アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結)   作:栗ノ原草介@杏P

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第8話 〝Tri Castle Story〟
 Aパート 1


 

 

 

「この企画の成否に、美城グループの社運がかかっていると思ってもらいたい」

 

 美城グループの本社ビル。

 その会議室で、美城常務が激を飛ばした。

 そこには、美城常務と、今西課長と、千川ちひろ。

 

 そして、他の芸能部門へ異動になっていた元346プロのプロデューサー達が、集結していた。

 

 それはさながら決起集会で、それぞれの顔に、決戦に臨む兵士の高揚感があった。

 それはもちろん、プロデューサーも同じである。

 

 水面下で準備していた企画が、ついに動きだすのである。

 

 シンデレラ達に大きな舞台を用意するという、絵空事でしかなかった企画が、現実のものとなって実を結ぼうとしているのだ。

 当然ながら、普段以上の、気持ちが入る。

 持てる全ての情熱を、注いで企画を成功させるべく意気込んでいるのだが――

 

 しかし一つ、気がかりなことがある。

 

 先日の、ニュージェネレーションズのライブの時。

 舞台裏の暗闇で、渋谷凛が見せた表情。

 

 何かを、切望していた。

 

 そして――

 

 何かを、諦めた。

 

 背を向けて立ち去った凛を、そのままにしてよいのだろうか。

 今一度、彼女と向き合って、彼女の声を聞くべきではないのだろうか。

 彼女が何を求めているのか、もう一度――

 

「おい。聞いているのか」

 

 美城常務の言葉に、プロデューサーは我に返った。

 背筋を伸ばして、顔を向けた。

「しっかりしてくれ。これは、君の企画であり、今はもう、我々の企画だ。失敗は、許されない。絶対に、成功させる。そのために、全力をつくしてほしい。346プロの、美城グループの、正念場だ。よろしく頼むぞ」

 そこにいる全ての人間が、返事をした。

 覇気のこめられた声音(こわね)だった。

 

 その返事から、それぞれの胸中を推し量ることができた。

 

 この企画は、346プロ復活の足がかりになる。

 成功させることができれば、プロダクションとしての勢力を回復することができる。

 

 アイドルプロダクションとして生死の境をさまよっている現状を、脱して安泰を手に入れることができる。

 

 この部屋にいるのは、不本意ながらアイドル部門を離れることになったプロデューサー達である。

 346プロに、強い思い入れを持っているプロデューサー達である。

 思いがけずめぐって来た再起のチャンスに、熱くならない理由はない。

 

「今回の企画は、各事務所との連携が成否の鍵を握る。企画者である我々が、連携の際に生じる手間を率先して引き受ける必要がある。それは、口で言うほど生易しいものではない。激務を覚悟してもらいたい」

 

 美城常務の言葉に、怯む者はいなかった。

 むしろ、闘志を燃やすかのように、眉を強める者ばかりだった。

 

「それでは、各自仕事に取り掛かってくれ」

 

 プロデューサーは、背筋を伸ばして、退室する美城常務へ頭を下げた。

 

 ここが、正念場である。

 

 打ち出した企画と連動して、複数の企画が動き出す。

 それら全てを成功させて、シンデレラ達に大きな舞台を用意する。

 その輝きに相応(ふさわ)しい、大きな城を――。

 

「しばらく、事務所のことを、お任せします」

 

 プロデューサーは、ちひろと今西課長に頭を下げて、会議室の出口へ向かった。

「あの、ちょっと待ってください」

 かけられた声に振り向くと、ちひろが、何かを差し出してくれた。

 

 スタミナドリンク。

 

「大変な時期ですが、あまり無理はしないでくださいね」

 プロデューサーは頷いて、ドリンクを受け取った。

 

 確かに、無理をしているかもしれない。

 最近、ずっと終電で帰っている。

 疲れているのかいないのか。分からないほどに疲労している。

 

 けど、仕方がない。

 今は、正念場なのだ。

 

 プロデューサーは、ドリンクをかばんに入れて、ビルの外へ出る。

 ビルの谷間の小さな空が、分厚い雲に覆われている。

 降りやむ気配をみせない雨が、今日もスーツの肩を濡らす。

 プロデューサーは、傘を広げて踏み出した。

 眩暈(めまい)のようなものを感じたが、それに構うつもりはなかった。

 

 今は、正念場なのだ。

 少しくらい、無理をしなくてはならないのだ。

 

 全ては、シンデレラ達に、相応(ふさわ)しい城を用意するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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