今日、このIS学園は異様な雰囲気に包まれていた。
何故か?それは今日イギリスの代表候補生と世界に二人だけの男性IS適合者の試合が行われるからだ。私は多少興味が引かれたが見に行く事は無かった。なぜなら、男性の片方のせいで私の“この子”の開発が途中で止まってしまったからだ。
分かってはいる。“この子”と片方の男性、織斑一夏の専用機の開発ではどちらが優先されるかなんて。……分かってはいるけど、納得は出来なかった。
だから、私はクラスの皆や他のクラスの生徒が見に行っている間私は部屋で一人、パソコンの前で“この子”の調整をしていた。
調整をしていて気が付いたらお昼の時間になっていた。ふと部屋の机の上を見てみると其処には彼が作ったお弁当が置かれていた。
最近の私は彼のお弁当のせいでお昼になるとお腹かが空くようになってしまった。……完全に餌付けされてる気がするのは気のせいじゃない気がする。
彼のお弁当を食べながら、ふと考える。
(そういえば、四五六君はどうやって戦うんだろう?)
彼に対して専用機の開発、と言う話は聞いたことはないから必然的に彼は量産機で戦うという事である。専用機持ちかつ代表候補生相手に量産機に乗った素人が勝てるはずなんかない事なんて、考え
ればすぐに分かることなのに彼のクラスの先生は何を考えているのかしら。
でも、今日彼が部屋から出て行くときに今日の試合の事を聞いてみたら「まあ、何とかして見るよ」って苦笑しながら言ってたから、きっと彼も勝てないことはわかってたんだと、そう思ってしまった。でも、それは間違いだった。彼だって男の子なんだ。負けることが悔しくない、なんて事なんてあるわけが無かった。私が“あの人”に勝てなくて悔しい思いをしてるみたいに……。
外が暗くなってきた頃、ノック音が聞こえてきた。こんな時間に誰?と思って開けてみると、私の幼馴染の布仏 本音が来ていた。
「どうしたの?こんな時間に」
「かんちゃん。ごろーちゃん、帰ってきてない?」
「ごろーちゃん?」
「しごろ、だからごろーちゃん」
「四五六君?まだ帰ってきてないけど、どうかしたの」
「うん。今私のクラスでおりむーの代表決定記念のパーティーしてたんだけどごろーちゃんが居ないのに気が付いて探しにきたの」
「そうなんだ。……本音のクラス代表は織斑君に決まったんだ」
「うん!!おりむーすごくカッコよかったんだよ!!」
裾を振り回しはしゃぎながら話し出す本音。
「最初は一次移行が出来てなくてやられっ放しだったけど一次移行が出来てからはこう、ビューンていってバーンって戦って、最後はギリギリだったけどセッシーに勝っちゃたんだよ!!」
「一次移行できていない状態で戦って戦闘中に一次移行したの……非常識」
一次移行も出来ていないのに戦闘を始めるって、馬鹿なのかしら?教師も見ていないで止めれば良いのに。
「なら四五六君の試合はどうだったの?」
何気なく彼の試合の事を聞いてみたとたん、気まずい雰囲気を出し始める本音。
「その、ごろーちゃんは……」
言いづらいように言う本音を見て私は悟った。
「……四五六君、負けたんだ」
「……うん」
「そっか……わかった。私も探して見るね」
「ありがと、かんちゃん。私は食堂付近を見てくるから、かんちゃんは屋上あたりから当たって見て」
「わかった」
そうして本音と別れ、彼を探しに行く事に。そうして屋上に出るドアのガラス越しに彼の後ろ姿が見え呼ぼうと思いドアを開けた瞬間彼の口から「クソッ!!」という声が聞こえ、目もとをごしごしと拭いている姿が見えた。
拭きながらも彼の体は小刻みに震え、目もとを拭いている姿は泣くのを必死に堪えているようにしか見えなかった。その姿を見たとき、私は思った。彼は悔しかったんだって。
たとえ専用機持ちの相手とは言え負けた事が悔しかったんだって。本音の様子からしてたぶんボロボロにされたんだと思う。それでいてもう一人の男性である織斑君がギリギリとはいえ勝った事が悔しかったんだ。
そんな彼の姿を見てしまった私は殆ど無意識の内に彼の前に出て、気が付いたらまるで小さな子供をあやすように彼を抱きしめていた。
彼が泣く事を必死で堪えている姿を見ていると昔の私を見ているようで、それがとても悲しく思えて、私は彼が少しでも気が楽になるようにと、やさしく抱きしめた。
男性を自分の意思で抱きしめるのは恥ずかしかったけど、それより彼が泣くのを堪えている姿を見るほうが辛かった。
……どうして辛い、って思ったのかな?