今日、私はIS学園近くの駅前の噴水前にいます。
何故か?それは先日、私は四五六君に料理を教えてもらうように頼んだところ、四五六君は快く引き受けてくれたのですが、料理に使う食材があまり無い、との事で休日である今日、買出しに来ているのです。久しぶりに外出した気がする……
さて、そんな風に駅前で待っていたら携帯が鳴り、誰かと思って見て見ると四五六君の名前が。
「あ、簪さん」
「どうしたの?四五六君」
「もう待ち合わせの場所についちゃってるかな」
「うん。もうついてるけど」
ちなみに今の時間は9時30分です。かなり早くにきてしまった。
「そっか。悪いけどもうちょっとだけ待っててもらえるかな。時間には間に合わせるから」
「分かった。大丈夫だよ。時間より速く着いちゃったのは私のほうだし」
「ごめんなさい。すぐ行くから」
「うん。待ってる」
そう話してから電話を切る。四五六君どうしたんだろう?何か電話の向こうで焦っていたような……。
そんな電話があってから30分ほどして待ち合わせの時間になったころ私は、ガラの悪い男性達にナンパ?されています。
「ねえねえ、良いだろう?俺たちと一緒にさ遊びに行こうぜ」
「そうそう。待ち合わせなんかほっといてさ〜」
「……結構です」
「そう言わないでさ〜」
私が嫌がっているのにお構いなしに迫ってきて私の手を掴もうとしてきた。もし掴んだら、未完成だけど“この子”で威嚇してやろうと思ったら横から別の手が伸び、その手を掴んだ。
「其処までにして貰おうか。彼女は俺の待ち合わせの人なんでな」
「な!テメェなに、さま……」
私はその声がするほうを向いた時、息を呑んだ。
さらさらの銀髪に、赤と青のオッドアイ、整った顔つき、服装も一流モデルといって良いほど着こなしている青年が立っていた。
「簪さん、遅れてごめんね?」
「え、あ、うん」
「彼女は俺と待ち合わせしてたんだ。離れてもらえるかな」
「す、すみませんでした」
「すんません」
彼のオーラなのか、そそくさと離れていく男達。
「ごめんね。遅れたせいで不快な目に会わせちゃって」
「う、ううん。気にしてない、けど……四五六君なの?」
「そうだよ」
「嘘……」
赤と青のオッドアイでまさかとは思っていたけど、本当に四五六君だったとは。
「あ〜似合わなかったかなこの格好」
ちょっと困ったような顔をしてそう言う四五六君。
「ち、ちが!!その……とってもかっこいいです」
四五六君の姿は本当にカッコよくて、胸がドキドキしてまう。
「そっか。よかった。じゃあ、行こうか」
何気ない表情で手を差し出す四五六君。
「え?」
「今日は人が多いからはぐれないようにね」
「……う、うん」
普段の私なら、絶対にその手を取る事はないのにその時の私は戸惑いながらもその手を取り手と手を繋いだ。
「さあ、行こう」
笑顔で言う四五六君。その笑顔につられて私は元気よく返事をした。
「うん!!」
そうして四五六君と手を繋ぎ、連れられて来たのは食品売り場ではなく、駅近くの映画館だった。
「此処は、映画館?食材買いに来たんじゃないの四五六君」
「そう思ってたんだけど、今から買っちゃうと後が大変だから此処で時間を潰そうと思ったんだけど、ダメだったかな?」
「ううん、大丈夫だよ」
「そっか……なら何見ようか」
四五六君と一緒にこの映画館で今上映されている映画のポスターを見ると、、「戦場で紡ぐ愛 敵兵とのラブストーリー」「ザ・サラリーマン2〜再就職先はブラック企業!?〜」「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」の三本だった。
私はその中の「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」に目が釘付けなった。なぜなら私はこういうヒーロー物が大好きだから。
「簪さん?」
「へぅ!?な、何かな」
掛けられた声に変な声が出てしまう。
「どれ見ようか?」
「え、えっと……じゃあ、その戦場で紡ぐ愛、で」
四五六君の前でヒーロー物が見たいなんて恥ずかしくて言えなくて当たり障りの無い物を選んだのに「分かった。店員さん「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」、を大人二枚で」
「かしこまりました」
「四五六君!?」
四五六君はあっさりとヒーロー物を選んでしまった。
「あんなに凝視してちゃあバレバレだよ」
「うぅ……」
どうやら、ヒーロー物を凝視していたのがばれていたようです。
「じゃあ、行こう」
「……うん」
「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」はタイトル通り、歴代のヒーロー達が集まり、映画版の巨大な敵組織を打ち破るという王道パターンだったけど、私はその映画に夢中になっていた。
「楽しかったね!!四五六君」
「そうだね。手や体が動くくらいだったもんね?簪さんは」
「な!そ、そんな事してないもん」
私が夢中になっている時のしぐさを見られていたようで顔が赤くなるのが自分でも分かり恥ずかしかった。
その後、お昼の時間になっていたので、四五六君に聞かれ、私たちは近くの大手チェーン店のファミレスに2人で入りました。
その時、入り口で私、いや四五六君の姿を見た店員さんが四五六君に見惚れていたのが何故か気にいらなかった。何で……
案内された席に着き、注文を終えた後私は朝から気になっていたことを聞いてみた。
「あの、四五六君」
「なに?」
「その髪の毛の色も、もしかして……」
「ああそうだよ。この髪の色と目の色が俺の本当の色だよ。驚いたでしょ」
「う、うん。ビックリしちゃった」
本当にビックリした。オッドアイだけだと思っていたのにまさか髪の色まで違うなんて。
「本当は今日もいつも通りの黒髪黒目の地味な格好で来ようとしたんだけど」
そこで少し微笑み
「簪さんの姿を見たらちょっとね……」
と言われ、急に不安になりました。
「えっと、変だった?」
久しぶりの外出という事でちょっとオシャレに気を使ってみたのがまずかったのかな。……けれどそんな気持ちは次の一言で吹き飛んでしまった。
「いや、可愛すぎてね」
「か、かわっ!!」
私は自分の顔どころか体中が熱くなるのが分かる。唯でさえ普段と違うカッコいい姿で不意打ちのように笑顔でそんな言葉を言われ、本当にどうしていいのか私は分からない……
このままではいけないと思い話題を逸らそうと今日見た映画の事を話し出す私。
「そ、そういえば映画楽しかったね」
「うん。映画だとやっぱり一味違うよね」
「そうそう。テレビで見るのもいいけど大きなスクリーンで見るのは格別だよね」
そうやって四五六君とヒーロー物の話で盛り上がった。盛り上がったのだけれど……
「四五六君、その、女の子がこうやってヒーロー物の話をするって変、じゃないかな」
「?、どうして」
不意に私はそんな事を思ってしまった。
「だって、その、クラスの女子の話とか聞いてるとヒーロー物とかじゃなくて可愛いものの話や最近の芸能人の話とかしてて私、ついていけなくて」
「……」
「いつも一人で整備とかしてて、その傍らにテレビでヒーロー物ばっかり見てて、私って女の子らしくないのかな」
今日の私は何処かおかしかった。四五六君とこうやってヒーロー物の話をしていた時は本当に楽しかったのに窓ガラスに映ったその姿を見て思ってしまった。(普通の女の子ならもっと他の話で盛り上がるんじゃないか?)って。
クラスの女子はいつも「どこどこのケーキが〜」「なになにの服が〜」「だれだれの芸能人が〜」と最近の話題で盛り上がっているのに私はそれについていく事が出来なかった。
四五六君と出会う前まで私はいつも一人で“この子”の整備ばかりをしていて、空いた時間もヒーロー物のテレビを見ていて、誰かと話し合う事なんて殆ど無かった。
だから不安になった。四五六君が私と話していてつまらないと思ってるんじゃないかって。女の子らしくないって思ってるんじゃないかって。
「……いいんじゃないかな、それでも」
「…え?」
でも四五六君はそれでもいいって言ってくれた。
「たとえヒーロー物が好きでもいいと思うよ俺は」
「でも……」
女の子でもヒーロー物が好きでいいって言ってくれた。
「それに、女の子らしくないって言うけど俺から見たら簪さんは十分に可愛い女の子だよ」
「……」
女の子らしくない私を、可愛い女の子って言ってくれた。
私は溢れ出る涙を堪えた。泣くまいと必死で堪えた。
「か、簪さん!?なにか俺悪い事言ったかな」
「ううん、違うの。その嬉しくって」
「簪さん……」
その後あふれそうになる涙を堪えて、また四五六君とヒーロー物の話で盛り上がりながら一緒に注文した料理を食べた。四五六君と一緒に食べた料理はおいしく感じられた。
お店から出た後、今日の本来の目的である食材選びに行く事に。
「それでは、今日の目的の食材選びに行こうか」
「うん……四五六君、その……」
私が四五六君の手を取ろうかどうかで迷っていると
「ああ」
四五六君から手を繋いでくれた。
「じゃあ行こうか」
「……うん!!」
そんなさり気ない気遣いに私は元気な返事で応えた。
四五六君に食材の選び方を教わりながら食材を選び購入していき、夕方になったので私たちはIS学園に戻る事にした。
「四五六君、今日はありがとう」
「どうしたの急に?」
そんな言葉が自然に出た。
「その、今日は私のためにいろいろしてくれたから……」
「ああ、気にしなくていいよ。俺がしたかったからしただけだから」
「それでも、だよ。本当にありがとう」
だから私は四五六君にお礼をすることにした。
「……だからこれはお礼だよ」
「え?」
両手が食材で埋まっている四五六君の頬にキスをした。
「……フフ、私先に帰ってるね」
「……」
呆然とした表情になった四五六君を後目に私は駆け足でIS学園に走っていく。
私は小さい頃から“ヒーロー”に憧れていた。辛く苦しい時に颯爽と現れる“ヒーロー”に。
小さい頃はヒーローは本当にいると信じていた。でも大きくなっていくうちにヒーローなんて幻想だと信じてしまった。
それでも未練がましくヒーロー物を見ていたのは、いつか私を助けてくれるヒーローが現れるんじゃないかって思っていたからだ。
だから今日一日、私は四五六君と一緒にいて一つ分かった事がある。
それは、更識簪は一二三四五六の事が好き、という事だ。
いつか私の前に現れると信じていたヒーロー。
私が好きになった四五六君は私にとってまさしく
その17の簪目線のお話。
簪さんは自分の思いに気が付いたようです。