遊戯王GX―はぐれはぐるま― 作:ロジェさんマジかっけぇ
デュエル・アカデミアは、学力やデュエルの能力によって違う寮に配属される。落ちこぼれや問題児の集まるオシリス・レッド。高校からの編入組で優秀な成績を修めた者が配属されるラー・イエロー。そして中等部からの繰り上がり組の、優秀な生徒が集まるオベリスク・ブルー。
私達は、オベリスク・ブルーに所属している。なぜ高校からの編入組の私達がオベリスク・ブルーなのかといえば、それは私達が女子だからだ。全ての寮で女子寮があるのは、このオベリスク・ブルーだけらしい。
「んー……ふかふかのベッドだぁ……」
だらけた表情でベッドに寝転ぶ悠乃。私と悠乃は孤児院で育てられてきた。私には悠乃しか居ないし、悠乃には私しか居ない。そんな貧しい暮らしを続けていた。だからこんなに柔らかいベッドで眠るのは初めてだ。
「悠乃、寝てばっかり居ないでデッキの調整とかしたら?」
本来であればオベリスク・ブルーの部屋は個室なのだが、私達は同じ部屋で寝泊まりしている。何でも今年入学した女子生徒が当初の予想よりも多く、女子寮の部屋が1つ足りないようなのだ。男子寮に女子を放り込むわけにもいかないので急遽ベッドを1つ追加して2人部屋を作り、そこが自室でもいいと言う生徒を募集したらしい。結局応募したのは私達だけだったが。
私達が部屋でジャージを着て寛いでいると、ノックの音がした。
「はいはい、なーんでーすかー」
気の抜けた口調で悠乃がドアを開ける。部屋の外に立っていたのは、宝城さんだった。
「ふふ、お時間よろしくて?」
「あ、宝城さん!この間は酔い止めありがとね。お礼を言える機会が無くってさ」
そう言いながら悠乃は宝城さんを部屋に入れようとする。宝城さんが居るのは隣の部屋。もしかして五月蝿かったかな……?
「いえ、ここで構いません。先程連絡があったのですが、オベリスク・ブルー寮で新入生歓迎会が行われるようですわ。夜の7時に食堂に集合、との事ですわ」
「オッケー!了解だよ!」
「ありがとう、宝城さん」
宝城さんはニコリと微笑むと、手を振りながら言う。
「それでは、わたくしは別の部屋にも声を掛けて行きますわ」
宝城さんはそのまま隣の部屋へ行ってしまった。忙しい人だ。……一体誰から連絡があったのかは気になるが。先輩に知り合いでもいるのだろうか。
「7時、かぁ。あんまり時間無いね」
「……うん。もう準備し始めた方がいいかもね」
ジャージから制服に着替える。歓迎会だから必要ないかもしれないけど……一応デッキとデュエルディスクも持っていこうか。
「オベリスク・ブルーって、食事も豪華なんだよね!楽しみだなぁ……!」
「……マナーとかあんまり覚えてないけど大丈夫かな……?」
「へーきへーき!そんなん気にしてたら、せっかくの料理が不味くなっちゃうよ!」
「いや、でも礼儀として……」
そんなことを話ながら食堂へ。食堂は男女共同らしく、何十人もの生徒が既に集まっていた。
「うっひゃー!」
既に幾つか料理も運ばれて来ていた。分厚いステーキや、高級な魚介類の使われたスープ。バターの良い匂いのするクロワッサン。
「はいストップ。回りの様子を見てよ、悠乃」
料理に向かって飛び付こうとした悠乃の肩を押さえる。まだ歓迎会の準備中だ。誰も料理に手を出していない。
物欲しげな表情を浮かべて料理を見つめる悠乃の首根っこを掴みつつ、歓迎会が始まるのを待つ。
「あら、優葉さん、悠乃さん」
女子寮側の出入り口から宝城さんが現れた。
「ぎりぎり7時。間に合ってよかったですわ」
そう言って、彼女はほっと胸を撫で下ろした。そしてそれと同時に会場の電気が落ち、スポットライトに2人の教師が照らされる。
「マイクテスマイクテス……うぉっほん!オベリスク・ブルー新入生の皆サーン。皆サーンの入学を、我々は心から歓迎するノーネ」
その内の一人はクロノス先生だ。オベリスク・ブルー寮長、臨時校長、そして実技最高責任者。人員が足りていないのか、クロノス先生がそれほど優秀な先生なのか。どちらにせよ一人に背負わせ過ぎだと思う。過労で倒れてしまわないか心配だ。
「えー、皆サーンは、選ばれしオベリスク・ブルーの生徒達ナノーネ。デスーガ油断することナーク、その素晴らしい才能を磨いていくと良いノーネ」
クロノス先生がそう言って礼をする。そして女子寮長である鮎川先生が、クロノス先生からマイクを受け取った。
「それでは、新入生歓迎会を始めたいと思います。皆さん、グラスを手に取ってください」
そう言うと同時に、グラスに入ったジュースが配られる。
「では、乾杯」
「「「かんぱーい」」」
皆で一斉に乾杯。そして次の瞬間には悠乃の姿が消えていた。
「うわぁい御馳走だぁっ!」
そして彼女の手には料理の盛られたお皿。行動力が高いのは良いことだが、これでは『アクティブ』ではなく『意地汚い』だ。
「はぁ……」
昔から変わらない幼馴染みにため息をついていると、不意に話し掛けられた。
「あなた、萩野優葉さん……で合ってるかしら?」
「あ、はい。えっと……」
声の主は、背が高くスタイルの良い女子生徒。その後ろにも2人の女子生徒が立っている。入試会場で見た覚えはない。繰り上がり組か、それとも先輩なのだろうか。
「自己紹介が遅れたわね。私は天上院明日香。2年生よ」
2年生……つまりは先輩だ。優しげな表情をしているが、勝ち気な性格なのだろう。そんな雰囲気が漂っていた。
「あ、私は枕田ジュンコだよ!」
「私は浜口ももえですわ」
3人とも先輩か。……どうしよう、私のコミュニケーション能力でこの状況を乗り越えられるのだろうか。と、取りあえずは挨拶をした方がいいよね。
「あ、わ、私は萩野優葉です。よろしくお願いします。天上院先輩、枕田先輩、浜口先輩」
私がそう言うと、枕田先輩は浜口先輩の手をつかんで思いっきり上下に振る。
「も、ももえ!聞いた!?私達先輩だよ!先輩!」
「え、えぇ。聞きましたわ。でも、手、痛い……」
……なんだか、一瞬悠乃に重なって見えてしまった。
「もう、ジュンコったら……。あ、それでね。私、あなたの噂を聞いたの。何でもとびきり優秀な新入生がいる、ってね」
噂、か。噂が広まるのは速いものだ。
「ねぇ、優葉さん。私とデュエルしない?」
突然の申し出。2年生と言うことは、私よりも1年長くデュエルの勉強をしてきていると言うこと。きっとかなりの強敵に違いない。
「……わかりました。先輩の胸を借りさせていただきます」
それはとても良い勉強になるはずだ。私が答えると、周囲で様子を伺っていた皆が囃し立ててくる。
「すげぇ、あの天上院明日香と期待のホープとのデュエルだぜ!」
「あの新入生も、アカデミアの洗礼を受けるんだろうよ」
「ありがとう。それじゃあ、デュエルコートに移動しましょうか」
天上院先輩に連れてこられたのは、オベリスク・ブルー寮にある専用のコート。何とも贅沢なものだ。
「行きますよ、天上院先輩」
「明日香で構わないわ。行くわよ!」
「「デュエル!」」
優葉 LP4000
VS
明日香 LP4000
「先攻はあなたからよ、優葉さん」
「私も、呼び捨てで構いません。私のターン、ドロー」
……なるほど。この手札だと、私のすべきことは……。
「私は永続魔法、
地響きと共に、中世の城が私の背後に現れる。まるでフィールド魔法の様だが、れっきとした永続魔法だ。
「そして、グリーン・ガジェットを召喚します」
金属音と共に現れたのは、緑色に塗装された歯車機械。
ATK1400
LV4
「グリーン・ガジェットの効果を発動。このモンスターの召喚に成功したとき、デッキからレッド・ガジェットを手札に加えます」
ガジェット達は基本的に攻撃力が低い。だが確実にモンスターを手札に加えられるため、手札の枚数が減らない事が魅力だ。
「そして古代の機械城の効果を発動。モンスターが通常召喚される度に、このカードにカウンターが乗ります」
古代の機械城0→1
「カードを1枚セット。ターンエンドです」
優葉 LP4000 手札4
グリーン・ガジェット
古代の機械城 セット1
「私のターン、ドロー!堅実なフィールドね。流石だわ」
明日香先輩は、ドローしたカードをそのままデュエルディスクに置く。
「私は、サイバー・プチ・エンジェルを召喚」
球状の体を持つ、可愛らしい機械天使が明日香先輩のフィールドに舞い降りた。
古代の機械城1→2
「サイバー・プチ・エンジェルの召喚に成功したとき、デッキからサイバー・エンジェルと名の付いたモンスター、または機械天使の儀式1枚を手札に加える。私は機械天使の儀式を手札に加えるわ」
儀式、ですか。儀式召喚は召喚するモンスターとコスト、そして儀式魔法が全て揃わなければなし得ない召喚方法。たがそれを自由自在に操ると言うことは、デュエリストとしての腕前が素晴らしいと言うことだ。
「そして儀式魔法、機械天使の儀式を発動!召喚するサイバー・エンジェルと名の付くモンスターのレベル以上になるように、フィールドまたは手札のモンスターを生け贄に捧げる。私はフィールドのサイバー・プチ・エンジェルと、手札のサイバー・ジムナティクスを生け贄に捧げる!」
レベルの合計は6。一体どんなモンスターが……?
「降臨せよ、サイバー・エンジェル-
天空に穴が開き、雲の間からフィギュアスケートの様な衣装を纏った天使が現れる。
ATK1600
LV6
3枚のカードを使って召喚した割には控えめなステータス。どんな効果があるのだろう。
「サイバー・エンジェル-韋駄天-の効果を発動!このモンスターの儀式召喚に成功した場合、デッキまたは墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加えるわ。私はデッキから、機械天使の絶対儀式を手札に加える」
韋駄天が持っていたのは、後続に繋げるための効果。そのモンスター自体に高いステータスは必要ない、と。
「そして、機械天使の絶対儀式を発動!韋駄天を生け贄に捧げ、降臨せよ!サイバー・エンジェル-
韋駄天が光の粒子となって天へと昇り、再び開いた雲の隙間から新たな天使が降臨する。
扇を持った黒髪の女性。彼女もまたフィギュアスケートの選手のような出で立ちだ。
ATK1800
LV6
「そして韋駄天の効果を発動。このカードが生け贄に捧げられた時、自分フィールド上の儀式モンスター全ての攻撃力・守備力は、1000ポイントアップする!」
ATK1800→2800
弁天の攻撃力が跳ね上がる。なるほど、これが狙いだったのか。
「行くわよ、バトル!サイバー・エンジェル-弁天-で、グリーン・ガジェットを攻撃!」
「っ、リバースカードオープン、和睦の使者。私のモンスターは戦闘では破壊されず、ダメージも0になる」
弁天の攻撃を光の障壁が防ぐ。
「私はカードを1枚セット。ターンエンドよ」
明日香 LP4000 手札1
サイバー・エンジェル-弁天-
セット1
「私のターン、ドロー」
弁天の攻撃力は2800。なら!
「私はグリーン・ガジェットを生け贄に捧げ、古代の機械合成獣を召喚」
数多の動物を組み合わせたような見てくれの合成獣が現れ、グリーン・ガジェットをその体に取り込んだ。
ATK2300
LV6
古代の機械城2→3
「古代の機械合成獣は、召喚するとき生け贄に捧げたモンスターによって効果を得る。グリーン・ガジェットを生け贄として召喚された合成獣は、その攻撃力を300ポイント上昇させます」
取り込まれたグリーン・ガジェットが回転し、合成獣のパワーを引き上げる。
ATK2300→2600
「さらに永続魔法古代の機械城の効果により、アンティーク・ギアと名の付くモンスターの攻撃力を300ポイントアップ」
ATK2600→2900
「弁天の攻撃力を越えた……!」
「バトルです。古代の機械合成獣で、サイバー・エンジェル-弁天-を攻撃」
だが、明日香先輩は余裕の笑みを浮かべた。まるで弁天の攻撃力を越えてくることが想定内だった、とでも言わんばかりに。
「リバースカードオープン、ドゥーブルパッセ!」
明日香先輩かトラップカードを発動すると、観戦していたブルーの生徒達がざわめきだした。
「おい、古代の機械って攻撃宣言時のカードの発動を封じるんじゃ無かったのか?」
「バグ?いや、デュエルディスクにそんなものは」
「……良く分かりましたね、明日香先輩。そう、古代の機械合成獣には、魔法・罠カードの発動を封じる効果は無いんです」
「古代の機械……。かなりのレアカードで固められたデッキ。だけどその分、効果が判明しているカードも多いのよ」
しっかり勉強してきている。流石オベリスク・ブルーの生徒だ。
「ドゥーブルパッセの効果、私のモンスターが攻撃されたとき、その攻撃を直接攻撃にすることが出来る」
「っ!?」
2900のダメージを受けるつもり……?
「そしてあなたは、攻撃対象となったモンスターの攻撃力分のダメージを受ける」
合成獣の放った火球が回避され、その真後ろにいた明日香先輩に直撃。だが同時に、私のモンスターをすり抜けた弁天が私にかかと落としを食らわせた。
「ぐっ……」
LP4000→1200
「やるわね、優葉」
LP4000→1100
「私はターンエンドです」
優葉 LP2600 手札4
古代の機械合成獣
古代の機械城
「私のターン、ドロー!これで終わりよ、バトル!」
攻撃力は私のモンスターの方が高い。彼女は一体、何を狙って……!?
「ドゥーブルパッセの効果を受けたモンスターは、次のターンダイレクトアタックを行うことが出来る!サイバー・エンジェル-弁天-でダイレクトアタック、エンジェリック・ターン!」
踊るような動きで合成獣を避け、弁天がその扇を私の喉元に突き立てた。
「こ、今回の」
「最強カードは~?」
ドゥーブルパッセ
通常罠
(1):相手モンスターが自分フィールドの表側攻撃表示モンスターに攻撃宣言した時に発動できる。
攻撃対象モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与え、その相手モンスターの攻撃を自分への直接攻撃にする。
その自分のモンスターは、次の自分ターンに直接攻撃できる。
「相手モンスターの攻撃を直接攻撃にする代わりに攻撃されたモンスターの攻撃力分のダメージを与え、さらにダイレクトアタックを可能にするトラップカードだね」
「全部通ればダメージは2倍!ハイリスクハイリターンなカードだね。あたしの壊獣デッキにも入れてみようかな?」
「壊獣達が舞い踊りながら華麗にダイレクトアタック……ふふっ」
「優葉が……笑った!?」
3話でした。ここまでお読みいただきありがとうございます。
機械天使なんて回したこと無いよ何をどうしたらいいんだよ……。と言うわけで、機械天使を使っている方からすれば意味不明な動きをする恐れがあります。申し訳ないです。
それではまた次回、明日香戦後編にて出会えたなら嬉しいです。
あ、それと最後に1つだけ。この作品にはタグについている通り、ガールズラブ要素があります。何の事かって?……次回になればわかります。