今、お嬢様に誘われて地底に来ている。うぇぇ、崖っぷち歩くの?
何度来てもここは苦手だ。
じめじめしてるし、何処からともなく唸り声は聞こえるし
「ウオオオォォォォ」
「うわぁっ!!?」
「蒼波あぶないー」
もう怨霊とか言うやつは本当に迷惑だ。暗闇で驚かすようなことばっかりしてくるし。
ああ、それにしても可愛いだけじゃなくて頼りになるフラン様は最高だ。
私が怯えているのを察して一生懸命凛としているところとか本当に
「グオォオオオオォォォ!!」
「っひゃあ!??」
「だいじょうぶだよ蒼波」
あ。
「落ちたあああああああああ!!!!」
落ちたああああああああ!!! 何も大丈夫じゃないって!!
待って、私、咲夜みたいに空飛べないってマジで!てかなんで咲夜私と同じ人間なのに飛べるの時間操るだけでしょなんでむしろ私が何で飛べないのどいつもこいつもひょいひょい飛びやがっていつから舞空術は幻想入りしたんですか私知らないよ現実逃避してる場合じゃねぇや落ちる落ちる落ちるの怖い怖い怖いいやあああああああああああああああ!!!!
…………落ちてなくね?
「あれ?」
さっきから私の体は中に固定されたまま一切動いていない。これじゃあ取り乱した意味ないじゃないか。
どうやらハンモックみたいになってるようだ。ただ、何かべたつく感じがして動きづらい。
「久し振りの獲物かと思ったら蒼波か」
「ヤマメですか。お久しぶりです」
なるほど。私はヤマメの糸に引っかかっていたのか。そりゃあ巨大蜘蛛が出した糸なら丈夫だしべたつくだろう。結構不快な感触だけど助かったんだから文句は言うまい。
「それにしても見事に掛かったねぇ」
「そうですか」
「四肢が見事に拘束されてるじゃないか」
「まあ確かに動きづらいです」
「…………」
「…………」
なんだろう。
嫌な予感がする。
「罠符キャp「流操『ソニックストライク』ゥ!!!」
よし。これで糸は切れた。
射程範囲は短いとはいえ結構日常でも使えるんだよなこの技。小型を乱射するようなのも欲しいけれど……。
さて、私を襲ってくれたヤマメには何をぶつけようか。
「うぐぐ………逃げられちゃったか。でもね、ここら辺には私の糸がそこらに仕掛けてあるからねぇ。あんた、注意して動かないとまた引っかかっちゃうよ」
「ご忠告ありがとうございます」
いや、本当にありがとうございます。今後ろ確認したらありました、あなたの糸。
これじゃ迂闊に動けないじゃないか。私、空飛べないから空中戦出来ないんだよ。
「まあ、餌にする気はないから大人しく降参してくれな」
「いやいや、さっきの食い気みて安全とか思えないですから。あとその涎をきちんと拭いてください」
「こりゃ失敬」
「よく知り合いを食べようとしますね」
「そりゃあ、あんたは病気にかかってるし、精神も上手く病んでるし、しかも人間だからね。つい食指が動いちまったのさ」
それだけで知り合いを食うなよ。妖怪の理屈がよくわからない。
まあ、食われるぐらいならぶっ飛ばす。
「形はどうあれ先に仕掛けたのはそちらですからね。回符『空廻円舞』」
いっけー。ってあれ?
いつもよりなんか進みが遅くない?
「あんたのそのスペルカードって渦がモチーフだろ? 周りにある糸まで吸いこんじゃってるのさ」
「なるほど」
つまり、糸が中々剥がれないから吸いこみが遅れて進行も遅れると。
これは改良版を作った方がいいな。さっきのも合わせて今度の休みにでも研究するか。
「次は私の番かねぇ。蜘蛛『石窟の蜘蛛の巣』」
彼女が宣言すると同時に、放射状に弾が射出される。起動自体は直線的で避けやすいが、若干移動してるなこれ。左右への移動を封じてから輪状の弾幕で仕留めるのだろう。彼女らしいスペカだ。
さて、どう対処しようか。
この放射状のやつはほっといても問題はないだろう。本命がどんなものかある程度予想できているからそっちを優先した方がいい。
よし。
「試してみようかしら。渦符『波状風渦』」
打ち消し専用のスペカ渦符『波状風渦』。自分の周囲に螺旋状に風を流して防御に徹する。
初めての試みだけど…………成功したようだ。
弾幕が私を避けるように通り過ぎて行く。
ほう……これは上々の結果だ。もしかしなくても大量乱射型弾幕に対して切り札となり得るだろう。
私が流れを解除すると向こうは驚いた顔をしている。ふふん。
「それはずるいって」
「人の回避を封じた上にホームで戦っている貴方には言われたくはないです」
こっちは機動力が売りなんだからそれが封じられたらこうするしかないんだ。打消しぐらいは大目に見て貰いたい。
「あんたは火力も高いでしょうが」
心でも読んでるのかヤマメさんよ。
火力が高いって言ってもうちのところからするとそうでもないんだよ。
フラン様然りレミリア様然りパチュリー様然り。
主人達のほうが火力高いんだもの。他に自慢できるほどじゃないって。
そもそも火力で言うならヤマメを直接しばき倒した魔理沙のほうが有名だし。
まあ勝ったけど。
「火力は人に言えるほどじゃないんです」
「よく言うね。割と本気で言ってるあたりが腹立つよ。瘴符『フィルドミアズマ』」
うえ、触れたらまずい奴じゃん。
本気で病気に侵そうとしてるよ。
ていうか、フラン様助けに来てくれないのかな?
「ここは自分で乗り切れということでしょうか。回符『空廻円舞』」
霧状なら空廻で安定ですわ。
案の定、全てを飲み込んでさらに威力を挙げた。
どーだい。
「私に瘴気は効かんよ」
あー。なるほど。
瘴気に染め上げてスペカを無効化したのか。こいつは一本取られた。
ってことは空廻じゃダメージは与えられないか。
でもソニックストライクのほうは射程短いから当たらないし、波状風渦は防御用だし………。
アレも今使えないんだよね。
どうするかな…………。
「お互いに有効打がないんじゃない?」
「よくおわかりで」
嘘ついてるな。
向こうは使ってないスペルカードあるだろうに。
もし、単発高威力型が来たら結構まずいぞ…………。
あれ? フラグ?
「ヤマメ。もしかして新しいスペカとかあったりしません?」
「察しが良いね。これのことかな。細綱……」
げえっ、瘴気が収束してるよ。
これってまずい奴じゃん。ほら、有効打がないとか嘘ついてずるいのはどっちだよもう。
何かないか……何か……。
ちょっときついけど………ん?
瘴気の収束から発せられる淡い紫色の輝き。
それのおかげだろうか、このくらい地底がうっすらと照らされている。
ヤマメの仕掛けた糸がないぞ?
……。
…………。
………………。
そうか! 最初の空廻に巻き込まれて殆んど剥がれちゃったのか!!
ってことは………機動力が生きる上にアレが使える!!
「瘴気チャージ!『カンダタロープ』!!」
「間に合え!流符『トリック&イリュージョン』!!」
タイミング的には大分ギリギリだけど……。
私が放った一つの弾は今にも放たれようとするヤマメの瘴気へと向かっていく。
以前は魔理沙の超高火力で押しつぶされてしまったが、今回は…………。
そして、着弾――――――
――――――つまり私の勝ちだ。
* * * *
「ケホッ………」
決まったのはいいが、土埃が中々収まってくれない。空気淀み過ぎじゃないのここ。
しかし、威力を調節できないのも考え物だな。狭いところで使うと自分が喰らいかねないし。次はこんなことにならんように研究でもしておこう。
さて、決着はついたことだし、どうやって上に戻ろうか。
こういう時飛べないのが不便に感じるんだよな。そもそも飛べないから落ちたようなもんだけど……ん?
「………蒼波ー……」
これは!!
聞こえた!!! 間違いないフラン様の声だ!! わざわざ探しに来てくれて……愛らしいお嬢様が私の名前を呼びながら…………感動の再会………抱きついてそのまま………ベッドイン!!! 場所はさとりの部屋のでも使うか。
お嬢様、粗忽者蒼波、こちらにいますっ!!
「……からまっちゃよー………。どうしよう……」
なんですと!!!!
それはお嬢様がヤマメの糸に捕まってしまったというのか!!
てことは今お嬢様は無抵抗!
だが、それでは私を探しに来れないじゃないか。
どうしたものか…………。
「……魔力を放出して………少ない出力……流れを促進させれば…………いける!!」
お嬢様!! 空切蒼波、参ります!!!