アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結)   作:栗ノ原草介@杏P

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 Bパート 1

 

 

 

 夜の本社ビル。

 窓の明かりは、ほとんど消えているのだが、美城常務の部屋の明かりはついていた。彼女はまるで銅像のように、机の前で黙考していた。

 

 あらゆる案を、考えた。

 その全てを、棄却した。

 

 美城グループの経済状態を鑑みて、それでもアイドル部門を残したほうがいいと、言い切れるだけの理由を思い付かなかった。

 

 先行投資と、それにともなうリスク。

 

 タヌキ顔の重役が作る防壁を、突き破れるような理論はおそらく、存在しないのかもしれない。

 

 しかし――

 

 何とか突破口を開かなくては、346プロに明日はない。

 勝算を含んだ対策を、考えろ、考えろ……

 

 進展しない自問に嫌気がさしたころ、ドアがノックされた。ビルの守衛が巡回に来たのかと思った。

 

 違った。

 

「夜分遅くに、失礼します」

 

 プロデューサーが、頭をさげた。

 その後ろに今西部長の姿を見て、事情を察した。

 

「何の用だ? 手短に頼む」

 

 突き放すように言うと、プロデューサーは予想通りの前置きを口にした。今西部長から話を聞いて、駆けつけて来たのだと。

 

「君が来て、何になる? 君は今、ライブを控えた大切な時期ではないのか?」

 

 プロデューサーが、近づいてくる。スーツの下で、大きな体を強ばらせて――

 

「重役の方を、納得させるための、提案があります」

 

 美城常務は、鼻で笑ってプロデューサーを睨みつけた

 

「私の能力を低く見てもらっては困る。君に重役を説得できるのであれば、こんな事態にはなっていない」

 

「説得、ではありません。納得、です」

 

 美城常務は、プロデューサーへ強い視線を向けたまま、説明を待った。

 

「言葉で、重役の方を説得するのは、難しいと思います。今の美城グループの現状を考えると、アイドル事業を抱えるのは、リスクがあります。しかし――」

 

 プロデューサーは、子供を守ろうとする親の目付きで、美城常務を見据えて――

 

「そのリスクを上回る、価値があります。シンデレラプロジェクトのアイドル達は、幾多の困難を乗り越え、アイドルとして輝きを放っています。長い成長の時間を終えて、ようやく開花したところです。それなのに、アイドル事業を廃止してしまうのは、馬鹿げています。ようやく咲き始めた花を、切り落としてしまうに等しい愚行(ぐこう)です」

 

 美城常務は、言葉を返さない。

 いや、返せない。

 

 一人の少女をアイドルにするためには、膨大な時間と、費用が必要になる。

 先行投資にあたる期間を終えたアイドルを保有するシンデレラプロジェクトが、どれほど貴重で価値のある存在なのか、言われるまでもなく理解している。だからこそ、アイドル事業部廃止を唱える重役と真っ向から対立している。

 

「重役の方々を、ライブに招待、できませんか」

 

 プロデューサーの提案は、美城常務の想定から外れていた。無警戒のところを狙撃された兵士のように、表情が乱れた。

 

「君は、何を言って――」

 

「言葉では、説明できません」

 

 プロデューサーは、絶対の自信に裏打ちされた真剣な表情で、言葉に重みをもたせて――

 

「アイドルの魅力は、数字や言葉にはできません。ステージで輝く姿を見て、初めて実感することができます」

 

 言いたいことは、分かる。

 しかし、ファン相手ならまだしも――

 

「美城グループの重役相手に、通用すると思うのか?」

 

 プロデューサーは、迷わずに頷いて――

 

「それが、アイドルです」

 

 その瞬間、心が揺れた。

 上司に対して、重役に対して、かくも大胆不敵な態度とるプロデューサーに、賭けてみたいと思ってしまった。

 

「……勝算の低い、無謀な博打(ばくち)だな。アイドルの力、などという、目に見えないものに運命を委ねようとは」

 

 美城常務は、笑みを浮かべる。非論理的な結論を出そうとしている自分をあざ笑うべく、自嘲の笑みを浮かべて――

 

 しかしそれは、すぐに真剣な表情に変わって――

 

「……本来ならば、一笑に付して退けるべき愚案だが、他に代案は存在しない。不本意だが、私に選択の余地は無いようだ」

 

 城を守るのが、自分の仕事だと、思っている。

 ならば、城を守るために死力を尽くすべきである。

 わずかでも勝算があるのなら、採用して全力を尽くすのが自分の仕事だと思う。

 

 悔しいが、プロデューサーの提案は、可能性は低いものの勝算を含んでいる。

 自分の考えた対策に、勝算を見込めるものは無い。

 

 ――ならば、迷う必要はない。

 

 つまらない意地は捨て、プロデューサーの提案を採用するのが、常務と言う名の女王である自分に出来る最善の選択だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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