アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結) 作:栗ノ原草介@杏P
Aパート 1
「この企画の成否に、美城グループの社運がかかっていると思ってもらいたい」
美城グループの本社ビル。
その会議室で、美城常務が激を飛ばした。
そこには、美城常務と、今西課長と、千川ちひろ。
そして、他の芸能部門へ異動になっていた元346プロのプロデューサー達が、集結していた。
それはさながら決起集会で、それぞれの顔に、決戦に臨む兵士の高揚感があった。
それはもちろん、プロデューサーも同じである。
水面下で準備していた企画が、ついに動きだすのである。
シンデレラ達に大きな舞台を用意するという、絵空事でしかなかった企画が、現実のものとなって実を結ぼうとしているのだ。
当然ながら、普段以上の、気持ちが入る。
持てる全ての情熱を、注いで企画を成功させるべく意気込んでいるのだが――
しかし一つ、気がかりなことがある。
先日の、ニュージェネレーションズのライブの時。
舞台裏の暗闇で、渋谷凛が見せた表情。
何かを、切望していた。
そして――
何かを、諦めた。
背を向けて立ち去った凛を、そのままにしてよいのだろうか。
今一度、彼女と向き合って、彼女の声を聞くべきではないのだろうか。
彼女が何を求めているのか、もう一度――
「おい。聞いているのか」
美城常務の言葉に、プロデューサーは我に返った。
背筋を伸ばして、顔を向けた。
「しっかりしてくれ。これは、君の企画であり、今はもう、我々の企画だ。失敗は、許されない。絶対に、成功させる。そのために、全力をつくしてほしい。346プロの、美城グループの、正念場だ。よろしく頼むぞ」
そこにいる全ての人間が、返事をした。
覇気のこめられた
その返事から、それぞれの胸中を推し量ることができた。
この企画は、346プロ復活の足がかりになる。
成功させることができれば、プロダクションとしての勢力を回復することができる。
アイドルプロダクションとして生死の境をさまよっている現状を、脱して安泰を手に入れることができる。
この部屋にいるのは、不本意ながらアイドル部門を離れることになったプロデューサー達である。
346プロに、強い思い入れを持っているプロデューサー達である。
思いがけずめぐって来た再起のチャンスに、熱くならない理由はない。
「今回の企画は、各事務所との連携が成否の鍵を握る。企画者である我々が、連携の際に生じる手間を率先して引き受ける必要がある。それは、口で言うほど生易しいものではない。激務を覚悟してもらいたい」
美城常務の言葉に、怯む者はいなかった。
むしろ、闘志を燃やすかのように、眉を強める者ばかりだった。
「それでは、各自仕事に取り掛かってくれ」
プロデューサーは、背筋を伸ばして、退室する美城常務へ頭を下げた。
ここが、正念場である。
打ち出した企画と連動して、複数の企画が動き出す。
それら全てを成功させて、シンデレラ達に大きな舞台を用意する。
その輝きに
「しばらく、事務所のことを、お任せします」
プロデューサーは、ちひろと今西課長に頭を下げて、会議室の出口へ向かった。
「あの、ちょっと待ってください」
かけられた声に振り向くと、ちひろが、何かを差し出してくれた。
スタミナドリンク。
「大変な時期ですが、あまり無理はしないでくださいね」
プロデューサーは頷いて、ドリンクを受け取った。
確かに、無理をしているかもしれない。
最近、ずっと終電で帰っている。
疲れているのかいないのか。分からないほどに疲労している。
けど、仕方がない。
今は、正念場なのだ。
プロデューサーは、ドリンクをかばんに入れて、ビルの外へ出る。
ビルの谷間の小さな空が、分厚い雲に覆われている。
降りやむ気配をみせない雨が、今日もスーツの肩を濡らす。
プロデューサーは、傘を広げて踏み出した。
今は、正念場なのだ。
少しくらい、無理をしなくてはならないのだ。
全ては、シンデレラ達に、