アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結) 作:栗ノ原草介@杏P
リスクの大きいアイドル事業から手を引いて経営を立て直す。
タヌキ顔の重役が主張する経営再建策は、理にかなっていた。
だから、強かった。
反論を、よせつけなかった。
どうしてそれが
その理由は、単純にして明快である。
――確実な利益が見込めるほどに、アイドルの商品価値がずば抜けていたからである。
美城会長をはじめ、他の重役は、そもそも芸能関係の人間である。いまでこそ経営者として現場から遠のいているが、それでも――
それが金の卵であると分からないほど、
意地になって反対するタヌキ顔の重役に、会長は厳しかった。
――君はもう一度、現場を見たほうがいいな。
その一言で、彼は顔を青くした。
重役の金バッチを失った彼を、擁護しようとする重役はいなかった。
「つまり、346プロは……」
たまらず訊いたプロデューサーに、美城常務は――
「もちろん、存続する。それどころか、支援が見込める。会長は、これほどのアイドルを育成したプロダクションを、そしてプロデューサーを、高く評価している。有能な者は、評価される」
プロデューサーは、息をのんだ。
美城常務の言葉に、ではない。
その
「妙な顔をして、どうした? 嬉しくないのか?」
妙な顔をしているのは、あなたです。
思うも、もちろん口には出さない。
プロデューサーは、美城常務の笑顔に関するコメントをひかえ、頭をさげた。
「追って、結果を報告する。朗報を期待して構わない」
遠ざかるヒールの音が、弾んでいるような気がした。
* * *
「良かったじゃないか」
「良かったですね、プロデューサーさん」
今西部長と千川ちひろに祝福されて、ようやく実感がわいてきた。
――346プロを、守ることができた。
安堵と喜びがこみ上げてきて、口元から力が抜ける。
「君も、表情が柔らかくなったね」
部長に言われて、はっとする。
それは、ライブ直前、アイドル達にも言われた。
自分が、笑顔になっていると。
「アイドルのみなさんにも、負けてない笑顔ですよ」
ちひろまでも、そんなことを言う。
――でも、分からない。
あの日、あの時。
自分の元を去ったアイドルは、自分から笑顔を奪っていった。
当然の報いだと思った。
もう二度と、笑みを浮かべることはできないのだと思った。
それなのに――
「僕は、思うんだけど――」
今西部長が、歩き出す。
ステージへ続く廊下を、ゆっくりと。
「誰かに〝与える〟ということは、同時に〝与えてもらう〟ことだと思うんだ」
ステージに続く扉の前で、足をとめて、プロデューサーを振り返って――
「君が笑顔になれたのなら、それはつまり、君がそれだけアイドル達を笑顔にしてきた、ということだと思うよ」
頭の中に、笑顔が溢れる。
シンデレラプロジェクトのアイドル達の、笑顔を思って、確信する。
――何故、自分が笑顔になれたのか。
「最後くらい、我々もステージで見届けようか」
今西部長が、ドアを開ける。
アンコール後のMCを終えたアイドル達が、最後の曲に備えている。
センターでマイクを持った島村卯月が、最高の笑顔で――
「それでは、聞いてくださいっ! おねがいシンデレラっ!」
すぐに視界が、ぼやけてしまった。
その涙の正体は、わからなかったが、悪いものではないのだと思った。
だって自分は、はっきりと自覚できるほどに――
笑顔だったから。