IS 転生して貰った物は!? 旧式   作:マーシィー

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主人公の設定を忘れかけてしまった今日この頃。


その31

 ラウラと学年別トーナメントに出場する事を決めてからしばらくの間、俺とラウラは一緒にトレーニングをしていた。コンビネーションの組み立てやら練習の反省会をして細かい調整を行なったり。

 

 その間、オルコットさんに本気で戦うように言われたりそれにつられて一夏や何故か鳳さんやデュノアさんにも戦ってくれと言われたりもしたがそこはラウラとの訓練で忙しいという事で何とか逃げ切った……。でもトーナメントが終ったら捕まりそうだが……。

 

 反省会では俺とラウラの他にも簪や楯無さんがアドバイスをしてくれた。特に楯無さんは学園最強と言われるだけはあってアドバイスはとても的確だった。そのおかげでラウラとのコンビネーションはかなり上手くなった。

 

 そうそう。俺の専用機についてだが先日織斑先生に渡された各国企業の一覧表の中に、更識家という項目があったので迷わず俺はそこを選んだ。

 

 織斑先生も苦笑しながらも一言「そうか」と言ってくれた。さらに「選ばれなかった他の企業には私がしっかりと説明をしておこう。一二三、貴様は気にしないでトーナメントに集中しろ」と言ってくれた。

 

 俺がそのことに頭を下げて感謝すると「教師が生徒の為に仕事をするのは当たり前だろう」と軽く微笑みながらそう言ってくれた。本当に織斑先生には頭が下がる。ただ最後に「……家の愚弟も貴様ぐらいに考えて行動できればなぁ」と目頭を押さえ何所か遠い所を見ながら呟いていたのがやけに耳に残った……。今度また手料理と酒の肴を持って愚痴を聞きに行こう……。

 

 俺の専用機の開発を更識家に選んだ事を簪と楯無さんに言ったらとても喜ばれた。それと同時に心配された。以前考えていた周りからの評判の事だ。だがそれがどうした。周りの事なんて気にしない。俺は自分自身で考えて選んだんだ。回りの人間がどうこう言ってきても気にする物か!!

 

 

 さて、そうこうしている内に学年別トーナメント当日になった。さっそくトーナメント表を見に来たのだが……。

 

「これは……」

 

 俺達の第一試合の相手はオルコット&鳳のペアだった。

 

「四五六兄様」

 

 ラウラが顔を険しくしくする。

 

「ああ。これは厄介だな……」

 

 俺達がトーナメント表を凝視していたら後ろから声をかけられた。

 

「あら、一二三さんにボーデヴィッヒさんじゃありませんか」

 

「ん、オルコットさんか。おはよう」

 

「おはようございます。ボーデヴィッヒさんも」

 

「おはようです」

 

「お二人もトーナメント表を見に?」

 

「ああ」

 

「そうでしたか……。最初の対戦相手は何方に?」

 

「見てみなよ」

 

 そう言って俺はオルコットさんにトーナメント表を指差す。

 

「私達の最初の相手は……、なんとお二方でしたか」

 

 一瞬驚いた表情をしたもののすぐさま好戦的な笑みを浮かべるオルコットさん。

 

「一対一ではありませんが一二三さん。貴方と正々堂々戦える事を嬉しく思いますわ」

 

「あ~そのあの時は悪かったよ」

 

「いえいえ、最初はあの戦い方に怒りを感じはしましたが今はもう気にしておりません。それでも気にすると言うならば次の試合で全力で戦ってください」

 

「分かった。俺とラウラ全力で戦わせてもらう」

 

「フフ、楽しみにしておりますわ。ではまた後ほど」

 

 オルコットさんは優雅にお辞儀をして離れていった。

 

「四五六兄様……」

 

「最初から全力で行かないとな。できるなラウラ」

 

「はい!! 絶対に負けません!!」

 

 こうして学年別トーナメントの初戦はオルコットさんと鳳さんの二人になった。

 

 

 

 

 しばらくして、学年別トーナメントが始り控え室で待機している俺とラウラ。

 

「四五六兄様。私達の最初の相手ですが……」

 

「オルコットと鳳のペアか。厄介だな」

 

 ラウラの専用機シュヴァルツェア・レーゲンと俺が使う量産機であるラファール・リヴァイヴ。基本ラウラを中心とした戦い方をするのでラウラの専用機に搭載されているAICを軸に戦いを進めていくように考えていたのだが……。

 

「オルコットのブルー・ティアーズはビーム兵器で鳳の甲龍は衝撃砲。どちらもAICでは相手にしたくない相手だな」

 

「はい。私のAICは実弾兵器が相手なら無類の強さを発揮できますがビーム兵器や衝撃砲のような実弾では無い物に対しては効果はあまり……」

 

「となると、戦い方を変えないといけないな」

 

「はい。なので今回の試合は四五六兄様を中心とした戦い方で行こうかと思うのですが」

 

「だな。となると……アレ、だな」

 

「アレ、ですか」

 

「アレを使えば衝撃砲の利点はなくなるからな。そうなれば多少は優位になれるからな」

 

「そうですね。BT兵器による包囲攻撃と衝撃砲による不可視の攻撃どちらか一方でも対策が取れればこちらが優位になれますからね」

 

「遠距離はBT兵器による包囲射撃。中・近距離は衝撃砲による不可視の攻撃。それにあの二人も今日に向けて特訓してきたんだ。初戦からキツイ戦いになりそうだ」

 

「ですが四五六兄様、勝つのは」

 

「俺達だ」

 

 ラウラと俺は顔を合わせ力強く頷いた。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒさん、一二三四五六さん。準備が整いました。アリーナへお越しください』

 

 控え室のスピーカーから準備が完了したとの報告が流れた。

 

「よし!!じゃあ行こうかラウラ」

 

「はい!!」

 

 俺達二人はアリーナへと向かった。

 

 

「来ましたわね」

 

「やっと来たの」

 

 俺とラウラがアリーナに来た時すでにオルコットと鳳の二人は先に来ていたようだった。

 

「一二三さん。今回の試合は全力で来なさってくれますわね?」

 

「ああ。前と違って俺にも負けられない理由ができたからな。全力でいかせてもらうよ」

 

 俺とオルコットはお互いに油断無く向き合い武器を構える。

 

「私は一夏に用があるの!!だからあんた達にはここで負けてもらうから!!」

 

「それがどうしたのですか。私達だって負ける気はありません!!」

 

 ラウラと鳳はお互いに言い争っていたがどちらも隙は見せていなかった。

 

『両者共に指定の位置へ移動してください』

 

 アリーナにアナウンスが流れお互いに移動する。

 

『それではラウラ・ボーデヴィッヒ&一二三四五六対セシリア・オルコット&凰鈴音の試合……開始』

 

 開始の合図と共にブザーがなり鳴り戦闘が始った。

 

「おいきなさい、ブルーティアーズ!!」

 

 先に仕掛けてきたのはオルコットだった。

 

「な、くっ!」

 

 オルコットが狙ったのはラウラであり、それを助けようと移動しようとした俺の前に出てきたのは鳳だった。

 

「悪いけどここから先には行かせないわよ」

 

 その言葉と共に放たれる不可視の砲撃。それを俺はラファールに搭載されているシールドを構えながら上下左右に大きく動きながらかわそうとする。が、不可視なだけあって完全に回避する事はできずシールドや手足の先に当たってしまいシールドエネルギーが削られてしまった。

 

「直撃は避けたようね。でも龍咆は燃費が良いのよ。どんどんいくわよ!!」

 

 鳳はそう言って距離を保ちながら衝撃砲を連射してくる。さらに衝撃砲と自身の動きで俺をラウラのほうに近づけさせなかった。俺もシールドを構えながら空いた手で射撃を行い鳳のシールドエネルギーを削りはするもののお互いに致命打は与えられず膠着状態に陥ってしまった。

 

 対するラウラとオルコットの戦いはと言うとラウラが押されぎみになっていた。

 

「くっ!!」

 

 ラウラがオルコットのレーザー攻撃を凌ぎつつシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されているワイヤーブレードとレールガンでオルコットの動きを阻止し動きが止まった所をAICを使用し動きを封じレールガンで攻撃を仕掛けるのだが

 

「がっ!?っつ、また!!」

 

 AICで動きを止めているラウラに対し4方向からBTによる攻撃が放たれる。そう、オルコットは自身がBTと同時攻撃ができない事を逆手に取りAICによって動きが完全に止められてしまうのを利用しAICに掛かってしまった時あえて(・・・)自分自身の防御を捨てBTの操作に集中し4方向からの同時攻撃を可能としたのだ。

 

 AICの使用中は対象に集中しなくてはならないため周囲の警戒が疎かになってしまい一箇所ニ箇所からの攻撃はかろうじて回避はできるものの絶え間なく動きながら4方向からの同時攻撃には対応ができずAICを使用するごとに攻撃をもらってしまうラウラ。

 

 ラウラも攻撃をもらっているばかりではなくレールガンやワイヤーブレードによってオルコットにダメージを与えはするもののオルコッとは常に一定の距離を保ちラウラが近づけば近づいた分だけ距離を離しラウラに決定打を撃たせないようにしていた。

 

「さあさあ、ボーデヴィッヒさん。わたくしとブルーティアーズとご一緒にワルツを踊ってください!!」

 

「な、めるなああぁぁぁ!!!」

 

 あえて防御を捨てAICを逆手に取るオルコットとそれに負けじと攻撃を過激にしていくラウラ。

 

 俺と鳳、ラウラとオルコット。今はまだ何とかなっているがこのままではジリ貧である。だから俺はアレ(・・)を使用する事にした。

 

 俺とラウラが鳳とオルコットとのトーナメント戦を始めてしばらくして俺達が押され始めていた。ラウラはAICを逆手に取ったオルコットに苦戦を強いられ、俺と鳳はと言うと負けはしていない物の突破口が見出せずじりじりと押されていた。

 

「ハッハッハーーー!!どうしたのよ!!さっきから押されっぱなしじゃない」

 

「それだけ鳳さんが強いってことじゃないかな」

 

 そう喋りながらも二人は攻撃と回避、防御を繰り返しながら戦っていた。

 

「当たり前でしょ!!私は専用機、あんたは量産機。それで代表候補私と最近乗り始めたあんたとじゃあ差が出て当たり前よ」

 

「確かに、ね」

 

 衝撃砲を左右上下にランダムに移動しながらかわしマシンガンやアサルトカノンで攻撃を繰り出す。だがさすがは代表候補生。俺の攻撃を巧みに回避し避けきれないのは最小限のダメージですむようにして攻撃を繰り出してくる。

 このままでは俺と鳳の戦いよりラウラとオルコットの戦いが先に終りそうだ。それではまずい。ラウラが勝てば良いが現状では5分5分。どちらが勝ってもおかしくはない状態だ。だから俺はこの均衡を壊すためにアレを使うことにした。

 

「鳳さん、対衝撃砲用新兵器を見せてあげよう」

 

「衝撃砲用の新兵器!?させるか!!」

 

 鳳が俺の言葉に反応して衝撃砲を繰り出しながらこちらに向かってくる。俺はそれを見ながら鳳の方を見ながら後ろに高速で移動した。

 

「新兵器って何?後ろに逃げる事!?期待はずれもいいところよ」

 

「いやいや新兵器はこれだよ」

 

「え?」

 

 専用機と量産機の性能の差で追いつかれそうになった時俺は両手に出したスモークグレネード(・・・・・・・・・)の缶を投げつけた。

 

「これは!!」

 

 俺達はスモークグレネードの煙に包まれる。

 

「新兵器ってただのスモークグレネードじゃない!!煙に隠れようたってそうはいかないんだから!!こんなの衝撃砲で吹き飛ばしてやる!!」

 

 そう言いながら全方位に衝撃砲を放ち煙を吹き飛ばしていく。そして煙が晴れた時鳳の前には誰もいなかった。

 

「一二三が居ない……しまった!!一二三の狙いは!!」

 

 鳳が俺の狙いに気がつきラウラとオルコットの方を見た時、ラウラのAICによって動きを封じられたオルコットさんに俺がラファール・リヴァイヴの切り札であるパイルバンカー灰色の鱗殻を打ち込んでいる姿だった。

 

『セシリア・オルコットさんリタイアです』

 

 ラウラとの戦いでシールドエネルギーを削られていたブルー・ティアーズは耐え切る事ができずシールドエネルギーがゼロになりリタイアした。

 

「やってくれたね一二三。まさか私との戦いから逃げてボーデヴィッヒの方に行くなんてね」

 

「まあ、一対一の勝負じゃなくて二対二の試合だからね。これも戦術っていう事で。それに妹を助けない兄貴は居ないでしょ」

 

「四五六兄様……」

 

 ラウラが嬉しそうな顔でこちらを見てきた。

 

「ふん、まあ二対二だからそういう行動もありでしょうね。でもたとえ二対一になったとしても私は早々負ける気は無いわよ」

 

「いや、この試合俺達の勝ちだよ鳳さん」

 

「なによ二対一になったからって調子に乗るんじゃないわよ!!」

 

 そう言って衝撃砲を放つ鳳。だが俺とラウラはその不可視であるはずの衝撃砲を完全に回避した。

 

「な!?避けた!!」

 

「鳳さん、さっき俺は衝撃砲用の新兵器を使ったはずだよ。だからもう衝撃砲の利点である不可視性はなくなったんだよ。目に見える攻撃なら避ける事は可能だからね」

 

「不可視性が無くなったってどういう事よ!!あんたがしたのは煙を出しただけじゃない」

 

「そう俺がしたのは煙を出しただけ。灰色(・・)のね」

 

「……まさか、あんた」

 

「そう、俺がさっきした事は目暗ましが目的じゃない。本当の目的は空気に色をつけることだ」

 

 そう、俺が対衝撃砲対策として考えていた事は空気に色をつけることである。いかに衝撃砲が不可視だといっても煙が立ち込める中で使えば周りの煙が衝撃がどう動いてくるのかを教えてくれるのだ。

 

「やってくれるわね、あんた。まさかこんな方法で私の衝撃砲を見破るなんて」

 

「これで衝撃砲の利点は潰した。この試合勝たせてもらうよ」

 

「舐めんじゃないわよ!!早々やられるもんですか!!」

 

 そこから俺とラウラ対鳳の戦いが始ったが流石に二対一では鳳の分が悪く押されていき最後はAICで動けないようにされた所を二人掛りで攻撃してシールドエネルギーをゼロにして試合に勝利した。

 

 

 

「あーーー負けたーーー!!」

 

「まあまあ落ち着いて鈴さん」

 

「落ち着けれないわよ!!試合に勝って一夏達と戦うはずだったのにーーー」

 

 試合後俺とラウラはオルコットと鳳と話をしていた。

 

「あーーもういい、あんた達二人とも私達に勝ったんだから絶対に優勝しなさいよ!!じゃないと許さないんだからね」

 

「ああ、俺達だって負ける気はないよ、なラウラ」

 

「はい四五六兄様。私達は負けません」

 

 こうして俺達はオルコットと鳳の二人に勝ち次の試合に駒を進め、その後も順調に勝ち進んでいき遂に俺達は一夏とデュノアの二人と試合する事となった。

 

「次は一夏達との試合か……」

 

「あの二人ですか」

 

「ラウラ……大丈夫だよな」

 

「何がですか?」

 

「……いや何でもないよ。じゃあ行こうか」

 

「はい。この試合にも勝って優勝しましょう」

 

 俺は気を抜いてしまっていたのだ。原作のようにラウラが一夏に対して敵意を持っていないことでVTシステムの条件を満たす事は無いと勝手に思い込んでしまっていたのだ。

 

 もしも俺が何かしらの行動を起こしてラウラのISの検査をさせていればあの事件は起きなかったのかもしれない。

 

 だがそれも結局はIFの話でありあの事件は起こってしまったのだ。そしてその事件をきっかけに俺の物語は新たな局面を迎える事となる。




これにて、にじファン時代に掲載していた文は終了となります。

この後は現在連載中のハーメルン版と一緒に更新していきたいと思います。

更新は気長にお待ちいただけるとさいわいです。

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