アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結) 作:栗ノ原草介@杏P
薄暗い劇場に、スポットライトが差し込んだ。
「きらりんロボ、はっしーん!」
体の各部にロボっぽい装飾品をつけたきらりが、舞台に降り立ち、いかにも悪者なマントをなびかせる麗奈と対峙する。
「アンタ、コスメティア帝国を裏切ろうっての? このレイナサマに歯向かおうっての? ……いいわ、裏切り者のアンタに、アタシのイタズラの恐ろしさを思い知らせてやるわ!」
バズーカを構える麗奈だったが、きらりは大きく腕を振りかぶって――
「にょわーッ!」
「ぐっ。ちょっとアンタ、何で物理で殴ってくんのよ! アタシがバズーカ構えてるんだからあんたもビームとか撃ちなさいよ。ロボなんでしょ!」
「にょわーッ!」
「ぐっ。だから物理はやめなさいって! ……分かったわ。そっちがそのつもりならこっちにも考えがあるわ。今こそウルトラレイナ様砲を――」
「にょわーッ!」
「だから物理はやめなさいってぇぇええ――ッ!」
吹き飛ぶSEと共に麗奈が舞台から消える。
悪の女王である麗奈を倒したきらりんロボの周りに、子どもたちが集まる。
口々にきらりんロボの活躍を賞賛し、大団円で舞台の幕が下りてくる。
満員の客席から、万雷の拍手があった。
それが、舞台の成果だった。
「成功ですね」
プロデューサーの隣に立つディレクターが、顔をほころばせた。
「346さんが台本を変えようと言った時には、どうなるかと思いましたが、いや、これは上出来です。アイドル達も良い演技をしていました。この調子なら、追加公演も見込めそうです」
笑顔を浮かべて、ディレクターが立ち去った。
今回の件では、プロデューサーも気が気ではなかった。
346プロ主体ではない、さまざまな事務所が入り乱れての企画だったので、自分の意見を押し通したせいで失敗したら責任の取りようがなかった。
「お疲れ様でした、プロデューサーさん」
声に振り向くと、暗がりの舞台袖に演出家が立っていた。
「大成功、と言ってよさそうですね」
「はい、おかげさまで」
笑みを交わして、紗幕の下りた舞台へ視線を送る。
劇場が明るくなって、紗幕があがった。
横一列に並んだ演者が、カーテンコールに応えて手を振っている。
「みんな、いい顔をしてます。これは、あなたの功績ですね」
「いえ、私は何も……」
「謙遜することはありません。あなたが意見を通して台本を変えて、その結果、舞台は成功したんです。胸を張っていいと思いますよ」
「いえ、本当に違うんです」
「……?」
首をかしげる演出家に、全てを語ることはしなかったが――
これは全て、キッズアイドル達と一緒に手を振る、小さなアイドルの功績なのだ。
彼女が、友達の笑顔のために、やったことなのだ。
「みんなー、ありがとーっ! きらり、みんなに喜んでもらえて、最高にハピハピだにぃ!」
きらりの顔に弾ける笑顔は、文句のつけようのない、最高の笑みだった。
「いい笑顔ですね」
腕を組んで笑う演出家に、プロデューサーもうなずく。
そして、心の中でつぶやく。
――いい、笑顔です。
それは、きらりへ向けた言葉ではなかった。
滅多に笑うことの無い双葉杏へ向けられた、賞賛の言葉だった。