「……ねえ、どこに行ってたの四五六君」
俺が混乱している間に簪さんは俺の真後ろまで移動し俺の耳の真裏で囁くように問いただす。
「私ね、さっき四五六君が私みたいな子が好きって聞いて本当に嬉しかったんだよ?」
後ろから手を回し俺に抱きつき話だす簪さん。
「この前、四五六君と一緒に出かけた時に分かったんだよ」
抱きしめる力が強くなる。でもその腕は微かに震えていた。
「私は、わたし、は……四五六君の事が好きだって」
簪さんの口からハッキリと告白の言葉が出た。
「ねぇ、四五六君は、四五六君は私の事、嫌いなの……」
「ちがっ」
簪さんの言葉を否定しようと腕を振りほどき向かい合い見た簪さんの顔は
「私の事、嫌いじゃない、なら……」
眼を涙で潤ませながらも必死で堪え、俺の言葉を待っていた。
その姿を見た俺は数時間前の俺を殴り飛ばしたかった。俺は簪さんをこの世界に生きている一人の人物として見ると決めたのに、決めたのに結局どこかで簪さんを小説のキャラクターと思い込んでいたのだ。……馬鹿だ俺は!!今目の前に居る簪さんは小説のキャラクターなんかじゃ決して無い。
目の前に居るのは自分の思いが否定されるんじゃないかと不安になりながらも必死で耐えている一人の人間じゃないか。
それを俺は原作に介入したくないだとか馬鹿な理由で簪さんと向き合う事から目を逸らしていたんだ。
其処まで思った時、俺は、俺自身の気持ちにハッキリと気が付いた。
「……簪さん」
「し、ごろくん」
「俺は、一二三四五六は更識簪の事が好きだ」
「っ!!」
その言葉を聞いた簪さんは両目から溢れんばかりの涙を流した。
「ごめんね、俺がハッキリとした態度を取らなかったせいで簪さん、いや簪には不安な気持ちにさせてしまった」
向き合いお互いに目と目を合わせる二人
「だから、簪」
「四五六く、ん」
お互い言葉も無く、けれども2人は分かっていたかのようにキスをした。
「う〜ん……朝、か」
日の光が部屋に入ってきて目が覚める。……今日この日の目覚めは俺が生きてきた人生の中で一番気持ちがいい日だった。なぜなら
「う…ん」
俺の横には簪が居るからだ。
「……おはよう、四五六」
「うん、おはよう、簪」
2人はお互いに微笑みながら挨拶を交わす。昨日お互いの思いを言い合い、恋人になった俺たちは夜遅くまで2人でお互いの事を話しあった。
そして夜も更けてきて寝ようと言う時に簪から
「その、四五六……い、一緒に寝よ?」
と、顔を真っ赤にしながらそういわれて俺も顔を真っ赤にしながら
「わ、分かった」
と、承諾して2人で一緒に寝ることにした。お互いに顔を真っ赤にしながらでも、手と手を繋ぎながら眠りについた。
「……シャワー、浴びてくるね」
「分かったよ」
簪が浴室に向かうのを横目に改めて考える。
(俺はいままで何かしらと理由をつけて言い訳をして逃げてきた。……でもそれも今日でお終い)
日の光が入る窓から外を見る。其処には雲ひとつ無い青空が見えていた。
(俺は、俺自身の意思でこの世界で生きる!!)
視線をずらし思ったのはこの世界に生まれて手に入れた
(だから、お前とはお別れだ。俺はこの世界で手に入れた力で戦って、守ってみせる)
自らの意思で八卦龍と別れを決める一二三四五六。
その瞳には力強い意思が見えていた。
……アレ?え、ちょっと待って?可笑しいぞ、どうしてこうなった?なんでだ、何でこうなる????
四五六君が作者の意思から独り立ちしたようです。