それが長持ちの秘訣だ」

 得意げに語りながら作業をしていると、使い古されたオイルは抜けていた。

 リフトから地上に下されて、今度は新しいエンジンオイルを注ぎ込む。

「……例えばだ。

 木村は、ギターを弾く。だが、ギターだって買ってそのまま使いっぱなしって訳にはいかないだろ?」

「そりゃ当然ですよ。コードだって、張りをチューニングしますし、ネックだって歪んでいきます。

 いい音を出そうと思ったら、メンテナンスは欠かせませんよ」

 夏樹はそう答えた。

「クルマだって同じだぜ。もちろんバイクもな。

 日頃のメンテナンスを欠かさないことが、調子を保つ秘訣だ」

 内藤がそう語る頃には、整備は完了していた。

 

 夏樹のRX-8を整備している間に、美世は閉店の片づけをしていた。

 その間、久永は美世の事を自然と目で追っていた。

(……楽しそうに働いていますね)

 その表情は、実に生き生きとしていた。

 芸能プロダクションに所属する人間で、油と埃にまみれたツナギが似合う女性はいない筈だが、美世だけは例外だ。

 むしろ、華やかな衣装に身を包むよりも、汚れた作業着の方を着こなす方が似合うと。久永はひそかに思った。

「どうかしましたー?」

 工具類を整頓しながら、美世は久永に問う。

「いいえ。実に、素晴らしい働きぶりに、感心していましたよ」

 久永は、そう答えた。

 

 何気なく、辺りをグルリと見渡す。

 電気の消えている、板金塗装用の作業室の扉が、半分開いていた。

「……?」

 暗がりの中で、一台の車のシルエットが見えた。

(……あれは)

 久永はそのマシンに、直感的にある種の匂いを感じた。

 一歩づつ近づいていく。板金部屋の扉をすべて開き、電灯をつける。

 

 古びた蛍光灯に照らされ、その姿を見せたのは真っ赤なFC3S型のRX-7。今でこそ見かける事は少なくなったが、デビューした85年以降からチューニングベースとして、走り屋達に支持されていた。

 走り屋を題材とした漫画などに登場することも多く、今なお人気のある車両だ。

 

 そして、久永はその真っ赤なFCを知っていた。

(このクルマは……間違いない)

 

 

「……追撃のテイルガンナー。健さんのFCは、そう呼ばれてるんですよ」

 美世は、後ろからそう告げた。

「……ええ。首都高全盛期の頃から随分経ちますが……まだ現役だったんですね」

 久永は、絞り出すようにそう答えた。

 

 一通りの店じまいも終わり、全員が事務室に集まった。缶コーヒーを飲みながら、久永は内藤と美世を食い入るように見つめた。

「へぇ。あんたも、元は首都高で走ってたんだ」

 そう呟きながら、内藤はくわえた煙草に火を点けた。

「はい。そう言っても、本気でやってた人達には、丸で着いていけなかったですけどね。

 まだ、大学生だった頃です。仲間内で集まって、ファミレスかコンビニでおしゃべりして……。適当な時間になったら首都高に繰り出して、という感じです。

 当時の週末の首都高は、どのパーキングでもお祭り騒ぎで。走り屋達がいつも集まってた事をよく覚えています」

「ふーん。どこかのチームに?」

「いえ。チームと言える程じゃないですよ。仲間内で走ってたのは僕を含めて二、三人ぐらいで、あとは助手席に乗るかギャラリーしてる程度でした。

 まだ、お金もなかったんで、中古で買ったAE101のレビンで少し飛ばす程度です。

 全然、遅かったですけど……すごく楽しかった。あの頃は、毎週末が何時も来る事をワクワクしながら待ち焦がれてました」

 久永は懐かしむように言った。

「ま、あの頃はある意味異常だったからな……」

 内藤は、ちょっと自嘲的につぶやいた。

「久永さんが、走り屋だったなんて意外だったな」

 夏樹は驚きを隠せないようだった。

 

 ここで、久永はとある疑問をぶつけた。

「ところで、あのカローラのバンに4A-Gを乗せ換えたのは、内藤さんなんですか?」

「ほー……。よく4A-Gに乗せ換えたって分かったな」

 簡単に見抜いた久永に、内藤は感心しきりだ。

「簡単ですよ。吹け上がりも軽いですし、音も全然違う。これでも元レビンオーナーの端くれですから」

 久永は得意げに言った。

「ま、曲がりなりにも、元走り屋ってことか。

 もっとも、カローラを作ったのは俺じゃねぇ。こいつだよ」

 内藤は親指で、美世の方を指した。

「……原田さんが?」

 久永は、目をパチクリとさせてしまう。

「はい。前の車検の直前に、作ったんです」

 美世は得意げに答えた。

「あのカローラは、元々事務所にあった車なんですけど30万キロも乗ってて、エンジンがもう駄目だったんです。廃車にするって話だったんですけど、安く直すって条件で車検を通したんですよ。

 解体屋にちょうどAE111のBZ-Rの廃車があって、エンジンとミッションを安く売ってもらって、移植したんです。

 E100系だったら、簡単に載せれますから。配線関係はちょっと手がかかりましたけどね」

「……随分と手の込んだ事をしたんですね」

 久永は、呆れながらも感心していた。

「もちろん、それだけじゃ無いんですよ?

 足回りですけど、フロントは101用のジムカーナ仕様のショックとスプリングを付けて、リアはリーフリジットだったんで板バネを新品にしてショックは86用を加工して移植してみました。それとブレーキはフロントに111のキャリパーとローターを……」

「もういいから、黙っとれ」

 延々と続きそうな美世の話を、内藤は無理やり終わらせた。

「ぶぅ……」

 美世はほほを膨らませているが、内藤は気に留めない。

 

「さて……久永って言ったよな」

 不意に内藤の目つきは真剣な物に変わっていた。

「……」

 その雰囲気の変わりように、久永は思わず黙り込む。美世も夏樹も、押し黙ってそれを見つめてしまう。

「……あんたの名前は、首都高じゃ聞いたことは無い。

 ただ……あんたは間違いなく、俺らと同じ種類の人間だ。どこでどう走ってたかは知らんが、間違いなくストリートの走り屋だろう?

 それも、相当なレベルでな」

「……何を根拠にでしょうか?」

 とぼけるように久永は言った。

「簡単だ……お前さんからも感じ取れるんだ。同じ種類の“匂い”って奴がな」

 内藤はそう断言した。

 

 

 そこまで言われ、久永はこう答えた。

「……横に乗せて貰えますか?」

「……良いぜ」

 内藤は承諾した。

 

 

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