首都高のシンデレラ 2nd   作:囃子とも

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5th 動き出す歯車

 

 都内のTV局の撮影スタジオ。巨大なコンクリートの箱の中で、拓海は出来る限りの愛想を振りまいていた。

 先日、久永が拓海へ依頼した企画の、第一回目の収録が無事に終了した。

「今後とも、うちの向井をよろしくお願いします」

 久永は、撮影スタッフや番組ディレクターに、スポンサーの関係者。一人一人丁寧にあいさつをしていく。

「よろしくおねがいしま~す」

 そして、拓海も目一杯の作り笑顔で、それにならう。

 もっとも、拓海のはらわたは煮えくり返っていたに違いないのだが。

 

 社交辞令も終わり、スタジオを出てさっさと帰る。初回の撮影という事も有り、タイムスケジュールは大きく押してしまっていた。当初の予定よりも、終了時間はずいぶん遅くなっていた。

 拓海は足早に、近くのコインパーキングに向かう。

「……何で着いてくるんだよ」

 憮然とした様子で、拓海は久永に言った。

「所属アイドルを見守るのは、プロデューサーの義務ですから」

 物腰の穏やかな笑顔で、久永は答えた。

「……ふん、そうかい」

 ご機嫌斜めの拓海は、冷淡な反応だった。しかし、久永は顔つきを丸で変えない。

「でもよ……。何で、わざわざ車で収録にいく事を許可したんだよ? そりゃ、あたしがゴネたって言うのもあるけどさ……。

 うちのお偉いさんを説得するのに、結構苦労したって聞いたぞ?」

「簡単な事ですよ。

 その方が、向井さんのモチベーションを保てると思っただけですので」

「……そうかい」

 拓海がそっけなく答えると、目的のコインパーキングは目前だった。

 

 パーキングの一角に陣取る、漆黒のフェアレディZ。一時期は数多く出回っていたZ32型も、今では見る事が珍しい位に少なくなっている。

 ロックを解除し、座席に座る。

「……ありがとうな」

 拓海はそう言った。

「礼には及びません。では、お気をつけて」

 久永がそう伝えると、拓海は少しだけ笑みを見せた。

 

 セルをひねり、VG30のツインターボを火を入れる。野太いエキゾーストノートが、コンクリートジャングルに反響する。

「……さてと。いくか」

 そう呟いて、拓海はギアを1速に入れる。見守る久永の横をすり抜けて、夜の街へと出撃する。

 久永は、そのテールランプが見えなくなるまで、ジッと見守っていた。

 

 

 拓海はZを走らせる。しかし、真っすぐ帰るつもりは無い。

 寄り道先は首都高速。それ以外に無い。

 一番最寄りの汐留インターから、首都高八重洲線に乗って、環状線内回りへ。

 アスファルトを照らす街灯が、後ろへ流れていく。そこまでかっ飛ばしている訳では無いが、何故だかここへ来てしまう様になっていた。

(……ここは、特別な場所だって。昔、先輩から聞いたことがある)

 最初は単なる興味本位で、流している程度に過ぎなかった。

 しかし、何度か通う間に少しだけ物足りなさを感じる様になってきた。そして、何時しか低いギアで、少しずつペースを上げて走るようになっていた。

 

 ヘッドライトの青白い光と街灯のくすんだ光が、鈍いアスファルトを照らしながら混じり合う。

(……何で、あたしはここへ来るんだ?)

 元々、バイクで走る事が好きだった拓海が、夜な夜なドライブに出かける事は、何も不思議ではない。

 ただし違う点は、フェアレディZに乗る様になってから、首都高へ向かう回数が極端に増えている事。

(……もしかして、あたしの意思じゃなくて? コイツの意思なのか?)

 ステアリングを握り、先を見据える。3速から4速へシフトアップ。

 防音壁に、エキゾーストノートが反響する。

(教えてくれ……Zよぉ)

 タコメーターは、4500rpmを指していた。

 

 巡航速度プラスアルファで走り、他の一般車を次々と追い抜いていく。

 皇居の横を走り、代官山を通り過ぎた。

(……普通のクルマとは違うな)

 お世辞にも一般車両とは言いにくい、如何にも走り屋らしきマシンが走っていた。EK9型のシビック。しかも、如何にも走り屋ですと言わんばかりの、甲高いエキゾーストが耳に飛び込む。

 深夜の首都高であれば、少数ながら走り屋が居る事も有る。

(……シビックか)

 拓海は速度を落とすことなく、シビックを追い抜いた。

 

 しかしだ。そのシビックは、追い抜いたフェアレディZの後方に張り付いた。

 そして、3回のパッシングを浴びせた。

 ルームミラーで反射した閃光が、拓海の顔を照らした。

「……やろうってのか。上等だ!!」

 元々不機嫌だった拓海に、火が付いた。

 ギアを3速へ落として、一気にペースを上げる。

 

 しかし、拓海はそこまで首都高を熱心に走っている訳では無いし、車の方のドライビングテクニックは、まだ未熟だ。せいぜい、踏めるのは直線だけ。

 とは言え、Zは3リッターのツインターボ。加速力では、一気にシビックを引き離す。

「……どうよ!! テンロクじゃついてこれねーだろ!!」

 得意げになる拓海が吼えた。

 だが、強力な加速力を誇る事は、それ以上に減速する事が難しくなる。フルスケールに交換されたZのスピードメーターは180を指していた。

 一気に視界が狭くなり、巡航速度では何て事の無い曲がり道が、峠道のカーブの様に見えてしまう。

(……こりゃヤバいか!?)

 霞が関のコーナー手前は、恐怖心に負けて必要以上に減速してしまう。拓海にしては、賢明な判断だった。

 その瞬間、シビックはアウト側から、あっけなくZに並んでいた。

 そして、本来不利になる筈のアウト側から、いとも簡単に抜き去っていく。コーナーを立ち上がる頃には、シビックのテールランプを拝まされる。

「……おいおい。さすがにかっこ悪すぎるだろ……あたし」

 思わず拓海はため息を吐き出した。

 しかし、格下のシビックに抜かれたままと言うのも、癪に障る。拓海は、シビックを追いかける事に決めた。

 

 フェアレディZのシルエットを、シビックのドライバーはミラーで見ていた。

(……Z32も随分と珍しくなったじゃんか)

 そのまま、シビックは谷町JCTから首都高3号渋谷線を、東名方面へ。

 しかし、特別かっ飛ばす訳でもない。一定のペースを保ったまま、ミラーで見えるZとの距離を見る。

 当然、Zもついてくる。シビックのドライバーは、Zの動きをつぶさに観察していた。

(ま、この速度ならついてこれるじゃんか)

 シビックは用賀インターで首都高を降りて、交差点をすぐに右へ。シビックは、そのままコンビニへと入る。

 拓海もそれにならって、コンビニに寄ることにした。

 

 シビックが駐車場に止めると、わざとらしく隣にZを滑り込ませる。

(どんな奴が乗ってるんだ?)

 拓海は、ジロジロとみてしまう。すると、シビックから降りてきたのは、随分と小柄な男性だった。

「……へぇ。Zに女の子が乗ってるなんてね……良い趣味じゃん。

 ま、後ろにくっ付いてパッシングしたのは悪いと思ってるけど……」

 シビックの男性は、そう伝えた。

 拓海もZから降りる。

 その男性は本当に小柄で、拓海でも見下ろすほどだった。

「……そりゃ、別に良いよ」

 しかし、あまりにもテクニックの差を見せつけられており、拓海は少々意気消沈していた。

 そして、この場で何を話していいかよく分からないで戸惑っている間に、その男性は勝手にしゃべりだしていた。

「昔ツレが乗ってたんだけど、結構速くてさ。ま、その頃は俺もストリートはあんまり走ってなかったけど……。

 でも、やっぱこの頃のクルマの方が俺は好きじゃんか。一番好きなのはNSXだけどさ」

 男性は飄々としながら、Zをまじまじと観察する。

「……ところでさ。あんた、何であんなに簡単に、あたしの車を抜けたんだ? こっちの方が直線は絶対に速いのに……」

 拓海の一言に、その男性はあっさり答えた。

「簡単じゃん。直線が速くても、それ以上にコーナーが不慣れだって思ったじゃん。インを閉めても、それ以上の速度で曲がれれば抜けるじゃんか。

 見た所、まだ車に慣れてなさそうだしさ」

 と、男性は解説した。見事なくらいに、図星だった。

「……あんたは、首都高の走り屋なのか?」

 拓海はそう聞いた。

「首都高は好きだけど、走り屋ではないかな……。仕事柄、免許が無くなると困るから、たまに気分転換に流してる程度じゃんか」

「……本当かよ?」

 しかし、そのドライビングテクニックは間違いなく本物だった。拓海はついつい食い下がる。

「ホントだって」

 しかし、男性はそう言い切る。

「……あんた、名前は何ていうんだ?」

「…………通りすがりの山田さんじゃんか」

「……そうかい。あんたの事、よく覚えておくよ」

 拓海はそう伝えて、再びZのシートへ滑り込んだ。

 そして、エンジンをスタートさせて、コンビニから走り去った。

(……原田さんの言ってたZの子って、多分あの子に間違い無いじゃんか。たしか……向井拓海だったかな)

 その山田と言う人物は、そのZの事をあらかじめ知っていた様だ。

 

 

 翌日。内藤自動車で、拓海は前夜の事を話した。

「……って訳なんだよ」

 身振り手振りを交えながら、興奮冷めやらぬ拓海は力説した。

「へぇ~。ま、シビックはFFだけど、コーナーは凄く速いしね~」

 美世は缶コーヒーを飲みながら、一息入れている。

「そこでさ。そのシビックに乗って、めちゃめちゃ速い山田さんって、心当たりないか?

 偽名かもしれねーけど……」

「あるよ」

 拓海の一言に、美世は即答した。

「マジでか!! 何者か、知ってるんだよな?」

「そうね……」

 美世は、少し考える素振りを見せる。

「なんだよ。もったいぶってねーで、教えてくれよ!!」

 拓海は、美世を問い詰める。

「ん~……教えるよりも、見た方が早い気がするんだよね~」

「どういう意味だよ……」

 美世は、ここである提案を出した。

「週末に、富士に来れば解るよ。チケットはあたしが用意しとくからさ」

「…………どういう意味だよ?」

 いまいち理解していない拓海に、美世はいたずらっぽく笑って見せた。

 

 そして、週末。

 拓海を含めたマッシブライダーズ一同に、プロデューサーである久永を加えた一行は、富士スピードウェイへやってきた。

 由緒あるサーキットは、国内屈指のハイスピードコースとして知られる。今週の土日は、スーパー耐久シリーズの第4戦が行われるのである。

 

 幸いスケジュールが上手く調整できたおかげで、土日は予定を開けられた。

 まだ太陽が出ていない午前二時に、一行は出発。東京を出て、首都高速から東名高速を西へ。静岡県手前の大井松田インターで下車。後は国道246号線を、御殿場目指してひた走る。

 予選日のゲートオープン時には、サーキットに到着できていた。まだ駐車場はそこまで埋まっていないので、車はすんなりと停める事が出来た。

 なお、夏樹のRX-8に、四人で乗り合わせてやってきている。

「……ふわぁ~。ねみぃな……」

 到着するや否や、大あくびをかます拓海。

「とか言いながら、たくみんはずっと寝てたっしょ?」

 そう突っ込む里奈に、拓海は口を尖らせた。

 余談だが、この二人の愛車では、その道のりはとても険しくなる。里奈のワゴンRは超ド車高短。拓海のZは二人乗りの上に、エアコンが無い。ロングドライブを楽しめる車とは、間違っても言えないだろう。

「すいませんね。東京から、ずっと運転を任せてて」

 夏樹は、久永に礼を言った。

「いえいえ。僕は、運転するのが苦痛じゃありませんから」

 久永はそう言いながら、エイトのキーを夏樹に手渡した。

 

 四人とも美世からもらった、関係者用のパドックパスを持って、サーキット内へと向かう事にした。

 

 スーパー耐久シリーズは、市販車を改造したレースカテゴリーである。実はスーパーGTよりもその歴史は長く、25年もの歴史がある。

 国内のメジャーレースの中では一番改造範囲は狭く、エンジンやボディ等の主要ユニットの改造は認められない。

 ジェントルマンドライバーや、メーカーのバックアップを持たないプライベートチームの参加も多いのも、一つの特徴と言える。

 国内レースでは一番レース距離が長く、最低でも400km。今回の富士ラウンドに関しては、9時間と言う長丁場で戦わなければならない為、二人から四人までのドライバーが登録されている。

 ロングディスタンスのレースとなると、速さ以上に車両の耐久性やチームの戦略、更にドライバーのテクニックが問われる事は言うまでもない。

 スーパー耐久の場合、全部で6クラスでのエントリーがあり、上はGT3車両で競い合うST-Xから、下は小排気量のコンパクトカー同士で戦うST-5まである。

 言い返れば、世界を舞台に戦うスーパーカーから近所のお買い物車までが、同時にサーキットを走るのである。

 

 美世が所属するチームKSがエントリーするのは、もっとも排気量の小さいST-5。

 使用するマシンは、ホンダフィット。チームオーナーでありドライバーも務める菊池真一は、元はホンダのワークスチームに所属していた。ホンダレーシング及び、そちらのスポンサー関係に強いコネクションがあるのも、理由に当てはまるのだろう。

 最近のコンパクトカーとしては、珍しくマニュアルミッションを搭載しているのも、選択された理由の一つだ。

 

 四人がガレージを訪問すると、ドライバーやメカニック、そしてスタッフがフリー走行に向けた準備に、忙しく動き回る。

 とは言え、GTの時と比べると、そのムードは幾分和やかだ。

「お、きたね~」

 真っ先に出迎えたのは、ここへ招待した張本人である美世。

「おっす」

 拓海は右手を軽く挙げながら、挨拶した。

「おはー☆ 来ちゃったぽよ~♪」

 続けて里奈も、ピースサインを見せる。

「今日は、よろしくお願いします」

 夏樹も続けてそう言った。

「お、いらっしゃい。招待されたって事は、聞いてるよ」

 続いて出迎えたのは、菊池だった。

「こんにちは、よろしくお願いします」

 引率的な立場になる久永は、会釈した。

「せっかくのお客さんだし、あんまりこういう場に馴染みはなさそうだからな。うちのチームマネージャーに、色々と案内してもらうよ」

 そう言って、菊池はマネージャーを紹介した。

「チームKSの広報とマネージャーを担当しています、岩崎彩子です。よろしくお願いします」

 マネージャーはニコリとほほ笑んだ。

(……綺麗な人だな)

 大和撫子と言う言葉が、ぴったりと当てはまるマネージャーの容姿に、夏樹はちょっと息をのんだ。

「おお……すごい美人じゃん」

 里奈は、そのまま言葉を出していた。

「いえいえ。現役のアイドルと比べたら、とても私は敵いませんよ……」

 彩子は謙遜しつつも、照れくさそうだった。

「では、こちらの方へ案内します」

 彩子に案内され、パドックへ向かう。

 パドックと言っても、GTの時ほどの大がかりな設備ではなく、大人数の入れる簡易テントとアウトドア用のテーブルが何台か並んでる程度。アウトドアキャンプの様に、持ち運べる事を前提に考えている。

 車両を運ぶのも大がかりなトランスポーターではなく、2トン車のキャリアカーで乗り入れしているし、モーターホームはキャンピングカーを使用しているのだ。

 

 パドックの中では、二人のエースドライバーが、入念に打ち合わせをしている。

「あ~、もうちょっとだったのに……」

「くそ……レアがこない」

 と、打ち合わせをしている筈だったが、二人してスマホゲームに熱中していた。

「……」

 非常にお気楽なムードに、彩子は大きなため息を吐き出した。

「お、そろそろフリー走行?」

 呑気に聞いてきたのは、チームKSのドライバー、岩崎基矢だった。スーパーGTでもドライバーを務める、中堅の実力派。

「まったく……兄さんはもう少し、緊張感を持てないの?

 せっかく、原田さんが所属事務所の仲間を招いてくれたのに、このだらけた状態は一体どういうつもりなの?

 せめて、自己紹介が終わるまではしっかりしてくれない?」

 彩子は、呆れと恥ずかしさから、岩崎を捲し立てる。何を隠そう、岩崎とマネージャーを務める彩子は兄妹である。

「まーそう言うなって。あんまり怒ってると小皺が増えて、嫁の貰い手が無くなるぞ、鬼マネージャー」

 岩崎は立て続けに、おちょくった。

「……殺す」

 彩子は右拳をプルプルと振るわせて、実の兄に殴りかかろうとする。

「まぁまぁ、そう怒らないで。そもそも、始まる前からガチガチに緊張したって仕方ないじゃんか。ま、岩ちゃんも殴られても仕方ない事言ってるけどさ……」

 そう言いながら、もう一人のエースドライバー。山田健三が、彩子をなだめる。

「……まったく。どうして、このチームのドライバーはこうもお気楽なんだか」

 彩子は、再度深く深くため息を吐き出した。

 

 ここで、一同顔を会せた所で、改めて自己紹介を始める。

「俺は、岩崎基矢。チームKSでは、GTの方でも色々お世話になってるドライバーです。一応、原田さんから皆さんの事は色々聞いてるよ」

 岩崎は、改めて自己紹介を済ませる。

「俺は、山田健三。チームKSだとスーパー耐久にエントリーしてるじゃん」

 もう一人のドライバーの名は山田健三。36歳だが、背丈も小さく童顔のせいか、オジサンっぽい雰囲気はあまりない。

(あの時のシビックの人……レーサーだったんだ)

 拓海は、夜の首都高で簡単に抜かれてしまった事に、凄く納得が出来た。

「君はあの時のZの子だね。向井さん?」

「……どうも」

 山田に言われ、拓海は軽い会釈で返す。

「Zに乗ってるって事は、実は原田さんから聞いてたんだよね」

「そうだったんだな……。

 だけど、山田さんがレーサーだったんなら、抜かれても当然か」

「ん~……なるべく内緒にして欲しいじゃん。そういう事は、立場上まずいからね」

 拓海の言葉に、山田は苦笑いを見せていた。

 

 国内ライセンスを保持するレーシングドライバーの場合、JAFの主催する競技には普通自動車免許の保持が絶対条件になる。したがって、免停中だった場合は競技への参加は認められない。免許の失効となると、即失業となるため基本的には一般公道では、安全運転に努める、はずである。

 

「えっと、木村夏樹です。美世さんには、結構色々お世話になってます。今日明日は、色々と見学させてもらいます」

「藤本里奈っす。あんまりレースの事とか知らねーっすけど、今日は結構楽しみっす」

「向井拓海っす。まぁ、Zに乗ってるけど、最近乗り出したばっかだし……。正直、レースを見るのは初めてだから、ワクワクしてます」

 まずは、三人が自己紹介。最後枠は久永なのだが。

「久永一です。よろしくお願いします」

 丁寧に頭を下げる。

「……こちらこそよろしく」

 岩崎は短く答えた。

「ん~……ま、ゆっくり見ていってくれればいいじゃんか」

 山田も、短く言葉を切っていた。

「……はい」

 久永は、ゆっくりと頭を上げた。

 

「おーい。ミーティングを始めるから、一回集まってくれ」

 このタイミングで、監督の菊地が招集をかける。

「では、チームのミーティングの間に、パドック裏の施設を案内しますので、皆さんはこちらへ着いてきてもらえますか?」

 彩子は、そう言って再び奥への案内を始める。一同は、それにならって着いていく事にした。

 

 パドック裏を案内され、コントロールタワー周辺に来た時。

 久永の視界に、あるポスターが飛び込んできた。

「……このポスターは?」

 大きく描かれた“AllJapanTunedCarFestival”というタイトル。バックには、国内でも特に有名なパーツメーカーの看板車両である、R35GT-Rが写っていた。

「それは、毎年冬に開催されている、イベントのポスターですよ。

 全国でも指折りのチューニングカーを集めて、タイムアタックとレースを開催してるんです。

 各出版社の自動車雑誌が、合同で主催していて、なかなか人気が有るイベントなんです」

 彩子は、そう説明した。

「……そうですか」

 久永は、ポスターを真っすぐに見つめていた。

 その視線は、鋭く研ぎ澄まされていた。

 

 




岩崎彩子。ブラックエンジェルって通称の方が分かりやすいかもしれないですね。
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