私は今、一人残された部屋で四五六君の事を考えています。
彼がさっき言った言葉「俺が好きなのは簪さんみたいな人で……」
私は最初、その言葉を理解できなかった。私は四五六君の事が好きだけど四五六君が私の事をどう思っているかは分からなかったから。
だから、とっさに出た言葉とは言え四五六君が私の事を好きって言ってくれたのは心が踊るようなような気分になれた。でも四五六君はその言葉を言った後顔を赤くして出て行ってしまった。
その姿に「意気地なし」と呟いてしまったのは悪くないと思う。
私は四五六君の事が好き。四五六君もたぶん私の事が好き。
そう思っただけで私はとても嬉しかった。四五六君は私を“更識楯無の妹”では無く一人の女の子として見ていてくれた初めての人。一人で機械弄りをして男物のアニメばっかり見ていた私をかわいいって言ってくれた人。かわいいと思った私のために本当の姿を見せてくれた人。
私は四五六君の事を考えれば考えるほど彼の事が好きになっていった……。
四五六君が部屋を出て行ってからすでに5時間が経過していた。
(四五六君、どこまで行ったんだろう?)
いっこうに帰ってくる気配が無い四五六君に対して私は次第に不安になっていく。
(何で帰ってこないの。四五六君さっきの言葉なら私、気にしないから。早く帰ってきてよ)
四五六君が帰ってこない。それだけで私はとても不安になってしまう。そうして四五六君が帰ってきたのはすでに深夜を過ぎ、次の日に入った頃だった。
私はとっさに部屋の隅に隠れ、四五六君が部屋に入って来たとき後ろから、こう聞いた。
「……ねえ、どこに行ってたの四五六君」って。
私の言葉を聞いた四五六君は硬直して動かなかった。そんな四五六君の真後ろに回りこみさらに言葉を続ける。
「私ね、さっき四五六君が私みたいな子が好きって聞いて本当に嬉しかったんだよ?」
後ろから四五六君がどこかに行ってしまわないように、そばにいると意識で来るように抱きつく。
「この前、四五六君と一緒に出かけた時に分かったんだよ」
抱きついた腕にさらに力をいれる。でもその思いに反して私の腕は震えていた。
「私は、わたし、は……四五六君の事が好きだって」
そして、私は私の思いを四五六君に言った。言ってしまった。
振り向いた四五六君は私を見て驚いた表情をして、その後少しの間目をつぶり、そして返事をくれた。
「俺は、一二三四五六は更識簪の事が好きだ」
その言葉を聞いて理解した時、私は泣いた。両目から溢れるほどの涙を流した。
四五六君が私の事を好きって言ってくれた。それだけで私の中に有った不安な気持ちは吹き飛び変わりに言葉に出来ないほどの幸せな気持ちで一杯になった。
四五六君が私の名前を言う。私も四五六君の名前を言う。
そして私たちは無言で、でもまるで初めから分かっているようにキスをした。
1秒か1分かそれともそれ以上の時間か。私たちはキスを続けた。
そして2人とも同じタイミングで口を離す。
「……ン、ハァ……四五六」
「なんだい、簪?」
「……大好き」
「俺もだ」
「う……ん」
私が目を覚ますと私の横で四五六が先に起きていた。
「……おはよう、四五六」
「うん、おはよう、簪」
朝の挨拶を交わす。たったそれだけの事なのに私はそれが無性に嬉しかった。
「……シャワー、浴びてくるね」
「分かったよ」
そういって私は浴槽に移動した。
(私は四五六の彼女になったんだ……)
熱いシャワーを浴びながらそう思う。
「……えへへ」
四五六の彼女になった。そう思うと顔がにやけるのを止められない。その時の私の顔はとてもだらしの無い顔だったと思う。でもそれを止めようとはしない。だってそれだけ嬉しいのだから。
「四五六、ずっと一緒にいようね?」