そのせいでこうなった。
今俺の目の前でにこやかに笑っている女性、名前を更識 楯無という。
彼女は簪さんの姉であり、日本お抱えの暗部「更識家」の現当主である。性格は明瞭快活で文武両道、掃除に家事、料理に裁縫、更にはIS関係の知識も豊富で専用機を作り上げたことも。
プロポーションも女性として魅力的な体を持ち、まさに完璧超人といっても過言ではない、と言う原作でハイスペックを地でいく人だ。
ただし、シスコン。
そんな人が俺を呼び出した理由なんて、一つしかない。
「こうして実際に会うのははじめてかしら。簪ちゃんの姉の更識楯無よ」
「えっと、はじめまして。簪さんのルームメイトをしている一二三四五六です」
「私の名前も珍しい、と思ってたけど貴方のはもっと珍しいわね」
「よく言われます」
ここまではにこやかに話が進んでいるが、この後からが問題な気がする。
「……さて、今日ここに呼び出された理由、わかるかしら?」
「……先日の試合、の事ですか」
「そうね、それも有ったわね」
それも?
「では先にそのことから話し始めましょうか」
「はぁ……」
其処から、試合内容についてクドクド言われたが、まあ楯無さんも素人が真正面から代表候補生に戦いを挑む無謀が分かっているようで大した事は言われなかった。ただ他の方法が無かったのか、と
言われたぐらいだった。
「……このぐらいかしらね、生徒会長として貴方にいう事は」
「そうですか……生徒会長として?」
「そう、ここまでは生徒会長としてのお話。これから話すのは更識簪の姉として話すことよ」
其処から急に顔つきが真剣になり、場の雰囲気もかなり変わった。
「この話をする前に、この学園の警備の話をしなくてはならないの」
「?」
「この学園は世界中からIS関係の生徒や技術者が集まってくるの。そのため警備関係もかなり厳重になってるのは分かるわね」
「え、ええ」
徐に立ち上がり俺の周りを回りながら話始める。
「警備の関係上、監視カメラもこの学園中に設置してあるわ。無論プライベートな場所、トイレとか浴場は別だけど」
「はあ……」
「そして、監視カメラがある場所に“屋上”も含まれてるの」
「……」
この時点で俺は冷や汗が止まらなかった。
「そして昨日、たまたま私が屋上の監視カメラの映像を覗いた時……」
バキィ、そんな音を上げて彼女の手の中の扇子が砕けた。
「……ねぇ、四五六君。どうして貴方、簪ちゃんに抱きしめられてるのかな〜」
俺の正面に立ち、俺の顔を両手で掴み顔を固定して至近距離で話す楯無さん。その目は暗く濁っており輝きも無く、一言で言うならヤンデレの目つきだった。
「あ、あれは……」
「あれは、何かな?私に分かるようにシッカリとオシエテクレルヨネ?」
この時点で俺は気を失いそうになっていた。何だこれ、何でこんな目にあってるんだ。楯無さんの手がめり込んで痛い。と言うか血が出てきてるんですけどぉぉーー
「あれは、簪さんが俺を慰めてくれただけです」
「慰めた?」
「そ、そうです。その日の試合で俺が勝てなかったことに、その、泣きそうになった所を簪さんが抱きしめてくれただけで、他意はありません!!」
実際は目にゴミが入って涙が出ただけのを簪さんが勘違いしただけだけど、こう言っておかないとまずい気がする。
「ホントウかな?」
「ほ、本当です!!」
「……」
「……」
そのまましばらくの間見つめあう。ここで少しでも目を逸らしでもしたらきっとヤバイ。明日の日の出を見られなくなる気がする。
「……フゥ、どうやら本当のようね」
そういって両手を離し手くれた楯無さん。
「痛っ」
手を離してくれたのはいいのだが、手の爪がめり込んだとこから軽く血が出てた。
「あ、ご、ごめんなさい。今手当てするわね」
手際よく傷跡を手当てしてくれる楯無さん。
「本当にごめんなさいね、四五六君。私、簪ちゃんの事になるとどうしても制御できなくて……」
シュンとして俯く楯無さん。
「いえ、大丈夫ですよ。そんなに深い傷でもないですから。」
「そうだけど……」
先ほどのヤンデレのような雰囲気は無く、今の彼女は悪い事をして怒られるのではないかと不安になってる子供のようだった。
「フフ」
「な、なに。急に笑って」
「いえ、さっきの楯無さんと今の楯無さんのギャップが可笑しくて」
「な!?も、もう。お姉さんをからかわないの!!」
「ハハハ」
「わ、笑うなーーー!!」
ポコポコと軽く叩いてくる楯無さん。あれ、彼女ってこんなに可愛い人物だったけ?
「フゥ、フゥ……コホン。話は変わるんだけど四五六君から見た簪ちゃんってどんな子かな」
「?どういう事ですか」
「その、ね。私は簪ちゃんの事がとっても大事でとっても心配なんだけど、その、いろいろあってね。直接話す機会がなかなか無くてね」
何処か諦めたような顔つきで話す楯無さん。
「……簪さんは普段はあまり話すことはありませんけど、優しくていい子だと思いますよ」
「そう?」
「じゃなきゃ、俺みたいなのを慰めてくれませんよ」
「そうかしら?」
「そうですよ」
その後は簪さんの最近の状況を軽く話して、お開きになった。
「ごめんなさいね、こんなに引き止めちゃて。それに怪我もさせちゃって」
「いえいえ。それだけ簪さんのことが心配なんだって分かりましたから」
「そう言ってくれると助かるわ」
その時の彼女の顔は妹を心配する姉、そう完璧超人などではなくただの普通の女性だった。
「簪さんとの仲、よくなると良いですね」
「ええ、そうね」
「では、失礼します」
「今日は、ごめんなさいね」
「いえ、もう気にしてませんから」
そうして、生徒会室から出て行く俺。
フゥ。……生きた心地がしなかった。だってあの人ヤンデレぽっくなってた時後ろに何か専用機っぽい物がゆらゆらと見えてたもん。下手な回答したらきっと消されてたかも。
でも、まあこれで取り合えず危機は去ったかな。簪さんにちょっかい出さなければ何もしてこないだろうし。俺簪さんにちょっかいなんてして……して……。
俺、餌付けしてた。どうしよう。
妹LOVEな楯無さん。
その思いは彼女から目の輝きを奪うほどである。