ついうっかり自分の心内を喋ってしまい恥ずかしくなって部屋から逃げ出した四五六です。
……ヘタレ?チキン野郎?いいじゃないか、ヘタレでも。女性に告白まがいの事をしたことなんて前世でもないんだぞ。それをうっかりとはいえ言ってしまったんだ。
はぁ、明日からどう顔を合わせればいいんだよ……。
「……うん?」
何か前方からいい争う声が聞こえるな?
「何故教官はこのような場所にいるのですか!?」
「……」
「教官を必要としている場所はこのような場所ではありません!!」
「言いたい事はそれだけか?ボーデヴィッヒ。なら早く部屋に戻るんだ」
「っ!!教官、私は諦めませんから!!」
やば、こっちに来る。
「……」
ふぅ、柱の影に隠れたおかげで見つからなかったぜ。地味スキルに感謝だ。
「……で、一二三何時から其処にいた」
「何故ばれたし」
「生徒の気配に気づけなくて教師が出来るか」
いや、それは織斑先生だけだと思うのですが。
「で、何時から聞いていた」
「えっとボーデヴィッヒさんが怒鳴ってこっちに来るとこからですが」
「そうか……何も聞いていないんだな」
「殆ど聞いてないです」
「ならばこの事は誰にも話すな、いいな」
睨まないで恐いよ織斑先生。
「はい、分かってます。ボーデヴィッヒさんの立場を悪くしたくはないですから」
「ボーデヴィッヒの立場?」
「ボーデヴィッヒさん、たぶん織斑先生に自分の国に来てください、見たいな事言ったんだと思うんですよ。で、IS学園は一応法律で学園関係者に干渉は許されないって言ってるのに自分の国に来てくださいって言うのは明らかな干渉行為ですよね?それを軍役の人が行なった、なんていいスキャンダルのネタじゃないですか。同じクラスの人にそんな事したくないですから」
頬を軽く掻きながら思った事を言って見る。
「……はぁ」
そうしたら、ため息をつかれた。
「あの、何か変なこと言いましたか?」
「いや違うんだ。お前は其処までしっかりと考えているのに家のあの馬鹿は……はぁ」
「……その、愚痴ぐらいなら聞きますよ?」
「……そうか?聞いてくれるか?」
「ええ、まあ」
今は部屋に戻りたくないし良いかな。
「なら、寮長室に来い。あそこなら防音が出来ているからな」
「分かりました。行きましょうか」
そういって織斑先生の後ろをついて行く俺。……この時俺はホンの軽い気持ちでついていったのだがそれがあんな事になるとは今の俺には思いもしなかった。
「ここだ」
「意外と綺麗ですね」
「意外は余計だ」
寮長室は思いのほかに綺麗だった。まあよく見ると隅にゴチャゴチャと書類っぽい物がうずたかく積んであるが。
「まあ、其処に座れ」
「はい」
4人がけのテーブルに向かい合って座る。で始る織斑先生の愚痴。
……最初は普通だったんだよ。普通にクラスの事とかちょっとした出来事の愚痴だったんだよ。
ただ、織斑先生途中からビール飲みだしたんだよね。そうしたら喋る喋る。やれ一夏は女垂らしだの、鈍感だの、もう少し考えて行動しろだの、でもそれら含めて一夏はかわいいだのと、殆ど弟自慢だった。
まあ、その間に山田先生は大事なところでミスをするだの、束は破天荒すぎて私に迷惑をかける事が多すぎるだの、毎年毎年私のクラスには問題児が多いだの、一夏が原因で壊れるドアの修理に何度私が頭を下げただのと言っていた。
それを俺はビールを注ぎながら、気が付いたら有り合わせの物でお摘みを作りながら聞いていた。まあいいんだけど。聞くって言ったのは俺だから。
「聞いてるのかぁ一二三〜!!」
「聞いてますよ織斑先生」
「私だってな〜私だってな〜女なんだぞ〜ヒック。……ブリュンヒルデだとか最強のIS操縦者だとか言われてるがな〜私だって女らしくヒック、オシャレして好みの男性とデートして見たいんだぞヒック」
「いいじゃないですか、デートすれば」
「いいじゃないですか、じゃない!!」
缶に残ったビールを一気に飲み干しテーブルに缶を叩きつける。
「……いないんだよ〜いい男が〜」
テーブルに頭を乗せてぶつぶつと呟く。
「職場は女性だらけで、外に出ようにも仕事や何やらで時間が取れなくて出れたとしても最近の男共は根性無しばっか。女尊男卑の時代だからしょうがないとはいえもっと根性を見せろ!というんだ」
黙って聞き続ける。
「それに、私に近寄ってくる男共は私の事をブリュンヒルデとしか見ていない。知らなくても知ってしまえば及び腰になる奴らばっかだ……」
そっと開けた缶ビールを差し出す。
「スマン。……ングング、ぷはぁ〜」
それを一気飲みする織斑先生。
「……どこかにいい人、いないかな」
そう呟く織斑先生はブリュンヒルデと言われた強い人ではなく、本当にただの一人の女性だった。
「……きっと、いい人が見つかりますよ先生」
「……一二三は、いい奴、だ……な……」
「先生?」
声をかけてみたら
「……すぅ……すぅ」
どうやら寝てしまったようだ。
「……厳しい人、って思ってたけど苦労してるんだな、やっぱり」
原作では厳しい人、としか思ってなかったけどこうして見ると普通の女性にしか見えない。
「こうやって弱みを見せたらイチコロだと思うんだけどね〜」
「う〜ん……いちか〜」
「……せめてブラコンじゃ無ければねぇ」
寝てしまった織斑先生をベットに運び、ベットの中に寝かせておく。織斑先生の寝顔はどこかスッキリとしていた。
「さて、と……掃除、しておこうかな」
テーブルの上には飲み干された缶や空いた皿などが散乱し、床も埃がうっすらとあり、キッチン回りも汚れていたので綺麗にしておく事にする。
ゴミをまとめて、床やテーブル、本棚をの埃を掃き、キッチン周りを綺麗に拭いていく。ついでに簡単な朝食を作り置きして冷蔵庫へ。
最後にメモ用紙に伝言を書きテーブルの上に置いて部屋を出る。
『織斑先生へ
今日聞いたことは誰にも言いません。俺の中にしまっておきます。それとたまになら、またこうして愚痴を聞きますので一人で溜め込まないようにしてください。あと簡単ですが部屋の掃除をしておきました。
P・S
簡単ですけど朝食を作って冷蔵庫に入れておきました。暖めて食べてください。』
そうやって部屋から出たのはすでに深夜を過ぎた時間だった。このまま外で時間を潰すのは不可能。かといって誰か他の人の部屋に泊まらせてもらうのはさらに不可能。(ってかそんなことしてくれる人居ないし。一夏は泊めてくれそうだが相室の篠ノ之さんがな〜)しょうがないので簪さんが居る、自室へ戻る事に。
「……」
静かにドアを開けこっそりと入る。……仕切りでよく見えないが簪さんはすでに寝ているようだ。
悪い事しちゃったな。そんな風に思いながら部屋の奥に入ろうとしたら
「……どこに行ってたの四五六君」
皆、心配するな。ヤンデレ化はしない。
きっとな
おまけ
「う…ん?朝か」
日の光で目が覚める織斑先生。
「昨日は、確かボーデヴィッヒと話してそれから、それから……」
昨日の事を思い出しながら寝室を出る。
「?、部屋が綺麗になっている」
寝室を出て目に入ったのは綺麗にされた部屋とテーブルの上に乗っているメモ用紙だった。
「……一二三め。余計な事を」
そう言いながらもその顔は優しげな表情を浮かべていた。
「……むぅ、一夏の料理より上手いな」
冷蔵庫の料理を温めなおして食べ、感想を述べる。
「……付き合うなら一二三みたいな男性が良いな」
朝食を食べ終えてポツリと呟く。呟いてから気が付く。
「な、何を考えているのだ私は」
顔を赤くしてあたふたしながらも2人が一緒の家庭を想像してしまい、さらに顔を赤くする先生。
「アイツは学生だぞ。それに年も離れている。そんな事は……」
それからしばらくの間一二三を見ると顔を赤くする織斑先生が居たとか居ないとか。