お酒は二十歳になってから。作者との約束だ。
千冬ルートは残念ですがこれでおしまいです。作者の次回作にご期待ください(笑)
あと、今回の話は健全だから(震え声)
深夜零時を過ぎたIS学園寮長室。そこに備え付けられたベットの上に二人の人間が倒れこんでいた。
いや、倒れこんでいるのではない。その姿は男が女を押し倒しているような姿であった。
押し倒された側の肌は汗をかいたせいかしっとりと濡れており、その瞳は押し倒されたショックかそれとも別の要因なのか潤んでおり、キスが出来そうなほど近づいた口からはかれた吐息は鼻で吸い込むと、どこか甘い匂いがした。
倒れこんだ拍子にはだけた胸元から見える鎖骨のラインは深夜に男女二人っきりと言う事もあり、どこか妙にいやらしく感じてしまう。
そんな状態のなか押し倒された側の人間が、押し倒した側の手を掴みはだけた胸元に持ってくる。
「わかります?この心臓の音が」
「あ……」
胸に直接触らされた手のひらから伝わる人の温かさとドクン、ドクン、と脈を打つ心臓の鼓動音。
「あの日から好きに、ううん……大好きになりました」
視界全体に映る相手の顔はアルコールで酔ったのか、それとも別の要因か、頬を赤く染めていた。
「だから……」
言葉をそこで切り、ゆっくりと瞳を閉じてわずかに口元を上げる。それはキスの合図。それを見て押し倒した側が思った事は……
(どどど、どうしてこうなったああぁぁ!?)
激しく混乱していた。
織斑千冬、2○歳。三十路まじかの喪女には恋愛の経験が足りなかった。
その日、IS学園教師である織斑千冬は油断していた。
数日前、同僚である山田真耶からおすそ分け(余り物の配布ともいう)で貰った見た目ジュース缶のような缶チューハイを自室の冷蔵庫に入れたままかつ、普通のジュース缶も入れてしまったこと。
彼、一二三四五六との晩酌をもう何度も繰り返しているが何もなかったことに対する危機感の低下に晩酌は終末の夜にしていた事。
そして何より、彼が“アルコールに極端に弱い”という事実を知らなかったこと。
これら複数の事象が重なった時、織斑千冬にとって幸福でありながらも背徳感のある出来事が始ったのだった。
事の始まりは毎週金曜日の夜に開かれる勉強会、と言う名目の晩酌であった。
初めて四五六に愚痴を聞いてもらった日から何度となく愚痴を聞いてもらう内に週の終わりである金曜日の夜に勉強会と銘打って集まる口実を作りそこで晩酌というなの勉強会を開いていた。無論四五六と千冬の二人だけである。
まあ、内容は千冬がIS学園での愚痴を永遠と零しながら四五六の手料理を食べているというグダグダな内容であるが。
「ぅ~ヒック、四五六~ツマミは~?」
「いま、出来ましたよ」
寮長室に備え付けてある簡易キッチンから茹でたてのソーセージを皿乗せて酔った千冬の前に置く四五六。
「あんまり見ない種類のソーセージですね。どうしたんですか?」
「ん~?ああ、この前ラウラが祖国からの差し入れだとか言って持ってきたやつだ。美味いぞ」
茹でたてで熱々のソーセージをフォークでブスリと刺し、大口を開けてガブリと千切り咀嚼してから冷たい缶ビールをグビグビと音を立てて飲む千冬。千冬信者の人が見たら卒倒しそうな姿である。
「相変わらずの飲みっぷりですね」
「飲まなければやってられんのだよ……」
スーツ姿でどこか哀愁漂う姿の千冬。それを見て苦笑しながら笑う四五六。勉強会という晩酌が始まってからはおなじみの光景となっていた。
二人は教師と生徒と言う間柄だがその姿を他の人が見たら恋人同士と疑われても否定できないほどに二人はお互い気を許しあっていた。
「じゃあ、僕も一つもらいますね」
パクパクモグモグと食べる千冬の姿を見ながら四五六もソーセージの山から一つ刺して一口食べたのだが、
「……ッ、ケホッ、か、辛い」
どうやら唐辛子が入ったソーセージを食べてしまったらしい。慌ててキッチンに向かい水を飲む四五六。そんな姿を見た千冬は笑い出す。
「ハハハ、四五六お前は辛いのは駄目か。お子様舌だな~」
「うぅ~。いいじゃないですか、辛いものが駄目でも」
辛かったせいか少し涙目になって千冬を睨む四五六。
「ハッハッハ、悪い悪い。そうだ、冷蔵庫の中にジュースがいくつか入っているからそれを飲むといい」
ケラケラと笑う千冬をよそに少しふて腐れながらも冷蔵庫を開けてぶどうと名前がついた缶ジュースの蓋を開けて飲む四五六。
この時千冬が一言、缶チューハイが混ざっている、と注意しておけばあんな事態にはならなかっただろう。だがすでに後の祭りである。
「……」
缶ジュース?を飲み干した四五六がフラフラと歩きながら戻ってくる。
「うん?どうした、四五、六……」
さっきは千冬の正面に座っていたのに座っていた椅子を引きずって千冬の真横に置いて座る四五六。そして千冬の方を向いて一言。
「えへへへ、千冬しぇんしぇ~」
にこにこと笑いながら千冬に抱きついてきたのだった。
「し、四五六!!どうしたんだ!?」
普段の姿からは想像できない行動にうろたえる千冬。そんな千冬にもお構いなしに抱きつく四五六。
「は、離さないか!!」
「千冬しぇんしぇは僕のこと嫌いなの」
うるうると瞳を潤ませて上目遣いで見上げる四五六。さらに捨てられた子犬の如く千冬には四五六に伏せられた犬耳と尾がついているのが見えた。
「そ、そんなことはないぞ」
「ホント!!」
千冬の言葉にさっきまでの捨てられた子犬のような雰囲気は消え去り今度は褒められた子犬のように耳をピンと立てて尻尾をブンブンと振る姿を幻視した千冬。
ちなみにこの時の四五六は普段の偽造した姿である黒髪黒目で地味なめがねを掛けた姿ではなく、サラサラの銀髪に赤と青のオッドアイで、めがねは掛けていなかった。
そんな美少年な四五六が満面の笑みでかわいい子犬の雰囲気を出しながら、好き好き、と言いながら抱きついてくる。
千冬の胸がキュンとなった。
(い、一体どうしたというんだ?これはまるで酔っ払いのよう、だ……ハッ)
千冬は四五六に抱きつかれながらもキッチンの方を向く。そこには飲み干された缶が置いてあった。そしてその缶には“ぶどうサワー”と書かれたあった。
(あ・れ・かーーー!!!)
以前、山田先生からもらった缶チューハイを四五六は缶ジュースと間違えて飲んでしまったのだ。
「……アルコールに弱いにも程があるだろう」
千冬の呟きに頭を傾げる四五六。そんな時四五六のお腹からクゥ~と音が鳴った。
「あ……えへへ、お腹すいちゃった」
そう言って四五六はフォークでバジルの粒が混じったソーセージを刺して口に運び、食べた……食べたのだが
「ンッ、ア……おっひいよぉ」
ソーセージ自体が太いのと四五六が大きく口を開けなかったせいか無理やり口を大きく開けさせるように入っていくソーセージ。まだ茹でたてでありうっすらと湯気を上げる、緑の粒が混ざってはいるが茶色で太く長い肉の棒を一生懸命に口に含む四五六。一気に食べようと口の奥まで飲み込んだものの噛み切ることが出来なくて口から引き抜く。引き抜かれた肉の棒の皮には四五六の唾液がつき肉の棒の持つ油と混ざり、ヌラヌラと光っていた。
「んひゃぁ……ングッングッ、熱くて苦いよぅ」
どうにかして必要分を口に含んだのだがどうやら先端部分がパンパンに膨らんでいたせいか、四五六に舐められた衝撃でパンパンに膨らませた水風船の口から水が噴出すように(茹でられて)熱くて(バジルの味で)苦い肉の汁を口いっぱいに味わうこととなった。
美少女と見間違えるほど綺麗な美少年が茶色くて(肉の色)熱く長い肉の棒(茹でたてバジルソーセージ)を口いっぱいに含みつつ喉の奥まで咥え込んだあと、ゆっくりと引きずりだした後咥えた肉の棒の先端からあふれ出た肉汁を顔の表情を苦さに歪ませながらも懸命に飲み込んでいく。
千冬の鼻から、たらりと赤い液がこぼれ落ちた。
その後、缶チューハイ一本で酔ったとは思えないほどの酔いっぷりでひたすらに千冬に甘え続けた四五六。実の弟である一夏にでさえここまで甘えられたことはない千冬は終始押されっぱなしであった。
誰かに頼られることはあっても甘えられることはなかった千冬。初めての感覚に戸惑うばかりで四五六を引き離すことが出来ない。そして四五六のほうも甘えかたがエスカレートしていく。最初はただ軽く抱きつくだけだったが時間がたつにつれて抱きつく力が強くなり、さらに頭を猫が自分の匂いをこすり付けるが如く千冬の胸にこすり付ける。しかもその行為には一切邪気がない。ごくごく自然に頭を千冬の胸にこすり付け、まるで赤ん坊のようである。
さすがにこれ以上はまずいと感じた千冬は抱きついている四五六を立たせて一緒に寮長室にあるベットまで運び横に寝かせようとした。が、あと数歩のところでアルコールでフラフラしていた四五六が足をつまずかせこけて方を貸していた千冬も一緒にこけてしまった。
「いっつつ……四五六大丈夫、か」
「しぇん、しぇ……」
「え?」
目を開けるとそこにはベットに倒れこんだ四五六を押し倒している自分がいた。
そして時間は冒頭に戻る。
(ど、どうすればいいんだ!?こんな時に私はどうすればばば)
事故とは言え教え子である男性、いや年下の男の子を押し倒してしまったこの状況に喪女に片足を突っ込んだ(両足とは言わない)千冬、2○歳。すでに限界であった。
「四五六、私は、私は……」
自分自身の心臓の音が頭に響く。まるで早くキスをしろと千冬を駆り立てるかのように。
「わた、し、は……」
磁石のS極とN極が引き合うように千冬の口が四五六の口に引き寄せられていく。ゆっくりとしかし確実に近づく二人。
そして二人の唇が触れ合う瞬間、千冬の意識は暗転した。
最後に千冬が感じたのはマシュマロのように柔らかい感触であった。
「……ハッ!!」
跳ね起きる千冬。あたりを見回すとそこは見慣れた寮長室のベットの上であった。
「……夢、か?」
思わずそう口ずさむ千冬であったがそれにしてはリアルすぎる夢である。ベットから降りて立ち上がりリビングに向かう。リビングのテーブルの上にはすっかり冷め切ったソーセージの残りと中の無い缶ビールが何個も置いてあり昨日の事が夢ではないという証拠が残っていた。
そんなリビングのテーブルの上にメモ書きが一枚。手にとって見ると一言「部屋に戻ります」とだけ書きなぐったように書かれていた。
「夢じゃなかったのか……」
そう呟きながら無意識のうちに手を口元に当てる。
「……ッ!!何を思い出しているのだ私は!!」
頭をぶんぶんと振り思い出される感触を忘れようとする千冬。
「水でも浴びて忘れよう」
水を浴びて忘れてしまおうと浴槽に向かい“パジャマ”を脱ぎ捨て、冷水シャワーを浴びる千冬。
「……」
冷たい水が千冬の体から汗を流すと同時に雑念を洗い流していく。
(昨日は何も無かった。間違えて缶チューハイを飲んでしまった四五六を私がベットに寝かした。それだけだ……うん、それだけだ)
そう自分に言い聞かせる千冬であった。
(そうだ、私は四五六をベットに運んで寝かせただけだ。ヤラシイ事なんて無かった。パジャマだって乱れてなかった……パ、ジャマ?)
ふと、起きた時自分が着ていた服を思い出す千冬。
(パジャマ?え、昨日私はスーツ姿だったはずだ。何でパジャマ姿に、え?え?)
四五六をベットに寝かした時は確かに自分はスーツ姿であったと思い出す千冬であったが、
(そういえば下着も違う色になってた……!?!?)
下着が違うものになっているという事は千冬は下着を脱いだことになる。だが千冬にそんな記憶は一切無かった。という事は無意識の内に脱いだか、
そこまで考えた瞬間、冷たくなった体が一瞬で熱くなった。
「くぁsdftgyふじこljk!?!?!?」
シャワー室に不可思議な悲鳴がこだました。
「あれ、四五六?なんかいい事でも有ったのか?」
「え……フフ、秘密だよ
「??」
この話を読んだ後、読者は「ヒロインの立場が逆じゃねーか!!」と言う。
没ネタとして酔った四五六はジゴロと化して千冬をイケメンスマイルで口説いて千冬が逃げ出そうとした所を壁ドンして追い込む、と言う感じでしたが、これでは千冬がヒロインになっていしまうので没にしました(ちょっと待て