アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結)   作:栗ノ原草介@杏P

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第5話 〝Word is not enough〟
 Aパート 1


 

 

「スキャンダルだよ! プロデューサー!」

 

 部屋のドアが、荒々しく開かれた。

 プロデューサーが顔を上げると、険しい顔をした未央と目があった。

「スキャンダル……ですか?」

 プロデューサーの反応に、未央は渋い表情のまま、強い歩調で近づいてくる。

「そんなのん気に構えてる場合じゃないよ! スキャンダルっていったら、アイドルの天敵だよ! 人気絶頂のアイドルも、たった一つのスキャンダルによって転落――、奈落の底へ真っ逆さま! なんてこともあるんだから!」

「あの、ちょっと、落ち着いてください」

 プロデューサーは、手をあげて未央を落ち着かせて――

「話を、聞かせてもらえませんか」

「えっとね、その、ちょっと、待って……」

 息を切らせている未央の代わりに、凛が口を開いた――

「蘭子の、ことなんだけど」

「神崎さんが、どうかしたんですか?」

「いや、何かしたってわけじゃないんだけど……」

 苦笑する凛に代わり、息を整えた未央が再び口火を切る。

「あのね、プロデューサー。アイドルにとって、致命的なスキャンダルって、なんだと思う?」

 プロデューサーは、あごに手を当てて考えて――

「……恋愛発覚、とかでしょうか?」

「そう!」

 未央の手が、握りこぶしをつくった。激しいジェスチャーに合わせて癖っ毛が踊る。

「アイドルにとって、異性とのスキャンダルは、致命傷! アイドルは、ファンのみんなの恋人だから、誰かの恋人になったら、もうアイドルではいられないっ!」

 

「……つまり、神崎さんに、恋人ができた、と?」

 

 未央の動きが、ピタリと止まった。

 

 彼女は、脱力して、笑みを作って――

「いや、まだ〝可能性〟の段階なんだけどね。容疑者ってやつ?」

「そんな、事件の犯人みたいに……」

 苦笑する凛に、つられて未央も苦笑する。

「まあ、熱愛発覚――かどうかは分からないけど、でも、様子がおかしいってのは本当だよ。証人だっているんだから」

「証人、ですか?」

「うん。みんな、入ってきて」

 未央が声をかけると、シンデレラプロジェクトのアイドル達が部屋に入ってきた。

 

 

 証言 1

 前川 みく

「蘭子ちゃん、最近ずーっとぼーっとしてるにゃ。髪を結ぶの忘れたり、間違えてみくの部屋に入ってきたり。昨日なんて、廊下で日傘をひらいて葵ちゃんに怒られてたにゃ。でも、そのおかげで助かってることもあるにゃ。食事の時、蘭子ちゃんのお皿にお魚を置くと、気付かずに食べてくれるの。おかげで、葵ちゃんに怒られなくてすんでるにゃ♪」

「最近、残さず食べてくれちょると感心しとったら、そういうことやったんかみくさんッ!」

「うえっ! 葵ちゃん! なんでここにい――」

 

 

 証言 2

 新田 美波

「最近、蘭子ちゃんに訊かれたんです。告白をした経験はあるかって。それが〝愛の告白〟のことを言っているのかどうかは分かりませんけど、とにかく、告白をしたことはあるかって」

「ミナミィ、ケイケン、あるんですか?」

「えっ! いや、私は、その……」

「カオ、マッカですね」

「もうっ! 今は私の話じゃなくて蘭子ちゃ――」

 

 

 証言 3

 渋谷 凛

「事務所にいる時、話しかけても、反応が鈍い時があったかも。何か、気になることがあるって感じかな。まあ、だからって、すぐにそれをスキャンダルに結びつけるのは極端だと思うけど……」

「じゃあ、他に何が考えられるのさ、しぶりん!」

「うーん。でも、あたしも経験あるから。気になることがあって、何も手につかない状態」

「なっ! まさかのスキャンダルが発覚しちゃう!」

「あれは、ハナコの調子が悪くて、病院に預けた時だったかな」

「お犬様の話かあ……。それじゃスキャンダルにならないよー」

「ハナコは大切な家族なんだから、人間と――」

 

 

 証言 4

 緒方 智絵里

「この近くに、クローバーがたくさん生えてるところがあって、わたし、よく行くんです。四葉のクローバーを探しに。いつもは、一人だったり、かな子ちゃんと一緒だったりするんですけど、この前、蘭子ちゃんも一緒に来たんです。クローバーに叶えて欲しい願いがあるって、そんな感じのことを言ってました」

「でも、見つからなかったんだよね」

「そうなんです。わたしもかな子ちゃんも見つけられたのに、蘭子ちゃんだけ見つけられなくて。やっと見つかったと思ったら、葉っぱの下から小さなイモムシが出てきて――」

 

 

 隙あらば脱線しようとする証言をまとめると――

 

 蘭子は、目に見えて悩んでいる。

 

 ということだった。

 それが恋する乙女の挙動に似ていたので、未央が報告に来たのだった。

 

「みなさん、ありがとうございます。しかし、皆さんが心配しているようなことではないと思いますので、安心してください」

 プロデューサーの言葉に、腕を組んだ未央が横目で睨んできた。

「やけに自信たっぷりだけど、根拠はあるの? ランランのことを全て知っていると思ったら大間違いだよ!」

 演技がかった仕草で指をさされた。

 プロデューサーは、首の後ろをさわりながら――

 

「実は、神崎さんには、ユニットの話をしているんです」

 

 他の事務所のアイドルと、ユニットを組んで活動する。

 そのパートナーの選定を、蘭子に一任している。

 彼女が相手を決められなかった時に備えて、候補は用意してあるが、基本的には彼女の意向を尊重するつもりでいる。

 

 ――我が魂の共鳴者には心当たりがある。瞳を持つものよ。我が翼の邂逅(かいこう)が果たされるまで、しばし(アルマ)を休めるがよい。

 

 プロデューサーは、蘭子の言葉を手帳に書きとめ、みりあに鑑定を依頼した。みりあはシンデレラプロジェクトで唯一、蘭子の〝言葉〟を正確に翻訳することができる。

 

 ――ユニットを組んでみたい人、います。わたしが話をしてみますので、少しだけ待ってもらえますか。

 

 あれから数日が経過するが、蘭子がユニットの相手を連れて来る気配はない。

 自分が動こうかと思ったが、それはみりあに止められた。

 蘭子の〝言葉〟の中には、ユニットの相手を自分の力で口説き落としたいという強い意思が込められている、とのことだった。

 

 それはきっと、蘭子にとって大切なことなのだ。

 

 そう思ったプロデューサーは、あえて自分から動くことはせず、蘭子がドアを開けるのを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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