遊戯王GX―はぐれはぐるま― 作:ロジェさんマジかっけぇ
……あ、悠乃のキャラ紹介はあとがきでやります。
デュエル・アカデミアは、南海の孤島に存在している。隔離した環境に生徒を置き、心おきなくデュエルの腕を磨くことが出来るようになっているのだそうだ。
「うぇぇぇ……ぎぼぢわるいよぉ……」
「……吐くときは海でね」
げっそりとした表情の悠乃。電車や車は平気だが、船には弱いようで完全に酔ってしまっている。
私はずっと彼女の背中をさすっているが、一向に良くなる気配はない。
「酔い止めとか、持ってきてないの?」
「わずれだぁ……」
……まったく。
船の中の売店に酔い止めは置いてあるのだろうか。あるなら買いに行きたいけど、この状態の悠乃を置いていくわけには行かないし……だからといって、今にも吐きそうな彼女を連れていくのも……。
「……はぁ」
「……あの、大丈夫ですの?」
どうしたものかと頭を抱えていると、鈴の鳴る様な声が聞こえた。
「え……?」
振り向いた先にいたのはお嬢様然とした少女。彼女は鞄から何かを取り出すと、それを手渡してきた。
「酔い止めですわ。よろしければお使いになって」
「え、あ」
「市販のものですから安心ですわ。船酔いは大変ですものね」
美しい金色の髪の毛を、ドリル状のツインテールにしている。緑色の瞳はエメラルドの様に輝いていた。
「……ありがとう、ございます」
一礼してから、錠剤の酔い止めを悠乃に飲ませる。直ぐには効果は出ないだろうけど、これで楽になるはずだ。
「助かりました。あと2、3時間もあるのにどうしようかと……」
「困ったときはお互い様、ですわ」
そう言った彼女は口に手を当て、上品に笑った。
「自己紹介が遅れましたわね。わたくしは宝城映見。以後お見知りおきを」
宝城。聞いたことのある名字だ。確か……宝城カンパニー。世界でも有数の宝石店。ジュエリー等の販売や人工宝石の研究の様な事をしていると思えば、ダイヤモンド製のデュエルディスクを作製したり良く分からない事もしている。
「……私は、萩野優葉です」
その名前を聞いた宝城さんの瞳が輝く。
「まぁ、何処かで見たことがあると思ったら、入学試験1位の萩野さんでしたのね」
入学試験1位。筆記と実技の両方で他の生徒と大差をつけた私は、注目の的になっていた。
「いや、まぁ……そうなんですけどね」
「わたくし、所用がありまして貴女のデュエルを見ていなかったのですが、それはもう素晴らしかったと評判ですのよ」
あんまり誉められると照れてしまう。きっと今、私の頬は真っ赤なのだろう。
「萩野さんなら、もしかしたらあのエド・フェニックスにも勝てるかもしれませんわね」
「エド・フェニックス?」
名前は聞いたことがある。確か私や悠乃と同い年のプロデュエリストだ。
「あら、知りませんこと?なんと今年のデュエル・アカデミア入学者の中に、あのエド・フェニックスがいるともっぱらの噂なのですわ」
「あの、プロデュエリストが?」
一体何のために……?もう学ぶことなど無いだろうに。もしかして、学校側が呼んだのだろうか。生徒達の刺激になるように。
「ふふ、楽しみですわ。デュエル・アカデミア」
宝城さんはうっとりとした表情で、水平線の向こうを見つめた。
それから船に揺られること数時間。ついに私達は、デュエル・アカデミアに到着した。
「うわぁ!あの火山本物?」
「パンフレットによると、本物らしいよ」
デュエル・アカデミアのあるこの島は特殊な環境の様だ。本物の活火山、恐竜達の時代から残ってそうな植物達。ビルや街灯に囲まれた今までの世界からは想像もできない様な光景が広がっていた。
生徒達は一旦自分達の寮に向かい、色々と準備をした後大講堂に集まるらしい。
船を降り、新しい世界の土を踏む。何人かの先生が、私達を出迎えてくれた。
「……あ」
その中に、クロノス先生も居た。痩せ細っていて背の高い彼は、小太りで小柄な男性の隣に立っている。
「行ってきなよ、優葉。会いたかったんでしょ?」
「……うん」
親友に背中を押され、恩師の前へ。
「クロノス先生、お久しぶりです」
クロノス先生は私を見て、大きく目を見開いた。
「おお!シニョーラ優葉!大きくなったノーネ!」
覚えていてくれたんだ。私のことを。この人がいなければ、私はデュエリストになっていなかったのでは無いだろうか。
「シニョーラ優葉。貴女のことは聴いているノーネ。あれだけ小さかったシニョーラがこんなに大きくなって…先生とても嬉しいノーネ…!ホロリーナ…」
クロノス先生は目元をぬぐうと、一転して険しい表情になる。
「デスーガ、シニョーラ優葉。貴女のデュエル中の態度も、私の耳に入っているノーネ」
うっ。
まぁ……確かに良い態度では無かった。思っていたよりもずっと弱かったから……つい……。
「シニョーラ優葉。デュエルは、確かに戦いナノーネ」
クロノス先生は優しげな表情に戻り、続ける。
「デスーガ、決して相手を傷つけて良いものでは無いノーネ。マナーを守ってこそ、立派なデュエリストになれるノーネ」
「……はい」
昔も、こんな風に怒られたことがあった。正しいデュエルをしろ、と。デュエルとは、皆の希望となるような眩しくて清い物だと。
「これからシニョーラは、このアカデミアで3年間勉強するノーネ。デュエルの腕だけではナーク、人間としても色々なものを学んでいくといいノーネ」
「……はい!」
やっぱり、クロノス先生は私の憧れだ。小学生の頃、まだデュエル・アカデミアが無かったとき。私にデュエルを教えてくれた先生。そんな恩師にまたデュエルを教えてもらえる。それだけで、この3年間が楽しみだ。
「クロノス、臨時、校長。彼女が入学試験1位のマドモワゼル優葉でありますかな?」
「臨時を強調するんじゃ無いノーネ。……そう、シニョーラ優葉は、私が昔教えたことのある生徒ナノーネ」
「ほほぅ、ならばムッシュ万丈目の相手は……」
「ノンノン、シニョール万丈目の相手は彼女では無いーノ。……そして彼女の相手ーモ、シニョール万丈目では無いノーネ」
「えー……入学者諸君、私が、デュエル・アカデミアの「臨時デアール」校長、クロノス・デ・メディチナノーネって、余計なこと言わなくて良いノーネ!」
入学式。私と悠乃、そして宝城さんはオベリスク・ブルーの制服を着ている。
クロノス先生は、今はデュエル・アカデミアの臨時校長なんだそうだ。そして隣にいる太った小柄な男性は、ナポレオン教頭と言うらしい。
「えー、皆さんの素晴らしい活躍に、期待しているノーネ」
入学式特有の、校長先生の長話。何時もなら悠乃と一緒に眠りに落ちているところだが、折角クロノス先生が話をしてくれているのだ。今回は寝ないで聞こうと思う。
「それでは早速デスーガ、皆さんの力を見るために、入学試験で優秀な成績を見せてくれた生徒2人で、デモンストレーションデュエルを始めるノーネ!」
……え?
そんなこと全く聞いていないんだけど?
だが周囲の生徒は盛り上がる。皆が、私と悠乃に向けて拍手を送っていた。
「お?お!?あたし人気者!?いやぁ照れちゃうなぁ」
「いや、え、そんな」
「それデーハ、シニョーラ優葉、そしてシニョーラ悠乃。前に出るノーネ」
クロノス先生に連れられ、私達はデュエルフィールドに立つ。
「2人とも、いきなりの事で申し訳ないノーネ。だけど優秀な貴女達のデュエルは、きっと皆の良い刺激になるノーネ」
……まぁ。仕方がない、かな。どうせいつか、悠乃とはデュエルしようと思っていたのだ。
「ここであたしが優葉に勝てば……1年最強の座はあたしが貰うよ!」
「最強の座とかはどうでも良いけど、負けないよ。悠乃」
私と悠乃の実力はほぼ同じ。勝敗は五分五分だ。
他の生徒達はナポレオン教頭に先導され、観客席に座っている。
「それデーハ。2人とも、正々堂々戦うノーネ!」
「「デュエル!!」」
悠乃 LP4000
VS
優葉 LP4000
「先攻は、シニョーラ悠乃ナノーネ」
おっと。きっと悠乃が2位だから先攻なのだろう。だけど、彼女のデッキは後攻有利。彼女にとってはありがた迷惑も良いところか。
「うぇ、あたしが先攻かぁ……あたしのターン、ドロー!」
悠乃は暫く手札を見てから考え……頷く。
「あたしはカードを1枚セットして、ターンエンドだよ」
悠乃 LP4000 手札5
セット1
「私のターン」
観客席がざわめく。当然だ。今の彼女のフィールドは、手札事故の時のそれ。
でも私は何度も戦って来たから、彼女のデッキに入っているカードは大体わかる。あれは手札事故じゃない。彼女にとって、先攻をとったこと自体が事故なんだ。
「私は永続魔法、
私の足元から、巨大な要塞が現れる。まるでフィールド魔法の様なカードだ。
「そして私は手札から、魔法カードを発動。
「っ、デッキから!?」
機械の要塞が音を立てて崩れ落ち、現れたカタパルトから何かが発射される。
「現れよ、
歯車と歯車の軋む音。カタパルトから射出された金属の塊が、いくつもの首を持つ
ATK2300
LV6
「上級モンスターを1ターンで……」
「あぁ、しかもあいつ、召喚権をまだ使ってない」
「さらに破壊された機械要塞の効果を発動。自分の手札・墓地からアンティーク・ギアと名の付くモンスターを特殊召喚できる。来て、古代の機械合成竜!」
要塞に使われていた屑鉄から、4つの頭を持つ古代の竜が産み出された。
ATK2700
LV7
「さらにカードを1枚セット。そして手札から、古代の機械飛竜を召喚。その効果で、デッキから古代の機械猟犬を手札に」
ATK1700
LV4
これで私のフィールドに、3体の古代の機械が並んだ。このターンで倒せなかった場合、きっと次の悠乃のターンではこの内の2体が倒されるはず。でも1体でも残ってくれたなら、猟犬の効果で古代の機械魔神を融合召喚出来る。
「バトル!」
「おっと、バトルフェイズ開始前にリバースカードオープン、威嚇する咆哮!このターン、優葉は攻撃宣言を行えない!」
……まぁ、当然対策はしてくる、か。
攻撃宣言時に相手の効果を封じる古代の機械達。威嚇する咆哮は、彼らの攻撃を止められる数少ないカードだ。私がよく使う和睦の使者もその内の1枚だったりする。
「っ……ターンエンド」
優葉 LP4000 手札2
古代の機械合成獣 古代の機械合成竜 古代の機械飛竜
セット1
「私のターン、ドロー!……やるねぇ。あたしが大量展開に弱いこと、良く分かってるじゃん」
そう言ってから、悠乃はニヤリと笑う。
「でも、あたしだって強くなってるんだよ。それを優葉に見せてあげる!あたしはフィールド魔法、KYOUTOUウォーターフロントを発動!」
周囲の光景がガラリと変わる。立ち並ぶビル群。その向こうには海が見える。そして街の中心にそびえ立つタワー。悠乃のデッキのキーカードだ。
「……ねぇ優葉、あんなにガタンゴトンとモンスターを召喚してたら、眠っている者を起こしちゃうと思わない?」
「……っ、まさか!」
彼女のデッキに、この状況を覆せるカードがある。まさか既に手札に……!?
「そのまさかだよ!あたしは魔法カード、妨げられた壊獣の眠りを発動!」
どこからともなく聞こえてくる咆哮。私のカード達が出した騒音が、彼らの眠りを妨げたのだ。
「お互いのフィールドのモンスターを、全て破壊する!」
地割れが起き、私の古代の機械達を飲み込んでいく。攻撃宣言時に圧倒的な制圧力を持つ私のモンスター達も、それ以外のタイミングで使われたカードには敵わない。
「そしてデッキからカード名の異なる壊獣2体を、お互いのフィールドに特殊召喚する!」
天空より、私のフィールドに巨大な何かが降り立った。黒い影を纏った、人型のモンスターだ。
「優葉のフィールドには、多次元壊獣ラディアンを特殊召喚!」
ATK2800
LV7
多次元壊獣ラディアン。自らの分身を作り出す能力を持ったモンスターだ。手数を増やせる事は強力な効果だが、相手ターン中に効果を発動することは出来ない。
「そしてあたしのフィールドにおいで!怪粉壊獣ガダーラ!」
美しく、そして妖しい鱗粉を撒き散らしながら、巨大な蛾のモンスターが現れた。その少しグロテスクな姿に、観客達(主に女子)の悲鳴が上がる。
ATK2700
LV8
「相手に与えたモンスターの方が攻撃力高いじゃねーか!」
「プレイングミスなのか?」
攻撃力でしか物を見られない様な生徒達の声が聞こえる。このモンスターの効果を、その恐ろしさを知らないのだろう。
「まずはKYOUTOUウォーターフロントの効果。フィールド上のカードが墓地へ送られる度に、このカードに壊獣カウンターを1枚につき1つ置く」
ウォーターフロント0→4
古代の機械達を飲み込んだ地割れが街を飲み込み、ラディアンがその足でビルを踏み潰し、ガダーラが羽ばたく度に車や小さな建物が吹き飛ばされていく。
壊獣映画で見るような光景だ。
「そして、カウンターが3つ以上乗ったウォーターフロントの効果を発動!あたしはデッキから、壊獣モンスターを1体手札に加える!」
崩壊した街が、その叫びが。新たな壊獣を呼び寄せる。ウォーターフロントにはカウンターを身代わりに破壊を防ぐ効果があり、除去するのは簡単ではない。
「ガダーラの効果を発動!壊獣カウンターを3つ取り除き、このカード以外のフィールドのモンスターの攻撃力・守備力を半分にする!ビッグ・モス・エフェクト!」
破壊された街に興奮したガダーラは、黄金色の鱗粉を撒き散らしラディアンへ向けて吹き飛ばした。鱗粉に含まれる毒が、異次元から来た壊獣の身体を蝕んでいく。
ウォーターフロント4→1
ATK2800→1400
「バトルだよ!怪粉壊獣ガダーラで、多次元壊獣ラディアンを攻撃!」
ガダーラがその羽を大きく羽ばたくと、ウォーターフロントに巨大な竜巻が発生する。竜巻はラディアンを飲み込み、容赦なくその身体を引き裂いた。
「くっ……」
LP4000→2700
ウォーターフロント1→2
これがガダーラの特殊効果。相手ターン中にも発動できるため、あのモンスターを突破する為には、5400の攻撃力が必要となる。だが今ウォーターフロントに乗っているカウンターは2つ。
「かくしてウォーターフロントの平和は守られたのです!」
芝居がかった口調で両手を広げる悠乃の後ろに、吹き飛ばされた大型バスが落下した。
「行くよ優葉!せーのっ!」
「う、うん」
「「今回の最強カードは~?」」
妨げられた壊獣の眠り
通常魔法
「妨げられた壊獣の眠り」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):フィールドのモンスターを全て破壊する。
その後、デッキからカード名が異なる「壊獣」モンスターを自分・相手のフィールドに1体ずつ攻撃表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは表示形式を変更できず、攻撃可能な場合は攻撃しなければならない。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「壊獣」モンスター1体を手札に加える。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
「悠乃のデッキで一番厄介なカードかもしれないね」
「かもねー。ブラックホールに加えてデッキから壊獣をリクルート。さらには墓地のこのカードを除外して壊獣をサーチ」
「良くもまぁこんな効果許されたよね……」
「まぁ?あたしとしては?助かるんですけど?」
「破壊耐性を持つモンスターが居ても壊獣の生け贄に捧げちゃえばいいね。モンスター除去ならトップクラスのカテゴリだよ」
「その代わり魔法・罠の除去がおざなりなんだよねぇ……」
「サイクロンを詰むしかないね」
「あとはグレイドルと混ぜてバハルストスで除去とかかなぁ。是非とも新規の壊獣を出して欲しいね。ヘ○ラとかビオ○ンテとか」
「……え?グレイドル?バハルストス?悠乃、何言ってるの?」
「それではまた次回ー!」
壊道 悠乃
アカデミアに入学した1年生の少女。優葉の親友かつ幼馴染み。性格は明るいを通り越して五月蝿い。大の壊獣映画ファンで、そのデッキを使用している。大人しい優葉を何とか楽しませてあげようと連れ回すが、大抵の場合空回り。
赤色の髪に青い瞳。長い髪をポニーテールにして纏めている。
使用デッキ【壊獣】
壊獣大決戦がやりたいがためにデュエリストに。優葉の古代の機械魔神を生け贄にして壊獣を出すのは日常茶飯事。お気に入りは勿論……。
2話でございます。ここまで読んでいただきありがとうございました。また、お気に入り・感想・評価ありがとうございます!
書いてて思いましたがあれですね。うん。壊獣アカンわ……。これ二次創作出しちゃいけないやつや……。蛇神ゲーもセフィロンもヌメロニアスヌメロニアも手札1枚で消え去ってしまう……。
強すぎるので彼女には自重させます。なるべくボス戦には出させない方向で。