アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結)   作:栗ノ原草介@杏P

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第11話 〝Queen's answer〟
 Aパート 1


 

 

 

 そもそも、美城グループの経営が悪化してしまったことと、アイドル事業部は何も関係がない。

 

 全て、美城芸能の失態である。

 アパレル業界への進出を試みた結果であると聞いている。

 

 着眼点は、悪くない。独自のブランドを立ち上げて、所属している俳優・女優を抱き合わせで売り出せば、爆発的な成長を期待することができる。

 

 ――しかしと、美城常務は思う。

 

 なぜ、その話をアイドル事業部に持ってこなかったのか?

 

 少なくとも、若者向けのファッションであれば、アイドルをモデルに起用するメリットは大きい。現に、凸レーションはピカピカポップとコラボレーションをして成果をあげている。

 

 同じ美城グループでありながら、346プロに話がこなかった理由は一つ。

 

 アパレル事業を発案・担当した重役が、アイドルを(きら)っているからである。

 

 そんな個人的な理由によって、アパレル事業部は〝アイドルとのコラボ〟という起爆剤を失い、巨額の負債を抱えて解散することになった。

 

 これが普通の会社なら、倒産して終わりである。

 しかし美城はグループ企業である。同族企業は、頼もしい兄弟であると同時に忌まわしい疫病神である。

 

 アパレル事業部の作り上げた負債によって、美城グループという船は深刻なダメージを受けた。誰かを、船から下ろさなければならなくなった。

 

 そして、アイドル事業部の縮小・廃止が検討される。

 

 成果をあげているもの、アイドル事業部は美城グループの中では新参であり、発言力は弱く、重役の決定をくつがえすことは難しい。

 

「どうしても、リスクがありますなぁ……。CDにしろ、ライブにしろ、先行投資が必要になる」

 

 本社ビルの会議室で、美城グループの重役が顔をつき合わせていた。

 

「やはりアイドル事業部は、廃止するべきだと思いますなぁ」

 

 それを言ったのは、アパレル事業部を立ち上げた重役だった。

 何だかんだと責任の所在をボカして重役の椅子を死守した手腕には呆れる――を通り越して感心するが、この重役が経営者として無能であることは明確である。

 

「どんな事業にもリスクはつきものです。そのための保険も考えています。夏のライブ――トライキャッスルストーリーは、3つの事務所による合同ライブです。出資を分割することによってリスク軽減を実現しています」

 

「でも、それじゃあ、利益も三分の一になるんじゃないの?」

 

 口を挟んできた例の重役へ、美城常務は鋭い視線で応戦する。美城の血族である彼女の視線は、しかしそのタヌキの置物を思わせる渋面を崩せない。会長の娘に睨まれたぐらいで表情を変えるほど、その(つら)の皮は薄くない。

 

「アイドル事業部は成果を出しています。今、廃止してしまうのは、社益に反する行為です」

 

「今はそうかもしれないけどさあー。来年はどうなの? 再来年は? アイドルってやつはさあ、先のこと、見通しが立つ業界じゃないよねえ? 美城グループの経済状況考えたら、(いさぎよ)く廃止するのが懸命だと思うんだけどねぇ?」

 

 その経済状態を作り出したのはどこのどいつだ!

 

 思うも、美城常務は黙っていた。

 この憎たらしいタヌキ顔の言っていることは、悔しいが正論である。アイドル事業には、先行投資によるリスクがある。アイドルの将来性も、不透明である。来年ブレイクする女の子を確実にスカウトできるプロデューサーは、存在しない。

 

「とりあえず、結論は保留する。次回までに、各自、対応策を考えてきてほしい」

 

 議論が膠着状態(こうちゃくじょうたい)になったのを見計らって、会長が席を立った。

 会議室を去るタヌキ顔の、口元に笑みが浮かんでいた。

 

 重役達が去った会議室に、美城常務はそのまま残った。

 

「会議、どうだった?」

 

 部屋に入ってきた今西部長の顔を見て、美城常務は首を横に振った。

 

「やはり、厳しいみたいだね……」

 

 しばらくの沈黙を挟み、提案される――

 

「プロデューサーである彼に、相談してみてはどうだろう?」

 

 美城常務は、強ばっていた口元に笑みを浮かべた。

 とても承認できない提案を前に、失笑していた。

 

「君に見えないものを、彼は見ることができる。君の、いや、346プロの助けになってくれると思うよ」

 

 今西部長の顔から、穏やかな表情が消えている。どうやら、本気で助言しているようだ。

 美城常務は笑みを消して、真っ直ぐに今西部長の目を見て――

 

「部長は、彼をかいかぶっています。確かにプロデューサーとしては優秀ですが、所詮は現場の人間です。経営者の立場で有益な発言ができるとは思えません」

 

 美城常務は、席を立った。

 今西部長は、動かなかった。

 

「現場の人間だからこそ、経営者が見落としているものを、見ることができる」

 

 今西部長が、ここまで自分の意見を押し通すことは珍しい。

 

 一体、何が彼をそうさせるのか?

 一体、自分が何を見落としているのか?

 

 346プロの、経営に関する資料は全て見た。暗唱できるくらいに、全ての数字を頭に刻み付けてある。

 これ以上、何を見る必要があるのか……?

 

「失礼します」

 

 美城常務は、今西部長の脇をすり抜けて会議室を出た。

 もう一度、いや、何度でも資料に目を通して、アイドル事業部を生存させることのできる提案を模索(もさく)するつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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