俺と簪か付き合っていることがばれてしまった日の放課後、俺は生徒会室にいます。
放課後になってすぐに布仏虚さんが来てつれてこられました。呼び出された理由を聞いても「会長がお話があるとのことです」としか教えてくれなかった。
ただね、生徒会室に入る直前に「……どうか無事で」とか言うのは止めて欲しかった。
そうして入った生徒会室は普段なら机や書類などが入った棚があるのに俺が入った時は何もなく部屋の中心に椅子が一つだけおいてあっただけだった。そして窓際で外を見ている楯無さんの姿が……
「あの、楯無さん?」
「……一二三君、椅子に座ってくれるかしら」
「(一二三君?)は、はあ」
とりあえず言われるがままに椅子に座る。
「……」
「……」
お互いに無言になる。静かになった部屋の中では楯無さんが一定のリズムで扇子で手を叩く音が響いていた。
「一二三君、私お昼ごろに面白い噂を聞いたの」
「噂、ですか」
「そう。何でもIS学園の男性生徒に恋人ができたって言う噂」
「そ、それは……」
この時点で俺は冷や汗を掻いていた。
「しかも、その相手は何でも生徒会長の妹らしいの」
「……」
「ねえ、一二三君何か知らないかしら?」
此処まで話していても、一切此方を向かずに話す楯無さん。心なしか手を叩く音が大きくなってる気が……
「あ~、え~……その男子生徒って、その、俺のことですね」
前回のこともあり誤魔化す事はきっとまずいと思い素直に話すことにした。
「じゃあ、その恋人が生徒会長の妹って言うのは?」
「……それも本当です」
「……」
「……」
またお互いに無言になる。
「あのね、一二三君」
「は、はい」
「かんちゃんが付き合っている男が下劣で愚図な男だったら私、秘密裏にかつ物理的に消してると思うの」
「……」
冷や汗がさらにドッと出た。
「でも、ね。一二三君とは短い間だけど何度も話したり一緒にお昼を食べたりして一二三君がどういう人間なのかは分かってるつもり」
其処まで話してから振り向く楯無さん。その顔は無表情なのに何所か泣き出しそうな雰囲気を出していた。
「だから、ね。一二三君、いや一二三四五六さん。どうか私の妹をよろしくお願いします」
無表情な顔つきから一転、真剣な表情で俺に頭を深々と下げそういってくる楯無さん。
「楯無さん……」
この時の楯無さんは普段の飄々とした態度は一切なくただひたすらに妹の事を思う姉の姿だった。
「此方こそ妹さんを、更識簪さんを幸せにして見せますから、安心してください」
俺は椅子から立ち上がり楯無さんの頭を上げてもらい正面からこう言った。
「四五六君……ありがとう」
顔を上げた楯無さんの表情は涙目で、何所か儚げだった
「四五六君になら私、安心してかんちゃんを任せられるわ」
「いえ、そんな……」
「ただね、四五六君」
「はい?」
「もし、かんちゃんを悲しませるような事があったら殺すわ」
「……え?」
先ほどまでの表情から一転して誰もが見初めるような笑顔を浮かべ“殺す”と俺に言ってきた。
「かんちゃんを泣かしたら殺します。
かんちゃんを悲しませたら殺します。
かんちゃんを裏切ったら殺します。
かんちゃんに嘘をついたら殺します。
かんちゃんを愛していないと殺します。
かんちゃんを傷つけたら殺します。」
「あ、あの……」
楯無さんの表情は本当に綺麗な笑顔なのにその口から出てくる言葉はとても恐ろしい。
「もしかんちゃんを穢すようなことがあれば、私は貴方の四肢を切り落とし、目をくり抜き鼻を捥ぎ耳をそぎ落とし舌を引き抜き五感を機能できない状態にしてそのまま生かさず殺さずの状態で永遠と生きながらえさせます」
笑顔でゆっくりと話しながら俺のほうに来る楯無さんに気圧されて俺は後ろにあった椅子につまずき尻餅をつく。
「いっ……!!」
尻餅をついてほんの少しだけ楯無さんから目を逸らしてしまい、すぐさま目線を戻そうと顔を上げたら其処には鼻が触れそうなほど近くにまで顔を近づけている楯無さんの姿が。
「私は本気だからね四五六君」
「な、何が…」
思わず引きつったような声がでる。
「もし、貴方がさっき言った事のどれか一つでもしたら私はどんな手段を使っても実行するから」
その時の楯無さんの顔は笑顔なのは変わらないのだが声に感情はなく瞳は暗くただ只管に暗く濁っていた。
「え、いや楯無、さ「なーんてね」ん?」
俺が戸惑いながら声を掛けようとしたら楯無さんの顔が一転していつもの飄々とした顔になった。
「フフフ、四五六君驚いたでしょ」
「……は?」
「さっきまでのは演技よ、演技」
楯無さんは演技だというが、とてもじゃないが演技には見えなかった。
「そ、そうですよね。本当に殺すなんて……」
「それは本気よ」
「え?」
ヒュン、と風を切る音がしたと思えば俺の顔の真横を楯無さんのISの兵装であるラスティー・ネイルが突きつけられていた。
「四五六君。私は本気なの。本気でかんちゃんに危害を加える相手には一切の容赦はしない気だから。例えそれが四五六君だとしてもね」
「……」
俺の頬から一筋の血が流れる。
「俺は「ね、えさん。何、してるの」簪!?」
楯無さんの本意に応えようとした直後、ここにいないはずの人物の声が聞こえた。
次回は簪のターン。