アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結)   作:栗ノ原草介@杏P

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 Aパート 2

 

 

 

「卯月がユニットから外されるって、どういうことッ!」

 

 卯月に話をした翌日、事務所に凛がやってきた。

 その剣幕は〝乗り込んできた〟と表現したほうが適切だった。

 それほどに、凛の目付きは険しかった。曖昧な回答は許さないと、引き結ばれた唇が語っていた。

 

「美城常務の、命令でして……」

 

 プロデューサーは、それしか言えなかった。

 

 それらしい理由を並べて、凛をなだめることも出来た。

 前回の失敗を持ち出して、卯月が外される理由を強調することもできた。

 

 ――でも、したくなかった。

 

 美城常務と自分の意見は、違っていたから。

 自分は、納得していなかったから。

 

「あんたは、それでいいわけ?」

 

 学校のカバンを足元に放った凛が、近づいてくる。

 隣に立つ未央が反射的になだめてしまうくらいの、猛々(たけだけ)しい足取りで。

 

「美城常務に駄目だって言われて、はいそうですかって、簡単に引き下がっちゃうわけ?」

 

 机の前で足をとめ、荒ぶる感情を込めた視線を向けられた。

 怒りがあって、憤りがあって。

 他にも数えきれないくらいの煮えたぎる感情が、その緑色の瞳の中で暴れている。

 

「卯月さ、すっごく喜んでたんだよ。美穂とユニットが組めるって。876の新人の子も一緒だって。またチャンスをもらえて、それがすごく嬉しいって、言ってたのに……」

 

 溢れる感情が涙となって、目のふちからこぼれて――

 

「それなのに、前に失敗したから駄目って……、そんなのあんまりだよ。卯月が可哀想だよッ!」

 

 凛は、息を荒げて、激しく肩を上下させた。

 その肩に未央が手をかける。

 凛の呼吸を落ち着かせて、ハンカチを差し出す。

 

「私は、何もしないよ」

 

 未央の言葉は、穏やかだった。

 強い言葉をぶつけられると覚悟していたので、拍子抜けに思った、次の瞬間――

 

「何かあったらフォローしてくれるっていうプロデューサーの言葉、信じてるから」

 

 未央の言葉は、静かに、しかし致命的に、心の奥に突き刺さった。

 

「あの時の言葉、私だけに言ったわけじゃないよね。シンデレラプロジェクトのみんなを、フォローしてくれるんだよね」

 

 固く握られたこぶし。

 強張った肩。

 未央の全てから、目をそらせてはいけないと思い、プロデューサーは、全身で未央の言葉を受けとめる。

 

「プロデューサーも、しまむーじゃ駄目だって、思うの? そうだったら、仕方ないけど、違うんなら……」

 

 ――守ってあげてほしい。

 

 最後の言葉は、懇願(こんがん)糾弾(きゅうだん)を混ぜた視線に込められた。

 守ってほしいと頼む気持ち。

 何で守ってくれないの! ――と憤る気持ち。

 その二つが込められた視線から、プロデューサーは目をそらした。

 

 ――そんな視線を、向けてくれればよかった。

 

 ユニットから外されるかもしれないと聞かされた卯月は、そんな視線をよこさなかった。

 気丈(きじょう)にも、笑顔を作った。

 

 彼女の笑顔をみて、悲しい気持ちになったのは初めてだった。

 

「もう一度、島村さんと、話してみます」

 

 自分の口が、勝手に動く。

 耳触りのいい言葉で二人を誤魔化そうとしているのではないかと、もう一人の自分に責められるが――

 そうではないと、反発する気持ちを胸に――

 

「美城常務を説得する方法を、考えます」

 

 プロデューサーは、凛と未央に反発されて、思い知った。

 

 ――美城常務の言いなりに卯月をユニットから外すのは、やはり間違っている。

 

 自分は、卯月の担当プロデューサーである。

 彼女を守る、義務がある。

 彼女に代わって、理不尽な要求をはねのけることが出来なくては、プロデューサー失格である。

 

「あの、プロデューサーさん」

 

 ちひろの声が、プロデューサーの思考を断ち切った。

 彼女は、凛と未央を見て、笑みを浮かべた。

 そしてチラリと、投げるような視線をよこした。

 その仕草から、凛と未央に聞かれたくない話があるのかもしれないと、思った。

 

「ちょっと、失礼します」

 

 プロデューサーは、凛と未央をその場に残し、部屋を出た。

 ちひろと一緒に、誰もいない事務所に入る。

 ドアの閉まる音に続き、ちひろが口を開いた――

 

「先ほど、小日向美穂ちゃんから電話がありまして――」

 

 ちひろの口調と表情から、嫌な予感がした。

 今はユニットのレッスンをしているはずの美穂からの電話と聞いて、恐ろしい予感に息を呑んだ。

 

「レッスン中に、美城常務が来て、卯月ちゃんを帰しちゃったって……」

 

「そんな……ッ!」

 

 最悪の想像が、頭をよぎる。

 しかし現実は、大差ないかもしれない。

 

「現地へ、行きます」

 

 プロデューサーは、ちひろの返事を待たずに事務所を出た。

 ここが郊外の事務所であることが悔やまれた。

 車に乗って、キーを回しながら卯月へ電話をかけた。

 

 電話は繋がらず、留守番電話になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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